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【トップインタビュー】セブン-イレブン・ジャパン代表取締役社長 永松文彦氏が語るイノベーションへの情熱と共創プログラムへの期待感

【トップインタビュー】セブン-イレブン・ジャパン代表取締役社長 永松文彦氏が語るイノベーションへの情熱と共創プログラムへの期待感

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1974年の国内1号店オープン以来、コンビニエンスストア業界のトップランナーとして市場をリードしてきた株式会社セブン-イレブン・ジャパン。

昨年、創業50周年を迎えた同社は、お客様一人ひとりの想いに応え、セブン-イレブンの価値をアップデートする共創プログラム『Seven-Eleven Japan Innovation Program 2024』の開催を発表。「セブン-イレブン×○○でお客様にどんな価値をもたらせるか」というプログラムコンセプトを掲げ、本年7月16日より以下の3つのテーマで共創パートナーの募集をスタートした(早期応募締切:7月31日、最終応募締切:8月26日)。

◆テーマ1「セブン-イレブン×地域経済」

◆テーマ2「セブン-イレブン×観光」

◆テーマ3「セブン-イレブン×健康」

TOMORUBAではプログラムの開始に先立ち、同社を牽引する代表取締役社長 永松文彦氏へのインタビューを実施。コンビニエンスストア業界の現状や課題感、セブン-イレブン・ジャパンが目指す未来像などをお聞きするとともに、今回のプログラムへの期待感や共創の意義について語っていただいた。

▲株式会社セブン-イレブン・ジャパン 代表取締役社長 永松文彦氏

1957年生まれ。1980年、セブン-イレブン・ジャパン入社。2004年に同社執行役員、2014年にニッセンホールディングス代表取締役副社長。2017年、セブン-イレブン・ジャパン執行役員。2019年3月、同社取締役副社長を経て同年4月より現職。

セブン-イレブンの50年は、イノベーションの歴史であった

――永松社長は1980年に入社されたと伺っていますが、入社の経緯について教えてください。

永松氏 : 当時、セブン-イレブンの店舗数は数百店程度だったと思いますが、まだほとんどの人に知られていない状況でした。学生時代、友人と一緒に「こんな時間でも開いている店があるぞ」と驚いたことがあり、後々考えるとそのお店こそがセブン-イレブンでした。

その後、再びセブン-イレブンを意識したのは、私が就職活動を始めた頃でした。既存の酒屋などからコンビニエンスストアへ業態転換し加盟された店舗オーナー様に対し、本部として経営カウンセリングを行ったり、商品を供給したりすることで、将来に向けて共に繁栄していく。このようなコンビニエンスストア本部の事業内容に魅力を感じ、入社を決めました。

コンビニという業態が世の中に知られていない時代だったこともあり、周囲の人たちにはかなり反対されました。ただ、私としては「世の中の多くの人の役に立つ仕事だ」「これからの消費者の変化に対応できるビジネスだ」という強い確信があったのです。

――貴社のビジネスにおける挑戦や転機となった事業などについてお聞かせいただけますか?

永松氏 : コンビニ自体が新しい業態であったこともあり、セブン-イレブンの歴史はイノベーションの歴史であったと言えます。そもそも何代も続いているご商売をコンビニに変えていただくわけですから、本部には加盟店に対する大きな責任がありますし、私たち自身が絶えず新しいことに挑戦し、変革を続けていかなければならないと考えていました。

様々な変革の試みとして、象徴的な商品の一つがおにぎりです。当時のおにぎりは「家で作って食べるもの」でしたが、私たちはおにぎりを「外で買って食べるもの」に変えていきました。また、昔は午後3時までに銀行に行かないとお金を下ろすことも振り込むこともできませんでしたが、コンビニ店内にATMを設置したり、公共料金の支払い機能を設けたりするなど、既存の常識に挑戦し、変革していくことで便利な世の中を作ってきました。

私がOFC(経営相談員)時代に、以前16時間営業だった店舗を24時間営業に転換していただいた経験があります。実際に24時間営業を開始すると、世の中には「昼間働いて夜寝る」という人々だけではなく、夜中にお仕事をされている方々が大勢いることを加盟店主とともに実感しました。24時間営業店は、そのような方々をサポートするインフラ的な機能を持つ店舗になったと考えています。現在、全国に約2万1500店舗のセブン-イレブンがありますが、年間約15,000回のご年配の方の保護やお子様の駆け込みへの対応を通じて、地域の安全・安心に貢献しています。

