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「地方で成功するのは決して難しくない」地域イノベーションの可能性を語る PwC×西村教授による特別対談

「地方で成功するのは決して難しくない」地域イノベーションの可能性を語る PwC×西村教授による特別対談

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人口が都市部に流れ、衰退していく地方。しかし、そんな地方においても地域の特性を活かしてイノベーションを起こすべく活動している企業や個人は少なくありません。

「地方で成功するのは決して難しくない」そう語るのは、これまで数々の地方経営者たちを成功に導いてきた三重大学大学院の西村訓弘教授。三重県で始めた取り組みは、今や全国各地へと広がりを見せています。

この度TOMORUBAでは、同じく地域イノベーションを促進してきたPwCコンサルティング合同会社の鐘ヶ江靖史氏と西村教授の対談を実現。これから地域イノベーションを促進させるためには何が必要なのか、地方にどのような可能性があるのか議論した様子をお届けします。

両者が地域イノベーションに関わるようになった背景とは

まずは西村教授が地域イノベーションに携わるようになった経緯を聞かせてください。

西村氏:私は筑波大学で応用微生物学の研究をしており、新卒で入社した会社でも微生物を用いた物質生産の仕事をしていました。その後、アメリカの大学で遺伝子工学を研究し、現地企業で研究員として働いたこともあります。その経験を足掛かりに、2000年に北大の教授とバイオベンチャーを立ち上げました。


CEOとして経営もしていたのですが、資金調達したVCと経営方針で折り合いがつかなくなり、会社を去ることにしました。同時に家庭の事情で実家がある三重に帰らざるを得なくなったため、しばらくのんびり過ごそうと思っていたのです。しかし、そんな時に声をかけてくれたのが非常勤の産学連携コーディネーター(肩書は特命教授)を探していた三重大学。

最初は特命教授として医学部の研究成果を社会還元する仕事を始めたのですが、徐々に様々な仕事を任されるようになり、正式な教授となってからは、大学全体の社会連携の仕事を担当し、地域の中小企業の社長と会う機会が増えていきました。そのうち社長たちを集めて勉強会を開くようになったのが、地域イノベーションに携わるようになったきっかけです。

勉強会に参加した企業の業績が次々と上がったことで、大学に地域イノベーション学研究科をつくり、本格的に活動を始めたのです。

鐘ヶ江さんが地域イノベーションの仕事をするようになったきっかけはいかがでしょうか?

鐘ヶ江氏:私が地域イノベーションに携わるようになったのは、文部科学省で研究者として働いていた時のことです。当時は地方大学の産学連携部門から、「優秀な博士号取得者や人材がいても地域にとどまらず、地方の課題が解決されない」という悩みを聞いていました。


当時はその悩みを解決することができず、民間企業に転職した後に地方企業の事業化に向けた実態把握や伴走支援を本格的に実施するようになりました。そこで感じたのは、地方の企業の研究・技術、人材や知恵を既存の枠組みに縛られずに活用できれば、新しいビジネスチャンスがあるということ。地域の資源や企業の技術を別の地域や業界に活用することで、より事業が広がっていくと思ったのです。

世の中にも業界や地域を超えて企業を繋げる仕組みができ始め、地域イノベーションの成功事例は徐々に現れ始めました。一方で、成功事例があっても単発になってしまい、次のイノベーションに還元する仕組みがないことに課題を感じ始めたのです。そこで今は、これまでの地域イノベーションの事例をいかに次のイノベーションに活用できるか、そのスキームや仕組みづくりに取り掛かっているところです。

「ノウハウや事例が積み上がっていない」地方の課題に対する両者の取り組み

地域イノベーションを活性化していくにあたって、日本が抱えている課題について聞かせてください。

西村氏:先程、鐘ヶ江さんが言っていたように、地域イノベーションのノウハウが統合されていないことです。今では様々な地域でイノベーションを生み出すための取り組みが活発になってきました。そのような流れは喜ばしいことですが、一方で、他の地域や業界の事例が参考にされていないのは非効率です。

Aの地域の取り組みがあるなら、Bの地域はそれを改良すればいいですし、Cの地域はそれをさらに改良すればいい。そのように積み重ねていけば、日本の地域イノベーションはもっと加速されますし、世界に打って出る企業も出てくると思います。

なぜイノベーションのノウハウが統合されてこなかったのでしょうか?

