1. Tomorubaトップ
  2. ニュース
  3. 低周波センサー・SDV・ドローン・AI──セコムが共創で描く「次世代セキュリティサービス」とは?『SECOM Acceleration Program 2026』審査会レポート
低周波センサー・SDV・ドローン・AI──セコムが共創で描く「次世代セキュリティサービス」とは?『SECOM Acceleration Program 2026』審査会レポート

低周波センサー・SDV・ドローン・AI──セコムが共創で描く「次世代セキュリティサービス」とは?『SECOM Acceleration Program 2026』審査会レポート

  • 16509
  • 16506
2人がチェック!

セコム株式会社は1962年の創業以来、「社会にとってより良いサービスを創り上げたい」という想いのもと、国内外で社会に信頼される確かな安心を提供してきた。同社がこれまで、強力に推進してきたのが、パートナー企業と新しい価値創出に挑むオープンイノベーションだ。

こうした背景のもと2025年末より始動したのが、セコムのソリューションを活用して新しい体験の創出を目指す共創プログラム『SECOM Acceleration Program 2026』である。同プログラムは、「セキュリティサービスのアップデート」を大目標に掲げ、共創パートナーと新たな「安全・安心・快適・便利」の創出を狙う。

そして、去る4月15日、セコム本社(東京)に選考を通過した共創パートナー7社が集まり、商品開発・技術開発を担う首脳陣の前で共創内容をプレゼン。事前選考で多様な観点からフィードバックを受け、各社の構想を磨き込む最終の審査会が開催された。本記事では、『SECOM Acceleration Program 2026』最終ピッチ審査会の模様をレポート。セコムとパートナー企業が描く、新しい安心の具体像に迫る。

【オープニング】 「プロアクティブ型セキュリティ」や「自律飛行ドローン」など4テーマに対し、75件の応募

本イベントの冒頭では、主催者であるセコムより、オープンイノベーション推進担当の沙魚川氏が登壇し、参加者に向けて挨拶を行った。

沙魚川氏は、同社の共創活動について、2015年に経営トップ直轄のオープンイノベーションチームを設置し、外部との共創を推進してきたことを紹介。さらに、2017年策定の「セコムグループ2030年ビジョン」でも「共創」を盛り込んでおり、オープンイノベーションが同社にとって重要な取り組みであることを強調した。

今回のアクセラレーションプログラムは、テーマ公募型としてはコロナ禍を経て久しぶりとなるプログラムとして実施されている。複数の募集テーマに対して多くの応募が寄せられ、沙魚川氏は「書類選考の段階からさまざまな未来を想像でき、期待を膨らませている」と語った。

▲セコム株式会社 オープンイノベーション推進担当 代表・リーダー 沙魚川久史 氏

続いて、セコムの福島氏より、本プログラムの概要が紹介された。全社を挙げて共創に取り組む同社では、2016年より探索プログラム「セコムオープンラボ」を開始。その流れをさらに発展させた取り組みが、今回のアクセラレーションプログラムである。「セキュリティサービスのアップデート」を目指して推進されているという。

▲セコム株式会社 オープンイノベーション推進担当 福島朝美 氏

プログラムの特徴は、セコムのセキュリティ顧客基盤やそのシステム(国内:法人事業所約112万件、家庭約164万件)を活用できるほか、採択企業には支援金が提供される点にある。昨年12月より、以下の4つの募集テーマを掲げてエントリーの受付を開始し、合計75件の応募が集まった。

<募集テーマ>

【1】「プロアクティブ(事前対応)型」セキュリティ

【2】セコム・ホームセキュリティ×Well-being

【3】地方部におけるサステナブルなセキュリティサービスの仕組み

【4】次世代ドローンのコア技術

75件の応募の中から選考を経て、7社(トーカロ、リキッド・デザイン・システムズ、本田技研工業、S.I Lab、Mona、NTTドコモビジネス、manisonias ※登壇順)が最終選考に進出。

最終審査会では、その7社が共創案を披露し、4社が採択された。ピッチ7分、質疑10分とディスカッション時間を長くとっている。ピッチに対しては、執行役員をはじめ、企画部門や技術開発部門などの審査員7名がフィードバックを行い、ときに鋭い指摘も交えながら、共創内容を見極める場となった。

