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次世代の産業を生み出せ!“愛知県が仕掛ける”全国のスタートアップとのオープンイノベーション

次世代の産業を生み出せ!“愛知県が仕掛ける”全国のスタートアップとのオープンイノベーション

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全国のスタートアップと愛知県に拠点を置く企業を結び付け、新たな価値の創出を狙うビジネスマッチングプログラム『AICHI MATCHING(あいちマッチング)2022』。愛知県が主催する同プログラムは2019年から実施され、2022年で4回目を迎える。

今年度は過去最多の21社が参画し、各企業の募集テーマからスタートアップへ求める技術・サービスを「IT」「不動産・インフラ」「エネルギー・環境」「モビリティ」「社会福祉・教育」「飲食」という6つのカテゴリーに分け、エントリー募集を行っている。

愛知県企業が抱える課題解決に向けてよりサポートを行いながら、本年度は“共創の実現”という「成果」に重点を置いたプログラム設計を行った。――これを受け今回、『AICHI MATCHING』の運営を手がける愛知県 スタートアップ推進課の3名にプログラム創設の背景や目的、今年度の特徴などをお聞きした。(聞き手は、『AICHI MATCHING』運営支援を手がけるeiicon company・伊藤達彰<上画像・右>が担当した)

スタートアップエコシステムの創出を目指す

eiicon・伊藤 : まずは『AICHI MATCHING』というプログラムを創設した背景や狙いについて教えてください。あわせて、愛知県が抱えている課題についてもお聞かせいただければと思います。

愛知県・大野氏 : 愛知県は他の地域に先駆けて、スタートアップ支援を積極的に行ってきました。背景には産業構造が大きな転換期を迎えていることがあります。愛知県と言えば自動車を想像する方が少なからずいらっしゃるように、モノづくりが非常に盛んな地域で、1977(昭和52)年から製造品出荷額等は日本一を続けています。

一方で、IoT、AI、ビッグデータなど、デジタル技術の急速な発展による産業構造の変化の波に、自動車をはじめモノづくり産業が飲み込まれようとしている状況です。これからも愛知県が日本、あるいは世界で競争力を維持するためには事業領域の転換が必要不可欠で、新しい時代の流れの中でビジネスチャンスを獲得しなければなりません。

イノベーションの担い手は、やはり斬新なアイデアや技術を持つスタートアップになるだろうと、2018年から県内での活躍や成長をバックアップしてきました。『AICHI MATCHING』はその一環で、全国のスタートアップと愛知県に拠点を置く企業とのマッチング、新たな価値の創出を目指しています。


▲愛知県 経済産業局 革新事業創造部 スタートアップ推進課 創出・成長支援グループ 主事 大野雅史 氏

eiicon・伊藤 : スタートアップの活躍に期待するところが非常に大きいのですね。

愛知県・大野氏 : はい。愛知県はスタートアップが自発的に創出、育成されるエコシステムの形成に向けて、名古屋市などさまざまな自治体・行政機関、民間企業と連携して地域一丸となっています。世界的に見ても優位性のあるモノづくり企業とスタートアップが双方向から有機的に結びつくことを狙いとしています。

『AICHI MATCHING』を通じオープンイノベーションに取り組むことで、既存事業が強化されたり、新規事業が創出されたり、ゆくゆくは新しい事業の柱となる事業が生み出されたりすることに期待を寄せています。さらに、新規事業からスピンアウト、カーブアウトし、また新しいスタートアップが生まれれば理想的です。「愛知県は世界的な事業会社と連携できるエリア」との認識が、スタートアップに広まればと思っています。

eiicon・伊藤 : 今年度の『AICHI MATCHING』では、愛知県企業が21社参画しているとお聞きしています。どのような企業が連携を求めているでしょうか。

愛知県・大野氏 : 東海旅客鉄道(JR東海)さん、名古屋鉄道さん、敷島製パンさんをはじめとした大手企業から、アラキ製作所さんや八幡ねじさんなど中小企業と幅広い企業にご参画いただいています。昨年度より引き続き、トヨタ自動車さん、新日本法規出版さん、日本特殊陶業さんほか、初参加企業のサーラコーポレーションさん、小島プレスさんなども加わり、過去最多の21社の愛知県企業が揃いました。

募集テーマに関しても、Web3.0 などデジタルに関する提案を求めているケースもあれば、検査機器開発などアナログの技術に関するものもあります。その意味で、幅広いスタートアップの方が、持ち前の技術やアイデアを活かせます。

愛知県・千種氏 : 昨年度からeiiconさんに協力をいただき、より多くの方にPRできました。このため、大手企業の参画が目立っています。この機運が、「Tier1」のみならず、「Tier2」・「Tier3」(※)の県内企業にも広まればと思っています。

※Tier1とは完成車メーカーに直接部品を供給するメーカーを意味する。またTier1メーカーに部品を供給する企業のことをTier2という。


▲愛知県 経済産業局 スタートアップ推進課 創出・育成支援グループ 主事 千種杏奈 氏

過去3年間で、生まれた共創実績

eiicon・伊藤 : どのような共創が生まれたのでしょうか。

愛知県・嵯峨﨑氏 : 例えば、「職人握り寿司居酒屋 や台ずし」などを展開するヨシックスホールディングスさんと、店舗向けミニアプリプラットフォームを展開するスタートアップ・トイポさんが、「飲食店舗への来店・リピーター増をデジタルで効率よく増やす」という実証実験に取り組みました。

トイポさんは福岡市に本社を構えていますが、現在は愛知県内でも活動を広げています。これは、県内の事業会社が県外のスタートアップに実証実験の場を提供するという観点で、あいちマッチングの象徴的な共創事例ではないかと捉えています。


