1. Tomorubaトップ
  2. ニュース
  3. 【賞金総額1,000万円】愛知県主催のビジコン『AICHI NEXT UNICORN LEAGUE』S2最終審査会をレポート――大村知事も称賛!「ソーシャルイノベーション」をテーマに受賞したスタートアップ3社とは?
【賞金総額1,000万円】愛知県主催のビジコン『AICHI NEXT UNICORN LEAGUE』S2最終審査会をレポート――大村知事も称賛!「ソーシャルイノベーション」をテーマに受賞したスタートアップ3社とは?

【賞金総額1,000万円】愛知県主催のビジコン『AICHI NEXT UNICORN LEAGUE』S2最終審査会をレポート――大村知事も称賛!「ソーシャルイノベーション」をテーマに受賞したスタートアップ3社とは?

  • 13698
  • 13673
2人がチェック!

愛知県は、スタートアップを起爆剤したイノベーション創出による県内産業競争力の維持発展を目指し、2018年10月に「Aichi-Startup戦略」を策定している。同戦略に基づき、2024年10月には、日本最大のスタートアップ拠点である「STATION Ai」が名古屋市内でグランドオープンした。このような動きに呼応する形で、愛知県から次世代ユニコーンの創出を目指すスタートアップを対象とした、賞金総額1,000万円のビジネスコンテスト『AICHI NEXT UNICORN LEAGUE』が開催されている。

コンテストはシーズン1~3まで、毎回異なるテーマが与えられる。各シーズンの書類選考に通過したスタートアップは、その後メンターとともにビジネスプランを磨き上げ、最終選考会となるピッチコンテストに臨む。コンテストでは、優勝企業に500万円、2位に300万円、3位に200万円という高額な賞金が授与されるとともに、その後のフォローアップにより県内での事業化支援を受けられる。

9月26日に開催されたシーズン1の最終審査会(※)に続き、11月27日にはシーズン2の最終審査会が「STATION Ai」で開催された。シーズン2のテーマは「ソーシャルイノベーション」。具体的には、「防災・まちづくり」「ヘルスケア・ウェルビーイング」「子育て・教育」の分野での社会課題解決に資するプランが求められた。

これらの課題をイノベーティブなアイデアにより解決しようとするスタートアップ9社が、一堂に会して熱いピッチを展開した。TOMORUBAでは、その模様を現地で取材。本記事では、受賞3社を含むファイナリスト9社のピッチ内容をダイジェストでお届けする。

※参考記事:愛知県からユニコーンを創出!賞金総額1,000万円のビジコン『AICHI NEXT UNICORN LEAGUE』開幕――シーズン1のテーマは「産業イノベーション」。受賞したスタートアップ3社とは?

開会挨拶――「本日のイベントを新たなビジネス構想の場にしてほしい」(柴山政明氏)

イベントの冒頭には、愛知県 経済産業局 顧問の柴山政明氏が登壇し、開会の挨拶を述べた。愛知県では、いち早くスタートアップエコシステム育成の総合的な戦略を立案・実施しており、本日の開催場所である「STATION Ai」がその集大成の1つであることが説明された。

「STATION Ai」にはすでに500社のスタートアップが入所しており、200社以上の大企業や銀行、大学なども集まって活発に事業化が進められているという。また、本日のイベントにおいても、単に登壇企業のピッチを聞くだけではなく、その後の懇親会で、自分も含めて多くの人と交流を広めて、ビジネス構想のきっかけをつかんでほしいと訴えた。

シーズン2の受賞スタートアップ3社のピッチ内容とは?

コンテストの審査は、ターゲット・課題、ソリューション、ビジネスモデル、市場性、地域親和性、実現可能性の6点に基づいておこなわれた。以下5名の審査員の前でピッチを行い、厳正な審査の上で「優勝」「2位」「3位」が決定した。

<審査員>

・伊藤 仁成氏(株式会社MTG Ventures 代表パートナー)

・木野瀬 友人 氏(株式会社エアトランク CTO 名古屋市客員起業家)

・中島 順也 氏(STATION Ai株式会社 統括マネージャー)

・中村 亜由子 氏(株式会社eiicon 代表取締役社長)

・深井 昌克 氏(国立大学法人東海国立大学機構 名古屋大学学術研究・産学官連携推進本部特任教授 メディカルイノベーション推進室室長代理)

