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【地域×デジタル】水戸・秩父の地域課題解決を目指すプロジェクト――担当者に聞く、「成果につなげる共創パートナーを見つける」 には?

【地域×デジタル】水戸・秩父の地域課題解決を目指すプロジェクト――担当者に聞く、「成果につなげる共創パートナーを見つける」 には?

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地域におけるリアルな課題をさらけ出し、解決方法をオープンに募ることで、数多くの出会いにつながったプロジェクトがあるーー。

経済産業省 関東経済産業局とeiicon companyがタッグを組み、2021年12月から始動した共創プロジェクト「LOCAL DIGITAL INNOVATION PROJECT」(ローカル デジタル イノベーション プロジェクト)。

コロナ禍によりデジタル化が加速する一方で、首都圏に比べ地域ではその推進がいまだ限定的である。地域における業界特有の課題を、デジタルをかけあわせて課題解決に繋げられないか。そんな思いで始動したプロジェクト。

これは、観光/産業の軸から地域活性化を目指すパートナーと、新たなアイデアやデジタルソリューションを掛け合わせ、地域のイノベーションを創出するのが目的だ。関東経済産業局が主催し、eiicon companyが全面的に支援する。本プロジェクトで生まれたイノベーション事例をモデルケースとして、業界・地域のアップデートへつなげたい狙いがある。

今回は、水戸市の「好文café」と秩父市の「秩父地場産センターを舞台に、各地域の課題解決を目指す。2021年末から2022年1月にかけて共創パートナーを募ったところ、約60件近くの応募があった。3月中旬現在は、応募企業との面談を経て共創パートナーを選定し、まさにこれから課題解決に向けた検証を行っていくフェーズだ。

「好文café」のテーマは「水戸市の観光・ヘルスケアに繋がるDX」で、健康数値を可視化するテクノロジーを持つ北海道のTazawa Co.,Ltdとの共創を検討している。一方、「地域産業・秩父の街を盛り上げるためのDX」をテーマとする「秩父地場産センター」は、サービスロボットのローカライズとグロース支援を行うIGP ROBOTICS株式会社との共創を検討中だ。

採択されたビジネスアイデアは、パートナー・関東経済産業局のほか、水戸市・一般社団法人水戸観光コンベンション協会・秩父市のバックアップ体制のもと、地域でのイノベーション創出に向け、PoC・インキュベーションを進めていく。

本記事では、本プロジェクトのホストとして参画している前田商事株式会社 専務取締役 関 貴史氏(好文café)、一般社団法人秩父地域おもてなし観光公社 高島 真理子氏(秩父地場産センター)、及び同プロジェクトのコンサルタントを務めるeiicon company 松尾 真由子の3名に、プロジェクトを通して見えた気付きや共創パートナーと共に達成したいイノベーションについて聞いた。

【水戸市「好文café」】季節による繁閑差を、デジタルで解決するアプローチを探りたかった

――まず、デジタルを活用して課題解決に取り組もうと考えた背景を教えてください。

好文café・関氏 : 「好文café」は、水戸市の中心市街地にある千波湖のほとりにあり、3月の梅まつりなどイベント時には各地からの観光客でにぎわいます。一方で猛暑の夏や真冬の閑散期があり、季節に伴い売り上げが低下することが課題でした。

デジタル活用の側面では、これまで自社ホームページやインスタグラムやツイッター、フェイスブックなどのSNSでの発信は取り組んでいたが、他にもデジタルを活用した手法があるのではないか、それによって閑散期の売り上げにつながるきっかけになるかもしれないと期待がありました。


▲千波湖を一望できる一面ガラス張りのカフェ&レストラン「好文café」

――事業に参画し、関東経済産業局やeiicon company、応募企業などのパートナーと自社の課題や特徴を洗い出すなかで、どんな気付きがありましたか?

好文café・関氏 : いただいたアドバイスの中で、マーケティングの視点という新たな気付きがありました。「好文café」やその近辺のエリアを訪れる方は、どこから来ているのか、どんな属性なのか、訪れる目的は何か、といったような情報です。

千波湖は1周3キロのコースとして、ランニングやウォーキングを目的とする健康意識が高い方々が良く訪れています。ランナーの方々が運動して汗をかいた後にcafeに入り、椅子に座りやすい環境ではないかもしれない。健康を目指す方に喜んでもらえるサービスやメニューは何か、といった視点で改善策を考える必要があるなと。まだ明確な答えは出ていませんが、考えるキッカケになったと思います。

また、これまで訪れる人の属性などの統計をしっかりとリサーチしたことがなく、データを取得することで、より適したサービス提供ができるかもしれません。その際の費用対効果は事前に検討する必要がありますが、良い気付きではありました。


▲好文caféの運営を担う、前田商事株式会社 専務取締役 関 貴史氏

――プロジェクトを通して、より良い共創パートナーと出会うために、何が必要だと感じましたか?

