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【トップインタビュー】常陽銀行 頭取・秋野氏に聞く――茨城県のリーディングバンクが新事業協創プログラムを開催する狙いとは?

【トップインタビュー】常陽銀行 頭取・秋野氏に聞く――茨城県のリーディングバンクが新事業協創プログラムを開催する狙いとは?

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常陽銀行は、茨城県を地盤に事業を展開し、「健全・協創・地域と共に」を経営理念に掲げる地方銀行だ。全国の地方銀行グループの中で資産規模で第3位に位置する総合金融グループ「めぶきフィナンシャルグループ」(東証プライム市場上場)の中核銀行の一つだ。

保守的な面も残る地方銀行業界にあって、先進的な取り組みに意欲的な銀行としても知られ、地域課題解決に向けて、従来の銀行の枠を超える新事業の創出・事業領域拡大に取り組んでいる。その一環として、同行では2022年から2年間、パートナー企業とオープンイノベーションを進めるための新事業協創プログラムを開催してきた。

3回目の開催となる本年は、プログラム名を『Nexus Bridge 2024』とリブランディングし、「脱炭素」「DX」「ライフプラン」「地域活性化」という4つのテーマで、今まで以上に幅広く意欲的なパートナー企業を募ることとなった。

募集開始に伴って、同行トップの秋野哲也頭取、および事務局と関連部署メンバーの方々に、新事業協創プログラム開催の背景や募集テーマ、求める協創パートナー像などを伺った。本記事では、前半で秋野頭取のインタビュー、後半で事務局メンバーのインタビューを掲載する。

【秋野頭取インタビュー】 協創パートナーと手を組み、地域課題解決の事業創出と、挑戦する文化の創造を狙う

――まずは秋野頭取のプロフィールについて少しお聞かせください。1986年に入行されていますが、どうして常陽銀行を選ばれたのですか。

秋野氏 : 就職先としては金融機関志望でしたが、なぜ当行を選んだのかといえば、私が茨城出身だということが1つ。それに加えて、茨城エリアは将来性が非常に高いと思っていたからです。当時、つくば科学万博があり、筑波研究学園都市が急速に発展していました。あわせて北関東自動車道・圏央道の高速道路、つくばエクスプレス、茨城空港、茨城港常陸那珂港区など、陸海空のインフラの整備計画も目白押しでしたからね。こういう地域で働くのは面白そうだと思って当行を志望し、入行しました。支店長や人事などさまざまな経験を経て、現在に至ります。

▲株式会社常陽銀行 頭取 / 株式会社めぶきフィナンシャルグループ 取締役社長 秋野哲也 氏

――秋野頭取は2024年6月に全国地方銀行協会の会長にも就任されています。現在、地方銀行が直面している課題にはどのようなものがあるでしょうか。

秋野氏 : 私が入行してから38年ほどになりますが、ちょうど入行後すぐにバブル時代となり、その後、バブルが弾けてからは不良債権処理、金融危機、デフレ、マイナス金利と時代が変遷してきました。銀行の本業である融資では、昔は2%以上の利ざやが取れていましたが、近年は長い間、利ざやが1%も取れない低収益を余儀なくされ、銀行業界にとっては逆風の時代が長く続いてきました。

そんな状況の中で、一方では店舗の統廃合をはじめとした業務改革でコスト削減を、もう一方では融資に限らない、各種サービス提供によるフィービジネスの拡大を進めてきたのが、平成から令和の初頭にかけてです。最近になって、ようやく日銀の政策金利引き上げにより、金利のある世界に戻りつつありますが、今後もお客さまの多様なニーズへの対応力の向上と、収益確保、収益源の多様化は大きな課題です。

