1. Tomorubaトップ
  2. ニュース
  3. 愛知県内8自治体とスタートアップ・事業会社との共創プロジェクトに迫る――2025年度の『スタまち』から生まれた成果とは。DEMODAYの模様をレポート!
愛知県内8自治体とスタートアップ・事業会社との共創プロジェクトに迫る――2025年度の『スタまち』から生まれた成果とは。DEMODAYの模様をレポート!

愛知県内8自治体とスタートアップ・事業会社との共創プロジェクトに迫る――2025年度の『スタまち』から生まれた成果とは。DEMODAYの模様をレポート!

  • 16384
1人がチェック!

去る3月18日、中日ホール&カンファレンス(名古屋市)にて、愛知県が主催する6つのイノベーション推進事業に関する合同DEMODAYカンファレンスが開催された。

このイベントでは、『A-IDEA』・『AICHI CO-CREATION STARTUP PROGRAM 2025』・『スタまち〜スタートアップと自治体で挑む、未来のまちづくり〜』・『TECH MEETS』・『愛知自動車サプライヤーBUSINESS CREATION 2025』・『AICHI NEXT UNICORN LEAGUE』の6つのプログラムから生まれた成果が発表された。

イベント当日は、各プログラムの成果発表に加え、有識者によるスペシャルセッション、50を超える登壇企業と面談ができるブース出展、ネットワーキングなども実施され、スタートアップ・エコシステムの発展や地域連携、オープンイノベーションに関心を持つ多くの来場者で賑わった。

本記事では、そのうちの『スタまち〜スタートアップと自治体で挑む、未来のまちづくり〜』の成果発表会の模様をお伝えする。愛知県内8自治体とスタートアップ・事業会社が連携して挑んだ、まちづくりに関する共創プロジェクトの成果に注目してほしい。

自治体とスタートアップでチャレンジする未来のまちづくり実証プログラム

冒頭、プログラムの運営を担う株式会社eiiconの沖健人氏が『スタまち〜スタートアップと自治体で挑む、未来のまちづくり〜』(以下、『スタまち』)の概要について説明した。

『スタまち』は、自治体とスタートアップが一体となってまちづくりに関する課題を解決するプログラムだ。沖氏は、このプログラムには大きな特徴が2点あると紹介した。

1点目は、各自治体によるガバメントピッチの実施だ。参画スタートアップを募るにあたり、自治体担当者が自らピッチを行って課題を発表することにより、各自治体の課題に対して解決策となり得る技術・サービスを持つスタートアップとの出会いを創出している。2点目は、1プロジェクトあたり最大1000万円の実証支援金であり、自治体とスタートアップとの規模の大きな実証・共創を手厚く支援する体制を整えている。

沖氏は、『スタまち』のマッチングを通じて県内8自治体とスタートアップによる実証プロジェクトが生まれていることや、半年間の実証期間を経て様々な成果が現れていることを報告し、参加者たちに「各自治体のまちづくりにとって大きなインパクトをもたらす共創成果に注目してほしい」と呼びかけた。

【プロジェクト成果発表ピッチ】 2025年の『スタまち』から生まれた8つのプロジェクトチームが成果を報告

プログラム概要の説明終了後、『スタまち』から生まれた8つのプロジェクトチームによる成果発表ピッチが行われた。ここからは、以下の登壇順で各チームのピッチ内容を紹介する。

【1】大府市×株式会社On-Co×東海旅客鉄道株式会社

【2】日進市×BLUE BEES株式会社×株式会社セネック

【3】東浦町×株式会社マップフォー×株式会社NTTフィールドテクノ

【4】岡崎市×株式会社リーゴ×株式会社日本旅行

【5】春日井市×株式会社SAGOJO

【6】西尾市×株式会社artkake

【7】常滑市×ブルーアイズ株式会社×中部電力株式会社

【8】刈谷市×株式会社トワール

【1】大府市×株式会社On-Co×東海旅客鉄道株式会社

人と地域をつなぎ、挑戦をまちに根づかせる地域活性化モデル「さかさマルシェ」

大府市とOn-Co、東海旅客鉄道(以下、JR東海)は、1日あたり約2.7万人が利用する大府駅周辺の賑わいづくりを目指した「さかさマルシェ」の実証を行った。「さかさマルシェ」は、On-Coが運営する「さかさま不動産」の仕組みを取り入れたマルシェ(青空市・イベント)だ。

アイデアのベースとなった「さかさま不動産」は、不動産を探している借主がサイトに情報を掲載し、不動産オーナー側が借主を選ぶという逆転の発想から生まれたマッチングサービスであり、遊休不動産や空き家の活用など様々な地域課題の解決手段としても注目を集めている。

