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共創の舞台、第1弾は”別府”!全国のパートナー企業と地域課題解決に挑む、信金中央金庫のイノベーションプロジェクトのテーマと参加メリットとは?

共創の舞台、第1弾は”別府”!全国のパートナー企業と地域課題解決に挑む、信金中央金庫のイノベーションプロジェクトのテーマと参加メリットとは?

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高齢化や過疎化、そしてコロナ禍による観光産業を始めとする経済活動への打撃など、地域社会を取り巻く課題は多い。いま、地域発のイノベーションによる地方創生が待ち望まれている。

そうしたなかでスタートするのが、信金中央金庫のイノベーションプロジェクト「SHINKIN INNOVATION PROJECT」だ。全国254の信用金庫の中央機関である信金中央金庫と、各地域に深く根をおろして地域密着経営を展開する信用金庫が、自治体のネットワークやアセットを活用しながら、「地域企業の経営資源」と「全国の企業の斬新なアイデア・テクノロジー」を掛け合わせ、地域課題の解決に向けて新たな価値・ビジネスを共創するプロジェクトである。

その第一弾が、大分みらい信用金庫の本店所在地である大分県別府市での「SHINKIN INNOVATION PROJECT supported by OITAMIRAI & SCB」だ。同市が抱える課題をふまえ、以下2つのテーマが設定されている。

【テーマ01】 新たなタクシー観光モデルの創出

【テーマ02】 伝統産業「別府竹細工」若手作家が『モノづくりに集中できる』システムの構築

今回、プロジェクトの詳細や解決したい課題、参加するメリットなどについて、信金中央金庫 しんきんイノベーションハブの小出氏、大分みらい信用金庫 地域創生企画部の帆足氏を中心にオンラインで話を伺った。

信用金庫の全国ネットワークを活用したプログラム

――まずは、「SHINKIN INNOVATION PROJECT」立ち上げの背景や目的をお聞かせください。

小出氏 : 信用金庫は、従来から地域密着型の経営を続けています。全国には254の信用金庫が存在しますが、それぞれの信用金庫が、それぞれの地域に根付いた地盤を創り上げ、地域の課題を自治体や企業様、住民の方々と協力して解決し、地域活性化に貢献してきました。

一方で、昨今は人口減少や経済成長の停滞、後継者不足など全国各地に共通する課題がどんどん深刻化し、これまでのように地域内だけで解決することが難しくなっています。信用金庫業界の発展は、地域活性化なくして実現できません。

そこで、信用金庫の全国的なネットワークを活用し、他の地域からの協力もオープンに得られるような新しい切り口で課題を解決していくことを目的に始めるのが、「SHINKIN INNOVATION PROJECT」です。それを、全国の信用金庫の中央機関である信金中央金庫がバックアップしていきます。

――今回、大分みらい信用金庫と共に大分県別府市の地域課題解決を目指すプログラム「SHINKIN INNOVATION PROJECT supported by OITAMIRAI & SCB」がスタートします。なぜ別府から始まることになったのでしょうか。

小出氏 : 別府市においては、信用金庫だけではなく自治体や外郭団体などが協力し、継続的に地方創生活動が実施されていました。観光産業の発展や起業支援などを盛り込んだ「別府ツーリズムバレー構想」はその代表的なものです。そうした取り組みに、大分みらい信用金庫も積極的に参画していたことから、今回別府市から取り組みをスタートさせることになりました。


▲信金中央金庫 しんきんイノベーションハブ 小出誠一氏

日本が誇る温泉地、別府市が抱える課題

――続いて大分みらい信用金庫の帆足さんに伺います。今回のプログラムの舞台となる大分県別府市の現状と課題について教えてください。

帆足氏 : 大きな課題は、観光産業の活性化です。別府というと、温泉というイメージが強いと思います。実際に海あり、山あり、温泉ありという素晴らしい観光資源のある地域なのですが、観光客により多くの付加価値を複合的に提供できていないという課題があります。