▲愛知県 経済産業局 革新事業創造部 スタートアップ推進課 創出・成長支援グループ 嵯峨﨑隼大 氏

愛知県・大野氏 : また、自動車関連の試作や金型製作を行うユーアイ精機さんは、エスケアさんが開発した手順書をナビ化するアプリを活用し、技能伝承についての実証実験を行っています。

他にも法規関係書籍を中⼼とした出版事業を展開する新日本法規出版さんがオンライン紛争解決サービス「Teuchi」を展開するミドルマンさんに出資したケースなどがあり、多種多様な成果が生まれています。

eiicon・伊藤 : 参加した愛知県企業・スタートアップ共に8割以上が『AICHI MATCHING』に満足したという結果も出ています。

愛知県・千種氏 : おかげさまで愛知県企業・スタートアップともに「参加して良かった」という声を多くいただいています。また、県外のスタートアップが当プログラムへの参加をきっかけに、愛知県が手がけるスタートアップの支援拠点「PRE-STATION Ai」への入居も増えています。このことも非常に大きな成果だと考えらえます。

愛知県・嵯峨﨑氏 : オープンイノベーションを成功に導く重要なポイントとして、事業会社側のコミットが挙げられます。事業会社の担当者に対しては、テーマ決めから協業の進め方まで、運営支援を手がけるeiicon companyさんの手厚いサポートがあり、スタートアップと事業会社、双方にとってオープンイノベーションが進めやすい環境を築いていただいています。技術やアイデアはあるが具体的にどのように活かせるか分からないというスタートアップにとっても、テーマや分野に興味があれば参加してみる価値は十分にあるはずです。

具体的な成果創出のためハンズオン支援を行うなど、体制をより強化

eiicon・伊藤 : 今年度の『AICHI MATCHING』で変更点などはあるでしょうか。

愛知県・大野氏 : 昨年度までは年2回の商談会を実施し、プログラム名の通りマッチングに主眼を置いていました。しかし、今年度は商談会を年1回とし、マッチングしたスタートアップと事業会社、それぞれに対してアクセラレーションの支援をすることに力を入れています。マッチングにとどまらず、プロダクトの作成や実証実験の実施など、より具体的な成果を創出することが狙いです。eiicon companyさんと愛知県でハンズオン支援を行います。

また、昨年度までは愛知県に本社を置くことが、事業会社側の参加条件でした。しかし、本年度は、本社はなくても事業所があれば良いと条件を緩和し、その結果、三菱電機さん、菱電商事さんに参画いただいています。スタートアップとしてはより多くの企業と協業するチャンスが広がっています。

eiicon・伊藤 : 最後に、愛知県が描く未来像をお聞かせいただければと思います。

愛知県・大野氏 : 愛知県は産業構造の変化に対応すべく、2018年からスタートアップの育成に力を入れ、エコシステムの構築を試みてきました。先ほど、千種が言及した「PRE-STATION Ai」は、2024年に名古屋市鶴舞公園の南側にオープンを予定している、日本最大級のスタートアップ支援拠点「STATION Ai」につながる施設です。「STATION Ai」はスタートアップ支援の中核的な取り組みと言えるでしょう。

『AICHI MATCHING』への参画をきっかけに、スタートアップはもちろんのこと、事業会社にも入居いただければと考えています。事業会社とスタートアップが活発にコミュニケーションを取り、オープンイノベーションや新規事業の創出が継続的に実現される。愛知県がそうした場所になればと思っています。

説明会には多くのスタートアップが参加、ネットワーキングも同時開催

9月14日には、バーチャルイベント会場oVice(オヴィス)にて「AICHI MATCHING 2022」プログラム説明会が開催された。当日は、愛知県企業21社が募集テーマについて説明。さらには説明会と同時開催でネットワーキングイベントも実施され、スタートアップとの交流が生まれた。


※『AICHI MATCHING』に参画している愛知県企業21社

……株式会社アラキ製作所、株式会社MTG、株式会社東海モデル、トヨタ自動車株式会社、日本エコシステム株式会社、日本特殊陶業株式会社、日立チャネルソリューションズ株式会社、株式会社FUJI、三菱電機株式会社、サーラコーポレーション株式会社、東海旅客鉄道株式会社、名古屋鉄道株式会社、小島プレス工業株式会社、八洲建設株式会社、菱電商事株式会社、豊田通商株式会社、株式会社八幡ねじ、株式会社アルタ、新日本法規出版株式会社、敷島製パン株式会社、株式会社ヨシックスホールディングス(順不同・敬称略)

取材後記

愛知県は、イノベーションが起こり続ける街になるべく、2018年という早い段階からスタートアップ支援を積極的に行ってきた。『AICHI MATCHING』もその一環であり、実績は豊富で支援内容が充実しているのが特徴と言える。さらには2024年開業予定の日本最大級のスタートアップ支援拠点「STATION Ai」への入居につなげたいとの狙いもある。スタートアップにとっては、新しい価値の創出にチャレンジし続けられる理想の場と言えるのではないか。

『AICHI MATCHING』は意欲的にスタートアップの参加を呼び掛けている。現状では自社の技術やアイデアがどのように活かされるか不明でも、思いがけない成果を生み出すことは多々ある。少しでも興味を持ったら、まずは応募を検討してほしい。

※プログラムの詳細や応募は以下URLをご覧ください。

https://eiicon.net/about/aichimatching2022/

(編集・取材:眞田幸剛、文:中谷藤士、撮影:加藤武俊)

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