――そういった状況に対して、どのような変革が求められているとお考えですか。

秋野氏 : まず、預金と融資のビジネスは、それ自体が生み出す付加価値は限られると思うのです。融資を受ける企業や人は、そのこと自体が目的ではありません。企業なら事業を成長させたいとか、個人なら住宅を建てたいといったニーズや悩みがあって、それを解決する手段としてお金を借りています。それであるなら、銀行としてはその企業や人がどんな悩みやニーズを持っているかを把握して、解決するためにどんな提案ができるのかを考えなければなりません。

企業に対しては経営課題に向き合い・解決つなげるためのソリューションの提供を行っています。例えば、昨今、事業承継やM&Aのニーズは非常に高まっており、その支援も重要です。他にも地域内の企業同士を結びつけるビジネスマッチングなど、地方銀行ならではのコンサルティング能力も一層向上させていかなければならないでしょう。さらには、単にスムーズな商流をサポートするだけではなく、お客さまの課題解決にむけ、銀行自らビジネスを創出するという従来の銀行の業務範囲を超えるような役割も期待されています。

また、個人に対しては、人生100年時代を迎える中でますます重要となる、資産の形成、管理、承継など、ライフステージに応じたニーズに応えていかなければなりません。地域社会あっての地方銀行です。少子高齢化の中で、地域経済・地域社会が持続していくために銀行はなにができるか、真剣に向き合う時代が訪れたと考えます。地域が持続的に成長し、それによって私たちも成長できるというWin-Winの関係こそ地方銀行の原点であって、そこに立ち返るべきでしょう。

――いまおっしゃったように、地方はどこも人口減少が進んでおり、茨城県も例外ではありません。その中で常陽銀行にはどのような役割が期待されているのでしょうか。

秋野氏 : 最初に述べたように、首都圏に隣接して交通の便も良くなった茨城がポテンシャルの高い地域であることは、今でも変わりません。人口は確かに減っていますが、県のGDPに表されるような産業規模は拡大しています。土地も多く、工場などが移転してくる企業は2023年度では全国で1位です。

東京の企業への融資も地方銀行としてはかなり積極的に行っており、融資をきっかけにした茨城への企業誘致にも力を入れています。住民は減っても、そういった企業進出に伴う設備投資などを通じて交流人口や関係人口が増えれば、地域の活力は増していきます。

――常陽銀行が中核となっているめぶきフィナンシャルグループでは「長期ビジョン2030」を策定していますが、そこでは「伝統的銀行領域、総合金融サービス領域、新事業領域」の3つの事業領域が設定されています。それぞれどのような動きがあるのでしょうか。

秋野氏 : まず、「伝統的銀行領域」というのは主に預金と融資で、これが金融機関としてのメイン業務であることには変わりありません。「総合金融サービス領域」というのは、先ほどお話ししたような企業や個人の様々なお悩みに対するコンサルティングやソリューション提供によって、付加価値を生み出す領域です。そこには金融以外の部分も含みます。例えば、仕入れ先や販売先のご紹介などのビジネスマッチング事業や、デジタル化、脱炭素経営のサポート事業などです。

さらに、「新事業領域」は、私たちめぶきフィナンシャルグループ自身で地域課題を解決するビジネスを従来の事業領域を超えて行っていこうという領域です。具体的には、地域のカーボンニュートラルに取り組む常陽グリーンエナジーや、地域商社のコレトチ、オンラインで金融商品仲介をするあしぎんマネーデザインなどですね。新事業領域の中にはオープンイノベーションの取り組みも含んでおり、今回開催する新事業協創プログラムもその1つになりますし、他には、CVCの「Jレイズファンド」を通じたスタートアップ向けの投資や事業連携にも取り組んでいます。

▲「第3次グループ中期経営計画」(2022年4月1日〜2025年3月31日)より。伝統的銀行領域、総合金融サービス領域、新事業領域それぞれの実現に向けた考え方がまとめられている。

――その新事業協創プログラムは過去2回開催され、今回の『Nexus Bridge 2024』で3回目となります。この取り組みの狙い、どういったことを実現したいのかを教えていただけますか。

