エンタメで未来を切り拓くOIプロジェクト
新型コロナウィルスの影響で外出に制限ができ、エンターテイメントのあり方が問われています。自粛期間中に、日本中の人々がそれぞれの「おうち時間」を過ごしていましたが、その間にYouTubeの滞在時間が伸びたり、「あつまれ!どうぶつの森」や「リングフィットアドベンチャー」などのゲームが品薄になるほど人気が出たりと、エンタメの消費は流動的に変化しています。
対して、スポーツ観戦やライブ、舞台、映画といった現地に足を運ばなければ体験できないエンタメは大打撃を受けています。
現在の刻々と変わるエンタメ業界において、切っても切れないのはテクノロジーの活用です。今回の「未来を切り拓くOI」では、共創を通じてエンタメに革新を起こすプロジェクトを紹介していきます。
国内はコンテンツ市場が13兆円超、次いでライブ市場
言わずもがな、エンタメ市場は巨大です。市場規模を見てみると、既出の調査としては「コンテンツ市場」と「ライブ・エンタテインメント市場」がエンタメに該当しそうです。
2020年4月にヒューマンメディアが公開した「日本と世界のメディア×コンテンツ市場データベースVol.13 2020」では、2018年度の国内コンテンツ市場は13兆890億円で、オンラインコンテンツの急成長が目立っています。
コンテンツ市場に次いでインパクトがあるのが、音楽やステージなどの「ライブ・エンタテインメント市場」です。
2001年の2562億円から2015年の5119億円へと、15年間で2倍に拡大しています。成長曲線を見ると将来に期待が持てる分野ですが、アフターコロナの世界ではどのような展開を見せるのか未知数と言えるでしょう。
関連ページ:2018年、日本コンテンツ市場規模13兆890億円、日本コンテンツ海外市場規模1.7兆円、世界20か国・地域のコンテンツ市場合計120兆円、各国・地域のコンテンツ市場動向も掲載
関連ページ:ライブ・エンタテインメント白書
エンタメ分野での共創事例
ここからはエンタメ分野でのオープンイノベーション事例を紹介していきます。
【ヤマハ×ソニー】共同開発したエンターテインメント用車両「SC-1」のサービスを沖縄で開始
ヤマハ発動機とソニーは、共同開発したエンターテインメント用車両Sociable Cart(ソーシャブルカート)「SC-1」を用いたサービスを2019年11月より開始しました。第一弾となるサービスは、カヌチャベイリゾート(沖縄県名護市)と東南植物楽園(沖縄県沖縄市)で実施されました。
SC-1は、室内や車体側面にビルトインされている高精細ディスプレイに、カメラで捉えた車両の前後左右の様子や走行場所に応じた様々な映像、融合現実映像(MR)を映し出すことができ、従来の自動車やカートでは提供できなかったエンターテインメント空間をつくりだすことで、乗客や車両を取り巻く人々により楽しい低速移動の価値を提供することを狙いとしています。
両社は今後、同様のサービスをアミューズメント施設や商業施設などへも展開し、新たな移動体験の提供を進めていくとのこと。
関連記事:ヤマハ×ソニー|共同開発したエンターテインメント用車両「SC-1」のサービスを沖縄で開始
【KADOKAWA×フォッグ】オーディション主催者が抱える課題をサポートする「Exam」を活用
KADOKAWAと、オーディション管理ツール「Exam」を運営するフォッグは2020年5月に業務提携を発表しました。
オーディション主催者は①応募者の管理に手間がかかる②オーディション特設サイトの制作予算が少ない③条件に合う応募者を集めるのが困難④対面面接でのコストやリスクが大きい、といった課題を抱えています。これらの課題を解決するためにフォッグは導入コストを抑え、簡単にPC・タブレット・スマートフォンに対応した応募フォーム・管理ツールを使えるオーディション管理ツール「Exam」を開発しました。
今後両社は、多くのオーディション主催者が抱える課題を解決するため、WEBサイト「ザテレビジョン」やザテレビジョン公式SNSなどを活用し、オーディション管理ツール「Exam」の「オーディション情報の拡散」「応募者数の確保」「オーディション合格者のメディア露出」といった課題解決をバックアップします。
関連記事:KADOKAWA×フォッグ | オーディション主催者が抱える課題を包括的にサポートするため業務提携
【集英社×講談社】ライバル誌「ジャンプ」と「マガジン」が連携したWEBサイト「ジャンマガ学園」
集英社と講談社は2019年4月、「週刊少年ジャンプ」と「週刊少年マガジン」などの連載作品約150タイトルを無料で読むことができるWEBサイト 『少年ジャンマガ学園』を2019年4月8日(月)から6月10日(月)の期間限定で公開しました。
同プロジェクトは、22歳以下の若い世代にマンガを読む機会を増やしてほしいという想いから生まれ、『ジャンマガ学園』を通して、マンガ好きの方々に加えて、これまでマンガに触れてこなかった方々にもマンガ作品との出会いを届けていくことを目的に発足。
『ジャンマガ学園』は「週刊少年ジャンプ」「少年ジャンプ+」「週刊少年マガジン」「別冊少年マガジン」「マガジンポケット」の計5媒体で連載されている約150タイトル(2019年4月8日時点)を期間限定で無料で読むことができるというもの。22歳以下が対象となっており、サービスを利用するには「生まれた年」の入力が必要となります。