コロナ前はインバウンド需要もあり、多くの観光客が訪れていました。しかし、コロナ禍や災害により、海外はもちろん関東・関西などからの宿泊を伴う観光、さらには近隣県からの日帰り旅行者も激減し、観光産業は深刻な打撃を受けています。

この状況は、時間はかかると思いますが、コロナ禍が過ぎれば少しずつ改善の方向に進んでいくと考えています。別府市の観光に関するポテンシャルを考えると、数年後には再び国内外からの観光客は戻ってくることが予想されます。しかしそうなると、今度は「オーバーツーリズム」の課題が起こってしまいます。

これはインバウンド需要が高かったコロナ前にも問題になっていましたが、人気のある観光地や店舗に観光客が集まりすぎて、結果的に別府市全体の消費単価が下がってしまうのです。観光客を別府市内で快適かつ効率的に回遊させるために、より多くの魅力を発信すると同時に、この将来の課題に対しても今から策を講じていく必要があります。



――大分みらい信用金庫は、別府市とはどのような関係性でしょうか。

帆足氏 : 当庫は、別府市に本部を構え、今年の4月に創立100周年を迎えます。小出さんからもお話しがありましたが、「別府ツーリズムバレー構想」は世界に通用する観光産業ビジネスを別府から発信していこうという取り組みで、私たち大分みらい信用金庫も別府ツーリズムバレー構想推進協議会の委員として名を連ねています。

信用金庫は地域の事業者との個社別接点が多いという強みがあります。よって、このようなプロジェクトを通じて得られた知見や様々な効果を地域の事業者様や、自治体様に直接届けることができると思っています。金融という枠を超えて、地域の未来を一緒に創っていく、そして一歩一歩地道な活動を継続していくことこそが、別府という観光地に本社を構える大分みらい信用金庫の大事な使命の一つであると考えています。


▲大分みらい信用金庫 地域創生企画部 副部長 帆足杏一氏

ホスト企業は2社。観光と伝統産業がテーマに

――今回、「SHINKIN INNOVATION PROJECT」では、株式会社IDM別府市竹細工伝統産業会館がホスト企業となっています。それぞれのご紹介と募集内容、課題についてお話しいただけますか?

帆足氏 : まずは、IDM様について紹介します。先ほど、別府市が抱える課題のひとつとして「オーバーツーリズム」を挙げました。コロナ後を見据え、混雑状況を見える化できるような仕組みを作りたいと考えた時に、IT系の企業がいいのではないかという話から、IDM様にホスト企業をお願いすることになりました。

IDM様は別府市にキャンパスがある立命館アジア太平洋大学(APU)卒業生が立ち上げたベンチャー企業です。タブレットで100カ国以上の翻訳を行うインバウンド向け観光アプリ「タブシェルジュ」のほか、観光コンテンツ制作などに強みを持っています。

「タブシェルジュ」については、タクシー業界と実証実験を行ったという実績もあります。また、代表者の方は県外出身ながら別府が好きで「ディープな別府」を伝えたいという想いを持っていらっしゃいます。県外から見た別府という観点も、私たちの課題感に合致していると考えました。



今回は、別府市の観光産業と、衰退しつつあるタクシー産業の活性化を目的に、2つのテーマを掲げています。

1つ目は、ディープな別府をより多くの人に伝えるため、位置情報や個人の趣味嗜好などを基に、地域コンテンツと連携した旅行プランを制作し、タブレット上にパーソナライズした情報を提供する仕組みを作ることです。2つ目は、市営温泉などの日帰り温泉、飲食店の店舗・施設の混雑状況をリアルタイムで把握、その情報をタクシー業界と連携して、よりストレスレスな旅を提供する仕組みを構築することです。

――「ディープな別府」とは?

