「α世代/Z世代」、「インバウンド/越境」、「AI」――ドコモデータの優位性を最大限に生かし、新たなマーケティングソリューションをドコモと生み出す、共創プログラム始動!
ドコモならではのデータを活用し、幅広い業種へ「シングルID×フルファネル」で包括的なマーケティングDX支援を行っている「株式会社NTTドコモ マーケティングイノベーション部」。変化するマーケットやトレンドにスピーディーに対応し、パートナー企業と共に新しいマーケティングソリューションの共創を実現すべく、オープンイノベーションプログラムを実施している。
本プログラムでは、今年度のテーマを「α世代/Z世代向けマーケティング」、「インバウンド/越境マーケティング」、「AI×マーケティング」の3つに設定。マーケティング領域で幅広い共創アイデアを募集している。
また、約1億会員※1を有するd POINT CLUBの会員基盤や幅広い加盟店(dポイント加盟店約90万社以上※1、d払い加盟店300万店舗※1)を持つドコモと、双方のアセットを掛け合わせた柔軟な共創を目指せることが、本プログラムの大きな魅力となっている。
そこでTOMORUBAでは、プログラムの応募開始にあたり、プロジェクトマネジャーの 坂 冬木 氏と、プロジェクトリーダーの 名取 俊介 氏にインタビューを実施。プログラムの実施背景や参加メリット、募集テーマの詳細やこれまでの共創事例について話を聞いた。
「シングルID×フルファネル」でマーケティングDXを支援
――まずは、今回のオープンイノベーションプログラムを主催するマーケティングイノベーション部の概要を教えてください。
坂氏 : マーケティングイノベーション部は、ドコモのマーケティングソリューション事業の中核事業として、パートナー企業をメインにマーケティングの課題解決支援を行っています。
部門のパーパスとして、「様々なパートナーとの連携によって、日本最大・最強の『データの力』と『人を動かす力』を実装し、あらゆる企業のマーケティングDXをリード・進化させるエコシステムのハブ的な存在になる。」というのを掲げています。
また、ドコモの顧客基盤・データ、パートナーデータを活用し、「シングルID×フルファネル※2」でのソリューション提供により企業のマーケティングDXを支援することを事業戦略のスコープに据えています。ドコモならではのデータを活用していくことはもちろんですが、単にデータを見るだけではなく、世の中をよりよくするような新しい価値を創出するパートナー企業とのアライアンスも重視しています。そして、我々の担当は、主にM&Aや業務提携などの新規アライアンスによって、パートナー企業とドコモのシナジーを創出・加速させ、グループとして総合的に競争力を高めて非連続的な成長を遂げていくことをミッションとしています。
※1)2024年3月末時点
※2)シングルID×フルファネル……ユーザーの契約者情報や端末の位置情報、アプリ利用ログなど複数のデータを1つのアカウント(以下、シングルID)に紐付け、ユーザーの行動や嗜好を把握※3。ターゲット設計から認知獲得、販売促進、リピート促進など、マーケティングのさまざまなフェーズを最適化するプロダクトを提供しています。
※3)事前に同意を得ているユーザーのみ対象
▲株式会社NTTドコモ コンシューマサービスカンパニー マーケティングイノベーション部 アライアンス担当課長 坂 冬木 氏
――今回のプログラムを担当するおふたりのご経歴もお聞かせいただけますでしょうか。
坂氏 : ドコモに入社後、国内営業を経験し、そこからインドやシンガポールなどグローバルでのキャリアを築いてきました。担当業務としては、代理店営業やサービス拡大、国内外での新規ビジネスの検討/立ち上げなど幅広いのですが、ドコモの商品・サービスの展開やパートナリングが常にキャリアの軸としてあり、パートナーと一緒にどのように新しいものを作り、世の中をよりよくできるかを考え続けています。
名取氏 : 新卒でNTT東日本に入社し、法人営業や代理店営業に従事していました。その後、スタートアップに転職し、AIを活用したマーケティングソリューションの新規事業の立ち上げに携わっていました。ドコモに入社後は大企業とスタートアップ双方の経験を活かして、オープンイノベーションプログラムの運営を行っています。
▲株式会社NTTドコモ コンシューマサービスカンパニー マーケティングイノベーション部 アライアンス担当 名取 俊介 氏
クローズドで実施してきたプログラムを、今年度からオープンに
――今回、オープンイノベーションプログラムを公募型で立ち上げた背景をお聞かせください。
名取氏 : 実は昨年まで、我々のプログラムはクローズドで実施していました。テーマに合った企業をリスト化し、こちらからアプローチする、といった流れです。ただ、クローズドだと出会える企業が限られますし、こういう取り組みを社外に発信し、ドコモのレピュテーションを高めることも重要だと考え、今年度からはプログラムをオープンにし、パートナー企業を広く募集することにしました。
――パートナー候補企業にとっての参加するメリットとしてはどんなものがあるでしょうか?
