【トップインタビュー】阿久津社長が語る「挑戦するセブン-イレブン」に向けての決意――共創パートナーとともに”食”領域で新たなイノベーションを生み出す
1974年に国内セブン‐イレブンの1号店をオープン以来、日本国内で21,942店舗(※)を展開する株式会社セブン-イレブン・ジャパン。日本におけるコンビニ業界のトップランナーであり変革者として、マーケットをリードしてきた。
これまでの「便利さ」に加え、多様化するニーズに応える様々な取り組みを続けている同社は、新しい食の価値を商品として日常に届ける共創プログラム『SEVEN-ELEVEN JAPAN OPEN INNOVATION PROGRAM FOR FOOD』を立ち上げた。「まだ知られていない価値を、日常へ」というコンセプトを掲げ、本年6月22日より以下の3つのテーマで共創パートナーの募集を開始する。
◆テーマ1「外出先の時間を豊かに(Active Food)」
◆テーマ2「家での食を、心地よく(Comfort Food)」
◆テーマ3「食のわくわく消費(Food Discovery)」
TOMORUBAでは、本プログラムの始動に先立ち、同社の代表取締役社長 阿久津知洋氏へのインタビューを実施。阿久津氏は2025年5月に代表取締役社長に就任。「エラー(失敗)&ラーン(学び)」を行動指針に掲げ、セブン-イレブン・ジャパンの成長と挑戦を牽引している。
阿久津氏は、コンビニ業界を取り巻くマーケットや消費者の価値観の変化をどのようにとらえているのか。さらに、セブン-イレブン・ジャパンが目指すビジョンや今後の注力ポイントなどをお聞きするとともに、今回の共創プログラムに対する意気込みや、共創パートナーとチャレンジする新たな価値創出への期待感を語っていただいた。
※国内店舗数:21,942店(2026年5月末現在)
▲株式会社セブン‐イレブン・ジャパン 代表取締役社長 阿久津知洋氏
1970年生まれ。1994年にセブン-イレブン・ジャパンへ入社。2012年オペレーション本部西東京ゾーン ゾーンマネジャー、2021年同本部副本部長、2023年執行役員オペレーション本部副本部長、2024年同建築設備本部長。2025年5月、代表取締役社長に就任。
「For ALL」から「For ONEs」へ。多様化する価値観への対応が迫られている
――阿久津社長は1994年にセブン-イレブン・ジャパンへ入社されています。その当時のセブン-イレブン・ジャパンの印象について教えてください。
阿久津氏 : 当時はバブル崩壊の直後でしたが、依然として皆が忙しく働いている時代であり、コンビニの便利さが徐々に世間に認知され、業界的にも拡大期にありました。また、ある意味ではセブン-イレブン自身がスタートアップのような存在でもあったため、社内にはイノベーションを生み出していくためのエネルギーがあふれていたと思います。
――昔は家で作るのが当たり前だったおにぎりの販売をスタートしたり、コンビニ店内にATMを設置したりするなど、阿久津さんがおっしゃる通りセブン-イレブンは、数々のイノベーティブな商品・サービスを実現しています。阿久津さん自身は建築設備本部長時代に木造店舗の開発に携わられていますが、こちらもイノベーションを意識した取り組みだったのでしょうか?
阿久津氏 : 当社では、CO2排出量削減や持続可能な調達といったテーマを含む「GREEN CHALLENGE(グリーンチャレンジ)2050」という長期環境目標を掲げており、私が手がけた福岡市の木造店舗は、このような目標の達成に向けた取り組みの一つでした。これまでの延長線上にはない「非連続な取り組み」という意味では、イノベーティブな施策の一つだったと捉えています。また現在では、木造店舗のコストダウンや、標準店舗を木造化する計画も進めています。
――現在、コンビニ業界を取り巻くマーケットや消費者の価値観は、どのように変化していると感じていますか?