――ここからは、受賞スタートアップの発表から順にピッチ内容を紹介していく。

【優勝/賞金500万円】 アイティップス株式会社

『日本の現場とインドの職人を繋ぐプラットフォーム「oyakata」』

見事、優勝の座を射止めたアイティップス。同社の「oyakata」は、日本の建築現場とインドの職人を繋ぐプラットフォームだ。現在、日本では、建設職人の不足が深刻化している。一方で、インドでは若年層の失業率が24%にも上り、大きな社会問題となっている。そこで両者をマッチングさせることが考えられるが、単に結びつければいいというものではないとアイティップス代表のラトネッシュ氏はいう。

なぜなら、技能実習生として海外から日本に訪れた人の多くが失踪をしてしまう現実があるからだ。実習生が失踪する理由は、技能や日本語力が十分ではないままに来日することと、来日費用の借金にあるという。

そこで「oyakata」は、「学ぶ」「働く」「評価する」の組み合わせで、来日人材をサポートする。具体的には、インドで訓練校を用意して高い職業技能や日本語能力を身につける機会を提供する。また、来日手続きなどに中間業者を入れずに、自社が一気通貫でサポートをすることで費用を低額にし、来日時の借金をゼロにしている。さらに、日本での就職後も、「oyakata」を働きぶりの評価ツールやコミュニケーションツールとしても利用できる。

将来的には、蓄積した評価情報をベースとして、「信用」がすべての生活の質に直結する来日人材のための信用情報ビジネスへの参入も計画しているという。人材マッチングプラットフォームという枠を大きく超えて、「すべてのがんばる人に、幸せを」というビジョンを実現したいと語り、ラトネッシュ氏はピッチを締めくくった。

【2位/賞金300万円】 株式会社CaTe

『心疾患を改善するプログラム医療機器と、医療と運動のプラットフォーム』

CaTeは、心疾患を改善するプログラム医療機器を開発する医療系IT企業だ。同社代表の寺嶋氏は循環器を専門とする医師であり、藤田医科大学で指導医としても勤務している。

心疾患の治療を受けた患者の再発や再入院の防止には、運動療法が高い効果を発揮する。この療法においては、最適な負荷の設定がカギとなる。負荷が低すぎると効果がないが、高すぎると危険である。これまでは、適切な負荷に設定された運動を実施するには専門病院に通院しなければ難しかった。長期間、定期的に通院することは患者にとって負担となるため、運動療法への参加率は低い。

そこで、AIを利用した動作の解析とフィードバックにより、患者が自宅で最適な負荷に設定された心臓疾患者のリハビリ(心臓リハビリ)として運動療法を実施できるようにするのが、同社が開発しているシステムだ。

現在は探索的試験を終了し、機器開発完了も間近であり、2025年9月から治験を開始し、2027~2028年には薬事承認と保険収載を目指している。健康保険が適用できれば、患者は安価にシステムを利用でき、利用が広がる。将来的には心臓リハビリ対象者以外の、疾患の方にも最適な運動療法が有効となるサービスの応用や海外展開も視野に入れているという。

【3位/賞金200万円】 株式会社チャイルドサポート

『正しい離婚と養育費保証でひとり親家庭の子どもたちの成長機会を取り戻す』

社名でもある「チャイルドサポート」は、英語で「養育費」を意味する。日本では、年間約6,000億円もの養育費が未払いとされ、社会問題になっている。子の養育費は本来、正規の手続きで請求すれば100%支払われる権利であるが、実際には母子家庭のうち58%が、一度も養育費を受け取っていない。

なぜ養育費をもらえない母子家庭が多いのかといえば、正しい離婚手続きがおこなわれていないためだ。具体的には、養育費も含めて離婚協議に合意できたら、離婚公正証書を作成することが必要だ。しかし、実際には事前に養育費を取り決めていない人、口約束やLINE等の私文書だけで済ませてしまっている人が、75%にも上るという。

そこで同社では、まず離婚時の離婚公正証書の作成及びその後20年間にわたって養育費回収をサポートする。養育費回収については、同社が回収代行をするとともに、もし未払いがあれば、1年間分は同社が肩代わりして支払う保証もつける。さらに、離婚公正証書作成は、簡単に情報をまとめられるLINEのチャットツールを用意している。

養育費の未払いは政府も問題視しており、養育費確保支援策を用意している自治体も増えている。同社は自治体との連携も進めながら、少ない当事者負担でサポートを受けられる道を広めている。今後はぜひ愛知県内での自治体連携も進めていきたいとして、ピッチが締めくくられた。

ヘルスケアサービスから地球観測まで幅広いテーマのピッチを繰り広げた6社

上記以外の6社は、今回は惜しくも受賞を逃したものの、いずれのプランも、ソーシャルイノベーションを実現する素晴らしいアイディアであった。以下、登壇順にピッチ内容を紹介していく。