名取氏 : メリットは実証環境だと考えています。豊富なクライアントアクセスを始め、多種多様なドコモデータやドコモソリューション、PoCにおける資金面での支援など、実証を行うために様々なアセットを提供することが可能です。
また、プログラムの出口として、出資や共同事業化など、応募頂いた企業の要望を汲み取りながら、柔軟に共創の形を模索できるところも、メリットではないかと考えています。
――PoCで活用できるアセットはどのようなものがありますか。
名取氏 : まず、クライアントアクセスについて。PoCの実施フィールドとして、我々が普段お取引させて頂いているパートナー企業さまにお声がけすることが可能です。多様なパートナーがおりますので、共創案やPoCの内容に合う企業を、ファーストクライアントとして見つけることができるのではないかと考えています。
次は、d POINT CLUBの会員基盤と、dポイント/d払い加盟店基盤の2つの基盤を有する、膨大なドコモデータです。数もさることながら、オフライン/オンラインを跨いだデータの多種多様さやデータの精度も強みです。また、それらを活用した様々なマーケティングソリューションや、子会社のアセットも提供できるのも強みの1つです。子会社には、昨年グループに加わった株式会社インテージホールディングスやドコモが保有するデータを起点とした広告マーケティングソリューションの企画開発事業等を行う株式会社D2C、デジタルOOH広告配信プラットフォームを運営する株式会社 LIVE BOARDなどがあります。
最後に、資金面での支援ですが、PoCに関わる費用の一部をこちら側で負担することが可能です。条件や上限金額については協議の中でお話しできればと思います。
――本プログラムの目標やゴールについてお聞かせください。
名取氏 : 5年後に数億円規模の事業やソリューションを創出することを目標として掲げています。ただ、金額にとらわれすぎると実現できない共創もあると考えていますので、目標として掲げつつも、多様な共創の形を模索していきたいと思っています。
「α世代/Z世代向けマーケティング」「インバウンド/越境マーケティング」「AI×マーケティング」を募集テーマに設定
――今回は、募集テーマを3つ設定されていますね。
名取氏 : はい、マーケティング市場の動向や我々の注力領域を踏まえ、今年度はテーマを3つ設定しています。「α世代/Z世代向けマーケティング」「インバウンド/越境マーケティング」「AI×マーケティング」の3つです。ただ、テーマに当てはまらないものであっても、マーケティング領域のソリューションや技術などをお持ちで、プログラムに興味がございましたら、ぜひお気軽にご応募頂ければと思っています。
また、本プログラムでは、解決したい具体的なニーズや解決手法はあえて決めていません。現状で顕在化している課題は日々解決に向けた取り組みが行われているため、より中長期的な視野で、潜在化しているような課題を発見・解決したり、私たちの想像を超えるような技術やソリューションをお持ちの企業の皆様とご一緒することを目的の1つにしているからです。
――それぞれのテーマについて、詳細をご紹介ください。まずは「α世代/Z世代向けマーケティング」からお願いします。
名取氏 : トレンドの発信源となることが多く、今後の消費を担う若年層との顧客接点はいち早く強化していきたいターゲット領域です。デジタルネイティブなα世代/Z世代向けの新たなマーケティング手法をパートナー企業と共に開拓したいと思っています。
例えば、コンテンツの中に広告商品を取り込むプロダクトプレイスメント広告。昔から使われている手法ではありますが、ゲームやVRの領域であればこの世代とマッチすると思いますし、広告感が薄いため、広告に忌避感を持つ若年層に受け入れられやすいのではないかと考えています。また、海外の動向から、「音声」を活用したマーケティングに注目しており、これも若年層と相性がいいのではないかと思っています。
――「インバウンド/越境マーケティング」はいかがでしょうか。
名取氏 : 国内人口が減少する中、新たなターゲットとして訪日外国人向けソリューションも欠かせない分野です。ドコモは、国際ローミングサービスを利用した際に届くSMSによる顧客接点や、その際に得られるローミングデータを有しています。それらの既存アセットを活用したものでも良いですし、全く新しい共創アイデアでも構いません。
――3つ目のテーマ、「AI×マーケティング」の紹介もお願いします。
名取氏 : AIは今の世の中に不可欠ですから、ドコモでも活用に向けた取り組みが進んでいます。よりスピーディーにソリューションを開発していくために、既にAIを活用したソリューションをお持ちの企業の皆様と共創ができれば、と考えています。AIによる広告の最適化や、AIで生成されたコンテンツ/クリエイティブの広告活用などが例になります。