阿久津氏 : これまでのセブン-イレブンは、その時代の生活者が求める「最大公約数的な価値」を読み解き、それに応えるためのおにぎりやセブンプレミアム、セブンカフェといった商品を生み出すことで成長を続けてきました。しかし現在では、人々の生活様式や価値観の多様化が進んでおり、確実に「For ALL」から「For ONEs」の時代に移行しつつあります。そのため、お客様一人ひとりのライフスタイルや価値観を丁寧に読み解き、きめ細やかに対応しなければ、お客様のニーズに応えることが難しい時代に入ってきていると感じています。
――そのような環境の変化を受け、これからのセブン-イレブンは、どのような姿を目指していくのでしょうか。
阿久津氏 : お客様一人ひとりのニーズの多様化に対して、様々な価値を生み出し、提供していく必要があると考えています。かつては「あいてて良かった」のフレーズで知られるCMでタイムコンビニエンスの価値を打ち出し、昨年までは「やっぱり、おいしいね」というCMで、安心して購入できるセブン-イレブンの食品や味をアピールしてきました。
しかし、これからはお客様が想像するセブン-イレブンのイメージを超えていく必要があると考えています。そのためにも「セブン-イレブンに行くと何か見つかるかもしれない」という期待感を醸成していきたいと考えており、そのような思いを現在のCMコンセプトである「なにがあるかな、セブン-イレブン。」というフレーズに込めています。
▲2025年9月からスタートしたTVCMの新シリーズ「なにがあるかな、セブン‐イレブン。」のキービジュアル(画像出典:プレスリリース)
――今後、とくに注力していきたい事業や差別化ポイントなどがあれば教えてください。
阿久津氏 : 現在、セブン-イレブンでは「Live-Meal(ライブミール)」と名付けた出来立て商材に注力しています。昨年のブラックフライデーに揚げ物の半額セールを行った際、1日でコロッケが約750万個の売り上げを記録したように、セブン-イレブンの出来立て商材の美味しさは広く認知されています。
現在は揚げ物に加えて焼成機の導入も進めており、小腹を満たすスナック類だけにとどまらず、本格的な食事としても賄えるような商材を提供するなど、店頭での新しい価値創造を進めていく方針です。
また、従来のセブンカフェに加え、新たに紅茶の専用マシンを導入し、「セブンカフェ ティー」の提供店舗も順次拡大しています。出来立て商材自体は以前からあるものですが、今後もかつてのおにぎりやおでん、セブンカフェ、ATMのように、お客様が気づいていない潜在ニーズを顕在化し、商品化していくための挑戦とイノベーションを繰り返していきたいと考えています。
▲6月3日(水)から4日間、夕方から時間限定で「ななチキ」や「揚げ鶏」などを対象にした 「揚げ物スーパーセール」を開催し、大きな反響と注目を集めた。(画像出典:プレスリリース)
セブン-イレブンのサプライチェーンの外から新たなアイデアを求めるために
――今回、食品商材のアイデアを公募で募る『SEVEN-ELEVEN JAPAN OPEN INNOVATION PROGRAM FOR FOOD』というプログラムを立ち上げた背景を聞かせてください。
阿久津氏 : セブン-イレブンでは、お客様一人ひとりの生活様式や価値観が多様化したこの時代にマッチした商品を作っていく方針です。しかし現在の私たちは、どうしても現状の原料調達・物流・生産設備といった既存のサプライチェーンに最適化しすぎるあまり、自社アセットの枠組みに捉われた発想に陥りがちという課題があります。どうしてもプロダクトアウトの思考に引っ張られてしまうため、真のマーケットインを追求するにはブレイクスルーが必要です。
確かに日本全国約22,000店舗に商品を供給するとなると、どうしてもサプライチェーン全体の効率を考慮しなければなりません。そのため経営陣としては「エラー&ラーンを重ねていこう」と社内に呼びかけていますが、すぐに上手くいくものではありません。
だからこそ、私たちセブン-イレブンのサプライチェーンの外にいる方々から、これまでにない発想をもとに「これが今のお客様の嗜好です」「このような商品を好むお客様もいます」といったことに気づかせていただきたいと考えたことが、プログラムの立ち上げ背景となります。
――今回のプログラムを通じて、どのような成果を生み出したいと考えていますか?
