Withコロナにおける処方箋 ーOIが新たな『ステイホーム』の形を生み出すー
新型コロナウイルスの感染拡大によって、世界中で実施された都市封鎖(ロックダウン)や外出自粛。これにより、家で過ごす=『ステイホーム』が注目されることとなった。ビジネスの現場でも在宅勤務・テレワークを導入が増加。東京商工会議所が6月に発表した調査結果によると、テレワーク実施率は67.3%にのぼるという。緊急事態宣言が発出される前の3月調査時に比べ、41.3ポイント増加しており、大幅に上昇している。
▲東京商工会議所「テレワークの実施状況に関する緊急アンケート」調査結果(2020年6月17日)
もちろん、テレワーク導入が難しい業界・職種もあるが、家にいながら仕事をするスタイルは今後ますます浸透していくだろう。TOMORUBA連載中の瀬川秀樹氏による「4コマ漫画コラム(63)」では“「with/afterコロナ」時代の新しい事業の芽とは?”というテーマを扱っており、以下のように指摘。コロナ禍で課題が生まれ、新規事業のチャンスの数は計り知れないという。
『(新型コロナウイルスの影響によって)これまではある意味想像の世界だったことが、「テレワークをするためにはXXが問題だ」など、自分事として課題を感じる人達が、様々な異なる環境・状況でリアルに沢山生まれ出ていくことになったのです。』
※参考記事:【連載/4コマ漫画コラム(63)】 「with/afterコロナ」時代の新しい事業の芽とは?
そこで今回は、コロナ禍によって注目される『ステイホーム』を切り口に、”家”を舞台にした新しいビジネスや共創プロジェクトを紹介していく。
”巣ごもり消費”を担う、新しいデリバリーサービス
自宅で過ごす”巣ごもり消費”によって、飲食店・レストランにおけるテイクアウト・フードデリバリーの需要は増加している。そこで、タクシー配車アプリ「S.RIDE」を提供するみんなのタクシーは、一休とフードデリバリーサービスの領域において連携。一休が運営するレストラン予約サイト『一休.comレストラン』に加盟している東京都内の飲食店・レストランのフードデリバリーサービスを、提携タクシー事業者の車両を活用してスタートさせている。
※参考記事:みんなのタクシー×一休|タクシーを活用した「フードデリバリーサービス」で連携、新型コロナの影響を受けるタクシー・飲食業界の支援へ
また、フードデリバリーサービス「Chompy」を提供するシン(SYN)は、東急百貨店と協業しフードデリバリーの実証実験を開始した。渋谷スクランブルスクエア内「東急フードショーエッジ(デリ)」にある19店舗の惣菜を「Chompy」から注文すると、1時間以内に自宅など指定の場所で受け取ることができるというものだ。なお両社は、東急が運営するオープンイノベーションプログラム「東急アクセラレートプログラム(TAP)」で出会い、共創に至ったという。
※参考記事:東急百貨店×SYN| デパ地下グルメをアプリから注文できる、フードデリバリーの実証実験をスタート
旧態依然とした「ビジネス慣習」を、共創でアップデートする
冒頭に引用した東京商工会議所「テレワークの実施状況に関する緊急アンケート」において、”テレワークを実施した際に生じた課題”として挙げられたのが「書類への押印対応」だ。緊急事態宣言下でも、押印をするために出社を余儀なくされたという声も少なくない。
▲「テレワークを実施した際に生じた課題」(東京商工会議所「テレワークの実施状況に関する緊急アンケート」より)
そうした中で発表されたのが、Web完結型クラウド契約サービス「クラウドサイン」を提供する弁護士ドットコムと、テクノロジーを活用した業務プロセスのデジタル化を推進するLayerXの業務提携だ。「紙文化、ハンコ文化」に代表されるアナログな業務プロセスの改善を支援するため、共同で技術開発を進めることにより、あらゆる組織規模や環境下に対応する電子契約の導入と運用を目指すという。
※参考記事:弁護士ドットコム×LayerX | クラウドサインと共同で大企業・行政機関のDXを推進するため業務提携
コロナ禍で「在宅医療」を進化させるプロジェクト
コロナウイルス感染者の増加によって、医療機関の逼迫が問題視されている。また、医療機関に患者が集まることで「密」状態が発生することもコロナ禍の大きなリスクとも言える。それらの解決の一つの糸口となるのが、在宅医療や遠隔医療だろう。
そんな中、在宅医療に強みを持つ帝人ファーマでは、「共創による在宅医療と地域包括ケアシステムの確立」をテーマにしたアクセラレータープログラムを実施している。現在は2期目のプログラムがスタートしているが、1期目に採択したスタートアップ・エーテンラボとはPoCなどを実施。同社が提供する行動変容と習慣化のためのスマホアプリ「みんチャレ」を活用した、「慢性疾患患者向けのみんチャレ」の開発を進めている。
※参考記事:在宅医療で社会課題を解決する――フロントランナーの帝人ファーマがスタートアップと起こすイノベーション
『ステイホーム』を支える物流業界における共創
『ステイホーム』で一層需要が高まったのが、オンラインショッピングだ。しかしながら、それを下支えする物流のリソースは十分とは言えない。そこでさまざまなプレイヤーたちが、物流の課題解決に乗り出している。
Yperが提供する宅配バッグOKIPPA(オキッパ)は、楽天の運営する配送サービス「Rakuten EXPRESS」が提供する「置き配」サービスとして採用されている。ユーザーが荷物をOKIPPAで受け取れるようにすることで、再配達の手続きや指定時間に在宅しなくてはいけないといった課題の払拭に取り組んでいる。
※参考ページ:【Rakuten EXPRESS×宅配バッグのOKIPPA】 「置き配」の普及により、ユーザーの利便性向上と再配達削減を目指す
また、ITを活用し運送業界における新たな価値の創出を目指すCBcloudは、「PickGo 買い物代行」サービスと連動した店舗向けのアプリケーション「PickGo 買い物代行 店舗用」をリリースし、コロナ禍での経済活動の冷え込みに直面する地域の個店をサポートするため、大阪府と連携を開始した。
CBcloudは今後も、ITによる物流業界の変革の使命のもと、自治体、企業、支援団体と連携し、コロナ禍における日本の物流の支援、および経済活動促進の一助になるよう活動をしていくという。
※参考ページ:CBcloud×大阪府 | 地元経済活性化のために「PickGo 買い物代行」で連携開始
脚光を浴びる「ゲーム」の新しい形を模索
『ステイホーム』で注目を集めたのが”ゲーム”だ。実際に、3月にリリースされた「あつまれ どうぶつの森」が空前のヒットとなり、爆発的な人気を誇っている。
そうした中、世界的な人気を誇るゲームアプリ「モンスターストライク」を提供しているミクシィは、時間や場所、既存の遊び方、通信環境などに捉われることなく、誰もがもっと自由に楽しむことができるポストソーシャルゲームの創出を目指し、アクセラレータープログラム「CROSS ACCELERATOR」を今春からスタートしている。
5月には数多くの応募企業の中から、「株式会社HERE.」「Cellid株式会社」「株式会社さくらソフト」「株式会社ウデキキキカク」の4社を採択。ポストソーシャルゲームを生み出すために、事業案を磨いている。
※参考記事:
ポストソーシャルゲーム創出を目指すプログラム【前編】―全く新しいコミュニケーション体験で、世界市場を創る