好文café・関氏 : 地域の課題解決という視点で考えると、実際に現地に足を運び、直接見ていただくことで、より具体的なイメージが湧いたり、発見があったりするのではないかと思います。今回、共創パートナーを募集するにあたり、eiicon companyの松尾さんに事前に現地に訪問していただき、周辺エリアも含めて地域の特徴を知ってもらえたのは、よかったのではないでしょうか。

eiicon・松尾 : 関さんのおっしゃる通り、現地に趣き、具体的なペインや地域を取り巻く情報を知ることができたのは、良い収穫でした。

現地に訪れたことで分かったのが、千波湖周辺には着替えるスポットなどがなく、車内でウェアに着替えてそのままランニングをされる方が多いということでした。そしてその駐車場が、好文cafeの真横に位置するという立地関係であるということ。

ランニングに訪れる健康意識の高い方々を、そのまま新規のターゲット層としてカフェに呼び込むことが出来ないか。

まさに現地に訪れたことで、生まれたアイデアの方向性でした。

このようなリアルな現地の情報を事前に伝えられたことで、予想を超える多くの企業の応募や具体的なカフェをタッチポイントにかえるソリューションの提案につながったと思います。



▲eiicon company Incubation Sales/Senior Consultant 松尾 真由子

好文café・関氏 : 面談を通過して共創の検討を進めている札幌のTazawa Co.,Ltd(以下、Tazawa)さんとは、現状オンラインでのやり取りを進めているので、現地に来ていただくことで、新たな気付きがあるかもしれないと思っています。加えて、対面することで価値観のすり合わせもできるかなと。

――今後の共創の展望を聞かせてください。

好文café・関氏 : まず、4月には実際に水戸へ訪問してくださり、それから具体的なプランについてもディスカッションする予定となっています。そうすれば、取り組みが本格的するだろうと予想しています。

今回、「好文café」を起点にしていますが、それだけでなく水戸市の飲食店や施設なども絡めて、街ぐるみでのDXが可能かなど、広くご相談したいですね。

――最後に、本プロジェクトを通して、関さん自身の変化や発見があれば聞かせてください。

好文café・関氏 : 自社におけるデジタル活用には限界がありましたが、応募企業からさまざまなご提案をいただき、デジタル活用の幅広い可能性を知りました。また、パートナー企業とのディスカッションを進めるなかで成功のイメージも湧き、これからの共創が楽しみです。弱点を克服できる良いチャンスをいただいたと感じます。

【秩父市「秩父地場産センター」】 ロボット活用で誘客、省人化へ

――まず、デジタルを活用して課題解決に取り組もうと考えた背景を教えてください。

秩父地場産センター・高島氏 : 今回、DXの舞台としたのは、地域の土産店やレストランなどが集まる「秩父地場産センター」です。ここには37年間の歴史があり、施設の老朽化からリノベーションを施し、3月24日に「じばさん商店」としてリニューアルオープン予定です。

課題としては、昔からの愛用者と最近の顧客を比較して、ニーズのギャップが生じている点、近年の売り上げが減少している点です。今後の運営、サービス、集客などの面でDXを取り入れ、課題解決ができたらと思いました。




――プロジェクト実施前から、すでにDXは進めていましたか?

秩父地場産センター・高島氏 : 秩父市の観光という側面では、YouTubeで番組を作って発信したり、地域の商店を応援する目的で「ちちぶ乾杯共和国パスポートアプリ」を立ち上げ、育てているところです。これは、秩父地域の酒造メーカーや旅館、飲食店、土産物店など34店が加盟しており、スマホアプリでポイントを獲得でき、酒の情報を入手できます。また、地域の宿や旅館組合と連携したデータ分析も取り入れていますが、小さな旅館が多く、定着しきっていません。

このように、観光分野のDXは着手し始めているものの、地域の事業者が絡むことから、足並みをそろえようとしているのが現状です。そんななか、「秩父地場産センター」はDXの要素が薄く、事業者を絡めずに運用できるという点でDXが取り入れやすい側面がありました。


▲秩父地場産センターの運営を担う、一般社団法人秩父地域おもてなし観光公社 高島 真理子氏

――事業に参画し、関東経済産業局やeiicon company、応募企業などのパートナーと自社の課題や特徴を洗い出すなかで、どんな気付きがありましたか?

