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愛知県からユニコーンを創出!賞金総額1,000万円のビジコン『AICHI NEXT UNICORN LEAGUE』開幕――シーズン1のテーマは「産業イノベーション」。受賞したスタートアップ3社とは?

愛知県からユニコーンを創出!賞金総額1,000万円のビジコン『AICHI NEXT UNICORN LEAGUE』開幕――シーズン1のテーマは「産業イノベーション」。受賞したスタートアップ3社とは?

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愛知県主催のビジネスプランコンテスト『AICHI NEXT UNICORN LEAGUE』が2024年6月にスタートした。愛知県が提示するテーマに対し、全国のスタートアップからビジネスプランを募集。一次審査を通過した企業は、愛知県や外部メンターらとともにビジネスプランをブラッシュアップし、最終審査会(ピッチコンテスト)に臨む。最終審査会では3つの賞(優勝:賞金500万円/2位:賞金300万円/3位:賞金200万円)が授与され、参加企業は愛知県での事業化支援を受けられる。コンテスト名にある通り、愛知発のユニコーン企業の創出を狙うものだ。

このビジネスプランコンテストは年3回開催され、毎回異なるテーマが設定されている。初回となるシーズン1のテーマは「産業イノベーション」。「ものづくり」「農業・水産・食」「環境・エネルギー」の分野で新ビジネスを創出するスタートアップが対象となった。応募は8月に締め切られ、ブラッシュアップを終えた10社が、磨き上げたビジネスプランを発表する最終審査会の舞台に立った。

TOMORUBAでは、9月26日に名古屋市内で開催された最終審査会の様子を現地で取材。本記事では、受賞3社を含むファイナリスト10社のピッチ内容をダイジェストでお届けする。日本最大のスタートアップ支援拠点「STATION Ai」を10月に開業した愛知県。一層活気づくこのエリアのエコシステムに、ぜひ注目してほしい。

【開会挨拶】「STATION Ai発、ユニコーン候補の雄姿に注目してほしい」

最初に主催者である愛知県庁の川出氏が壇上に上がり、開会の挨拶を行った。川出氏はこのコンテストの目的を「STATION Aiからユニコーン企業を生み出す第一歩」と説明し、今回のシーズン1では50社を超える応募の中から選ばれた精鋭10社が登壇することを伝えた。また、会場やオンラインでの視聴者に向けて「STATION Ai発、ユニコーン候補の雄姿を見逃さないようにしてほしい」と呼びかけ、参加者らへの期待感を高めた。

▲愛知県経済産業局 革新事業創造部長 川出仁史 氏

『AICHI NEXT UNICORN LEAGUE』―産業イノベーション編―初代王者は誰の手に?

ファイナリストとして登壇したのは、「ものづくり」「農業・水産・食」「環境・エネルギー」分野で新規ビジネスに取り組む合計10社。次の審査員の前でピッチを行い、厳正な審査の上で「優勝」「2位」「3位」が決定した。

<審査員>

・川出 仁史 氏/愛知県経済産業局 革新事業創造部長

・中島 順也 氏/STATION Ai株式会社 統括マネージャー

・中村 亜由子 氏/株式会社eiicon 代表取締役社長

・中山 悠里 氏/アニマルスピリッツ合同会社 ディレクター

・マツモト サトシ 氏/株式会社クラッソーネ CTO

<審査基準>

「ターゲット/課題」「ソリューション」「ビジネスモデル」「市場性」「地域親和性」「実現可能性」

――ここからは、上位受賞スタートアップの発表から順にピッチ内容を紹介していく。

【優勝/賞金500万円】 匠技研工業株式会社

『工場経営の根幹である「値決め」をDXするオールインワン・システム「匠フォース」』

匠技研工業は中小製造業における「値決め」、つまり見積業務を支援するソフトウェアを開発する東京大学発のスタートアップ。同社が注目する課題は、日本の中小部品サプライヤー企業における「値決め」の非効率さだ。見積業務は経営の根幹に関わる重要な仕事だが、現状ではベテラン社員に依存し、どんぶり勘定になっていることも多い。企業によっては、見積業務に月間100時間以上を費やしていることもある。そこで開発したのが、『匠フォース』だ。

このシステムは、発注者からの図面をAIが解析。過去の類似品をレコメンドし、類似品との差分などを表示する。案件管理、見積書発行、データ分析ができるオールインワン・システムだという。すでに『匠フォース』を導入した企業では、見積時間の50%削減に成功し、70代から30代への技術承継も容易に進められている。

同社代表の前田氏は、『匠フォース』の導入数が全国で最も多いのが愛知県であると語り、STATION Aiに創業来初となる支店を設立することも発表。東京・愛知の2拠点体制で事業拡大を目指していくことを明らかにした。

【2位/賞金300万円】 株式会社FACTORY X

『生産性・収益性を向上させる「在庫戦略モデル」の開発・展開』

FACTORY Xは「在庫は悪」という考えが根付いてきた製造業において、「在庫戦略モデル」という新たな方法論を開発・展開しているスタートアップだ。サプライチェーンの混乱により、在庫がないと想定外のトラブルに対応できない昨今、新たな方法論が必要だと提唱した。