今回の「さかさマルシェ」では、不動産を探す事業者などが大府駅前で開催されるマルシェに出店し、一般の来場者や市内の不動産オーナーに対して事業内容や事業への思いをアピールしてもらうことで、両者のリアルな場でのマッチング機会と賑わいの創出を目指した。また、JR東海とはPR面で連携しており、周辺のJR各駅では、「さかさマルシェ」の開催に合わせてポスターやサイネージ動画が掲示された。

すでに第4回目までの出店者募集が行われており、出店応募者数の累計は106名、実際の出店者数も51組と盛況だ。大府市としても、市内での新しい事業や店舗出店に意欲を持つ挑戦者層の顕在化や、新たな不動産オーナーの発掘につながったほか、マルシェの実施による駅前の賑わい創出にも手応えが得られるなど、様々な成果が現れはじめていることを強調した。

【2】日進市×BLUE BEES株式会社×株式会社セネック

デジタル社会教育を通じた次世代人材育成実証事業

市内に5つの大学を抱えるなど教育都市としての側面を持つ日進市は、デジタル社会教育に対するニーズの高まりや、中高生の地域との関わり不足に課題があった。そこで同市は、eスポーツのノウハウを持つBLUE BEES、教育・スマートシティの知見を持つセネックとともに、デジタル技術を身近に感じてもらうための学習機会創出に取り組んだ。

日進市と2社は、今年1〜3月にかけて「eスポーツ体験・大会、ドローン体験」「eスポーツ×デジタル人材育成」「メタバースでまちづくりを探究する共創型プログラム」という3つのプログラムを実施することで、デジタル社会教育のニーズ把握と有効性についての実証を行った。

プログラムに参加した子どもと保護者のアンケートからは、参加者の93%が「デジタル社会教育が必要」と回答するなどニーズの高さを把握できたほか、実証全体を通じて「レベル別カリキュラム」や「教えてくれる人の存在」が重要であるなど、環境整備が重要であることも明らかになった。また、eスポーツやメタバースに関しては、学習効果以外の居場所づくりといった効果があるという発見もあった。

今回の実証では、期間限定のプログラムとなったが、今後は年間継続プログラム化やレベル別カリキュラムの構築、eスポーツ以外への拡充などを進めていくことで、地域を担う人材を地域で育成する仕組みを整えていく方針だ。

【3】東浦町×株式会社マップフォー×株式会社NTTフィールドテクノ

住民が安心して暮らせる道路インフラの実現に向けた道路維持管理業務の高度化

名古屋市のベッドタウンとして知られる東浦町は、道路施設等の維持管理業務に課題感を抱えていた。道路異常の修繕に関しては住民からの申告対応だけで手一杯であり、事務処理も煩雑。さらには、修繕判断・対応に関する属人化も懸念している。

課題解決に向け東浦町は、独自の空間認識技術を有するマップフォー、設備保全に関するDXスキルを持つNTTフィールドテクノの両社とともに道路維持管理業務の高度化に取り組んだ。

3者は協議の末、3つの解決策を考案。町内の道路劣化状況については、ドラレコやレーザー計測機器を用いたデータ収集とAI活用による効率的かつ網羅的な把握を推進。煩雑な事務作業についてはシステム化による効率化、修繕判断の属人化については高精度なデータとAI活用による機械的な判断を導入する方針を固めた。

そして、実際に解決策を実現するためのシステム構築などを行った上で、対象道路を選定し、各施策に関する検証・要望反映・効果測定を実施した。その結果、道路劣化状況については、新技術活用による網羅的把握が実現。修繕計画策定の検討がスムーズになり、現地確認の回数が減るなどの成果も得られた。

また、事務作業については、システム化によって修繕1件あたり約15分の作業時間削減(年間1000件想定で約250時間削減)を達成。さらには穴の深さ・ひび割れ面積などの数値化とAI判定により、修繕判断の属人化脱却についても進展が見られたという。このような実証結果を踏まえ、今後は対象道路を町内全体に広げていき、効率的かつ均質的な維持管理サイクルの確立を目指していくとした。

【4】岡崎市×株式会社リーゴ×株式会社日本旅行

データドリブン商店街構築プロジェクト

豊富な観光資源を有する岡崎市は、主要駅と観光拠点を結ぶ商店街への人流波及と民間投資の好循環を実現すべく、AIやデータ活用に強みを持つリーゴ、旅行業で100年以上の実績を持つ日本旅行の両社とともに、データに基づく商店街経営モデルの構築プロジェクトに挑んだ。同プロジェクトにおいて、岡崎市は全体統括、リーゴはモデル構築、日本旅行は現地支援を担当している。

