
放射性医薬品の開発を手がけるリンクメッド、シリーズBで35.5億円を調達し64Cu治療薬開発を加速
革新的な放射性医薬品の開発を手がけるリンクメッド株式会社は、シリーズBセカンド・サードクローズとして総額20.5億円の資金調達を実施。2025年1月のファーストクローズを含め、シリーズB全体での調達額は35.5億円に達し、累計調達額は約47億円となった。
本ラウンドには、株式会社慶應イノベーション・イニシアティブやロッテホールディングス株式会社、三井住友信託銀行などの新規株主が参加。さらに、ちばぎんキャピタルや大阪・関西万博活性化投資事業有限責任組合などの既存株主も引き続き支援を表明した。
放射性医薬品でがん治療を変革
リンクメッドが開発を進めるのは、放射性同位体64Cu(銅-64)を用いた「見えるがん治療」だ。64Cuは、がん細胞のDNAを高いエネルギーで破壊する強力な放射線を放つと同時に、PETスキャンにより薬剤の体内での挙動を可視化できる「セラノスティクス(診断と治療の融合)」の核となる物質である。
同社の第一号開発品である「64Cu-ATSM(開発コード:LM001)」は、再発・難治性の悪性神経膠腫を対象とした第Ⅲ相医師主導治験(STEP-64試験)を2024年6月より開始。治療が困難とされる膠芽腫への新たな選択肢として、国内外から大きな注目を集めている。
調達資金で治験加速と製造基盤を強化へ
今回の資金調達は、以下の3点を主な目的としている。
研究開発の加速:LM001の第Ⅲ相試験の推進と新規パイプラインの創出
製造体制の確立:千葉市内に建設中の工場におけるサイクロトロンや製剤設備の整備
人材採用と組織体制の強化:研究・開発、製造、事業開発、管理機能の強化
すでに建設が進んでいる千葉市の製造拠点は、64Cuの安定供給体制の構築を目的とし、同社が目指す創薬支援プラットフォームの中核を成すことになる。
投資家からの期待
出資者からは、64Cuの有する高いポテンシャルとリンクメッドの取り組みに対し期待の声が寄せられている。JICベンチャー・グロース・インベストメンツの林隼氏は「日本の健康長寿社会の実現に寄与する」と評価し、DBJキャピタルの安田順信氏は「世界初の64Cuがん治療薬の実現に向けた挑戦」と述べた。
また、共同開発を行うペプチドリームの金城聖文氏も「次世代核種による放射性治療薬が、がん治療に革新をもたらす」とコメント。セカンド・サードクローズで新たに加わった慶應イノベーション・イニシアティブの佐竹祐輔氏は「治療と診断を両立する技術として、難治性がんの突破口になる」と期待を寄せた。
がん治療の新たなフロンティアとして注目される放射性医薬品。リンクメッドの挑戦は、単なる新薬開発にとどまらず、治療と診断を融合させた未来の医療の形を社会に提示するものだ。35.5億円という大型調達の背景には、それだけの技術的信頼と社会的インパクトがある。
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(TOMORUBA編集部)