過去の共創事例から見えた、柔軟な共創体制
――これからは、過去の共創事例について伺います。まず、これまでにどのような実績があったのでしょうか。
名取氏 : 昨年度は「モバイル空間統計の活用」と「ファンマーケティング」の2つのテーマで実施し、各テーマで20社程度、共創に向けたディスカッションをさせて頂きました。その後、議論や審査を経て、各テーマ3社ずつとPoCを実施しています。また、そのうち1社とは共創サービスをリリースするところまで至っております。
――PoCを実施し、共創が進んでいる企業について、もう少し詳しくお伺いしたいと思います。どのようなお取組みをされてきたのか、会社名を交え、詳細をお願いします。
名取氏 : それでは株式会社Tailor App(以下、Tailor App)さまとのお取組みを紹介させて頂きます。Tailor Appはライブコマースを軸に事業展開をしている企業です。お話しをさせて頂く中で、ライブコマースという手法が新しい顧客体験として非常に魅力的に感じたのと、Tailor App側でもライブコマースと広告の掛け合わせを目指していることが分かり、共創をスタートするに至りました。
PoCでは、それぞれの既存ソリューションを掛け合わせた検証を行いました。具体的には、「ドコモデータによるライブコマース視聴者の可視化」「可視化したデータの広告ターゲティングへの活用」「ライブコマースを元にした短尺動画クリエイティブの広告活用」の3つです。それらの検証結果を元に、より具体的な共創実現に向けた議論を、現在進行形で進めています。
事例については、自社HPでも複数紹介していますので、ぜひそちらもご覧ください。
https://ssw.web.docomo.ne.jp/marketing/alliance/#example
――共創において工夫したことがあればお聞かせください。
名取氏 : こういった共創で成果を出そうと思うと、それなりの負担がかかります。また、進めて行く中で、課題にぶち当たることもあります。そんな時に、それぞれのパートナー企業に合わせた柔軟なフォローができるよう、常に心がけていました。例えば、プログラムでは短期間で成果を出すことが求められますので、人的なリソースが課題になることがよくあります。そのような時には、ドコモ側で外部の業務委託を活用しながら、稼働面のフォローをすることも可能です。その他、PoCに合わせてプログラムのスケジュールを延長したり、PoC費用を追加で負担したり、と各社の要望に合わせて、柔軟な支援ができることがこのようなプログラムのいいところだと感じています。
――過去、プログラムに参加した企業からは、どのようなフィードバックがありましたか。
名取氏 : 柔軟に伴走支援をしてもらえた、という声を多く頂きました。ただ、一方で、ドコモ側のスピードに不満の声を頂くこともありました。大企業ならではの組織・制度的な問題もあり、スタートアップのスピード感についていけていない部分があったのです。特に、契約関係の対応に時間がかかってしまっていたのですが、これまでの取り組みの中である程度の型が見えてきているので、ここは改善していけるよう、体制面含め試行錯誤を重ねています。
アイデアはもちろん、パッションも重視していきたい
――最後に、応募を検討している企業にメッセージをお願いします。
坂氏 : Tailor Appさんとの共創では、同社の社長である松村さんが中心となって対応をしていただきました。そこで印象的だったのが、「私が”自分ごと”として、ドコモと提携するんだという意気込みで推進していた」という松村さんの言葉です。
実際にそうしていただくことで、社長の情熱とエネルギーを直接感じることができたことが、成果につながったと思います。共創するからには、目指すゴールやパッションも共有できて、大きな花を咲かせるために一緒に走っていただける企業とぜひ組みたいと思っています。
名取氏 : 今回3つのテーマで募集していますが、マーケティング領域であれば、別の切り口での応募も大歓迎です!ぜひお気軽にご応募ください。皆様とお話しさせて頂くのを楽しみにしています。
取材後記
約1億もの会員基盤やデータ、さまざまな実証フィールド、PoCの費用負担など、ドコモのアセットは非常に魅力的だ。ただ、このプログラムの場合はそれだけではない。大企業やスタートアップの組織文化を理解している担当者が伴走し、しっかりとゴールを共有して歩んでいけることは、応募企業にとって非常に心強いのではないだろうか。パートナーをオープンに公募するのは今回が初めてだが、過去クローズドで共創を進めてきた実績もある。テーマも幅を狭めず、さまざまなアイデアを募集しているため、ぜひ応募を検討して欲しい。(2025/1/31応募締切)
https://eiicon.net/about/nttdocomo-umi2024/
(編集:眞田幸剛、文:佐藤瑞恵、撮影:山﨑悠次)