西村氏:その背景には封建主義時代の名残があると思っています。昔は集落ごとに領主から土地を借りて作物を作っていましたよね。そうすると、集落での繋がりが強くなるぶん、他の集落への関心が薄れ視野が狭くなってしまいます。

その名残から、今でも地域ごとの結束が強い一方で、他の地域や業界に目が向かなくなっているのではないでしょうか。しかし、最近はそのような価値観も薄れつつあり、徐々に民主的な考え方にシフトしつつある印象があります。

古い文化や考え方を否定するわけではありませんが、時代に合わせて新しい考え方を取り入れなければイノベーションは生まれません。今は地方が変わりつつある過渡期だと捉えています。

鐘ヶ江氏:地方が変わりつつあるのは、様々なタイミングや機会が重なったからだと考えています。世代交代をした若い経営者たちが、ITツールを使った業務の効率化や、自社の持つ資源を横展開した新規事業の検討など、イノベーション創出に向けて他の地域や業界の経営者とも交流する機会が増えてきました。

そのような流れは今後さらに加速していくはずです。

そのような流れの中で、PwCとしてどのように動いていくのか教えてください。

鐘ヶ江氏:私たちは、先駆的な取り組みが地域で閉じることないよう、地域内での広がりや地域間での結合をつくりだすためのハブとしての存在にならなければいけないと思っています。一つひとつの企業を支援してイノベーションを起こすこともできますが、それだけでは時間がかかり、劇的な変化は起こりません。


一つの事例を他の地域・業界に還元することで、次の100のイノベーションに繋げる。そのような仕組みをつくり、日本全体としての取り組みへと繋げていくのが、私たちの仕事だと考えています。

西村氏:それはいい取り組みですね。私も三重県で成功した取り組みを、今は他の地域にも広げるようになりました。先日も青森まで行って、現地の経営者たちと議論してきましたし、様々な地域からお声がけを頂いています。

イノベーションの鍵となる「プロ意識」を身につけるには

西村教授は地方の経営者にどのようなことを伝えているのでしょうか?

西村氏:私はノウハウを伝えるのではなく、雰囲気づくりをしています。どんなにいいノウハウを伝えても、経営者たちの意識が変わらなければ成功しません。これまで過去の経験に頼って経営してきた経営者たちに、本気でイノベーションを起こす覚悟をしてもらう必要があるのです。

そのため、時にシビアなフィードバックをしながら、経営者たちの意識を変えていきます。精神論に聞こえるかもしれませんが、本気になった経営者たちは自ら考え行動するようになるので、自然と業績も上がっていくのです。

鐘ヶ江氏:たしかにノウハウは重要ですが、それを誰が使うかで結果は大きく変わりますよね。同じことを教えても、覚悟して取り組んでいる人は成果を出せますが、なんとなくやっている人は成果が出ないこともあります。

マインドセットが大事というのは私も同感です。

イノベーションを成功させるために、どのようなマインドセットが必要なのか聞かせてください。

西村氏:大事なのはプロフェッショナルマインドです。80点で妥協するのではなく、100点以上のものを作り出すという心意気ですね。日本が「失われた30年」と言われる背景には、このプロ意識の喪失があると思っています。


たとえば地方の特産品を企画する際に、安易に「ジャムを作ろう」と考えるのは80点。すでに市場にある商品を後追いするだけなので、商品として売れたとしても、イノベーションは起きません。新しいものを作るには、妥協せずに本気で考え抜かなければならないのです。

どうすればプロ意識が身につくのでしょうか?

西村氏:私のゼミでは集まった経営者に自分のビジネスをプレゼンしてもらい、私がファシリテートすることで参加者との間で本気の議論をしてもらうんです。それに対して「知りませんでした」「不得意なので」は通用しません。ビジネスに必要ならプロを呼んででも学ぶのがプロ意識。

そのようなやりとりを通して、自分の甘さに気づいたり、逆に自分では気づいていなかった価値に気づいたりしていくのです。半年後に再び集まった時は、みんなプロの顔つきになって帰ってきますね。

なぜ半年ほどでプロ意識を身につけられるのでしょうか?