<審査員>

・セコム株式会社 執行役員 企画担当 目﨑祐史 氏

・セコム株式会社 企画部 次長 宮本伸朗 氏

・セコム株式会社 執行役員 技術開発本部長 田中貞朗 氏

・セコム株式会社 技術開発本部 スマートライフグループ統括担当 ゼネラルマネージャー 武井弘 氏

・セコム株式会社 技術開発本部 SS・HS・CSグループ統括担当 ゼネラルマネージャー 長澤一樹 氏

・セコム株式会社 技術開発本部 サービスロボット開発グループ統括担当 ゼネラルマネージャー 尾坐幸一 氏

・セコム株式会社 オープンイノベーション推進担当 代表・リーダー 沙魚川久史 氏

▲前方テーブル席に着席しているのがセコムの審査員。厳正な審査を経て、4社の採択企業が決定した。

【共創パートナーによるピッチ】 低周波やクルマとの連携など、各社が示した新たなアプローチ

――それでは、採択が決定した4社の提案内容から順に紹介していく。

●株式会社リキッド・デザイン・システムズ

タイトル:低周波(Infrasonic)応用技術PoC提案

※賞金(共創支援金):100万円

株式会社リキッド・デザイン・システムズは、非可聴領域の低周波(Infrasonic)を捉えるセンサーを開発している企業だ。現在、同社のプロダクトは、医療領域では遠隔・非接触での呼吸・心音の取得、防災領域では地震前兆波の検知などに活用されている。今回は、この技術の応用に関するアイデアが披露された。

詳細は伏せるが、構想実現に向けて、まず仮説検証から着手する予定だ。すでに実施した簡易実験では、一定の有効性が確認されたという。

今後はセコムと連携して実証実験を進め、アルゴリズムなどの開発を行い、構想実現を目指したいとした。

発表後の質疑応答では、本技術の適用範囲や実装に向けた課題について議論が行われた。これに対し、一定の条件下での活用可能性や、データ処理における技術的アプローチについての考え方が示された。

●本田技研工業株式会社

タイトル:SDV車両を活用したシステムの検討

※賞金(共創支援金):50万円

続いて採択されたのは、本田技研工業株式会社 技術研究所。同社では、ソフトウェアで自動車を進化させる「SDV(Software Defined Vehicle)」の開発に注力しており、これまでもその一環として盗難防止のための防犯システムの開発にも取り組んでいる。今回の提案では、進化する車載ソフトウェアとセンサー技術を活用し、住まいから地域全体へと安心を広げるアイデアが示された。

自動運転の時代を目前に控える今、カメラやレーダー、LiDAR、超音波センサー、赤外線・熱センサー、ジャイロセンサー、マイクなど、多様なセンサーを搭載した自動車が増えている。こうしたアセットを活用した仕組みを提案した。

セコムのシステムと連携することで、自動車と地域を一体化したサービスの実現を目指す。

質疑応答では、安全走行のためのセンサーを別用途に応用する際の課題が争点となった。これに対し、技術的な問題への一定の解決策が紹介されるとともに、安全性やプライバシーとのバランスを図ることが重要との認識が示された。

●株式会社manisonias

タイトル:“間に合わなかった”をゼロにする―空から救う命のツール―

※賞金(共創支援金):50万円

防災・減災をテーマとした国産ドローンの開発を手がける株式会社manisonias。同社は福島県に本社、神奈川県に開発拠点を持ち、水難救助用ドローン「SAKURA」や画像鮮明化装置「IVCS」などを展開している。解決したい課題として挙げたのは、毎年繰り返される水難事故。初動対応の遅れが生存率を大きく左右する点に目を向け、水難救助に特化したドローンを開発した。

このドローンの最大の特徴は、水上着水が可能なフロートや、水面に浮き輪・着色剤などを投下できる装置を備えている点にある。航続可能時間も40分と比較的長く、10m/秒までの風速下でも飛行できる。

今回はセコムの持つ自律監視ドローンの技術と、同社の水上・強風に対応したドローン、さらに画像鮮明化装置を組み合わせ、災害支援の新しいインフラを構築したいと提案した。

質疑応答では、ドローンの機体性能や運用面に関する具体的な仕様について議論が行われた。これに対し、用途や条件に応じた柔軟な対応が可能である点が説明されたほか、会場では実機の展示を通じて技術的特徴への理解が深められた。

●NTTドコモビジネス株式会社

タイトル:その来訪、本当に安心ですか?

※賞金(共創支援金):なし

NTTグループでは、保有するデータベースと生成AIを活用し、音声のリアルタイム解析技術の開発を進めている。すでに一定の精度に到達しており、実用化も視野に入っているという。この仕組みを、同社のサービス向けだけでなく、セコムのホームセキュリティとも連携させていこうというのが今回の提案である。

対象は高齢者世帯やその家族を中心とし、見守りの一環としての活用が想定されている。登壇者は、「インフラを支える2社が想いを共にすることで、あらゆる不安のない社会を一緒に実現していきたい」と熱意を込めた。

発表後、審査員より解析判定の精度やロジック、データベースの構築方法について意見が出され、さまざまな観点から議論が広がった。

――次に紹介する3社は、採択には至らなかったものの、自社の強みとセコムのサービスを掛け合わせた独自性のあるピッチを披露した。

●トーカロ株式会社

タイトル:ドローンのパーツ表面への必要な機能性の付与

トーカロ株式会社は、金属やセラミックスなどを表面に溶融噴射し、表面改質を行う独自技術を持つ。同社は兵庫県神戸市に本社を構え、国内外へ事業展開している。今回は、この表面処理技術をセコムが開発するセキュリティドローン「セコムドローンXX」に応用し、性能向上を図る提案を行った。