――今やセブン-イレブンは人々の生活に欠かせないインフラとなり、様々な側面から地域に貢献されていると感じます。

永松氏 : 地域貢献という意味では、地域の雇用創出も私たちの役割の一つであると考えています。地方の過疎化が進行する一方で、都市部への若者の流入が進んでいますが、過疎地域に残った方々のための店舗も必要ですし、その地域で新たな雇用を生み出す必要もあります。私たちはセブン-イレブンの店舗を通じて、そのような課題を少しでも緩和していかなければならないと考えています。

私が入社間もない頃に担当した店舗は、今ではお孫さんが店を継いでいるケースもあります。当時は私が20代、オーナー様が40代くらいでしたが、それから40年以上が経過していますからね。そのような形でセブン-イレブン各店舗が地域の中で根付き、人々の雇用や暮らしを支える生活拠点となっていることに大きな喜びを感じます。

次の50年は「経済的価値の追求」だけではなく、「社会的価値の創出」が求められる

――セブン-イレブンやコンビニ業界の現状、マーケットから求められている変革について教えてください。

永松氏 : セブン-イレブンは昨年創業50周年を迎えました。当社がここまで成長できた理由は、世の中のニーズにマッチし、時代の変化に応えてきたことが大きかったと考えています。コンビニが登場する以前はGMS(総合スーパーマーケット)の時代でしたが、セブン-イレブンのようなコンビニが求められる時代に変わっていきました。

そのような時代において、私たちは「開いててよかった」「近くて便利」といったキャッチフレーズを掲げて時間と距離の利便性を提供し、美味しい商品や質の高い商品を取り揃えることで経済的価値を追求することで、多くの消費者の皆様に受け入れられてきました。

しかし、人口減少、少子高齢化、環境問題、健康問題といった様々な社会課題が顕在化しつつある現在においては、これまでのような経済的価値の追求に加えて、企業にも様々な社会的価値の創出が求められています。私たちは、豊かな社会・環境を未来世代へつないでいくための4VISIONS(健康・地域・環境・人財の4つのビジョン)に基づく事業を展開することで、次の50年も社会から求められる存在であり続けたいと考えています。

そのための具体的な取り組みも様々な形で進めています。たとえば地域への貢献については地産地消を推進しており、セブン-イレブンのオリジナルパンの一部で国産小麦を使用して生産しています。また、環境領域についてはプラスチックの削減やペットボトルのリサイクルの推進に力を入れています。

――小売業界全体のトレンドとして小商圏化やEC化が進むと言われていますが、これらへの対応・適応についてはどのようにお考えですか?

永松氏 : 人口減少や高齢化によって人々の活動範囲が狭まる小商圏化に関しては、「遠くのスーパーまで行かず、近くのコンビニですべて済ませたい」というお客様のニーズに応える店舗づくりが必要ですが、すでに私たちはセブン&アイグループの強みを集結した、「SIPストア」という新コンセプト店舗を立ち上げています。

これまでのセブン-イレブンでも約3000点の商品を置いていましたが、SIPストアでは既存のコンビニ商品に加えて鮮魚・精肉・野菜・冷凍食品などの商品数を増やしており、買い物はすべて近所で済ませたいというお客様のニーズにお応えできるテスト店舗となっています。

▲新コンセプト店舗「SIPストア」。鮮魚・精肉を取り扱うなど、セブン&アイグループの強みを活かした幅広い品揃えが特徴だ。(画像出典:ニュースリリース

ECについては「7NOW」(セブンナウ)を展開しています。「7NOW」は、セブン-イレブンの店舗商品をスマホで注文し、最短20分でお届けする宅配サービスです。対象エリア内のセブン-イレブンで実施店舗であれば、配送先の住所をピンポイントで指定することもできるため、たとえばお子さんが地方に住んでいる親御さんのためにスマホで商品を注文し、親御さん宅の最寄りのセブン-イレブンから配送するといった使い方もできます。

また、「7NOW」は最短20分で配送できるため、揚げ物やピザなど「出来立てを食べたい」というお客様のニーズにお応えすることができます。

全国2万1500店舗のセブン-イレブンは、人々が集う重要な拠点となり得る

――この度、貴社が実施する『Seven-Eleven Japan Innovation Program 2024』を通じて実現したいことをお聞かせください。

永松氏 : 今回のプログラムでは、「地域経済」「観光」「健康」という3つの募集テーマを設けました。地域のお客様に利便性を提供することこそがセブン-イレブンのミッションです。そのような意味では、地域を訪れた方々に対して、その地域の情報をお届けすることで新たな利便性を感じていただき、買い物に立ち寄っていただける流れを作るというのが、実現したいイメージのひとつです。

約2400万人以上の会員様が登録している「セブン-イレブンアプリ」などを活用して地域・観光・健康に関する情報を発信していくような取り組みができると思いますし、地産地消の取り組みと絡めた地域限定商品の情報発信も可能でしょう。また、インバウンドの方々へのお土産品に関する情報提供なども喜ばれるかもしれませんね。