阿久津氏 : まずは「エラー&ラーン」の考え方に基づき、挑戦をして、たとえ失敗したとしても、そこから学んで次につなげていくような共創に取り組んでいきたいと考えています。短期的には小規模・店舗単位でのスモールスタートを通じた新たな顧客ニーズの発見を目指し、中長期的にはイノベーションにつながる新たな商品カテゴリーの確立と、全店展開につながる成功事例の創出を目指していきます。
また、もともとセブン-イレブンは、街の人たちを幸せにするためのお店です。昨年9月からスタートしたCMでは、女優の天海祐希さんにオーナーさん役を演じていただき、「このコンビニで街のひとを幸せにする。それが私の夢」と語ってもらっています。
そのようなセブン-イレブンの考え方に共鳴いただけるパートナーの方々と一緒になって、地域貢献・社会貢献につながるイノベーションを生み出していきたいと考えています。もちろん私たちセブン-イレブンとしては、アイデアや技術をご提供いただくだけでなく、それらを活かして「世の中を変えていきたい」「事業を拡大したい」と考えているパートナーの方々の力になりたいと思っています。
「食の先進国」である日本において、最前線を走ってきた自負がある
――今回のプログラムは”FOR FOOD”ということで、「外出先の時間を豊かに」「家での食を、心地よく」「食のわくわく消費」という3つの食に関する募集テーマを設定されています。このようなテーマを設定した背景や、それぞれのテーマに込めた想いなどを教えてください。
阿久津氏 : まず、今回のオープンイノベーションプログラムを食の領域に絞らせていただいた理由は、私たちセブン-イレブンが食に関する豊富な経験・ノウハウを持っていることが大きいです。「食の先進国」とも呼ばれる日本において、私たち自身がその最前線を走ってきた自負もあるので、他の領域にまでテーマを広げるよりも有意義かつ効果的な共創につながると考えました。
また、セブン-イレブンでは、重点ターゲットと利用シーンを明確に定め、「どのようなお客様が、どのようなシーンでセブン-イレブンをご利用いただくのか」を想定した価値創造に取り組んでいます。
今回の3つの募集テーマは、若者世代・共働き世帯・シニア世代など、想定されるお客様一人ひとりのニーズに対してシャープに刺さる商品開発を行うために、「外出先」「家での食事」「食の新しい楽しみ」という具体的な利用シーンをもとに設定しています。
――本プログラムで阿久津社長が「こんな提案してくれたら嬉しい」など、個人的に期待しているアイデア・技術などがあれば教えてください。
阿久津氏 : 私はセブンプレミアムの商品の中でも、「金のビーフシチュー」という商品が好きなのですが、肉や野菜のエキス抽出に関する素晴らしい技術を持っているアリアケジャパンさんの協力を得て開発を行いました。このようなタイプの技術も新たな事業・商品のフックになると考えているので、他社が簡単には追いつけないような独自の技術をお持ちの方々にも期待したいです。
――デンマークのセブン-イレブンでは、スタートアップ企業とともに商品を共創し、その後の成長を後押しする取り組みが根付いているようですね。
阿久津氏 : デンマークでは、Reitan Convenience社という現地法人が日本のセブン-イレブンとは異なるビジネスモデルを作り上げています。カウンターフードがベースになっており、店内調理のサンドイッチが看板商品となっていることに加え、スタートアップとの共創により新しい健康コンセプトのカウンターフードが開発され、お客様に支持されているそうです。デンマーク国内のセブン-イレブンの店舗数は170店程度であり、日本と違って商品供給もしやすい環境ではありますが、素晴らしい成果をあげていると思います。
日本では、全国全ての店舗での展開は難しいので、特定の地域・エリアで現地調達を行い、地域性の高いものを販売するなど、地域貢献にもつながるモデルを確立していきたいと考えています。セブン-イレブンのオーナーさんたちは、その地域で暮らしており、地域にかける思いはかなり強いですからね。
今後は「セブン-イレブンの味」に収まらない商品にも挑戦していく必要がある
――今回のプログラムでは、どのようなビジョンやマインドを持ったパートナーに参画してほしいと考えていますか?
