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65自治体が導入する「地域情報配信システム」を活用したDENSO OPEN INNOVATION PROJECTーー地域課題を解決するプラットフォーム機能として、暮らしを支えるサービス機能の拡充を目指す。

65自治体が導入する「地域情報配信システム」を活用したDENSO OPEN INNOVATION PROJECTーー地域課題を解決するプラットフォーム機能として、暮らしを支えるサービス機能の拡充を目指す。

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1949年の設立から一貫して、新たなモビリティの価値を提供し続けてきた株式会社デンソー。同社では、モビリティ以外の分野での価値提供を目指したオープンイノベーションプロジェクト「DENSO OPEN INNOVATION PROJECT」をスタートした。2022年5月16日にエントリーを開始した同プログラムは、第1期・第2期を経て、現在は第3期の募集が行われている。(応募締め切りは3月24日)


募集テーマは2つ、「地域創生」と「QRコード×本人認証」だ。そのうち、本記事では「地域創生」にフォーカスして取り上げる。このテーマでは、デンソーが展開する地域情報配信システム「ライフビジョン」の取り組みを通して地域の課題解決を目指す。

今回、「ライフビジョン」を展開する、自動車&ライフソリューション部 地域ITサービス事業室の冨田氏、廣田氏、鬼頭氏に、「ライフビジョン」のサービス概要や事例、1期・2期の共創の進行状況や手応え、共創パートナーに求めるアイデアや共創メリットなど、様々な角度から話を伺った。

自治体と住民をつなぐサービス「ライフビジョン」には、 OIの精神が深く根付いている

――まずは、地域ITサービス事業室の業務内容についてお聞かせください。

冨田氏 : 地域ITサービス事業室では、地方創生をミッションとして、地方自治体様向けIT周辺領域のサービスを新たに開発しています。自治体様の困りごとをヒアリングし、その内容をもとに様々なビジネスを企画し、インタビューやニーズ調査を行ったり、PoCで評価を行ったりしています。チーム一丸となって商品企画・開発に取り組んでいます。


▲株式会社デンソー 自動車&ライフソリューション部 地域ITサービス事業室 企画開発課長 冨田 大輔  氏

――続いて、地域ITサービス事業室のサービス「ライフビジョン」についてご紹介をお願いします。

廣田氏 : ライフビジョンとは、自治体や地域の情報をお届けする地域情報配信システムです。地方自治体では、住民の方々に情報を伝達する手段として、防災無線、回覧板、広報誌、掲示板など、従来からのアナログ媒体を現在も活用しています。また、地域の暮らしサービスには、行政手続きや移動支援、買い物支援、高齢者見守りなどがあります。

しかしながら、情報の伝達手段が限られている中では、住民に情報が行きわたらず、必要なサービスが受けられないという問題が生じていました。「ライフビジョン」は、そうした課題を解決すべくスタートした、自治体と住民をつなぐシステムです。

タブレット端末やスマートフォンといったデジタルデバイスを通じて、自治体から住民へさまざまな情報をプッシュ型で発信します。これにより、今まで情報を取得できなかった方に対しても、細かに配信ができるようになるのです。日常のお知らせや防災情報のほか、高齢者のラストワンマイルの解消など地域サービスにも活用いただけます。


ユーザーは高齢者中心となるため、簡単で使いやすい画面デザインとなっています。このデザインは、デンソーがこれまでカーナビやコックピットの開発によって培ってきたUI技術を活かして構築しています。

これまで「ライフビジョン」はこれまで防災目的での活用が多かったのですが、今後は見守り、医療、教育など、多岐にわたる行政サービスを支えるプラットフォームを目指します。そのために、現在オープンイノベーションを進めているという背景があります。


――「ライフビジョン」事業は、デンソーの既存事業とは一線を画する印象があります。どのような経緯で生まれたのでしょうか。

冨田氏 : 「ライフビジョン」は、有志社員によりボトムアップで立ち上がった新規事業です。自治体の方々の困りごとや、住民の方々の想いに触れながら、大切に育ててきました。自動車関連事業を営むデンソーでは異色と言える事業ですが、社内・社外のリソースを活用しながら、コラボレーションを大切にして進めています。オープンイノベーションにより新たな価値を得るという面でも、社内からの期待が非常に高い事業です。