――アプリ等を活用した情報発信に加え、全国に存在するセブン-イレブンの店舗も魅力的な提供アセットの一つになりそうですね。

永松氏 : 全国に約2万1500の店舗があり、1日あたり2000万人のお客様にご利用いただいているセブン-イレブンは、人々が集う拠点として重要な機能を有していると思います。一部の店舗で試験的にスタートしている処方薬の受け取りサービスなども、拠点としての役割を活かした事例と言えるでしょう。

私たちはネットに関しても様々なサービスを展開していますが、全国2万を超える拠点はセブン-イレブンならではの大きな強みの一つです。とくに地方では都市部以上に拠点としての役割が重要になると考えていますので、皆様が集うリアルな場としての役割を意識した新規事業を展開できると考えています。

共創によって新たな価値を生み出し、更なる地域貢献につなげていく

――永松社長が会社経営や店舗運営において重視されている「変化への対応」と「基本の徹底」について詳しくお聞かせください。

永松氏 : 最初に「変化への対応」ですが、時代が急速に移り変わっていく現代においては、世の中のニーズや変化を捉え、スピーディーに対応していかなければ、いかなる企業や事業も生き残ることはできません。

私の自宅の近所にある大型店には、30年ほど前は子ども向けの屋上遊園地がありました。以前は多くの人で賑わっており、行列に並ばなければ遊具に乗れないような状況でした。しかし、それから30年以上経った今、その屋上には何一つ残っていません。30数年でここまで景色が変わってしまうのです。だからこそ私たちは時代とともに変化するお客様のニーズを捉え続けなければなりません。どれだけ調子が良かったとしても去年と同じことを続けるのではなく、常に新しいことにチャレンジしていく必要があるのです。

もう一つの「基本の徹底」ですが、店舗で言えばお店を清潔に保つための清掃やお客様への丁寧な接客などが「基本」にあたります。簡単なことのように思えるものの、これらを長期にわたって継続することは非常に難しく、どうしても疎かになりがちです。

例えばプロ野球の選手は、何千回、何万回、何十万回と素振りやノックを繰り返すことでスキルを身に付けていきますが、私たち小売業も考え方はまったく同じです。丁寧な接客や清掃といった「基本」を繰り返し続けることで、ようやくお客様から「このお店は安心だ」と思っていただけるような信頼を勝ち取ることができます。私たちのビジネスにおいては、「変化への対応」と「基本の徹底」を両立して進めていくことが重要だと考えています。

――最後になりますが、今回のプログラムに興味を持っている方々や未来の共創パートナーへのメッセージをお願いします。

永松氏 : 私たちセブン-イレブンは、常に新しいことに挑戦し、イノベーションを生み出し続けてきました。しかし、私たちだけで成し遂げられることには限界があります。セブン-イレブンの歩みは、様々なパートナーの皆様と共に創り上げてきた歴史であるとも言えるでしょう。

セブン-イレブンには、全国に約2万1500の店舗があり、40万人以上の従業員さんが活躍しています。このようなアセット・リソースと共創パートナーの皆様が有する専門スキルやノウハウを掛け合わせることで、これまででは生み出せなかった新しい価値が生まれることを期待していますし、それらを以て地域の方々へのさらなる貢献につなげていきたいと考えています。

取材後記

永松社長が語られていたように、セブン-イレブンは50年の歴史の中で様々な挑戦を繰り返してきた。おにぎり・お弁当の販売、公共料金の取扱、銀行ATMの設置、セブンプレミアム、セブンカフェなど、セブン-イレブンの数々のチャレンジは、私たちの暮らしを大きく変え、今やなくてはならないサービスとして存在し続けている。

全国2万店以上のリアル店舗に加え、それを支える巨大なサプライチェーン、さらには膨大な顧客データを有するデジタルプラットフォームなど、同社が有する豊富なアセットは非常に魅力的である。また、今回のトップインタビューを通じて、全社を挙げて共創プログラムに取り組もうとするセブン-イレブン・ジャパンの本気度や熱量を感じることもできた。

同社の魅力的なアセットと自社の独自技術・アイデアを掛け合わせることで、地域・観光・健康をベースとするイノベーション創出にチャレンジしたい企業や、セブン-イレブンと共に世の中を変えるようなサービスを生み出したいと考えている企業は、ぜひこの機会にエントリーいただきたい。

●『Seven-Eleven Japan Innovation Program 2024』の詳細は以下よりご確認ください。

https://eiicon.net/about/sej2024/

※早期応募締切は7月31日、最終応募締切は8月26日となります。

(編集:眞田幸剛、文:佐藤直己、撮影:加藤武俊)

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