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カーボンニュートラル・エシカル領域で共創プロジェクトに挑む!富士通の新事業ブランド「Fujitsu Uvance」が本格稼働。パートナー企業と描く未来像とは?

カーボンニュートラル・エシカル領域で共創プロジェクトに挑む!富士通の新事業ブランド「Fujitsu Uvance」が本格稼働。パートナー企業と描く未来像とは?

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2021年10月、富士通株式会社(以下、富士通)が、新事業ブランド「Fujitsu Uvance(フジツウ ユーバンス)」を発表した。Uvanceには、“あらゆる(Universal)ものをサステナブルな方向に前進(Advance)させる”という、同社の決意が込められているそうだ。

この新事業ブランドを冠した共創プロジェクトが始まる。「Fujitsu Uvance」のもと、ビジネス変革と持続可能な社会の実現の両立を目指す取り組みだ。募集テーマは「カーボンニュートラル/エシカル」。生活者や生産者の視点から、環境問題の解決にアプローチするという。

富士通はすでに「FUJITSU ACCELERATOR」を推進しているが、今回新しく「Trusted Society」に特化した活動を立ち上げる。今回は、プロジェクトを管掌する神氏や事務局メンバーにインタビューを実施。富士通がこのテーマに挑戦する意図や募集テーマの背景にある考え、共創イメージ、提供リソースなどについて話を伺った。

サステナブルな世界の実現に向けて、富士通が一歩を踏み出す「Fujitsu Uvance」とは

――最初に、サステナブルな世界の実現を目指す新事業ブランド「Fujitsu Uvance(フジツウ ユーバンス)」設立の背景についてお伺いしたいです。

神氏: 1935年に設立された富士通は、今年で87周年を迎えます。設立から現在に至るまで、会社自体が大きく変化を遂げてきました。通信機事業で始まり、半導体の全盛期には世界トップ5に入るレベルにまで成長。その後、ハードウェア全盛期にはパソコンやスマートフォンの製造も行い、徐々にSIerへとシフトしてきました。そして今回の大きな変化というのが、まさに「Fujitsu Uvance」なのです。


▲富士通株式会社 神俊一氏

――「Fujitsu Uvance」の全体像について教えてください。

神氏: 「Fujitsu Uvance」とは、社会課題の解決や個人・会社の持つパーパス実現に向け、富士通が一歩踏み出すという決意を表すブランドで、2021年10月に始動しました。2030年を見据え、さまざまな社会課題に対して今から備え、ビジネス化していくことを目指しています。

とくに、社会課題の解決とビジネスを両立させることが、非常に重要だと捉えています。なぜなら、ビジネスとして成立しなければ、社会課題へのアプローチが継続できないからです。この両立に向けての一歩を富士通が踏み出す。これが「Fujitsu Uvance」です。

――7つの重点注力分野で構成されているFujitsu Uvanceですが、今回は「Trusted Society」にフォーカスして共創パートナーを募集されます。Trusted Societyの位置づけについて教えてください。

神氏: 「Trusted Society」は、安心・安全でレジリエントな社会づくりを目指すセグメントです。ここでは国・自治体・市民など公共的なところも含めて、信頼のできる社会を構築していくためには、どういう社会課題を解決する必要があるのかを考えます。社会課題の解決に向けて、富士通では8月より新組織を発足し、TrustedSocietyの実現を目指したオファリング創出の取り組みを加速していきます。


▲「Fujitsu Uvance」を構成する7つのKey Focus Areas(重点注力分野)。4つのVertical Areasと3つのHorizontal Areasから成る。

――なぜ、今回オープンイノベーションに取り組もうとお考えになったのでしょうか。

神氏: 従来、富士通はコアとなるテクノロジーがあり、そこからビジネスソリューションへと広げてきました。この方法は私たちにとって非常に進めやすく、心地のよいものでもありました。しかし今回の「Fujitsu Uvance」では、まったく違うベクトルで動きます。どういうことかというと、2030年の社会課題を予測し、今、何をすべきなのか、そのために必要な技術は何なのかを考えるのです。