秋野氏 : 主に2つあります。まず、中心的な狙いは、地域課題の解決のために新たな事業やサービスを創出することです。後で担当者から具体的な募集テーマの話があると思いますが、ひとくちに地域課題といっても多種多様なものがあります。当然、私たちの商品・サービスだけでそのすべてに対応はできないため、協創パートナーの皆様と力を合わせ、多様な地域課題への対応が図れればと考えています。

私たちは地域のみなさま、様々な企業と広範囲で深いつながりがありますので、そのネットワークをスタートアップの方に活用していただくことで、地域に即した新事業やサービスの創出につなげることができるのではないかと期待しています。

もう1つの狙いは、私たちの銀行内部の課題として、挑戦する風土を醸成したいということです。一般論として、銀行はコンプライアンスを重視しており、それは金融業界への信頼の根幹であり重要なことである一方、減点主義の時代も長かったこともあり、新しいことに挑戦するという文化が育ちにくいという傾向があります。本プログラムを通じて、私たち事業創造にも当事者として取り組むことで、失敗を恐れず挑戦する文化を育んでいければと思います。

――では、最後に『Nexus Bridge 2024』に応募されるスタートアップに向けて、秋野頭取からのメッセージをお願いします。

秋野氏 : 多種多様な地域課題があるということは、それだけ新規ビジネス創出の芽が眠っているということです。私たちと一緒になって汗を流しながら、協創パートナーとなっていただき、その芽を新たなビジネスへと育てていきましょう。

今回のプログラムは、単なる受発注関係ではありません。協創パートナーの皆様に提供していただく知恵やノウハウもあれば、私たちからご提供できるフィールドやアセットもあります。それらを組み合わせれば、必ず地域に貢献し地域に新しい価値を創造できるビジネスが生み出せると期待しています。

高い信用力を含めた常陽銀行のアセットを活用――プログラム参加のメリットとは?

――ここからは事務局の方にお伺いします。今回の『Nexus Bridge 2024』に参加する協創パートナー企業のメリット、またどんな受け入れ体制を用意しているのかを教えてください。

高橋氏 : 協創パートナーのメリットについては、3点あると考えています。1点目は、高い信用力を含めた銀行のアセットが利用できることです。私たちは茨城県ではナンバーワンの銀行であり、地域に根付いて多くの企業、個人の顧客基盤を持っています。常陽銀行の名前が使えることで、協創パートナーの事業やサービスをスムーズに地域に浸透させることができます。

2点目は、地域課題の横展開が可能なことです。茨城県で生じている地域課題は、茨城県固有の課題というわけではなく、日本全国の地方が共通して抱えているものも多いと考えます。茨城県で成功事例が作れれば、それを全国で展開できる可能性が高いでしょう。

3点目は、常陽銀行の特定部署だけでプログラムを担っているわけではなく、部署の垣根を越えた銀行全体を横断した、一気通貫体制で取り組んでいることです。そのため、意思決定が早く、現場も含めて銀行の持つアセットを十分に活用していただけます。

付け加えると、採択後の実証実験などに使ってもらえる予算をあらかじめ確保しているので、その点もスピード感のある実証実験に有益でしょう。

次にプログラムの体制ですが、特色は2点あります。1つは、今述べたことと重なりますが、部の垣根を越えた体制で取り組んでいることです。もう1つは、プログラムの事務局メンバーに、実際に新規事業を立ち上げた経験のある者をアサインしている点です。新規事業立ち上げの失敗も成功も経験したメンバーが、パートナーや関連部メンバーが感じる様々な疑問や不安にリアルなお答えしながら、伴走することは、大きなアドバンテージになると考えています。

