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静岡発!スポーツ×他産業の共創プログラム『FIELD』――静岡ブルーレヴズ&ベルテックス静岡が参画。パートナー企業と共に挑むスポーツビジネスの新たな可能性とは?

静岡発!スポーツ×他産業の共創プログラム『FIELD』――静岡ブルーレヴズ&ベルテックス静岡が参画。パートナー企業と共に挑むスポーツビジネスの新たな可能性とは?

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18のプロスポーツチームが本拠地を構え、その活躍が地域の活力にもなっている静岡県。この特徴を活かして同県は、県内スポーツチーム・団体と優れたプロダクト・技術を持つ企業とを結びつけ、オープンイノベーションによって新たなスポーツビジネスの創出と地域活性化を目指すプログラムを、2024年度より開始した。その名も『FIELD - SHIZUOKA SPORTS OPEN-INNOVATION』である。

初開催となる今回は、県内スポーツチームの中から「静岡ブルーレヴズ(ラグビー)」「ベルテックス静岡(バスケ)」の2チームが本プログラムにホストチームとして参加。課題として解決したい募集テーマを掲げ、全国の企業に対して共創アイデアを求めた。その結果、パートナー企業とのマッチングが成立。

2024年11月には、対面ワークショップを通じて共創事業を練りあげ、その後のインキュベーション期間にて実証実験を実施。その成果報告会が3月12日、静岡市にある静鉄のコワーキングスペース/シェアオフィス「=ODEN」にて開催された。

本記事では、この成果報告会の様子を紹介する。スポーツチームとパートナー企業がどのような未来を描き共創に取り組んだのか。そこから生まれた新たなビジネスの可能性とは。「スポーツ × 他産業」が地域にもたらすインパクトに迫る。

【開会の挨拶】「スポーツを通じて人や企業がつながり、新たなビジネスが生まれる地域を目指したい」

発表に先立ち、『FIELD - SHIZUOKA SPORTS OPEN-INNOVATION』の主催者である静岡県庁の小林氏が登壇し、開会の挨拶を行った。

▲静岡県 スポーツ文化観光部 スポーツ局 スポーツ政策課 課長 小林竜太 氏

小林氏は、静岡県が進めている『しずおかスポーツ産業ビジョン』の策定について触れ、県がスポーツの成長産業化に積極的に取り組んでいこうとしていることを伝えた。また、静岡県は「スポーツを通じて人や企業がつながり、新たなビジネスが生まれる地域」を目指していると述べ、本事業はその第一歩となるものだと話した。今回の成果報告を受けて、来年も本事業を継続していきたいとの意欲を示した。

【CO-CREATION PITCH】静岡ブルーレヴズ(ラグビー)とベルテックス静岡(バスケ)の2チームが共創に挑み、その成果を発表!

●静岡ブルーレヴズ(ラグビー)× 株式会社ナビタイムジャパン

<発表タイトル>〜 ブルーレヴズとともに、CO2 を BIND で ECO に TRY 〜

エコにおトクに試合を楽しむ、観戦GXプロジェクト

静岡ブルーレヴズは、静岡県全域をホストエリアとするジャパンラグビー リーグワン所属のチームだ。ヤマハ発動機の100%子会社として運営されるラグビーチームであり、日本で初めて独立分社化したクラブ。チームは「革新と情熱」を理念に掲げ、新しい取り組みに積極的に挑戦している。

現在、静岡全域をホストエリアとし、エンブレムやロゴも地域性を反映したデザインとなっている。また、日本代表選手3名や南アフリカ・トンガ代表選手が在籍しており、昨シーズンはリーグ8位だったが、今シーズンは4位と好調を維持している。

チームの課題として試合会場であるヤマハスタジアム(静岡県磐田市)周辺の交通渋滞や違法駐車、それらによる環境負荷が挙げられており、これらが観戦者のリピート率低下につながる可能性があり、解決策を模索していた。スポーツチームが環境問題へ取り組む重要性を認識し、パートナー企業を募る中でナビタイムジャパンと連携することとなった。

今回のプログラムでは、ナビタイムジャパンのエコな移動をサポートする『moveco by NAVITIME』を活用し、スタジアム周辺の渋滞緩和とCO2削減を目指した実証実験を実施。スポーツ観戦者の移動支援に焦点を当て、スタジアム周辺の混雑緩和と利便性向上を目指す取り組みで、約4ヶ月前に直接打ち合わせを行い、協業の方向性を固めた。