従来の「在庫管理」と「在庫戦略」の違いについて神谷氏は、「在庫管理」は在庫の数・状態を管理するための活動であるのに対し、「在庫戦略」は、在庫の生産性に加え、収益性・回転率・レジリエンスを考慮し、需要変動に必要な対応を計画・実施するための方法論だと説明するンスを考慮し、需要変動に必要な対応を計画・実施するための方法論だと説明する。そして、在庫戦略モデルは予算制約の中で在庫価値が最大化する在庫量を算出することで、工場経営に戦略を与える。

同社は「在庫戦略モデル」の普及に向け、誰でも使えるシステムを提供する。収益性を考慮した適正在庫の把握やシミュレーション、経営データ分析などが行える。すでに自動車部品メーカーへの本格導入に向けて、数千万円規模のPoCを進めており、その企業担当者からは「早く使いたい」との期待の声が寄せられている。メディアからも注目されており、NHKの新プロジェクトXにも新時代の挑戦者として出演したという。今後も製造現場の未来を変えるため、事業を前進させていく考えだ。

【3位/賞金200万円】株式会社Quastella

『AI品質管理で細胞産業に革命を』

Quastellaは、細胞培養工程における細胞の品質管理をAIで行う『Cytometa』を開発している。現状の細胞製造では、培養開始後の増殖を待つ間、毎日のように顕微鏡で目視観察を行い、細胞の状況を実験ノートに記録している。人の目による目視観察は、シンプルな作業だが重大な責任を追う役割で、仮に細胞医薬品製造において異常を見逃した場合、歩留まりの低下や製造停止で大きな損害をもたらすリスクもあるという。そこで開発したのが『Cytometa』だ。

このソフトは、細胞画像と画像に紐づく培養条件をアップロードすると、細胞品質をAIで自動評価することができる。名古屋大学での約20年に及ぶ基礎研究を基に形にした。2024年8月のリリースから約1カ月で2社での導入が決定し、引き合いも多いと話す。

導入効果は、「細胞培養担当の教育コスト削減」「品質の安定化」「製品ロス削減」などが挙げられる。今後の展開として、現在の属人的な細胞培養に変革をもたらすためにCytometaの更なるアップデートを構想している。「ここ愛知県から細胞産業という新しい産業を創出し世界に届けていく」と熱意を見せた。

「船舶のCO2排出削減」「廃棄物処理」「波力発電」など多様なテーマに挑む起業家が登壇!

ここからは、惜しくも受賞を逃したものの、独自のビジネスプランを披露した7社のピッチを紹介する。

●codeless technology 株式会社

『「いつもの書類でそのままDX」~モノづくり王国の愛知県から日本のDXを変革!~」』

「日本の現場には書類が山積している」と語るcodeless technology・猿谷氏が挑戦するのは、書類のデジタル化を通じたDXだ。同社の『Photolize』は、現場で使用する書類を撮影して送るだけで、AIと人が最短1時間でデジタルフォームを自動生成する。完成したフォームはタッチペンや音声、キーボードで簡単に入力可能で、データも管理できる。

昨年末にリリースしたばかりだが、すでに300社以上が利用し業務効率化に貢献している。愛知県内17の自治体とも連携し、地域のDX推進にも力を入れていく方針だ。また、翻訳機能も容易に実装できるため、「日本のシステム導入の文化を変えて、世界一簡単なDXを実現していく」と意気込みを示した。

●株式会社シーテックヒロシマ  

『フジツボ絶対取るマンを作りたいんじゃ』

広島県呉市のシーテックヒロシマは海の課題に取り組み、特に「フジツボ」に焦点を当てている。フジツボが船舶に付着すると速度が低下し、その影響は年間4000トンのCO2排出に相当する。現在、フジツボ除去は人力で行われているが高コストで、防汚塗料も将来的な見通しが明るいとは言えない。

そこで、自律制動型水中ドローンと新たな表面処理加工によるソリューションを提案。フジツボの防着と除去を同時に実現し、環境負荷を減らしつつ省力化も目指す。チームは経産省主催のプログラム「始動」出身者で構成され、愛知での拠点設立も視野に入れているという。

●株式会社JOYCLE

『ごみを運ばず燃やさず資源化する分散型インフラサービス』

JOYCLEは、ごみを運ばず燃やさず資源化するインフラサービスを開発するスタートアップだ。人口減少に伴う税収減で、自治体の大型焼却炉の運営が難しくなっている。そこで、ごみ発生元での再資源化を可能にする「小型資源化装置」を開発した。

装置の特徴は、IoTセンサーの活用により環境貢献効果などをデータで可視化できることと、AI活用により安定的に炭化をしつつ余熱で発電できること。初期ターゲットは感染性廃棄物を出す病院と、船で運搬が必要な離島リゾートで、いずれも高い廃棄物処理コストを抱えている。2024年内に装置が完成予定で、すでに8カ所への導入が内定している。最終的には、約5兆円の市場が見込まれる海外リゾートもターゲットにしていきたいと語った。