▲株式会社常陽銀行 営業企画部 戦略企画グループ 新事業開発チーム 主任調査役 高橋真興 氏

――いまお伺いしたメリットついて、実際に過去のプログラムではどのように生かされる場面がありましたか。

高橋氏 : 法人の例だと、電流計にAIを組み込んで用途がわかる設備を開発したスタートアップがありましたが、私たちの支店をはじめ、お客様である小売店、スーパー、工場などに設置してもらって、PoCをしました。結果としては、私たちのサービスとしての事業化は難しいという結論になったのですが、短期でその結論を出せたのは、多くのお客様にご協力いただいてご意見のフィードバックを受けることができたからだと思います。

また、高齢者向けサービスを考えていたパートナー企業がありましたが、PoCのために各支店を通じて働きかけて、ご協力いただける高齢者を100名以上集め、生の声を聞くことができました。リサーチ会社などに依頼すればかなりの費用がかかるものだったでしょう。支店を通じて地元の皆様とのネットワークがあるからこそできたことです。

――今回、3回目のプログラム実施となりますが、過去から進化している点や、特に今年注力している点などを教えてください。

高橋氏 : スタートアップとの連携というのは、今まで通り進めていきますが、それに加えて今回は、いわゆるイントレプレナーと呼ばれる、事業会社の中で新規事業開発に取り組んでいる方たちにも、ぜひ多く参加していただきたいと考えています。その点を踏まえて、プログラム名も変更して、募集ターゲットの範囲も広げました。

ちなみに、プログラム名も変えて「常陽銀行」の冠を外しましたが、これは個人的な意見ではありますが、将来的には他の金融機関にも参加してもらいたいと考えており、その門戸を開くことも念頭においております。

――プログラムのゴール、達成目標については、どのようにお考えでしょうか。

高橋氏 : もちろん、採択されたパートナーと一緒に事業を作り収益が上げられるところまで進めることが最終的な目標ではありますが、それには数年単位の時間がかかります。まずは、長期の座組で一緒にやっていけるパートナー企業と1社でも多く出会えればと思っています。

そして、茨城県を起点として他地域にも広がっていく、ユニバーサルサービスになるような事業を、このプログラムから生み出していけると嬉しいです。

「脱炭素」「DX」「ライフプラン」「地域活性化」――4つのテーマオーナーに聞く

●募集テーマ①:「脱炭素」(テーマオーナー・川村氏)

――ここから4つある募集テーマの概要について、各テーマのオーナー(担当者)の方にお伺いしていきます。まず「脱炭素」のテーマについて、川村さんに登場いただきます。このテーマを設定された背景を教えてください。

川村氏 : まず、国としても目指している大きな社会課題であるという点が挙げられます。私たちのめぶきフィナンシャルグループも上場企業ですから、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)に参加して、CO2排出量等の開示もしています。お客様の中にも、脱炭素への取り組みを進めている企業は多くあり、自分たちやお客様に関わりの深い課題でもあります。

▲株式会社常陽銀行 コンサルティング営業部 リサーチ&コンサルティンググループ 主任調査役 川村晋一 氏

――具体的にはどのような新事業を生み出したいのでしょうか。

川村氏 : キーワードとなるのが、地域の「グリーンエコシステム」です。常陽銀行でも、CO2排出量を可視化する「エコサポ」というサービスを今年から始めているのですが、可視化はできても、やはり事業者様のほうでは人手不足やコスト問題などがあり、なかなか脱炭素の具体的な取り組みを進められない現状があると認識しています。そこで、アクション計画の策定段階から実行までの網羅的な支援ができればと思います。

――求めるパートナー企業のイメージはありますか。

川村氏 : 私たちのエコサポでも、コンサルティング営業部がサービスを展開していますが、コンサルティングの領域はどうしても労働集約型のビジネスになってしまいます。ですので、そのボトルネックも上手くクリアしながら、お客様の脱炭素の取り組みを支援できるような技術を持つ会社さんがパートナーになっていただけると心強いですね。

●募集テーマ②:「DX」(テーマオーナー・小林氏)

