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社会課題の解決で未来を切り拓くOIプロジェクト

社会課題の解決で未来を切り拓くOIプロジェクト

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多くの企業は誰かが抱える課題を解決することを目指しています。そして課題の中でも、社会全体が課題として認識している課題を「社会課題」と呼びます。社会課題は解決できればインパクトは絶大ですが、社会構造が生み出してしまった問題でもあるため、クリアするハードルは高くなりがちです。コロナウィルスの脅威も、まさしく社会課題のひとつと言えるでしょう。

そんな社会課題の解決を目指す企業にとって、企業同士の強みを掛け合わせるオープンイノベーションは有効な選択肢となっています。今回の「未来を切り拓くOIプロジェクト」では、共創のパワーで社会課題に立ち向かうプロジェクトを紹介していきます。

社会課題が抱える11のカテゴリとSDGsの潮流

社会課題をカテゴリ分けしてみると、解決難易度の高さがわかります。文部科学省が公開している「安全・安心を脅かす要因の整理結果」という参考資料では、大カテゴリとして以下の11個に分類されています。

 1.犯罪

 2.事故

 3.自然災害

 4.戦争

 5.サイバー空間の問題

 6.健康問題

 7.食品問題

 8.社会生活上の問題

 9.経済問題

 10.政治・行政の問題

 11.環境・エネルギー問題

また、社会課題と近い分野として「SDGs」が注目を集めています。ご存知の方も増えたと思いますが、SDGsは「持続可能な開発目標」のことを指しており、17の目標を掲げて地球上の誰一人取残さずにより良い世界を目指す国際指標です。SDGsは目標の達成を目指すプロジェクトですが、17の目標をみてみると「①貧困をなくそう」「⑥安全な水とトイレを世界中に」「⑬気候変動に具体的な対策を」といった具合で、社会課題の解決がゴールになっていると言っても良いでしょう。

しかし、SDGsは目標達成からは大きく乖離しているのが現状で、2019年7月のシンポジウムで河野太郎外務大臣(当時)は「SDGsの達成には年間2.5兆ドルの資金ギャップが生じると試算されており,国際連帯税を含む革新的資金調達について考えていく必要がある」と指摘しています。逆に言えばそれだけビジネスチャンスがある領域とも言えるでしょう。

関連ページ:河野外務大臣の「SDGsの達成のための国際連帯税を実現するシンポジウム2019」への出席

社会課題解決を目指す共創プロジェクトの事例

ここからは、独自の技術を掛け合わせて社会課題の解決を目指す共創プロジェクトの事例を紹介していきます。

【東京大学×日本ペイント】“塗料とコーティング”を軸に、ポストコロナ時代の社会課題解決

東京大学と日本ペイントホールディングスは、両組織の包括的な共同研究および人材交流を、高度なレベルで推進する産学協創協定を2020年5月に締結しました。

東京大学では現在、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、「新型コロナウイルス感染症の拡大防止に貢献できる工学研究」、「“ポストコロナ社会”を見据えた工学研究」を強化しています。

一方、日本ペイントは新型コロナウイルス感染症の拡大による社会不安に対して、塗料・コーティング・表面処理により貢献できる技術を開発すべく、新たな取り組みを強化しています。

両者は本協定を通じて、“塗料とコーティング”を軸に、抗ウイルス技術を含む新型コロナウイルス感染症の拡大防止に資する技術や、感染拡大が終息した後に訪れる新たな社会の課題解決に向けた技術の実現に注力するとのことです。

関連記事:【東京大学×日本ペイント】 産学協創協定を締結、“塗料とコーティング”を軸に、ポストコロナ時代の社会課題解決へ

【リディラバ×つくば市】課題解決の適切なプレイヤー探しを「構造化」する連携協定

社会課題を起点にしたビジネスを展開するリディラバは、2019年3月から茨城県つくば市と持続可能年推進に関する連携協定を締結しました。

これまで、つくば市の課題解決フローは「各課で解決すべき課題を立てて、解決できるプレイヤーを探す」というものでしたが、これではつくば市全体の課題解決の構造としてはベストな状態ではありません。協定によってこの構造的問題を解消することを目指します。

リディラバで法人事業を担当する鈴木氏によると、「今までは“1(行政の各課)対1(事業者)”の取り組みが同時に複数ライン走っている構図でしたが、リディラバを間に挟むことで“1(行政)対1(リディラバ)対n(事業者)”というシンプルな構図にしていきたい」とのことです。