関連記事:ライバル誌「ジャンプ」と「マガジン」が連携、“共闘”プロジェクトがスタート
【NTTドコモ×パロニム】音楽ライブやスポーツ観戦などでの新しい視聴体験を目指す触れる動画技術「TIG」
NTTドコモとパロニムは、5G時代に向けた新たな映像視聴体験の提供を目指し、2019年9月に業務提携契約を締結しました。この提携により、パロニムの持つ動画技術「TIG(ティグ)」を活用した、新たな視聴体験の提供を目指すとのことです。
「TIG」とは、動画内の対象物にさわるだけで情報をストックし、さらに詳細ページへの遷移を可能とした動画拡張技術。
これまでにも、ドコモが運営する複数のデジタルコンテンツサービスで「TIG」は導入されており、たとえば、ドコモが運営するライブ配信サービス「新体感ライブ」では、プロモーション動画に「TIG」を活用し、知りたい部分にさわるだけで検索することなくアーティスト情報や楽曲情報へアクセスできる楽しみ方を提供しています。
「新体感ライブ」のプロモーション動画だけではなく、本編のライブ配信にも「TIG Live」を導入することで、新しいライブイベントの楽しみ方を提供する予定とのことです。
関連記事:NTTドコモ×パロニム|触れる動画技術「TIG」で提携、音楽ライブやスポーツ観戦などでの新しい視聴体験を目指す
【KDDI×レッドブル・ジャパン】スポーツ・エンターテインメントの新たな価値創出を目的にパートナーシップを構築
KDDIとレッドブル・ジャパンは、au 5GやIoTなど先端テクノロジーを活用したトップアスリートの高度かつ迫力ある映像コンテンツの創出やトレーニングの高度化など、スポーツ・エンターテインメント領域における新たな価値の創出を目的に、包括的パートナーシップを構築しました。
具体的には、「先端テクノロジーを用いた新たなスポーツ観戦体験を協創」・「レッドブル・ジャパンのアスリートの支援と新たな"英雄"の発掘」・「レッドブル・ジャパンのコンテンツをau スマートパスプレミアムやKDDI 直営店などで展開」といった取り組みを進めていくということです。
関連記事:KDDI×レッドブル・ジャパン | スポーツ・エンターテインメント領域における新たな価値創出に向けた包括的パートナーシップを構築
【ユーザベース×TBS】5G時代を見据えたコンテンツ発信を目指し提携
ユーザベースは、2019年12月の取締役会決議において、TBSと業務提携契約を締結しました。また、同業務提携契約に基づき、約20億円の第三者割当増資を実施することを決議したと発表しています。
ユーザベースは運営するソーシャル経済メディア「NewsPicks」、そして子会社であるNewsPicks Studiosにおいて、5G時代を見据えたコンテンツの企画制作・プロデュースに取り組んでおり、「THE UPDATE」「WEEKLY OCHIAI」「NEXT」など、経済コンテンツの制作力だけでなく、若手ビジネスパーソンへのリーチとデジタル・スマホ領域への知見を強みとしています。
今回の提携では、コンテンツ面で、両グループでの人材交流を通じた次世代の動画コンテンツの共同企画・制作・プロデュースおよび制作者等の育成に共同で取り組みます。また、ビジネス面ではデジタル領域を中心とした新規ビジネス創造のための調査・研究および事業開発に共同で取り組むとしています。
関連記事:ユーザベースとTBSが提携、5G時代を見据えたコンテンツ発信を目指す
【cluster×テレビ朝日×WFLE】バーチャルイベント事業やコンテンツ開発で連携
バーチャル上で音楽ライブ、カンファレンスなどのイベントを開催できるVRアプリ「cluster」を展開しているクラスターは、テレビ朝日とWFLEの2社とそれぞれ業務提携契約を締結しました。
テレビ朝日とは、双方の保有する資産を活用し、バーチャルイベント事業や映像配信事業などにおいて包括的な連携を行い、これまでにないコンテンツの企画・開発を検討。WFLEとは、同社の提供する「REALITY」のサービス上で作成したアバターを、「cluster」で簡単に利用できる機能開発を共同で行うほか、コンテンツ開発に関する連携も強化していくということです。
関連記事:バーチャルイベントプラットフォーム運営のクラスター|KDDI、テレビ朝日などから総額8.3億円の資金調達を実施
【編集後記】暮らしにエンタメは必須だと再確認
コロナ禍で外出が自粛されると、「人生にエンタメは必須ではないのでは?」という議論が巻き起こるのでは?と予想していましたが、結果は全く反対で、自粛期間だからこそより強くエンタメを求める人々が増えたような気がします。
NetflixやYouTubeなどの動画プラットフォームの躍進を見るとそれがよくわかります。一方で、3密のリスクを冒してでも深夜のクラブに赴く人がいたり、劇場でクラスターが発生したというニュースも出てきています。これらの事象からも、人々は新しい日常の中でもエンタメを求め続けることがわかりました。今後は安全で、なおかつ新しいエンタメの形が問われていくでしょう。