全国65の自治体に広がり、地方の暮らしをより良く変える事例も数多く創出

――「ライフビジョン」の導入実績や事例について教えてください。

廣田氏 : 2022年10月現在で、65の自治体様に「ライフビジョン」を導入いただいています。主な事例として、3つの自治体様を紹介します。

まず、高知県の大豊町様の事例をご紹介します。同町は、高齢化率が59%です。日本全体をみると30%弱ですから、たいへん高齢化が進んでいる地域です。そして、独居の高齢者が多くいらっしゃいます。以前は職員の方が毎日電話で安否確認をしていたのですが、「ライフビジョン」導入後は、端末操作の状況を監視して見守りを実施することで、見守る側・見守られる側双方の負担を軽減することができました。


▲株式会社デンソー 地域ITサービス事業室 システム開発課 担当係長 廣田 和成 氏

――次に紹介いただくのは、京都府内における2自治体の事例ですね。

廣田氏 : はい。まずは、京都府南丹市様の事例です。同市の美山地区では、地域の買い物支援としてご活用いただいています。道の駅などの店内にカメラを設置し、売り場の状況をライブ配信しています。これをご覧になった消費者の方が売り場の陳列状況を確認することで、外出の誘発や地域内の輸送・移送につなげることができるのです。それだけではなく、生産者の方が在庫状況をチェックしてベストなタイミングで出荷に行くという活用方法もあります。

また、京都府伊根町様では、全世帯にタブレット端末を配布し、「ライフビジョン」を活用したネットワーク回覧板「いねばん」を提供しています。伊根町は路線バスが廃線になり住民の移動に不便が生じていたことから、デマンド交通サービスの提供を開始しました。その予約機能を「いねばん」に追加し、住民が好きな時に出かけられるようにしたのです。こちらの予約画面も、高齢者が簡単に予約できるようなUIを構築しています。


▲京都府伊根町で展開している「いねばん」。左下にある「いねタク」が、デマンド交通予約機能となる。

――伊根町のデマンド交通予約システムは、配車サービス会社との共創によるものですか。

廣田氏 : 伊根町様、順風路株式会社様、デンソーとの共創です。順風路様は乗合いオンデマンド交通システムを提供しており、私たちはそのシステムと住民の方々とをつなぐためのフロント部分を担当しています。

冨田氏 : 順風路様とはもともとお取引はなかったのですが、伊根町様との取り組みを進める中で事業内容にフィットするパートナー企業を検討し、こちらからお声掛けをしました。

――「ライフビジョン」の利用率はどの程度でしょうか。

廣田氏 : 自治体様によって差はありますが、高いところでは70~80%です。香川県直島町様や高知県大豊町様などでは、毎日町役場の方が「ライフビジョン」を通じて音声でお知らせを配信して頂いていることから住民の方も聞く習慣がついており、利用率は高いですね。また直島町様、大豊町様では役場担当者の方が直接音声を吹き込んでいるため、住民の方から親しみを持たれているようです。音声吹き込みの担当者が変わった場合、「あの人変わったんだね」と住民の方から反応があるそうです。それだけ「ライフビジョン」が生活に浸透しているといえるでしょう。こうした声が聞こえてくると、本当に嬉しいですね。

――それだけ、地域に溶け込んでいるということですね。これまで一番手応えを感じた事例についても、ぜひ教えてください。

冨田氏 : 伊根町様は漁師町ですが、魚屋さんがありません。漁船が戻ってくる時間を見計らって、住民の方々が漁港に魚を買いに集まります。ただ、船が港に戻ってくる時間はまちまちで、朝4時ということもあれば6時ということもあります。これまでは、住民の方々は早朝に港に集まり、時に数時間も待ち続けていらっしゃいました。冬の寒い中では、体に障ります。

そこで、「ライフビジョン」で漁船の帰港時間をお知らせすることにしたのです。すると、住民の方々は長時間寒い中で船を待ち続けることなく、温かい部屋の中でライフビジョンの情報を待つことができるようになりました。このように、人々の生活を良い方向に変えることができる可能性のあるサービスだと思っています。

――素敵な事例ですね。

冨田氏 : 若い方の場合は、自分自身で様々なサービスを選択することができます。しかし、地方にお住まいの高齢者の方々は、なかなかそれができません。ですので、自治体から提供されるサービスの質が、生活の質を左右するという側面があります。

「ライフビジョン」を提供する中で、私たちには大きな責任があると感じています。住民の方々の生活を良い方向に変えることができれば、地域の課題解決に向けて大きな一歩を踏み出すことができるはずです。少しでもお役に立てればという想いで取り組んでいます。

1期を通して、すでに7社と具体的な取り組みが進行中

――今回のオープンイノベーションプロジェクトにより、どのようなことを実現したいと考えていますか?