帆足氏 : 別府は、温泉が有名ですが、実は路地裏のお店など、観光ガイドブックに載っていないようなところが本当に面白くて深い魅力があるんです。美味しいお店も数えきれないくらいたくさんあります。そういう情報も発信しながら、混雑しがちなお店だけではなく、穴場も案内することで、一度の体験では収まらない知られざる別府を体験してもらいたいと考えています。それが、リピーター獲得のきっかけにもなるはずです。

――続いて、別府市竹細工伝統産業会館について紹介をお願いします。

帆足氏 : 大分県が日本一の生産量を誇るマダケと、温泉の掛け合わせで発展した伝統産業が、「別府竹細工」です。江戸時代、別府温泉には全国から湯治客が訪れていました。そこで長期滞在中に使用した飯かごなど竹細工の日用品を、湯治が終わるとお土産として各地に持ち帰るようになったことから、竹細工は拡大しました。

別府市竹細工伝統産業会館は、別府竹細工の中枢機関として、多くの方々に竹細工の魅力を伝えるために開設されました。施設内にはサロン工房があり、「竹の教室」や「後継者育成事業」などを実施し、作業の様子を来館者も見学できるようになっています。

しかしながら昨今、この伝統産業も規模が縮小しつつあります。そこで今回のプロジェクトでは、別府竹細工の知名度向上、若手作家の認知度向上、そして流通システムの構築を実現し、別府が誇る素晴らしい伝統産業を未来につなぐ仕組みを構築したいと考えています。ぜひ、マーケティングに強い企業などとつながり、別府竹細工をリブランディングしていきたいです。



――別府竹細工の若手作家さんは、コンスタントに誕生しているのでしょうか。

帆足氏 : 全国で唯一、竹工芸の技術を習得できる公共の職業訓練施設である大分県立竹工芸訓練センターが別府にあり、毎年新たな作家さんが誕生しています。しかし、別府竹細工のブランド力をさらに向上させなければ、素晴らしい作家さんが生まれたとしても将来になかなかつながらないと思います。だからこそ、今回のプロジェクトでぜひ新たな試みをしていきたいと考えています。

NTT東日本など強力なサポーター企業からのアドバイスを受けられる

――続いて、信金中央金庫の小出さんに伺います。今回のプロジェクトに参加するサポーター企業・メンターの方々の支援内容や、スタートアップに対するメリットについてご説明ください。

小出氏 : 今回、信金中金グループから、信金キャピタル、信金シンガポール、そして提携先からNTT東日本、fabbit、SBIインベストメントがサポーターとして参加します。インキュベーション期ではこのような企業からアドバイスを受けながら、事業モデルの構築を進められることが、大きなメリットです。このメリットを余すことなくご活用いただけるよう、私たちがサポートしていきたいと考えています。

また、何をするにも先行投資が必要です。3カ月程度のインキュベーション期間を設ける予定ですが、実証実験のためにある程度の費用を主催者側で負担することも想定しています。

さらに最終的に連携決定まで至らなかった場合でも、事業内容によっては本中金がコネクションのあるVCにお繋ぎしたり、NTT東日本とのマッチングの機会を提供したりすることも可能です。NTT東日本とはしんきんイノベーションハブ(※)の施策で深いつながりがあり、今回も相談したところ、NTT東日本でもオープンイノベーションに関するノウハウがあるため、お力添えを頂けるとのお返事をいただきました。

※しんきんイノベーションハブ……信用金庫業界におけるデジタライゼーションのさらなる促進を目的に、2020年4月に設立された拠点。

――大分みらい信用金庫から見た、信金中央金庫への期待などをお聞かせください。

帆足氏 : 全国の信用金庫の様々な相談にのってくださるコンサルティング集団で、中央という立場にありながら、私たちと同じくらいの熱量で地域のことを考えてくださるんです。こちらから質問して相談にのってくださるだけではなく、信金中央金庫さんから面白い企画をして声を掛けてくださります。クールな頭脳、熱い志、そしてクリエイティブな発想を持つ、とても頼もしい存在です。