これにとどまらず、個別の課題解決とは別に、課題解決のシステム自体をアップデートするために事業を推進するとのことです。

関連記事:当事者意識を育てる現場とは?リディラバ鈴木氏が語る課題解決のノウハウ

【KDDIエボルバ×東松島市】被災地復興で農産物栽培拠点。障害者雇用にも貢献

コールセンター事業を展開するKDDIエボルバは2017年5月より、東日本大震災で被災した宮城県東松島市で農産物栽培拠点「幸 満つる 郷(さちみつるさと) KDDIエボルバ 野蒜(のびる)」を設立し、復興と障害者雇用を両立させる事業を開始しました。

事業としては、主に農産物栽培と栽培品を活用した加工品製造をしながら、今後はブルーベリーの観光果樹園を開園することを目指しています。

なぜコールセンターがメインのKDDIエボルバが農作物栽培を始めたかというと、コールセンター事業の正社員が増加していることが背景にあります。正社員が増えれば障害者を雇用する人数が増えますが、いっそ障害者だけでなく誰でも働ける事業を立ち上げて社会課題に貢献しようと東松島市での取り組みを開始しています。

さらには、KDDIは震災直後から東松島市へ復興を目的として社員を出向させており、市の生産性を上げるミッションも抱えています。その取り組みの一環としても農業事業は貢献しているのです。

関連記事:復興と障害者雇用を両立するため、KDDIエボルバが東松島市で実現した共創

【コークッキング×浜松市】フードロス削減とごみ減量を目的とした「TABETE」活用

コークッキングは2020年6月、静岡県浜松市と「食品ロス削減に向けた実証実験に関する協定」を締結しました。

コークッキングが開発・提供するフードシェアリングサービス「TABETE(タベテ)」は賞味期限が近づいた食品と、安く食品を買いたい消費者をマッチングさせることでフードロス削減に貢献しています。

一方、浜松市は「ごみ減量」の取り組みを推進しており、“一人1日当たりの家庭系ごみ排出量が最も少ない政令指定都市を目指す”とする「ごみ減量天下取り大作戦」などを実施しています。

今回の実証実験で、同市内の飲食店等における食品ロス削減にもつなげる狙いがあります。

関連記事:「スタートアップのSDGs推進は必然」フードロス削減のトップランナーが地方自治体と提携を進める理由

関連記事:フードシェアリングサービス「TABETE」を運営するコークッキング、静岡県浜松市と食品ロス削減に向けた実証実験へ

【Relic×ケイスリー】withコロナ/アフターコロナにおける社会課題解決に向けた行政と民間の共創プラットフォーム提供

SaaS事業である「インキュベーションテック」を展開するRelicは2020年5月から、新型コロナウイルス感染症対策下での社会課題の解決に向けた官民連携施策を支援するサービスを開始しました。

同取り組みは、社会課題解決に向けたコンサル事業を展開するケイスリーと共同で推進し、新型コロナウイルス感染症対策下での社会課題の解決に向けた官民連携施策を支援します。支援をするのは最大で4自治体、無償期間は各自治体3ヶ月間を予定しています。

今回の協業では、民間事業者等が提案する課題解決に向けた事業アイデアと行政をマッチングし、行政と民間事業者等との連携・共創を加速するオープンイノベーションの仕組み構築・運用を全国の地方自治体に対して期間限定で無償提供するとのことです。

関連記事:Relic×ケイスリー | withコロナ/アフターコロナにおける社会課題解決に向けた行政と民間の共創を実現するプラットフォームを提供開始

【編集後記】社会課題はビジネスになるか

企業は誰かの課題を解決している、と冒頭に述べましたが、「課題を解決すればビジネスとして成立するか?」と聞かれたら必ずしもそうとは言えないでしょう。それは社会課題でも同じことで、例えば「貧困」は社会問題ですが、貧困を解決すればお金が稼げるかと言うとそんなことはありません。

共創事例でも紹介したリディラバの代表を務める安部敏樹氏がイベントの対談で「『新しい技術を作りました』ではなくて『今ある社会課題を解決するためにこういう技術がある』という訴求の仕方」が重要だと話していましたが、ここがまさに社会課題をビジネスとして成立させるための本質ではないでしょうか。

関連記事:「職場と家の往復」では社会課題は見えてこない――社会課題を起点としてイノベーションをおこすための正攻法とは

(TOMORUBA編集部)

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