プロジェクトでは2つの実証実験が実施された。1つはデジタルマーケティング環境の構築、もう1つはデータドリブン商店街経営モデルの構築だ。デジタルマーケティング環境の構築については、Googleビジネスプロフィールのデータを活用し、プロフィール(店舗などの情報)や写真の閲覧回数、ルート検索回数、口コミ情報などを収集し、それらを表示・分析するためのダッシュボードを作成。また、優良事例をAIに学習させ、プロフィールの充実やSNSへの情報投稿を提案する機能を実装した。

その結果、ルート検索回数(店舗集客数)は昨年比で26%増加し、商店街の人流分析カメラから得られた歩行者カウント数(商店街通行人数)も8%ほど増加するなど一定の成果が見られた。

データドリブン商店街経営モデル構築の実証実験では、事前のデータ分析で通行が少なかった20〜40代男性の集客を増やすことを目指した。第20回アジア競技大会では岡崎市内で野球競技の実施が予定されていることも踏まえ、商店街で野球トークイベントを開催した結果、普段は商店街に来ることが少ない40代男性の集客が確認できたという。

【5】春日井市×株式会社SAGOJO

「サボり場」コミュニティプロジェクト

名古屋市に隣接し、30万人以上の人口を抱える春日井市の課題は、観光をフックとする関係人口の創出だ。同市は利便性の高い交通網や人口が集積した商圏という「暮らしやすさ」や「地理的優位性」を観光の視点で活かしきれていないという。

そこで春日井市は、旅をテーマにした人材マッチングプラットフォームを運営し、旅行・地域貢献に関心の高い3万人の「旅人人材」を有するSAGOJOとタッグを組み、イベントや商品開発などで多くの市民に親しまれている春日井のサボテンを活用した関係人口の創出に取り組んだ。

今回のプロジェクトでは、市内のサボテン事業者と旅人(市外人材)がともに活動・交流する総勢17名のコミュニティ「サボり場」が立ち上げられた。春日井市の「サボテン」と、現代人の癒しとして必要な「サボり」を掛け合わせた名称を冠する同コミュニティでは、サボテン農家への支援も兼ねた農業体験コンテンツを作成する「サボ種保存会」、SNSや動画で春日井サボテンの魅力を発信する「サボ放送局」といったチーム単位での活動を展開。その他、オンライン交流会や現地視察、アイデアソンなど様々な実証コンテンツを実施した。

このような実証の結果、「サボり場」発のSNS総閲覧数は1万回を超えたほか、コミュニティメンバーの継続参加率は100%、そのうちの90%が「春日井市を好きになった」と答えるなど、定量・定性両面で様々な成果が得られたという。来年度以降はコミュニティの本格リリースを進める予定であり、「サボり場」の活動を通じて、春日井市を多くの人が集まる「サボテンの聖地」としてブランディングしていく方針も示された。

【6】西尾市×株式会社artkake

西尾市×artkake アートプロジェクト

多種多様な観光資源を有し、年間を通じて400万人近くの観光客が訪れるという西尾市は、観光施設個々のポテンシャルは高いものの、施設間での周遊が少なく、観光消費額が限定的であることに課題を感じていた。今回、西尾市はアーティストマネジメントのスタートアップであるartkakeとともに、観光地間の周遊促進と滞在時間の延伸による西尾市ベイエリアの観光価値向上を目指すアートプロジェクトに取り組んだ。

実証フィールドとなった「一色さかな広場」「愛知こどもの国」「道の駅にしお岡ノ山」「吉良ワイキキビーチ」は、施設間の共通コンテンツがなく、来訪者の年齢層も異なっていた。今回のプロジェクトでは個別に訪問されがちな4つの観光拠点をアートでつなぎ、複数拠点を巡る仕組みづくりが行われた。

具体的には、2026年2月から3月にかけて「NISHIO ART PORT」という周遊イベントを実施。事前にSNSショート動画での情報拡散を行った上で、施設ごとに愛知県に所縁のあるアーティストの作品展示を行ったほか、周遊性を向上させる周遊パスの発行、周遊施設数に応じた限定グッズの配布、デジタルプラットフォームとの連動といった施策を展開した。

実証の結果、イベント時の4施設合計来訪者数は4600人、そのうち96人が周遊を行い、平均周遊点数は3.9カ所、「一色さかな広場」の売上は昨年比1.16倍となった。また、Instagramアカウントの総閲覧数は29万4000回、1500名超のフォロワーを獲得。今後はアート・文化に関心の高い層だけにとどまらず、さらに対象を広げるアプローチを実施していく考えだ。