提案では、断熱コーティングによる熱耐性の向上や、放熱性向上による内部制御系の保護、さらに放射線環境下での稼働を見据えた遮へい機能の付与などが示された。また、回転部品の摩耗や粉塵による性能低下の抑制にも言及され、同社の表面改質技術がドローンの機能向上に寄与する可能性が示された。

発表後の質疑応答では、過酷な環境下における耐性や外部要因への対応可能性について議論が行われた。これに対し、既存分野での知見を踏まえながら、条件に応じた最適な技術適用により対応できる可能性が示された。

●S.I Lab株式会社

タイトル:DSA+DAGによるプロアクティブ・セキュリティ運用支援

S.I Lab株式会社は、因果推論AI分析モジュールの開発に取り組んでいる。代表の岡崎氏は、犯罪は平均や正規分布の中で起こるわけではなく、統計上の外れ値などで発生する傾向があると指摘する。一方で、従来の機械学習やAIではそれらを見逃してしまう。さらに、AIがブラックボックスと評されるように、因果関係の把握が難しい点も課題として挙げた。

そこで同社は、データの「出現」「消失」「欠損・潜在」といった分布シグナルを捉える手法(DSA:分布構造分析)と、物事の因果関係を構造化する技術(DAG:有向非巡回グラフ)を組み合わせることで、この問題を解決することを提案。セコムが保有する多様なデータと外部環境データに対して、この分析手法を用いることで、重点警戒エリアの特定や捜索資源配分マップの生成などにつなげていく構想を示した。

発表後の質疑応答では、提案内容の方向性について一定の評価が示される一方で、具体的な活用イメージに関する課題も指摘された。これに対し、データ分析を通じて条件間の関係性を整理することで、将来的な事象の予測につなげていく可能性が示された。

●株式会社Mona

タイトル:TaskLens × SECOM「プロアクティブ防犯システム」

株式会社Monaは、近年の犯罪傾向を踏まえ、防犯カメラに記録された初期段階の兆候に着目。現行システムが持つ課題をもとに、より先回りした対応の必要性を指摘した。そこで提案されたのが、複数のAIエージェントを組み合わせた新たな防犯アプローチだ。

具体的には、2つのAIエージェントを組み合わせる。一方は、ニュースや警察発表、SNSなどから最新の犯罪手口を常に自動収集・分析する「Strategic Agent(情報参謀)」。もう一方は、カメラ映像をMultimodal LLMでリアルタイム解析する「Tactical Agent(現場の目)」である。これらを連携させることで、犯罪の未然防止を目指す。

発表後の質疑応答では、変化する犯罪手口をどう捉え、いち早く対応につなげるかが主な論点となった。あわせて、データの集め方や分析のスピードについても議論が及んだ。

【クロージング】 「一緒に日本、そして世界をより安心できる社会にしていきたい」――セコム・沙魚川氏

すべての発表終了後、閉会の挨拶に立ったセコムの沙魚川氏は、登壇者らに感謝の言葉を述べた。そのうえで、「セコムはセキュリティをベースにさまざまな新しい安心を作っていこうと思っている。皆さまとの議論を活かしながら、一緒に日本、そして世界をより安心できる社会にしていきたい」と語った。

なお、会場には高校生を対象としたビジネスピッチで日本一に輝いた学生起業家らも見学に来ており、「勉強になった」「自分達が立つ場面を想像した」と感想を寄せるなど、世代を超えた学びと交流の場となった。

取材後記

水難救助ドローンや自動車、AIエージェント、分布構造分析など、一見すると異なる領域のパートナー企業が集まった今回の審査会。各社の強みやアプローチは多様でありながら、セコムのテクノロジーやデータ、サービスなどと掛け合わされることで、「安心して暮らせる未来」というひとつの方向へと収斂していた点が、オープンイノベーションならではであった。安心は、社会に欠かせない要素である。ここから、セキュリティサービスがアップデートされていく過程に注目していきたい。

(編集:眞田幸剛、文:林和歌子、撮影:齊木恵太)

新規事業創出・オープンイノベーションを実践するならAUBA(アウバ)

AUBA

eiicon companyの保有する日本最大級のオープンイノベーションプラットフォーム「AUBA(アウバ)」では、オープンイノベーション支援のプロフェッショナルが最適なプランをご提案します。

チェックする場合はログインしてください

コメント2件

  • 川村祥人

    川村祥人

    • LushAura株式会社
    0いいね
    チェックしました
  • 眞田幸剛

    眞田幸剛

    • 株式会社eiicon
    0いいね
    チェックしました