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公民連携でカーボンニュートラル実現を!可搬型蓄電池を搭載したEV導入の実証実験の成果は?――静岡市主催『知・地域共創コンテスト』最優秀賞チームの取り組みに迫る

公民連携でカーボンニュートラル実現を!可搬型蓄電池を搭載したEV導入の実証実験の成果は?――静岡市主催『知・地域共創コンテスト』最優秀賞チームの取り組みに迫る

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静岡市が主催する「スタートアップと地域の共働による新社会システム共創コンテスト『知・地域共創コンテスト』」。このコンテストの目的は、スタートアップと行政・地域企業が協力し、新たな社会システムを共創することにあり、行政課題発信型の『UNITE2024』、スタートアップ提案型という『BRIDGE2024』という異なる2タイプのコンテストが同時開催されるユニークな事業となっている。

このうち『UNITE2024』の二次審査会(2024年11月開催※)では、「株式会社LEALIAN、nicomobi株式会社、静岡ガス株式会社×大谷・小鹿まちづくり推進課」という座組で組成された、【大谷・小鹿地区から始める公民連携で目指すカーボンニュートラル】チームが最優秀賞を受賞した。同チームは、バッテリーとモビリティをパッケージングしたシェアリングサービスにより「はこべて広がる再エネ電力ネットワーク」の実現を目指している。

2025年1月20日~2月26日に実施された実証実験では、可搬型蓄電池を搭載したEVを公用車・社用車として活用可能かを検証することを目的に、静岡市大谷・小鹿まちづくり推進課の事務所と静岡ガス静岡支社の2拠点において可搬型蓄電池を搭載したEVを公用車・社用車として導入。2種類のEVが市内を走行し、ニュースで取り上げられるなど注目を集めている。

本記事では、同チームの実証実験の詳細や今後の展望、共創の意義について、静岡市の遠藤氏、静岡ガス株式会社の梅原氏・金井氏、株式会社LEALIANの佐藤氏、nicomobi株式会社の西橋氏に話を聞いた。

※『UNITE2024』二次審査会レポート記事:静岡市主催『知・地域共創コンテスト』二次審査会に密着!――『UNITE2024』&『BRIDGE2024』スタートアップ×行政・地域企業による地域課題解決のアイデアとは?【前編】

脱炭素先行地域をフィールドにした可搬式バッテリー&モビリティの実証実験

──まずは、今回の実証実験の概要と、それぞれの役割について教えてください。

静岡市・遠藤氏 : 今回の実証実験の舞台となるのは、静岡市の大谷・小鹿地区です。この地域の中でも、東名高速道路のスマートインターチェンジ北側に位置する恩田原片山エリアは、国の「脱炭素先行地域」に選定されています。私たちはこの地域で、企業の社屋の屋根に太陽光パネルを設置し、発電した電力を地域全体で有効活用する取り組みを進めています。

しかし、太陽光発電は「昼間に発電し、夜間に不足する」という課題があります。この課題を解決するために、今回の『UNITE2024』の取り組みを通じて、モビリティと蓄電技術を活用し、電力の有効活用を目指しています。

今回のチームの取り組みとしては、日中に太陽光で発電した電気を、可搬式と呼ばれる持ち運びができる蓄電バッテリーを使ってモビリティに使用したり、それ以外に災害時の電源として使用するなど、太陽光パネルが乗らない社屋で電源として使ってもらうといった形で、様々なケースで電力融通ができる仕組みを作ろうというものです。

▲静岡市・遠藤氏

静岡ガス・梅原氏 : 私たち静岡ガスは、地域のエネルギーインフラを支える立場として、この取り組みに参画しています。弊社は100年以上にわたって地域でエネルギーを中心とした事業を行ってきましたが、これからの時代はエネルギー事業だけでなく、地域の課題解決にも貢献していきたいと考えています。今回のプロジェクトでは、私たちが培ってきたエネルギー活用のノウハウを活かし、実証実験の推進をサポートしています。