――従来のようにコア技術から広げるのではなく、社会課題から逆算するということですか。

神氏: そうです。社会課題から考えるためには、外部から持ってくる活動が重要となるでしょう。外部というのは、富士通社内ではなく多様な考え方・パーパスを持っている人たちのことです。その人たちの力をお借りして、富士通も一緒になってCo-Creation(共創)していくことが必要だと考え、オープンイノベーションに取り組むことにしました。

――今回のプロジェクトを通じて実現したい世界観についてお聞かせください。

神氏: 富士通だけの成長を目指すのではなく、外部の人たちと一緒になって新しい市場を構築し、それが社会課題の解決につながり、パートナー企業や富士通のビジネスとしても成立する。日本で成功したものが、アジアへと広がり世界にも拡大し、よりWin-Winが大きくなる。こうした世界観を描いています。富士通と一緒に社会課題の解決に向けて、一歩踏み出してくれる人たちと、本取り組みを通じて出会えることに期待しています。

「1人の100歩より、100人の1歩」を目指して。生活者の行動変容を促し、環境問題の解決を図る

続いて、今回の共創プロジェクトをリードする三好氏、吉川氏、百田氏に募集テーマの背景にある考えや共創パートナー像、提供できるリソースについて話を伺った。

――Trusted Society(安心・安全でレジリエントな社会づくり)のセグメントのなかでも、今回は「カーボンニュートラル・エシカル領域」に焦点をあて、共創パートナーを募集しています。その背景と目的について教えてください。

吉川氏: 「Fujitsu Uvance」では、社会課題に貢献できる新しい事業の創出を目指しています。今、最も大きな社会課題のひとつが、地球温暖化への対策やカーボンニュートラルの実現です。この課題解決に向けて、化石由来燃料(石炭など)による電力から再生可能エネルギーへの転換が図られています。

再生可能エネルギーへの電源構成の転換は、国や企業が目標を設定して推進されています。私たちが着目したのは、生活者の視点に立ち、生活者の行動変容による温室効果ガス排出量の削減です。生活者の行動を変えることで、環境問題にアプローチできないかと考えています。

――「生活者の行動変容」に着目したきっかけは?

吉川氏: 環境先進国であるEU諸国の事例を調査した結果、1989年からイギリスではエシカル消費という動きが起こり、それが世界に波及していることを知りました。エシカル消費(倫理的消費)とは、人や社会、環境に配慮した消費行動のことです。日本でも広がりをみせていますが、今後、さらにこうした活動が重要になるだろうと考えるようになりました。

今回は、生活者自らが社会課題を考えることで消費行動を変え、社会課題や環境問題に取り組んでいる生産者・事業者を応援するような仕組みを構築したいと思っています。当然、環境意識の高い人は、すでにエシカルな消費行動を実践しています。しかし、そうした一部の人たちだけではなく、大部分の人たちが行動を変えるような仕掛けを、私たちが創出し、1人の100歩より、100人の1歩を目指したいです。


▲富士通株式会社  吉川博和氏

富士通株式会社に入社後、システムエンジニアとして活躍。2011年に事業企画部門へ異動後、主に再生可能エネルギー事業に従事。福島県にて賃貸住宅メーカー様との共創による屋根借り太陽光発電所のプロジェクトを推進するなど、再生可能エネルギーの普及に尽力。

百田氏: 私は今の部署へと異動する前、EVを用いたエネルギーマネジメントを企画・提案する仕事に従事していました。いくつかのサービスを企画していたのですが、様々な苦労に直面し思うようにいきませんでした。最終的に使うのは、生活者であるユーザーなので、使ってもらえないと意味がない。

こうした経験から、やはりユーザー視点に立って、ユーザーの心を動かすサービスを開発する必要があると痛感しました。今回は、ユーザー観点で「環境問題の解決に貢献したい」と思える仕掛けを、しっかりと作り込んでいきたいと思っています。


▲富士通株式会社 百田和憲氏

富士通株式会社に入社後、モビリティ関連ビジネスに従事。移動手段としてのモビリティだけではなく、EVバッテリーや水素などを含めたエネルギーマネジメント全般に関する提案活動を行う。