●株式会社ユーリア

『2分でわかる! 簡易迅速尿検査』

現在、世界で約20億人の人が、カロリーは足りているもののビタミンなどの基礎栄養素が不足する「隠れ飢餓」の状態にあるという。新型栄養失調とも呼ばれ、様々な病気の原因になる。同社では、隠れ飢餓を発見して健康寿命を延ばすためのセルフチェックシステムとして「すぐわかる!簡易迅速尿検査」を開発している。検査紙に尿をかけ、スマホアプリで撮影するだけのわずか2分で自分の栄養状態などの検査結果がわかるシステムだ。

病院での検査より安く、しかも非常に手軽であることが特徴である。すでに3万7,000本の販売実績があり、今年からはドラッグストアでの発売も開始した。現在はより広い層に届けるため、協賛企業と組んだクーポン提供などの仕組みを活用して、検査キットを無料で配布できる仕組みの実現を目指している。また、小児がんのマーカー開発にも成功しており、今後は希少疾患の早期発見にも役立てていきたいという。

●株式会社DeaLive

『自宅におけるがん治療期副作用管理と栄養摂取サポート事業』

DeaLiveは、がんとともに生きる人の挑戦を後押しする「All my Life」というサービスを開発している。「一言で言えば、がん患者を痩せさせないためのサービス」だとDeaLiveの水谷氏は要約した。日本では、毎年100万人ががんに罹患しているが、外来治療を続けるがん患者の多くが、抗がん剤の副作用などで通常の食事ができない悩みを抱え、痩せていくことに対する恐怖を感じている。

それに対して、同社のアプリでは、抗がん剤治療中の患者に対して、それぞれの副作用が出る時期や程度を予測して、その対策を提示する。またがん患者やその家族とケア提供者とを結びつけるプラットフォームを提供し、栄養学的サポートや精神的サポートも行う。カギとなるのが医療機関の連携だが、四国がんセンターと提携し、愛媛県にて現在約50名の患者がアプリの試験利用をしている。同アプリの活用は愛知県のがん対策推進計画とも整合しており、ぜひ愛知県での普及を目指したいと述べられた。

●株式会社KANNON

『ウェブをバリアフリー化する「フェアナビ」事業の展開』

高齢者の増加や、障害者差別解消法改正案などにより、既存のWebサイトをアクセシビリティ対応する需要が高まっている。障害者差別解消法では、合理的配慮が求められた場合、それに対応しないことは違法となるため、対応は必須となっている。しかし、これまでは既存Webサイトの全ページをバリアフリー対応するには、多額のコストと数か月の時間が必要で敷居の高い作業であった。

それに対して、同社がSaaSで提供している「フェアナビ」では、既存Webサイトのトップページに1行コードを挿入するだけで、すべてのページでアクセシビリティ対応が可能になる。実装は誰でも5分で行うことができ、利用料も年間10万円からと低額だ。そのため、新聞社や自治体など、多くのページを持つWebサイトでの導入実績が増えている。同社は愛知県の「AICHI CO-CREATION STARTUP PROGRAM2024」にも採択されており、東海地方を起点に、日本全国へWebアクセスビリティを浸透させることを目指している。

●SkySense合同会社

『次世代地球観測プラットフォーム「SkySense」』

人工衛星や航空機から地球上を観測した地球観測データは、農林水産、気象・防災、行政・国防など、多くの分野で活用されている。しかし、衛星データは頻度が限られ解像度が低い、航空機データは範囲が狭くコストが高いなど、一長一短がある。それらの短所を解決するソリューションが、成層圏を長期間航行できる飛行船型のリモートセンシングプラットフォーム=HAPSだ。

実は20年ほど前にJAXA(宇宙航空研究開発機構)がHAPSを開発していたが、当時の技術水準では実現できなかった。現在AIや自動運転などの技術が発展したことで実現可能になり、同社はJAXAから技術供与を受けて開発を進めている。また、ビジネス的な需要も高く、すでに同社には民間大手企業8社と行政機関等から強い引き合いがあるという。SkySenseの中本氏は、エアモビリティや航空産業が集積している愛知こそ、このプロジェクトを進める場にふさわしいと述べ、ピッチを締めくくった。

●株式会社BeLiebe

『妊娠出産とキャリアの両立を叶えるコンシェルジュ「EggU」』

女性の社会進出が増え、晩婚化も進んでいるが、女性の「妊娠リミット」という生物学的制限に大きな変化はない。そのため、子どもが欲しいと望む女性にとってキャリアアップのタイミングと出産適齢期が重なって選択を迫られることは、大きな課題となる。どうすればいいかわからずに判断を先送りにしたことで、4.4組に1組が不妊となり、不妊治療で苦しんでいるという。