――では、次に「DX」のテーマオーナー、小林さんに伺います。質問は先ほどと同じですが、テーマ設定の背景から教えてください。

小林氏 : 世の中的に「DXを進めなければならない」ということが広くいわれているのに、実際は地方では顕著に進めている企業が少ないという現実があります。地方においては、働き手がどんどん減っているので、その対応策としてもDXの必要性が高まっているのですが、DXを進める人材自体がいないというジレンマがあるので、私たち地方銀行が支援する価値が高いと考えています。

▲株式会社常陽銀行 経営企画部 DX戦略室 小林直樹 氏

――そういった企業の現場の課題感は、実際に小林さんがDX関連の商材を扱う中で感じられたのですか。

小林氏 : 私が営業店にいた頃は、当行内にあるDXアドバイザーという資格を取得し、企業様の課題に対してビジネスマッチング先のソリューションをご提案したりしていました。また、本部にきてからは、企画する側の立場で、取引先のDX推進のための商品企画も担当していました。その意味では、現場の課題意識は肌で感じています。

――では、このテーマにおける具体的な事業イメージを教えてください。

小林氏 : DX人材の不足が市場の大きな課題なので、そもそもの土台を整えるという意味で、地域・企業のITリテラシーの向上につながる事業が考えられます。また、これまでの私たちのDXアドバイザーは、コンサルティングをして、マッチングできるお客様のDXソリューションをご紹介することが中心でした。今後は、更に一歩踏み込んで私たち自身がソリューションを作り、ご提供できるようにしていければと思っています。

その面では、汎用的なものよりも、例えば建設業、製造業、介護業など、特定業種向けの販売管理や生産管理など、特化したものが面白いですね。

――求める協創パートナーのイメージはいかがでしょうか。

小林氏 : データの利活用やAIなどに知見を持っている企業者様への期待感があります。その上で、私たちの地方銀行ならではの、お客様の地域特性などを踏まえて、そこに合わせて商品を一緒に考えていただけるような方であればうれしいです。

●募集テーマ③:「ライフプラン」(テーマオーナー・藤田氏)

――「ライフプラン」は藤田さんがテーマオーナーですね。テーマ設定の背景からお聞かせください。

藤田氏 : 銀行業務の個人部門ですと、お客様のライフステージが密接に関係してきます。特に、比較的若年層のお客様は、今後、結婚、出産・育児、マイホーム購入など、大きなライフイベントがたくさん訪れます。一方でいま、若年層の方は、利便性や金利条件面からネットバンクをメインで利用される方が多いので、そういった方との関係性をしっかりと作っていきたいという意味でも、ライフプランというテーマに着目しました。

▲株式会社常陽銀行 営業企画部 個人営業企画グループ 調査役 藤田宏美 氏

――ライフプランは幅広い言葉ですが、具体的には、どのような事業を作っていかれたいでしょうか。

藤田氏 : おっしゃる通りで、具体的な事業イメージの部分について私たちの間でも議論を重ねましたが、私たちの内部で考えていると、「若い人にはこういう預金がいいよね」というように既存の金融サービスありきの発想にどうしてもなってしまいがちです。だからこそ、今回のプログラムでは、そうではない、金融サービスを前面に出さないような形でのアプローチやサービス・コンテンツのご提案があればと期待しています。生活に溶け込んだタッチポイントから、『自然と常陽銀行に触れている』という状態ができているのが理想だと考えています。

例えば、就活や婚活といった大きなライフイベントのサポートをして、その後につながる接点を作るような取り組みは、他行での事例もあり、ヒントになるかと思います。

――では、どんな協創パートナーとの出会いを期待していらっしゃいますか。

藤田氏 : 私は以前、営業店で個人のお客様と接しており、お客様にはそれぞれのライフステージに応じて本当に様々なお悩みがあるのだなと実感していました。そういった困りごとや悩みを解決して、この茨城県で、若い方やファミリー層の方が本当に安心して暮らせるような情報発信やサービス提供をしたいと考えています。そのようなアイデアをお持ちの企業様にぜひご応募いただきたいと思います。