冨田氏 : 自治体様とお話しすると、やはりその地域特有の課題があり、困りごとも多種多様です。私たちは、その一つひとつにスピード感を持って対応していきたいのですが、1社の力だけでは時間・コスト両面で対応しきれないこともあります。そこで、オープンイノベーションによって時間を加速させるのと併せて、自治体様のニーズに合ったコストで機能やサービスを提供していきたいと考えています。

――2022年5月にスタートしたオープンイノベーションプロジェクトは現在3期の募集が行われています。1期の結果について教えてください。

鬼頭氏 : 1期では50件近くのご応募をいただきました。領域としては、地域活性化・防災・ヘルスケア・交通・高齢者福祉など多岐にわたります。その中から、20社弱の企業と面談を行い、現在7社と具体的な取り組みを進めています。実際にソリューションをお客様に提案している事例や、PoCを実施している事例も出てきています。


▲株式会社デンソー 地域ITサービス事業室 企画開発課 鬼頭 憲司 氏

――具体的には、どのような共創が進んでいますか?

鬼頭氏 : 健康増進のテーマで、健康体操のコンテンツを制作している企業とのPoCが進んでいます。高齢者の方々にタブレットを通して健康体操コンテンツを提供し、運動習慣を付けることで健康寿命の延伸を目的とするサービスです。期間は4週間で、まさに現在進行中となります。利用ログやアンケートから高齢者の方々がどの程度タブレットからコンテンツを視聴して自宅で運動を行うのか、そしてどのような効果を発揮するのかを検証しながら、改善を加えていこうとしています。

また、他にも役場の業務窓口をテレビ電話にすることで、職員・住民双方の負担を軽減する提案や、モノづくりをテーマとした共創サービスの提案を自治体様に行っています。

――アイデアの選定・面談については、どのようなスケジュールで行いましたか?

鬼頭氏 : 20社弱との面談を重ね、実際に自治体様へ提案できる共創ソリューションとして成立させるのに、半年くらいかかりました。面談といっても単にアイデアや技術の精査で終わるわけではありません。お互いのサービスを掛け合わせて、どのような課題にアプローチできるのか、その接点を丁寧に探っていきます。そのため、どうしても1回の面談で即断即決というわけにはいかず、具体的な共創まで進展するのには少し時間がかかってしまいますね。

冨田氏 : 自治体様は1年スパンのスケジュールで動いていらっしゃいます。そして導入に至るまでは、議会で予算承認を得なければ具体的な活動を進めることができません。段取りなど、丁寧な活動が必要となるため、実証実験開始まで半年ほどは掛かります。ただ、ゼロから提案を行うとなると、数年単位の時間がかかるでしょう。

私たちには「ライフビジョン」をスタートしてからこれまでの実績があるため、自治体様に話を聞いていただきやすい環境があります。

防災や福祉の他、自治体DXなど、多様な課題解決のアイデアを募集

――共創相手としてイメージしている企業像について教えてください。

廣田氏 : 1期・2期を通じて様々な企業にご応募いただきましたが、総じて言えるのは私たちだけでは解決できなかった問題が、共創により解決できるということです。

特に「ライフビジョン」は自治体様向けの事業となるため、自治体向けサービスやコンテンツを保有する企業や、具体的なイメージを持っていらっしゃる企業が、共創を進めやすいですね。領域としては、防災や福祉が大半ですが、例えば地域活性化や自治体DXをテーマとしたサービスを持つ企業とも、お話しが進んでいます。

また、先ほど鬼頭がお話しした健康体操の動画コンテンツのように、「ライフビジョン」を通したコンテンツの提供の可能性も感じています。住民の方々のためのコンテンツを保有する企業にも、ぜひご応募いただきたいですね。

――実際に自治体への提案や、ソリューション提供をしている企業が望ましいですか?