そこで、まずは女性が自分の体のことを気軽に知り、将来を考えるきっかけ作りにしてもらおうと開発されたのが、卵子の数を計測する同社の血液検査キット「EggU」だ。女性は約200万個の卵子を持って生まれ、その数は加齢と共に減少していくが、自分の残りの卵子数には個人差がある。「EggU」を使えば、自分の卵子の数を知ることができる。また、質問票により不妊リスクの一部もわかる。その結果によって、女性にキャリアと妊娠について考え、行動を変えるきっかけにしてもらうことができる。BeLiebeの志賀氏は自らの経験も踏まえて、世界中の「女性だから諦める」を無くしたいとまとめた。

●株式会社イル

『インソール型GPSデバイスを用いた高齢者見守りサービス』

日本は世界トップの認知症大国であり、2040年に認知症患者は560万人となると見込まれているが、そのうち約50%は在宅介護だ。体が健康な認知症患者の場合、問題となるのが徘徊である。2023年には、認知症徘徊による捜索願は約1万9,000件も出されている。現在、主な徘徊対策として外出させないなどの行動制限が取られることがあるが、身体機能が低下して認知症の進行が促進されたり、介護者への不信感が生じたりするなどの問題がある。

そこで、見守りのある安全な外出を実現するのが、同社のインソール型GPS「イル!」だ。従来のGPS端末やスマホの位置情報アプリでは、認知症の中核症状による着用への抵抗感や持ち忘れが問題があった。しかし「イル!」は靴のインソールにGPSが内蔵されていることで従来の課題を解決し、介助者が認知症患者の位置や運動量まで見守ることができる。さらにAIによる徘徊捜索効率化や転倒検知などの機能の搭載も予定している。イルの山本氏は、自らが祖父を介護した経験を踏まえて、介護者の負担を軽減するとともに、将来的には認知症の進行予防につながるデバイスで、認知症大国・日本からグローバルな課題解決を目指すと熱く語った。

大村秀章県知事による閉会の挨拶――「切磋琢磨しながらユニコーンを目指してほしい」

イベントの最後に大村秀章愛知県知事が登壇し、閉会の挨拶および会場へのメッセージが述べられた。大村知事は、いずれも甲乙つけがたい素晴らしい9社であったと感謝し、各社が切磋琢磨しながら、ユニコーンを目指してほしいと期待の言葉をかけた。また、次回シーズン3のテーマでは海外進出を目指すスタートアップを募集しているので、多くの企業に参加していただきたいと呼びかけもされた。

さらに、つい先日に愛知県と米国・カリフォルニア大学バークレー校との連携協定締結が発表された(※)が、来年度には同協定に基づいたアメリカのスタートアップともネットワーキングしたイベントなども「STATION Ai」で開催したいので期待してほしいと語り、結びの言葉に代えられた。

※関連情報:【知事会見】カリフォルニア大学バークレー校との覚書の締結について

取材後記

今回のシーズン2のテーマは、「ソーシャルイノベーション」。多くのファイナリスト登壇者が、自らの経験から出発してソーシャルな課題を抽出してプランを練っていたことから、ビジネス的な視点を超えた、熱い想いのこもったピッチが多かった。どのプランも実現されれば確実に社会課題を解決して、世界にウェルビーイングを増大させることに役立つだろうと期待させるものばかりで、受賞企業はもちろん、それ以外の企業の事業化もぜひ実現してほしいと思わずにはいられないイベントであった。

次回、シーズン3のテーマは「グローバルトレンド」だ。2/6(木)に最終審査会(ピッチコンテスト)が開催される。会場は「STATION Ai」で、テクノロジーの祭典・Tech GALAと連携して開催される。地域のキーパーソンを含む大勢の観覧者が来場予定だ。

(編集:眞田幸剛、文:椎原よしき、撮影:齊木恵太)

新規事業創出・オープンイノベーションを実践するならAUBA(アウバ)

AUBA

eiicon companyの保有する日本最大級のオープンイノベーションプラットフォーム「AUBA(アウバ)」では、オープンイノベーション支援のプロフェッショナルが最適なプランをご提案します。

チェックする場合はログインしてください

コメント2件

  • 眞田 幸剛

    眞田 幸剛

    • eiicon company
    0いいね
    チェックしました
  • 後藤悟志

    後藤悟志

    • 株式会社太平エンジニアリング
    0いいね
    チェックしました