――全国に先駆け、「SHINKIN INNOVATION PROJECT」の第一弾を大分別府市でスタートする意気込みについても、ぜひお聞かせください。 

帆足氏 : まず、今回のプロジェクトでは、皆様のご支援のもと、テーマとなっている地域課題解決に全力でチャレンジしたいと思っています。そして、今回の事業をぜひ横展開していきたいと考えています。今回のプロジェクトで提示しているテーマや課題を抱えている地域は、別府市だけではないと思います。

NTT東日本をはじめ錚々たるサポート企業に参画いただくからには、そこから多くの知見を得るとともに、私たちのタッチポイントの多さを活かして、よりよく展開していけるようにしていこうと考えています。せっかくご応募いただき、何度も話し合いをするからには、必ず結果を出し、永続的に続けていけるものにしたいと考えています。


将来的には、多様な組織が共創できるサンドボックス環境をつくる

――「しんきんサンドボックス」の世界観や今後の展開についてご紹介をお願いいたします。

小出氏 : 将来的に、スタートアップ企業や大手企業といった業界外の様々な組織と、信用金庫業界が”いつでも””すぐに”、”実験的に”共創できるようなサンドボックス環境をつくっていきたいと思っています。

新しいことを立ち上げるには、相応の労力や関係各所との調整が必要となるため、なかなか手を付けにくいイメージがあるかもしれません。そこで、今回のプロジェクトのように中央機関が準備することで、一歩踏み出せるはずです。別府市での取り組みをきっかけに、全国各地に広がってもらいたいと考えています。

――最後に、応募を検討する企業に向けてコメントをお願いします。

小出氏 : 今回は、これまでとは異なる新たな切り口でのアプローチを期待しています。サポート企業からのメンタリングはもちろん、応募いただく皆様の力を活かしていただけるよう私たちも精一杯支援をしていきます。別府という限られた地域での取り組みではありますが、可能性を感じていただけたベンチャーやスタートアップには、ぜひ積極的に参加していただきたいですね。

帆足氏 : 私たちにとっても初めての試みであり、非常にワクワクしています。新しい出会いや切り口から生まれる化学反応に大きな期待をしていますし、事業としてしっかりと成立するよう、私たちも覚悟を持って進めて参ります。今回のプロジェクトの結果は、共創する企業側の事業にも関わってきますから、「とりあえずやっちゃえばいい」などといった中途半端な気持ちはまったくありません。ぜひ、スタートアップ企業の皆様の卓越した技術、新しい考え方、アイデアで事業化をしていただきたいです。

――しんきんイノベーションハブを牽引する宮﨑さんからも、一言いただきたいです。

宮﨑氏 : 今回は大分みらい信金と共に、別府市の課題解決に向けた取組みですが、同じような課題を抱える地域は、日本全国にまだまだあると思っています。今回のプログラムをきっかけに、地域における課題を解決しつつ、それをビジネスとしても横展開し、企業の成長にもつながる新しい仕組みを作っていきたいと思っています。今回のプログラムはその最初の取り組みとなるため、日本の課題を地域から変えていこうと思っている企業に、ぜひ応募していただきたいです。


▲信金中央金庫 しんきんイノベーションハブ センター長 宮﨑崇氏

取材後記

「私たち信用金庫は、金融というカネの融通だけではなく、人や知恵も融通したいと、日頃から考えています」――インタビュー中に帆足氏が語った言葉が印象的だった。地域に根差し、企業や自治体と深いつながりを持つ信用金庫だからこそ、今回のプロジェクトでは心強い存在になるだろう。

観光や伝統工芸に関わる課題は、別府市のみならず全国各地に共通しているはずだ。今回のプロジェクトで事業が形になれば、信金中央金庫のネットワークを活用して全国各地に展開することも期待できる。興味のある方は、ぜひ応募を検討していただきたい。

(編集:眞田幸剛、取材・文:佐藤瑞恵)


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  • 富田 直

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