●株式会社BFAIセミコンダクタソリューションズ

『半導体製造工程における製品欠陥自動AI判定システムの開発』

BFAIセミコンダクタソリューションズは、半導体製造工程の目視検査をAIで自動化するソリューションを開発中だ。生成AIブームによる半導体不足は深刻化しており、同社はその原因の一つが検査工程にあると考える。多くの検査員が目視で行う検査は誤検査を招き、無駄も生んでいる。

そこで、開発したのが目視検査を自動化するAIだ。「質の高い学習データ」「圧倒的な検出性能」「運用を考慮したモデルの維持管理PF」「汎用性が高くスムーズな短期導入と水平展開」などが強み。協力企業との試算から、1ライン当たり年間約1億円のコストダウン、検出精度は95%以上を実現できる可能性も見えている。大手半導体メーカーへの導入も予定しているという。

●株式会社エンドファイト

『DSEライブラリーによるあらゆる環境下での緑化の実現

エンドファイトは、独自の土壌微生物「DSE」によりあらゆる環境での植物生育を目指す筑波大学発のスタートアップ。貧栄養環境の森林土壌から分離した植物内生菌(糸状菌)の技術の実用化を目指している。植物の根にこの微生物を共生させることで、植物を高機能化できるものだ。菌株個体ごとに提供できる効果が異なっており、その大規模ライブラリーを保有していることが同社の強み。

活用例として、農業分野では高温環境下でも植物が育ち、都市緑化分野では水や肥料の使用量削減が期待される。現在、大手企業と共同で実証実験を行い、今後はコンソーシアムを通じて環境事業の共創を進める計画。将来的には国内外への展開も視野に入れている。

●Yellow Duck株式会社  

『脱炭素社会の実現に向けた波エネルギーによる発電システムの開発』

Yellow Duckは、波のエネルギーを電力に変換する洋上パワーステーションを開発している。気候変動対策として再エネの需要が高まる中、太陽光や風力発電は設置場所や建設コストに制約がある。そこで、広大な海のエネルギーを利用する発電システム『洋上パワーステーション』の開発に取り組んでいる。

洋上の発電では、海底や沿岸への設備設置による利用場所の制限やコストの高騰が課題となっている。一方で、洋上パワーステーションは海底への建設が不要なため、高い拡張性を有する。さらに、それに伴うコストの削減も見込まれている。今年は各自治体との実証実験を予定しており、2025年には大阪万博への出展も決定している。

●株式会社ストラウト

『水産養殖を経験則からAIに、養殖DXアプリ「UMIDaS」』

ストラウトは、静岡県で水産養殖を営む企業の3代目、平林氏が立ち上げたスタートアップだ。平林氏によると、養殖業者はこれまで「勘と経験と度胸」で生産量向上に努めてきたという。しかし、昨今の気候変動などにより、従来の考え方だけでは魚病をもたらす異常察知が困難になっている。

そこで開発したのが、ソフトとハードの両面から養殖DXを実現するシステム『UMIDaS』だ。このシステムは、水槽内をモニタリングし、スマホで水温やプランクトンなどのデータをリアルタイムと時系列で可視化する。異常を早期に察知することで予防行動を起こし、養殖の生産性を高めることが狙い。さらに、異常遊泳行動を画像解析できるAIの開発も進めているそうだ。

【閉会挨拶】「スタートアップが愛知県で顧客を増やせるよう支援していきたい」

ピッチと表彰が終了した後、STATION Ai株式会社の中島氏が壇上に立った。中島氏はファイナリスト10社の代表者に向けて、「STATION Aiはオープンイノベーションの推進を通じて、スタートアップが愛知県で顧客を増やせるよう支援を行いたい」と述べるとともに、「ぜひ、STATION Aiに入居してほしい」と呼びかけ、新たに誕生する新施設への参加を促した。

閉会の挨拶を行った愛知県庁の川出氏は、「私たち愛知県もSTATION Aiも、全力で皆さんを支援していきたいと考えている。使い倒すぐらいの勢いで挑んできてほしい」と伝えるとともに、視聴者に向けて「この10社のスタートアップを応援してほしい」と呼びかけ、初開催となる『AICHI NEXT UNICORN LEAGUE』最終審査会を締めくくった。

取材後記

ユニコーンを標榜するスタートアップが選出されていることもあり、海外市場もターゲットにしたスケールの大きな事業が多く見られた。「愛知から新たな産業を生み出す」と豪語するスタートアップもあり、事業レベルを超えた産業創出への野心に圧倒された。自動車に続く新たな世界産業が愛知から生まれる日も近いだろう。『AICHI NEXT UNICORN LEAGUE』シーズン1は終了したが、すでにシーズン2の選考が進行中で、テーマは「ソーシャルイノベーション」となっている。最終審査会は11月27日(木)に開催決定。会場は完成したばかりの「STATION Ai」とのことだ。様々な機能を兼ね備えられた、全7階建ての日本最大のオープンイノベーション拠点の現地に、ぜひ足を運んでみてはどうだろう。

(編集:眞田幸剛、文:林和歌子、撮影:齊木恵太)

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  • 眞田 幸剛

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