世界に「エシカル消費」を浸透させる、そのための仕組みを構築

――生活者の行動変容を促すにあたって、解決すべき課題はどのようなものなのでしょうか。

吉川氏: 日本人の多くが関心がない、行動しないのは、「エシカル・社会課題を認知していない」、「何がエシカルなのか分からないから選べない」が主な理由であります。

環境先進国であるEUの例を挙げると、「レインフォレスト・アライアンス認証マーク」のような環境に優しい商品であることを認証する仕組みがあり、生活者も進んで認証されたものを買います。ポイントが付与されるから買うのではなく、環境に優しいものを購入したり、利用することが自分自身の価値として受け止められています。先進国では、子どものころから環境問題に対する教育が行われており、自然環境の変化を身近に感じられていることが背景にあると考えています。

――エシカル消費を促す社会全体の仕組みが、EUではすでに構築されている一方で、日本はまだだということでしょうか。

吉川氏: はい。日本も環境問題に貢献したいと思っている人が、信頼できる商品を購入できたり、行動を起こせたりするような社会システムにしていけたらと考えています。環境に優しい商品は通常の商品よりも高額になりがちですが、その商品の価値を正しく伝え、生活者に納得して購入いただける仕組みが必要と考えています。

また同時に、環境問題に向き合っている生産者の方もいらっしゃいます。そうした方たちの努力が、生活者に伝わるような情報配信の仕組みも構築したいです。

百田氏: 「環境に優しい商品だ」と言われても、疑ってしまう方は多いでしょう。それに対して「なぜこの価格なのか?」「買うことによってどのような価値が生まれるのか?」を、納得感の持てる方法で情報提供したい。そうすることで、購入のハードルを下げ「それなら買う」という行動へとつなげていく。そんなイメージを持っています。

――「エシカルな商品である」という情報を、正しく生活者に届ける仕組みづくりですね。

百田氏: そうです。加えて、ゴミの分別もそうですが、環境に優しい活動は「やらなければならない」という使命感から取り組むといった、少しネガティブな捉えられ方もしています。

それに対して、たとえば地域のみんなで一緒に取り組むだとか、ゲーミフィケーション要素を取り入れて楽しみながら取り組むといった、ポジティブな方向に持っていきたいです。また、富士通はIT企業でもあるので、最新のAI技術やビッグデータの処理技術などを活用していくことも考えています。

――どのようなパートナーと共創していきたいですか。共創パートナー像をお伺いしたいです。

吉川氏: サステナブル経営に関心があり、富士通とよりよい未来に向けて一緒に活動をしてくださる企業と取り組みたいです。なおかつ今回は、生活者の行動変容、それに生産者からの情報発信がポイントなので、既に生活者と接点をお持ちの企業だとスピーディに推進できるかもしれません。企業の規模は問わず、ベンチャーから大企業まで幅広く求めています。

三好氏: 例えば、生活者に関するデータをお持ちの企業と相性がいいかもしれません。あるいは、ゲーミフィケーション要素も取り入れたいと思っているので、ゲーム会社でもいいですね。ゲームを通じて人の行動を変えたり、子ども受けするゲームコンテンツのノウハウをお持ちだったり、そういったパートナー像を持っています。

企画・検討がうまく進めば、一緒に実証実験に取り組む予定です。ですから、実証実験を行えるケイパビリティをお持ちであることが理想です。また、複数社で応募いただいても問題ありません。


▲富士通株式会社 三好健宏氏

前職にて、新事業創出やスマートシティ事業を担当。2022年4月、富士通株式会社に転職後、「Fujitsu Uvance」の「Trusted Society」カテゴリーを牽引。

吉川氏: 学生など若い世代からの応募も大歓迎です。Z世代やミレニアル世代は、我々の世代よりも環境意識が高いですし、10年後、社会・経済をまわしていくことになります。若い世代と構想段階から取り組み、一緒に事業としてマネタイズする方法を考えていくことも視野に入れています。

マーケットリサーチ・最先端技術・資金面でのサポートなど、 万全のプロジェクト推進体制

――共創をするにあたって、御社のどういったリソースを活用できますか。

百田氏: 一緒にビジネスを考えるうえで、そのアイデアが市場に求められているのか、ニーズがあるのか、情報の裏づけが必要になるでしょう。そうした際には、富士通からシンクタンクやリサーチ会社に依頼をし、調査内容を共有することが可能です。