西村氏:甘えがなくなるからだと思います。近年は補助金などの支援制度が充実したことで、会社を存続させることが以前よりも難しくなくなり、経営者にも甘えが生じているようにも感じます。単に会社を存続させるだけでなく、イノベーションを起こそうとする人たちに触発されることで、その甘えがなくなるのではないでしょうか。

加えて「地方だから頑張っても仕方ない」という負け犬根性が払拭されるのも大きな要因だと思います。地方にいながらイノベーションを起こしている事例を実際に見ることで「自分にもできるかも」と前向きな姿勢になり、それがプロ意識にも繋がるのではないでしょうか。

私から見れば、むしろ地方のほうが資源が豊富でライバルも少なく、都会よりも成功できる確率は高いとすら思っています。その価値に気づくために本気で学べるか、自分を磨いていけるかがイノベーションの鍵になるはずです。

鐘ヶ江氏:プロ意識の高い経営者は、自分の専門領域外のことも学んでいますよね。だからこそ、次々にビジネスチャンスを見つけてはイノベーションを生み出しています。

自分の専門領域について詳しいのは当たり前。幅広い領域に目を向けて学べるかどうかが、一流と二流の差だと思います。

コンサルタントや大学が地域イノベーションの実現に力を発揮する

西村教授はPwCコンサルティングのようなコンサルティングファームにどのような役割を期待されますか? 

西村氏:地域イノベーションに必要なノウハウやマインドを、効率的に全国に広めていけると思います。これまで私は三重でやってきた方法を青森や宇都宮でも展開してきましたが、どうしても私の属人的な力に依存してしまいます。

コンサルティングファームなら、そうした属人的な方法をしっかりコンテンツ化して、システマティックに広めていけるのではないでしょうか。それができればもっと効率的に地域イノベーションを促進できると思います。

たとえば、私は最近では「社長100人博士化計画」というプロジェクトを進めており、社長に自分の事業を題材にしてPh.D(博士号)をとってもらうんです。博士号をとるには真理を追求しなければならないので、その過程で考え方の視座が一段も二段も上がります。そういったプロジェクトもコンサルティングの手法を活用してシステマティックに広めていけるといいですね。

鐘ヶ江さんはコンサルタントとしてどんなことができると思いますか?

鐘ヶ江氏:私も西村教授と同じことを考えていました。さまざまな地域に拠点を作って展開できるので、一カ所でのプロジェクトやノウハウを全国に広げていけるのではないかと考えています。たとえば地方には「会社を継いだけど、何をしていいかわからない」とモヤモヤしている二代目社長も少なくありません。

そのような経営者たちに対して有用なコンテンツや仕組みを提供していきたいですし、同じような課題を持っている地域を繋げて新しいものを生み出していければと思います。

最後に、これから地域イノベーションを生み出していきたいと考えている企業に対してメッセージをお願いします。

鐘ヶ江氏:一つは、地方大学などの地域に根付いた機関をもっと活用したほうがよいということです。企業からすると、大学に相談するのはハードルが高く感じられるかもしれませんが、企業からの相談を快く受け入れてくれる研究者は多いかと思います。「一緒にこの問題を解決してくれませんか」と相談すれば、きっと力になってくれると思うので、もっと気軽に相談してみるとよいのではないかと思います。

もう一つは、新しいものを生み出すために、必ずしもこれまでの蓄積を捨てる必要はないということ。古いものは淘汰されるイメージがどうしても強いですが、アイデア一つで今の時代に活きるものはたくさんあります。

自分たちが蓄積してきたものを、次の時代にどのように活用すべきか。それは大学でもいいですし、私たちのようなコンサルタントでもいいのでぜひ相談してください。私たちも一緒に新しい価値を作っていきたいと思っています。

西村氏:鐘ヶ江さんの言うように、大学の先生をぜひ使いこなしてください。先生たちの武器は専門知識ではなく、問題を解くための「考える力」です。そのため、持っている知識を教えてもらうのではなく、一緒に考えてもらうスタンスで依頼すれば、いい関係が築けると思います。

そういった、共に考える力を持つのが一流の先生たち。ぜひ一流の先生を探して、一緒に新しい価値を生み出していってほしいと思います。

イノベーションを起こすのに、今ほど面白い時代はありません。SNSを使えば誰だって世界に発信して戦える。実力さえあれば、誰だって大谷選手のように世界を舞台に活躍するのも夢ではありません。本当の意味で自分の実力が試せる面白くも厳しい時代なので、自分を磨いて突き抜けてほしいと思います。


(取材・文:鈴木光平、撮影:齊木恵太)

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