▲静岡ガス・梅原氏

――今回の取り組みではLEALIANとnicomobiという2社のスタートアップが採択されていますが、この2社を採択された経緯を教えてください。

静岡市・遠藤氏 : 書類の一次審査の段階から静岡ガスさんには審査側としてスタートアップの提案を一緒に見ていただいていました。エネルギー分野では、10社ほどのスタートアップが提案をしていましたが、その中でも、nicomobiさんのモビリティ技術、そしてLEALIANさんのバッテリーおよびバッテリークラウド技術はどちらも非常に魅力的な提案でした。結果として、どちらか一方を選ぶのではなく、相乗効果を期待して両者と共に進めることが最適だと判断しました。

――採択を決定した時点で、現在のような実証実験の枠組みやビジネスモデルを想定していたのでしょうか?

静岡市・遠藤氏 : そうですね。元々、静岡ガスさんの方で、可搬型の蓄電池をインフラ的に整備し、それを車両の移動に活用したり、様々な使い方ができる仕組みを考えていました。その構想に対して、LEALIANさんとnicomobiさんの提案が非常に親和性が高かったため、共創の形で進めていくことが自然な流れになりました。

▲本チームが取り組むビジネルモデルの全体概要(画像出典:プレスリリース

静岡ガス・金井氏 : 我々としても可搬式のバッテリーを使って余剰電力を活用したいと考えていました。さらに、その解決策はモビリティだろうというところまで構想を立てていて、今年から実証実験をする計画でした。そんなときに静岡市から『UNITE2024』の取り組みを聞いて、ぜひ合流したいと思いました。静岡市さんと共創し、市のフィールドを実証に使えることはありがたいことだと考えています。

▲静岡ガス・金井氏

スタートアップ単独では実現しにくいプラットフォーム構築への挑戦

――ではスタートアップとして本プロジェクトに参画しているLEALIANの佐藤さんとnicomobiの西橋さんにうかがいます。今回の『UNITE2024』に手を挙げた理由を教えてください。

LEALIAN・佐藤氏 : モビリティが進化する中で、インフラの脆弱性が課題となっています。特に、再生可能エネルギーは発電と消費のタイミングが合わず、十分に活用されていないケースが多いです。そこで私たちは、太陽光で充電したバッテリーを可搬型にし、EVの動力源や災害時の非常用電源としても活用できる仕組みを提案しました。

このようなエネルギーインフラの構築は、スタートアップ単独では難しいため、行政や地域企業と連携しながら進める必要があります。静岡市の共創プログラムを活用することで、技術の社会実装を加速できると考え、今回の取り組みに参加しました。

nicomobi・西橋氏 : 当社は、電動モビリティの開発を手がけており、今回の実証実験では、可搬型バッテリーを搭載したモビリティ『クロスケ』の導入を担当しています。

クロスケはバイクと軽バンの間のような小さめの車両です。軽EVの課題として、太陽光発電100%で5万キロくらい走らないと、製造時に排出されるCO2をペイできないことが挙げられます。軽EVと比較するとクロスケは製造時のCO2が少ないため、今回の取り組みの募集テーマとマッチしていますし、興味のある分野ということもあり参加しました。

もう一つの理由としては、小型のモビリティが実際に業務の中で有効に使われて、既存の車両の置き換えとなる可能性があるのかを見定める意味も込めて参加に至っています。

▲2024年11月に行われた二次審査会の様子。LEALIAN・佐藤氏(写真左)、nicomobi・西橋氏(写真左から2番目)

実証実験の手応えは「大成功」。事業化に向けて課題も見えた

――実証実験を進める中で、どのような成果や課題が見えてきましたか?