具体的には、車以外の手段で来場した人に対して、『moveco』のマイル付与数を増やすなどの施策を行った。また、試合後の出庫の時間をずらすため、ピッチサイドを歩けるイベントやギフト抽選会などのイベントを試合後に実施。さらに、環境意識を高めるためのイベントも開催した。

▲これまでの実証実験の様子。会場PRブースと、脱炭素への貢献度/ヤマハスタジアム駐車場の混雑状況を表示した「moveco」アプリ内レヴズモード画面。(画像出典:プレスリリース

これらの施策の結果、『moveco』を利用したことで試合日の移動手段が車以外になったと回答した人が66%にも及んだ。出庫時の交通渋滞も大幅に緩和され、利用者も渋滞が緩和していることを実感していることが分かった。さらに、来場者の環境意識の向上も確認できた。今後はこの施策を継続し、ESGに関心のあるスポンサーの獲得やマネタイズも視野に入れていく。

●ベルテックス静岡(バスケ)× 株式会社トワール

<発表タイトル>みんなに愛される「ザ・ベルティズ」

ベルテックス静岡は、静岡県全域をホームタウンとするB2リーグのプロバスケットボールクラブだ。現在、B1昇格を目指しており、元日本代表選手の獲得を含めて戦力強化を進めている。チームのビジョンは「スポーツで日本一ワクワクする町へ」であり、バスケットボールだけでなくスポーツ全般を通じた地域活性化を目指しているが、クラブはプロスポーツ特有の課題に直面しているという。

選手の契約関係により移籍や引退が避けられず、ファン離脱のリスクがあること、選手がPRやファン交流に時間を割くのが難しいことなど、B2リーグ昇格以降、集客力が向上し、選手やヘッドコーチへの出演要請が増加しているものの、すべての要望に応えるのは困難な状況だ。

チームは選手に依存しないファン獲得の仕組みを模索するなかでクラブマスコット「ベルティ」に注目。実際に、チームのグッズ売上げ全体の中でもベルティ関連グッズの割合は大きく、マスコットとしての人気の高さがうかがえることから、ベルティをクラブのIPとして成長させることが経営の課題の一つになっているという。

今回のプログラムでは、「人の可能性をデータで広げる」をビジョンに、人の内面の人間ドック『NOCC』を展開するトワールと協力し、ベルティを活用した教育コンテンツを考えた。具体的には、ベルティそのものを多様化した12種類のベルティ「ザ・ベルティズ」を制作し、これをもとに多様性について学べるワークショップを企画した。

プログラム期間中、ベルーナユース生(チアリーダーズ)26名を対象に2時間のワークショップを開催。最初は自分と同じベルティタイプの仲間とチームを組んで振り付けを考え、その後、異なるベルティタイプを含む多様なメンバーとチームを組み直して再度振り付けを考案した。このプロセスを通じて、多様性のあるチームとそうでないチームの違いを体感してもらった。参加者アンケートでは、「レッスンが楽しかった」「ベルティを身近に感じられた」との回答が100%に達した。今後は、この取り組みを学校教育や企業研修に展開し、収益化を目指す。

【TALK SESSION】「他産業との“共創”への挑戦で、新たに見えたスポーツビジネスの可能性」

続いて、本プログラムで共創に取り組んだ2チームの担当者と、地域経済に詳しい株式会社静岡銀行の担当者が登壇。「他産業との“共創”への挑戦で、新たに見えたスポーツビジネスの可能性」をテーマにしたトークセッションが行われた。

<登壇者>

・静岡ブルーレヴズ株式会社 経営企画室 室長 竹中大也 氏

・株式会社VELTEXスポーツエンタープライズ 常務執行役員 下出恒平 氏

・株式会社静岡銀行 地方創生部 地方創生グループ 課長 井出雄大 氏

・プラスクラス・スポーツ・インキュベーション株式会社 代表取締役インキュベーター 平地大樹 氏 ※モデレーター

モデレーターは、国内約150のスポーツチームのマーケティング支援を行うプラスクラス・スポーツ・インキュベーション株式会社の代表取締役、平地氏が務めた。

▲プラスクラス・スポーツ・インキュベーション株式会社 代表取締役インキュベーター 平地大樹 氏

【トークテーマ①|「共創に対して何を期待したのか」 】

「共創に対して何を期待したのか」と問われた静岡ブルーレヴズ・竹中氏は、「新しいものを作っていくきっかけ作り」に期待したと話す。スポーツチームは限られたリソースの中で、競技成績を向上させながらファンやスポンサーを増やす必要がある。しかし、チーム強化が優先されるため「事業サイドにリソースを割くのが難しいのが現状」だという。