【7】常滑市×ブルーアイズ株式会社×中部電力株式会社

市内の人流データを把握・分析する「とこなめ観光データ共創ラボ」

中部国際空港・セントレアが立地する常滑市には、「やきもの散歩道」のような観光スポットがあり、観光客向けのシャトルバスも運行しているものの、各所での人流が把握できておらず、観光・プロモーション施策の方向性が定まっていないことに課題感があった。

そのため常滑市は、観光・プロモーション施策の根拠となる人流データを収集・把握するために、データ活用に強みを持つブルーアイズ、市内のインフラを管理する中部電力とともに「とこなめ観光データ共創ラボ」を立ち上げ、データ収集の仕組みづくりとAIによるデータ分析を実施した。

具体的な取り組みの流れとしては、中部電力が管理する街中の電柱などに3種類のセンサーを設置。取り付けたセンサーから収集したデータを統合し、複数の地点・エリアの状況を俯瞰的・総合的に把握できるダッシュボードとして可視化した。可視化する形式は、事前に市の担当者と協議の上でダッシュボード上では、グラフ等を用いてデータの傾向を直感的に確認できる構成とした。例えば、団体の観光客の動向を地点ごとに分析し移動経路の動向を把握するロジックを構築した。さらに、AIが分析結果を踏まえて市の施策検討に活かせる示唆や提言を行う機能を組み込んだ。

今回の取り組みで得られたデータの分析が、シャトルバスの拠点間の移動人数・経路・回遊時間、「やきもの散歩道」の来客属性分布など、観光・プロモーション施策の指針づくりに寄与することが確認された。

今後の展望としては、各市町村の課題・事情に合わせたセンサー設置方法や検証可能なデータの収集方法の確立に向けて検討を進めていくとした。

【8】刈谷市×株式会社トワール

どこでも誰でもスポーツを楽しめる街

11ものスポーツチームの本拠地となっている刈谷市では、市民のウェルビーイング向上をビジョンに掲げ、トワールとともに「どこでも誰でもスポーツを楽しめる街」を目指した取り組みを行った。

このような取り組みの実施に際しては2つの課題があった。1つは「移動」である。とくに障がい者にとっては、スタジアムに足を運ぶことそのものが大きなハードルとなる。もう1つの課題は「初観戦の楽しみ方」だ。初めて観戦するスポーツについては楽しみ方自体が分からないケースが多く、初観戦の体験が楽しいものでなければ、「また観よう」という意欲も生まれづらくなる。

トワールは、1点目の移動の課題に対して「スタジアムに行くのではなく、スタジアムに来てもらおう」という発想をベースに、大人二人が15分程度で設営できる簡易設営型大型スクリーンの導入を提案。ピッチでは、実際に大人二人でスクリーンを組み立てる動画も披露された。この大型スクリーンの設営コストは1回10万円程度(月4回実施の場合)であり、今回は市内5カ所で計6回の簡易設営型大型スクリーンを使ったパブリックビューイングを実施した。

また、「初観戦の楽しみ方」については、10個の質問に答えるだけで自分に似た選手が分かる「推しマッチング」アプリの導入により、観客一人ひとりに「まず誰を見たらいいか」を分かりやすく提示。さらにはMCによる盛り上げやアウェイ戦でのバーチャル旅行・クイズ大会といった施策も実施した。

その結果、参加者のコンテンツ満足度が90%に達するなど、定量・定性両面で良好な結果が得られたという。また、今後は通年運用と完全実装を経て「愛知県モデル」の確立を目指していく方針も示された。

取材後記

『スタまち』でマッチングした愛知県内の自治体とスタートアップ・事業会社によるプロジェクトは、各自治体の特色や課題が色濃く反映された取り組みが多く、いずれも興味深いものばかりだった。参画したスタートアップは、市民やコミュニティ、関係人口の巻き込み方なども含めて、民間企業同士のオープンイノベーションとは異なる貴重な経験が得られたはずだ。また、他の自治体への横展開に言及するスタートアップも見受けられるなど、1自治体との共創にとどまらない広がりのあるイノベーションが生まれる可能性もありそうだ。今後も『スタまち』から誕生した各プロジェクトの進化・発展に注目していきたい。

(編集:眞田幸剛、文:佐藤直己、撮影:佐々木智雅)

新規事業創出・オープンイノベーションを実践するならAUBA(アウバ)

AUBA

eiicon companyの保有する日本最大級のオープンイノベーションプラットフォーム「AUBA(アウバ)」では、オープンイノベーション支援のプロフェッショナルが最適なプランをご提案します。

チェックする場合はログインしてください

コメント1件

  • 眞田幸剛

    眞田幸剛

    • 株式会社eiicon
    0いいね
    チェックしました