阿久津氏 : 私たちセブン-イレブンの原点である「街のひとを幸せにする」という考え方に共感・共鳴いただける企業様に参画していただきたいと考えています。
もちろん企業であるからには売上・利益も大切ですが、企業も社会や地域の一員であることには違いありません。お互いにそのような意識を持ってイノベーション創出に取り組んでいきたいですし、その上でエラー&ラーンの精神で挑戦し、失敗から学び、成功するまで続けることができる企業様に期待しています。
――最後に、プログラムへの参画を検討している未来の共創パートナーに向けて、メッセージをいただければと思います。
阿久津氏 : 現在、セブン-イレブンは大きな変革期を迎えています。強力なトップが経営をリードしていた時代は、役員試食による厳格な品質チェックをクリアしなければ発売すら許されないということもありました。当時のエピソードとして「冷やし中華を11回作り直した」という逸話も残っていますが、そのような厳しさによって「セブン-イレブンの味」や、商品としてのクオリティが担保されていたのです。
しかしこれからは、多くの皆さんが想像する「セブン-イレブンの味」に収まらない商品も作っていく必要があると考えています。なぜならば、そのような商品こそが、現在コンビニを使っていない方や、セブン-イレブンを利用されていない方のニーズに刺さる可能性も十分にあると考えているからです。
かつて、セブン-イレブンは「コンビニは成功しない」と言われる中で事業を展開してきました。周囲の反対を受けながらも、「家で作るもの」とされてきたおにぎりや「お金は銀行でおろすもの」とされてきたATMにも果敢にチャレンジし、成功させてきました。また、コーヒー事業への挑戦を始めてから、現在の「セブンカフェ」に至るまでに、実に約40年もの年月を要しました。
エラー&ラーンは、私たちセブン-イレブンが再び挑戦者として戦う意志を表現した言葉です。今回のプログラムについても、単純にアイデア・技術・商品を提供いただくだけの話にするつもりはありません。皆さんとの共創を通じて「世の中を変えていきたい」と本気で考えていますので、ぜひ私たちと一緒にエラー&ラーンを続けていきましょう。たくさんのエントリーをお待ちしています。
© 2026 MEDICOM TOY
取材後記
今回のセブン-イレブン・ジャパンのオープンイノベーションプログラムは、同社がこれまでに開催していたプログラムとは異なり、「食」にターゲットを絞っている。セブン-イレブンの食品商材はコンビニ業界に数々の革命を起こし、私たち日本人の食生活そのものを大きく変えてきた実績がある。また、近年の「セブンプレミアム」に代表されるPB商品群は、従前の「コンビニ飯」の常識に収まらないクオリティの高さにより、業界内外から注目を集め続けている。
そのような「食」に関する様々な強みを持つセブン-イレブンとともに、「食」の領域をベースに共創ができる今回のプログラムは、多くのベンチャー・スタートアップにとって、大きな飛躍のチャンスになることは間違いないだろう。セブン-イレブンが目指す「このコンビニで、街のひとを幸せにする」という姿勢に共感し、「食」を通じてイノベーションを起こしたいと考えている方は、ぜひエントリーを検討してほしい。
●『SEVEN-ELEVEN JAPAN OPEN INNOVATION PROGRAM FOR FOOD』の詳細はこちらをご確認ください。
(編集:眞田幸剛、文:佐藤直己、撮影:加藤武俊)