そこで、共創によって外部のリソースを一部借りながら、新たな価値を生み出すとともに、「新しいことに取り組むクラブ」としてのブランディングにつなげたいと考え、このプログラムに参加したと明かした。

▲静岡ブルーレヴズ株式会社 経営企画室 室長 竹中大也 氏

「企業がスポーツチームに求めていることは何か」と尋ねられたベルテックス静岡・下出氏は、企業から「採用に困っている」という話をよく聞くと返す。企業単独では業界内でしか知名度がない場合でも、スポーツチームが実施する地域活動のスポンサーになることで、「その活動に関心のある大人や子どもが、その企業のことを知りブランディングに貢献できることがある」と答え、それが採用につながる可能性もあることを示唆した。

▲株式会社VELTEXスポーツエンタープライズ 常務執行役員 下出恒平 氏

【トークテーマ②|「パートナー企業と共創に取組む事で見えた可能性、気づき、変化」 】

「他産業がスポーツチームと共創する意義や可能性」について聞かれた静岡銀行・井出氏は、「企業が社会貢献活動に取り組んでも『それって貴社のビジネスのための活動ですよね』と言われがちだ。しかし、スポーツチームと連携することで、その活動が公共的な意味を帯びるようになる。『社会のために取り組んでいる』という意味づけができるのではないか」との考えを示した。

▲株式会社静岡銀行 地方創生部 地方創生グループ 課長 井出雄大 氏

ベルテックス静岡・下出氏は「共創を通じて見えた可能性や気づき、変化」を問われ、これまで街に溶け込むことを目指して活動してきたが、「その準備ができ、少しステップアップできた感触がある」と話す。今回のプログラムで得た事業の種を育てるため、行政の補助金を獲得し、さらにブラッシュアップを重ねながら、IPを活用した新たな事業の開発を進めていきたいと語った。

「共創を円滑に進めるための工夫」について静岡ブルーレヴズ・竹中氏は、当初、実装段階になればチームメンバーに仕事を任せる話も出たが、「短期間で結果を出すには、自分たちが一定の権限と責任を持ち、実証実験を最後までやり抜くことが重要だった」と振り返る。また、共創パートナーにも権限と技術を持つ担当者が関わってくれたおかげで、このスピード感で進めることができたと話す。

最後に静岡銀行・井出氏は、オープンイノベーションは大企業を中心に進んでおり、中小・中堅企業への波及が遅れている現状を指摘。しかし、今日の話を踏まえ「交わるポイントはたくさんあると思うので、これを静岡で当たり前の世界にしていきたい」と述べ、今後の活動にも意欲を見せた。

【講評/閉会の挨拶】「スポーツ産業の成長が、日本の成長率をさらに高める」

最後に、成果報告に対しての講評と閉会の挨拶が行われた。

プラスクラス・スポーツ・インキュベーションの平地氏は「企業側もクラブ側も本気で取り組んだからこそ、このスピード感が生まれた」と高く評価。さらに、「スポーツ産業の成長が、日本の成長率をさらに高めると信じている」と自身の信念を伝え、企業に対してスポーツの活用方法を考え、共に成長していくことを呼びかけた。

静岡銀行の井出氏は「県内企業がスポーツの可能性を信じて資金やリソースを投入することで、スポーツを中心に産業全体が盛り上がり、静岡の発展につながればと思う」と期待を込めた。

最後に、本プログラムの運営を担った株式会社eiiconの粕谷氏が登壇。両プロジェクトが企業文化やスピードの違いを感じさせないほど円滑に進行したこと、意思決定者が関与したことで迅速に進んだことに言及し、「皆さんのプロジェクトが今後さらに進展していくことを楽しみにしている」と述べ、イベントを締めくくった。

取材後記

静岡県の『FIELD - SHIZUOKA SPORTS OPEN-INNOVATION』プログラムは、スポーツと他産業の共創が生み出す可能性を改めて実感させる取り組みだった。静岡ブルーレヴズとベルテックス静岡の2チームが、パートナー企業と共に新たなビジネスを創出しようとする姿勢は、地域の他のスポーツチームにとっても手本となるだろう。スポーツと産業が交わることで、地域に革新をもたらし、未来に向けた新しい価値を生み出していく。今回の成果報告会を通じて、その可能性の一端を垣間見ることができ、今後の展開に大いに期待が膨らんだ。

(編集:入福愛子・眞田幸剛、文:林綾、撮影:佐々木智雅)

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