廣田氏 : もちろん、実績がある方が提案はしやすいと思います。ただ、私たちが自治体様と信頼関係を構築しているため、そこは必須ではありません。自治体様の課題を解決できるような提案であれば、提案することはもちろん可能です。

――現在、自治体からはどのような課題がよく挙がりますか。

廣田氏 : 防災や福祉といった以前からある課題はもちろんですが、最近では自治体DXですね。行政の業務のデジタル化に対する課題が寄せられることも多いです。

冨田氏 : スマートシティもキーワードとして上がっています。国としてもデジタル田園都市構想など、様々な形で自治体DXを進めるべきだという声があります。しかし一方で、それによってどのような世界を創造するのか、具体的なソリューションがお客様も見えていないところに難しさを感じています。ここに共創によって新たな提案ができれば、価値を創出できるはずです。


自治体との信頼関係を強みに、地方の暮らしをより良くする共創サービスを展開したい

――今回のオープンイノベーションプロジェクトにおいて貴社が提供するリソースと活用ポイントについて教えてください。

鬼頭氏 : これまで共創した企業様が魅力として感じていただいているのは、やはり実証フィールドがあるということです。サービスのアイデアがあったとしても十分に検証ができないという企業もあります。スタートアップの方々は、自治体様とのパイプがなく、どのようなサービス設計にすればいいのか分からないということが多いです。その点で、私たちには自治体様とのパイプと実績があるため、PoCも行いやすいです。

廣田氏 : 私たちは伊根町以外にも鹿児島県霧島市様などと包括連携協定を締結しており、日本各地にフィールドがあります。また、同じ組織の中に開発部隊があり、パートナー企業と共に柔軟に開発を進めることができます。

冨田氏 : 伊根町様との取り組みもそうですが、「このサービスが果たして有効なのか」ということを検証・評価し、適宜改善を加えながら進めることができます。これは、自治様に深く入り込んでいるからこそ、できることだと思います。

――最後に、応募を検討している企業にメッセージをお願いします。

鬼頭氏 : 私たちのお客様には、高齢化・過疎化が進んでいる自治体様が多いです。高齢者や情報弱者、交通弱者などを救うことはもちろんですが、その地域にお住まいのあらゆる方々が安心・快適に暮らすことができる地域づくりを目指して、一緒に新しいサービスを提供していきましょう。

廣田氏 : 自治体様の課題は多種多様ですが、「安心して住み続けられる地域にしたい」という想いは共通しています。私たちはICTの力で、その想いの実現の一助となりたいです。そうしたサービスや技術をお持ちの企業のみなさんに、ぜひご応募いただきたいですね。

冨田氏 : 「ライフビジョン」が様々な地域で活用されるようになり、お客様の困りごとがさらにクリアに見えるようになってきました。その中には、デンソーだけでは解決できない課題も多いです。パートナー企業との共創によって、その解決に努めたいと考えています。

また、私たちのサービスが対象としているのは、地方自治体様や住民の方々であるため、お客様の反応を目の当たりにしやすく、実現した取り組みを一緒に喜ぶことができます。共にお客様に喜んでいただける世界を創っていきましょう。


取材後記

DENSOの中で、有志によるボトムアップで始まったという「ライフビジョン」。2022年3月末では40件ほどの導入実績だったそうだが、2022年10月には60件を超えており、直近での自治体への展開のスピードに驚かされる。自治体それぞれの課題をじっくりとヒアリングし、解決に向けた真摯に取り組んできた実績があるからこそ、多くの自治体に受け入れられているのだろう。

1期・2期を通じて既に共創がスタートしており、PoCも開始している。インタビューでは「時間がかかる」と話していたが、自治体への新規提案のスピード感として、半年ほどでPoCが実現するというのは、むしろ非常に早い。一朝一夕では手に入らない各自治体との深い信頼関係こそ、「ライフビジョン」との共創における最大のリソースであろう。自治体へのサービス展開を検討している企業は、ぜひ応募を検討して欲しい。


「DENSO OPEN INNOVATION PROJECT」(第三期応募締切:3/24)

(編集・取材:眞田幸剛、文:佐藤瑞恵、撮影:齊木恵太)

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