静岡市・遠藤氏 : 実証の内容としては、静岡市の大谷・小鹿地区のまちづくり推進課と静岡ガスの静岡支社の2拠点で、LEALIANとnicomobiの車両およびバッテリーを実際に公用車や社用車として使っています。そこでユーザーの利便性やバッテリー、車両の稼働効率などを検証していく実証実験を2025年1月〜2月で進めました。

実証実験後の所感としては、公用車を可搬式のバッテリーを搭載した小型車両に置き換えることは可能だという感触を得ています。アンケートの結果としても、業務上必要な走行距離、荷物の積載量といったところに問題はなかったと確認できています。

課題としては、LEALIAN仕様の車両とnicomobiの車両(クロスケ)が、バッテリーの互換性がない点が挙げられます。ここをクリアできればビジネスモデルを構築するうえでもかなり良い状態になるでしょう。

▲実証実験で導入された可搬型蓄電池を搭載した EV(画像出典:プレスリリース

――『UNITE2024』を通じて、スタートアップとしての成長や課題は見えましたか。

LEALIAN・佐藤氏 : 実証フィールドの獲得という意味ではスタートアップ単独だと難しいので、脱炭素先行地域になっているエリアをお借りして自社のプロダクトの成果を検証してビジネスモデルを模索できたのは我々として貴重な機会でした。

nicomobi・西橋氏 : 静岡市さんや静岡ガスさんといった組織の方々といっしょにものづくりをしてフィードバックをいただけることはなかなかないので、非常にメリットがあったと思っています。

難しかった点としては、今回の実証では太陽光発電を活用すること、分散型の蓄電池を使うこと、さらに蓄電池をモビリティに搭載すること、といった構造になっていて、何をどう検証していくのか、という部分は課題でした。結果的にはみんなで知恵を出し合って期間やフェーズを切り分けて検証できたので良かったです。

──今回の実証実験を踏まえて、今後の共創にどのような展望を描いていますか。

nicomobi・西橋氏 : 今回の実証の結果、静岡ガスさんのように走行距離が1日30km程度、高速道路を使わず、多少の荷物を持って1人が営業などを行うような用途では、弊社のクロスケのようなミニカー規格の車両であっても、十分に業務に使っていただけることが分かりました。一方で法律上1人乗りであるため、静岡市さんのように2人1組での行動を基本とする使い方ではやはり導入の壁が高いこともわかりました。今後の共創において、法律や使い方を含めどのように社会実装をしていくのか、よりクリアにして行きたいと考えています。

LEALIAN・佐藤氏 : 当社のパートナー企業が説明用の動画を作成してくださったのですが、関係者の方に対して見た目的なインパクトがけっこうあると実感しました。さらに企業や自治体で十分に使ってもらえる、その技術的な裏付けを示すことができました。

静岡ガス・金井氏 : 再エネの活用が課題だったところから始まったプロジェクトでしたが、可搬式のバッテリーを搭載したモビリティの仕組みが整えばユーザーに実用レベルで使っていただけるということが確認できたので大成功だと言えます。

実証実験のアンケートでは、既存の会社の車両の3割は社用車として代替が可能との回答を得られました。サービスとしてビジネスモデルが成り立つところにかなり近づいていると感じた次第です。

静岡市・遠藤氏 : 『UNITE2024』に参加したことで大谷・大鹿地区まちづくり推進課の注目度が内外問わず高まりました。他の部署からスタートアップとの共創に興味があると相談を受けたり、新聞やニュースに取り上げられたことで、知り合いの民間企業の方から「見たよ」と声をかけてもらうこともあります。

今後の展望ですが、静岡市と静岡ガスだけでなくもう少し関係者や拠点を増やして実証をしていきたいです。あとはバッテリーの互換性について技術開発を進めていきます。そして来年度はフィジビリティスタディを実施しつつ、令和8年度に事業化することをマイルストーンにしています。

▲3月11日に開催された『知・地域共創コンテスト』成果発表会にチームで登壇。現在までの事業の進捗を、多くの来場者に伝えた。

取材後記

本記事では4社による可搬式バッテリーとモビリティによる共創の当事者インタビューをお届けした。静岡市と静岡ガスは「太陽光発電を利用した再エネの活用」を課題として提案を募集し、LEALIANとnicomobiという2社を採用したが、しっかりとアウトプットイメージを具体化しながらプロジェクトを進めていたことが印象的だった。また、複雑なスキームの共創であるため、検証方法の難易度が高かったことなど、生きた知見のつまったインタビューとなった。今後、どのようなステップを経て社会実装されていくのか。注目したい。

(編集:眞田幸剛、文:久野太一、撮影:加藤武俊)

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  • 眞田幸剛

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