行政×スタートアップで社会課題解決――経産省が公開した『行政との連携実績のあるスタートアップ100選』とは?
2023年4月、経済産業省は、スタートアップと政府・自治体との連携促進に向けて、行政との連携実績のある企業を中心に事例を紹介する『行政との連携実績のあるスタートアップ100選』を公開した。スタートアップと行政の連携を促進することで、スタートアップの育成はもちろん、行政の課題解決力が高まる。同資料を公開することで、政府・自治体におけるスタートアップの認知向上や連携ノウハウの共有を図り、スタートアップにおける公共調達を促進するという。
なお、『行政との連携実績のあるスタートアップ100選』は、「1.スタートアップ連携のポイント」、「2.自治体担当者インタビュー」、「3. 行政との連携実績のあるスタートアップ100選」という3つの章で構成されている。各章の内容を紹介していきたい。
1. スタートアップ連携のポイント
まず、「スタートアップ連携のポイント」と題した章では、スタートアップの定義から連携のメリット、スタートアップ企業の選び方や政府としてのスタートアップ支援策など、政府・自治体職員向けにスタートアップとの連携に向けたノウハウがまとめられている。スタートアップとの接点があまりない政府や自治体職員にとって、初歩的な知識をインプットするのに最適な情報と言えるだろう。その中から、「スタートアップと連携するメリット」、「スタートアップの選び方」について抜粋して紹介する。
・スタートアップと連携するメリット
■自治体・国の機関の政策目標
① 行政サービスの向上、社会・地域課題の解決
② 企業誘致
③ 地域活性化、起業家育成
■市民への効果
以下のようなサービスを活用できる
① ニーズに対応する新しい技術・サービス
② 便利で、コストの安いサービス
③ 今までにない質のサービス
■自治体・国の機関内の効果
① 今まで出来なかった新事業の実施
② コスト削減、人員の効率的配置
③ スピード・コミュニケーションの向上
・スタートアップを選ぶポイント
1.サービスの内容と質 地域との親和性
サービスやプロダクトのほか、サポート体制も信用できる要素となる
2. 経営チーム 社長とそのビジョン
中長期的な想いを共有し、連携できるかが重要
3. 資金調達・出資者 従業員の状況
資金調達や、採用などが進んでいるかチェック
4. コミュニケーションのスムーズさ
手続きや日々のやり取りを迅速に行えるかも重要
5. 他自治体との実績、公的支援の活用、表彰の状況
他自治体との連携実績があるかを要件にすることもある
2. 自治体担当者インタビュー
『行政との連携実績のあるスタートアップ100選』では、実際にスタートアップと連携した自治体担当者のインタビューが掲載されている。ここで取り上げられているのは、つくば市、小松市、三豊市、さいたま市、渋谷区、札幌市、浜松市、広島県、岐阜県、東京都という10自治体だ。
例えば、さいたま市ではプログラミング教育をより充実させるために、ライフイズテック株式会社の「LIfe is Tech!Lesson」を活用し、新学習指導要領に対応しながらプログラミング教育を行う取り組みを開始したり、東京都では、株式会社オーシャンアイズと独自の漁場環境予測システムを一緒に開発するなど、具体的な連携事例にフォーカスしている。
スタートアップとの連携に至った経緯や各自治体における制度設計の工夫など、スタートアップとの連携に関心のある自治体職員はもちろん、スタートアップの担当者にとっても自治体職員の視点を知ることができる内容だ。
3. 行政との連携実績のあるスタートアップ100選
『行政との連携実績のあるスタートアップ100選』の3つ目の章では、題名の通り、行政との連携実績のあるスタートアップ100社の事例が紹介されている。資料内には、どのような行政課題を解決できるのか、どのような効果をもたらすのかという要点に加え、具体的な行政との連携事例も詳しく掲載されている。
以下に、子育て・教育、医療・福祉、インフラ・施設、農林水産、環境、観光・文化、くらし・手続き、産業ビジネスという8つの領域で選ばれたスタートアップ100社を紹介していく。
【子育て・教育】(10社)
【医療・福祉】(21社)
【インフラ・施設】(19社)
【農林水産】(4社)
【環境】(10社)
【観光・文化】(3社)
【くらし・手続き】(20社)
【産業ビジネス】(13社)
編集後記
『行政との連携実績のあるスタートアップ100選』は、自治体担当者の具体性のあるインタビューや、スタートアップ100社の事例が詳しく記載されているなど、実用性の高いものとなっている。自治体担当者だけではなく、企業の新規事業担当者・オープンイノベーション担当者にも有益となる情報が詰め込まれている。スタートアップとの連携の第一歩を踏み出したいと考えている方に、一読することをおすすめしたい資料だ。
(TOMORUBA編集部)