●募集テーマ④:「地域活性化」(テーマオーナー・櫻山氏)

――では最後に、櫻山さんに「地域活性化」についてお伺いします。このテーマの背景を教えてください。

櫻山氏 : 常陽銀行は茨城地域におけるリーディングバンクを標榜しています。地域の中核的金融機関ともいえます。その立場として、地域の産業を育て、住民の暮らしを支え、ひいては活力をアップさせていくことは、当然に求められる役割だと考え、「地域活性化」というテーマを設定しました。

▲株式会社常陽産業研究所 地域コンサルティング部 主任調査役 櫻山章裕 氏

――このテーマにおいて、具体的にはどのような事業を実現したいとお考えですか?

櫻山氏 : 水戸駅周辺の場合、朝と夕方はビジネスパーソンや学生で人が多く行き交っていますが、昼間や夜になると人がまばらな状態です。また、いまはシャッターが閉まっている店も多く、少し寂しい感じもある水戸を中心とした茨城エリアに、多くのお店が開いて、人々で賑わっている姿を描いていきたいと思います。そのために、事業者様やお店などを結びつける商談会、マッチングイベントみたいなものをどんどん実施していくことが必要です。

これまではどちらかといえば自治体がその役割を担ってきましたが、私たちも街に賑わいを取り戻すために当事者として取組んでいきたいという思いがあります。具体的には、移動の利便性を高めるモビリティ関連の事業や、空き店舗、空き家をこれまでにないやり方で有効活用する事業などを想定しています。

――求めるパートナー企業やアイデアなどについては、いかがでしょうか。

櫻山氏 : 行政が取り組むモビリティの整備というと、交通弱者として高齢者の利用といったことが想定されます。しかし、例えば高校生、大学生などの学生さんも、意外と移動手段が少ないという現状があります。そういった若者が気軽に使えるような新たなモビリティサービスのアイディアをお持ちの企業様とはぜひご一緒したいですね。

また、空き家や空き店舗の活用では、単なるリフォームというのではなく、新しいライフスタイルを示していくような提案があれば伺ってみたいと思います。

協創パートナーと一緒に、社会的インパクトを創出したい

――では全体の最後に、『Nexus Bridge 2024』に応募いただく未来の協創パートナーに向けて一言、メッセージをお願いします。

高橋氏 : 今回の4つのテーマは、いずれも中長期的に重要とされている社会課題です。社会課題解決はビジネス成立との両立が難しい側面はありますが、常陽銀行という存在か介在することで実現できる部分があると信じています。簡単に解決策が見つかる課題ではありませんが、だからこそ社会的インパクトを創出したいという志と意気込みのある企業様と出会えることを楽しみにしています。

取材後記

秋野頭取の話にもあったが、銀行業界での仕事というと、前例主義で保守的なものというイメージがどうしても先行する。しかし、今回の取材を通じて、常陽銀行にはそのような雰囲気は感じられず、頭取を先頭にチャレンジングな取り組みへの意欲があふれていた。特に今回、部門の垣根も越えて、常陽銀行全体で一丸となって、本プログラムに取り組む姿勢をより鮮明にしたことにも、それははっきり現れている。

高い社会的信用、これまでにも顧客のビジネスマッチングや新事業創出を進めてきた経験、実証実験段階での資金支援など、魅力的なアセットも多く抱える常陽銀行との協創に、ぜひ多くの企業にトライしていただきたい。

※『Nexus Bridge 2024』の詳細は以下をご覧ください。

https://auba.eiicon.net/projects/21688

※常陽銀行の経営理念に従い、本文中では「共創」ではなく「協創」表記を使用しています。

(編集:眞田幸剛、文:椎原よしき、撮影:佐々木智雅)

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