秩父地場産センター・高島氏 : 客観的な視点で「秩父地場産センター」の課題、強み、弱みを整理できたことは、大きな気付きとなりました。これまで、「秩父地域おもてなし観光公社」と「秩父地場産センター」は、それぞれ別の団体だった背景があり、課題への対策も別々に考えていました。今後は2つの団体が一緒になってやっていくこととなり、今回の機会を通じて、他人事として捉えていたことを自分事として捉えられた気がします。

具体的な気付きとしては、「秩父地場産センター」は売り上げ低迷の課題はありつつ、SNSに一定の反応があるなど、愛してくれている地域の方が案外多いこと。一方で、観光客の数が「西武秩父駅」エリアに劣ることは弱みであり、対策が必要だと感じました。

eiicon・松尾 : 現地に訪れて1番分かったことは、アクセス面。秩父市には、「西武秩父駅」と「秩父駅」という2つの最寄り駅があり、池袋から電車1本で来れるのは「西武秩父駅」。そして地場産センターがある「秩父駅」は西武秩父駅から1駅乗り継がなければなりません。かつ温泉や飲食店等の観光スポットは市内に点在し、1箇所に集まっていない状況でした。

アクセス的に不利ななかで集客を狙うとなると、リアルで点在しているスポットをデジタルでつなげて発信する必要があるなと。課題が非常にシャープな印象があり、パートナー企業の公募にあたっても、DXが求められる明確な理由をお伝えできたと思います。

――だからこそ40件を超える応募があったと。共創を進めていきたいと思うような魅力的なパートナーが集まったのでしょうか?

秩父地場産センター・高島氏 : 私がお伝えした以上に秩父市のことを調べ、提案を考えてくださるなど、それぞれに評価できるポイントがありました。想像以上の応募数に、驚きましたね。

――面談を通過したのは、ロボット事業を展開するIGP ROBOTICS株式会社とのこと。どんな期待がありますか?

秩父地場産センター・高島氏 : 提案が非常にわかりやすかったことと、面談を通して相応の思いがマッチングしたことが決め手になりました。IGP ROBOTICSさんでは、これまでショールームや美術館でロボットを活用されています。田舎の観光地でそれをどう活躍させるべきかは探る必要がありますが、先方にも「地域の魅力を発信できるロボットの活用事例をつくり、継続的に発展させたい」という思いがあり、ディスカッションしながら最適解を見つけられそうだと思いました。

eiicon・松尾 : 秩父市は、YouTubeやECサイトなど積極的にDXに取り組んでいて、だからこそ見えてきたリアルな誘客の課題がありました。そんななか、IGP ROBOTICSさんのロボットコンテンツにより誘客に導くことができるかもしれません。加えて、ロボットによる省人化が人手不足の課題解決につながる期待もあります。

――今後の共創の展望を聞かせてください。

秩父地場産センター・高島氏 : まず、3月中に先方のオフィスに訪問し、ロボットと対面しつつ、大枠のディスカッションができたらと。4月以降に、ロボットの詳細な設定を詰めていきたいと考えています。GW後には稼働できるといいですね。

商品案内の試みからスタートし、SNSや店舗での顧客の反応、ロボットがPRした商品の売れ行きを記録して、評価に使用するつもりです。そうした評価も参考にしながら、発展的な活用を探ってみたいと思います。

取材後記

盛んに「DX」や「イノベーション」が叫ばれている昨今だが、テクノロジー領域やそれを提供する事業者数は年々広がり、複雑化している。DXへの期待があっても、自社にとってのベストを見つけるのは容易ではない。

なにかをデジタルで解決してもらうことに期待をするのではなく、解決したい課題が何であり、自分たちが持っているものや足りていないピースを具体的に明示していくこと。今回の多くのデジタルソリューションを持つ企業に応募いただいたのも、課題の具体的な提示による本気度の現れからではないか。

外部から新たな視点や技術を取り入れ、進化していく。今後の「好文café」と「秩父地場産センター」の発展に期待したい。

(編集:眞田幸剛、文:小林香織)

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