吉川氏: また、富士通社内でモニターを募ることもできます。グローバルで12万人以上の従業員が勤務する会社です。富士通の社員をユーザーと見立てて、何らかの検証を行うこともできると考えています。

三好氏: 加えて、富士通は交通・物流・エネルギー・ヘルスケアなど幅広い領域にまたがる多彩な技術を有しています。一方で、私たちが使いきれてない技術も数多くある。外部の人たちから見て活用できそうな技術があれば、検討のうえ提供していく考えです。

――ITやデータの利活用においても、御社は長けておられますね。

吉川氏: 共創を通じて何らかの仕組みが構築できれば、そこにデータや情報が集まってくるようになるはずです。その情報を価値に変えることにも、本プロジェクトでは挑戦したいと考えています。

社内には、そうしたデータの利活用において使える技術が豊富にあります。

――御社は海外でも事業を展開されています。今回の取り組みを通じて生まれたビジネスモデルを、海外へと広げていくことも視野に入れておられるのでしょうか。

吉川氏: もちろんです。むしろ、環境先進国であるイギリスやスウェーデン、アメリカのZ世代・ミレニアル世代をターゲットにサービス開発を行ったほうがよいのではないか、とさえ考えています。なぜなら、日本はどちらかというと環境後進国であり、エシカル消費が社会に浸透するのは、5年先・10年先になるかもしれない。

ですから、実証も日本にこだわっているわけではなく、EUから開始することも可能です。進めやすいのは日本ですが、グローバル規模でビジネスを検討していきたいと思っています。


三好氏: 「Fujitsu Uvance」自体もグローバルな活動で、多くの海外のメンバーやパートナーと取り組んでいます。ですから、この取り組みも日本だけにとどまるものではありません。海外に展開したいという企業も歓迎します。

――社内のプロジェクト推進体制や、実証費用のサポートについてもお聞かせください。

三好氏: 吉川と百田が一緒にビジネスプランニングを担います。加えて内容によっては、エンジニアやサービスプランニングに長けたメンバーなど、他のセクションの協力を求めることもできます。年度内に何かしらローンチできるように、スピード感を持って取り組んでいく方針です。

――最後に、応募を検討する方たちに向けて一言メッセージをお願いします。

吉川氏: 繰り返しになりますが、生活者の行動変容を促す仕組みづくりに挑戦したいと考えています。そして、実現に向けた斬新なアイデアをお待ちしています。未来の子どもたちに持続可能な社会を残せるような取り組みを、私たちと一緒に実現しましょう。

百田氏: 富士通は多様な技術を持っていて、色々な取り組みが実現できそうではあるものの、技術を使いこなしきれていません。富士通社内のバイアスではないですが、発想がどうしても凝り固まってしまい、現実的なアイデアになりがちです。そういった意味では、外部から新しい刺激を受けて、他社から見た富士通の良さを再発見できるような取り組みに発展させていけたらと思っています。

三好氏: イノベーションと聞くと一見難しく考えがちですが、少し工夫するだけで全く違ったアイデアが産まれることもあります。難しい部分は富士通が尽力します。世の中でしっかり機能するアイデアや工夫などをお持ちであれば、気軽に応募していただければと思います。

取材後記

業界最大規模のSIerとして、国内はもとより海外でも名を馳せてきた富士通。昨今は法人向けのビジネスを中心としてきたが、今回「Fujitsu Uvance」の一環として取り組む本プロジェクトでは、生活者や生産者に焦点をあてる。それも、消費活動の根底にある考え方を覆そうとする非常に野心的な挑戦だ。

卓越した技術力を持ち、海外でも高い知名度を誇る富士通と組めば、インパクトのある活動につなげられることは疑いようもない。エシカル商品やサービスに関心がある、あるいはすでに開発・展開中のプロダクトがあるという企業・団体は、ぜひ応募を検討してみてほしい。(プロジェクトの詳細や応募については以下バナーよりご確認ください)


(編集:眞田幸剛、取材・文:林和歌子、撮影:古林洋平)

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