ものづくり×オープンイノベーションで勝負する岡山市による数々のスタートアップ支援とは
地方のオープンイノベーションへの取り組みを追いかけるシリーズ「CLOSEUP OI」今回は岡山市を特集します。岡山市の産業は製造業が占める割合いが高く「ものづくりの街」として知られています。
ものづくりのパワーを活かすために、自治体みずからものづくり系事業者向けのオープンイノベーション支援サービスを立ち上げるほどの本気ぶりです。
また岡山大学をハブにして、さまざまな形で産官学連携のオープンイノベーションも推進されています。
約60年、二次産業の就業数をキープ
岡山市の主な産業のひとつに製造業が挙げられますが、岡山市の統計によると、製造業を含む二次産業の就業者数は60年近く変わっていないことがわかります。
平成27年時点では約7万人(うち製造業就業者が約4.5万人)が二次産業に就業していて、全体の20.7%となっています。それに対して昭和45年の二次産業就業者数を見てみると、同じく約7万人となっています。
人口の増減はあるものの、60年近くも二次産業の就業者数をキープしていることが岡山を「ものづくり」の街にしている土台となっているのです。
岡山市が作ったものづくり系Webマッチングサービス「Linkers(リンカーズ)」
岡山市のオープンイノベーションを語る上で外せないのが「Linkers(リンカーズ)」です。
リンカーズはものづくり系Webマッチングサービスですが、岡山市と提携して事業を行っています。特定の技術を探している大手メーカーなどと、該当する技術を持った全国の中小企業がプラットフォーム上でマッチングされる仕組みです。
岡山市はリンカーズとの提携で、優れた技術を持つ市内の企業が全国へ事業展開できるチャンスを創出する狙いがあります。
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岡山リビングラボによるオープンイノベーションプログラム
欧米に浸透しつつある「リビングラボ」は岡山市でも取り入れられています。リビングラボは市民を事業やサービス開発に巻き込みながらものづくりをする手法として日本でも注目を浴びつつある手法です。
岡山大学が主催する「岡山大学リビングラボ オープンイノベーションプログラム」は今年10月に第一回が行われ、中国地方では初の試みとなっています。11月にもオープンイノベーションがロート製薬と共催で実施され「女性の美と健康、運動の習慣化に向けたスポーツビジネス」をテーマに事業アイデアを募集しました。
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岡山大学の学長直轄組織「岡山大学オープンイノベーション機構」
「岡山大学オープンイノベーション機構(OI機構)」も岡山大学が立ち上げたオープンイノベーションのための取り組みです。
OI機構は大学が企業と共に産学連携で事業創出や共同研究を推進するために設置しました。「組織」対「組織」の共創を加速することが目的の学長直轄組織となっています。
競争領域だけでなく、非競争領域と競争領域の狭間からも新規事業を創出できるモデルの構築を通じて、社会課題解決やSciety5.0実現の取り組みを強化していきます。
関連ページ:大学と企業の「組織」対「組織」の産学共創を集中的にマネジメント!社会に新たな価値を生む共創活動の中核組織として「岡山大学オープンイノベーション機構」を設置
【編集後記】“関係企業”を増やす戦略
過疎化が進んでいる地域では、地方創生の一策として「関係人口」を増やして旅行者以上、定住未満の人々と関係を作る動きが多くなっています。
岡山市はリンカーズの導入によって全国の企業と市内の企業をマッチングを推進していますが、これは関係人口ならぬ“関係企業”を増やす戦略と言えるでしょう。
全国の優秀な企業との関係を作ることで、オープンイノベーション以外にも良い成果が出そうな期待が持てます。
さて、次回のCLOSEUP OIではAIやIoTといった先進技術の分野でオープンイノベーションを推進する佐賀県佐賀市にクローズアップします。
(eiicon編集部 久野太一)