1. Tomorubaトップ
  2. ニュース
  3. 未来の日本を代表するグローバル企業は、ここから生まれる!『AICHI NEXT UNICORN LEAGUE』シーズン3の優勝賞金1,000万円を獲得したスタートアップは?
未来の日本を代表するグローバル企業は、ここから生まれる!『AICHI NEXT UNICORN LEAGUE』シーズン3の優勝賞金1,000万円を獲得したスタートアップは?

未来の日本を代表するグローバル企業は、ここから生まれる!『AICHI NEXT UNICORN LEAGUE』シーズン3の優勝賞金1,000万円を獲得したスタートアップは?

  • 14064
  • 14056
2人がチェック!

次世代ユニコーン創出を目指して愛知県が主催するビジネスプランコンテスト『AICHI NEXT UNICORN LEAGUE』。テーマ別で本年3回のシーズンにわけて実施されてきたが、いよいよ最終となるシーズン3の優勝者を決める最終審査会(ピッチコンテスト)が、去る2月6日、「STATION Ai」(愛知県名古屋市)を会場にして開催された。

シーズン1の「産業イノベーション」、シーズン2の「ソーシャルイノベーション」に続き、今回のシーズン3のテーマは「グローバルトレンド」だ。世界を相手にビジネスで競うことを目指し、これまでの審査を勝ち抜いてきた意気盛んなスタートアップ10社による熱気あふれるプレゼンが繰り広げられた。

優勝者には、1,000万円の賞金が授与されるとともに、今後の愛知県内での事業実装に向けて事務局が有する地域のネットワーク等を活用した支援が受けられる。なお、本審査会は、地球の未来を拓くテクノロジーの祭典「TechGALA Japan」との連携開催となった。本記事では、全ファイナリストのピッチやトークセッションの模様を紹介していく。

開会挨拶――「愛知県から次のユニコーンを生みだしていきたい」(犬塚晴久氏)

イベントの冒頭には、愛知県経済産業局長の犬塚晴久氏から開会挨拶の言葉があった。犬塚氏は、会場となっているSTATION Aiには、国内外の500社ものスタートアップと、250社の事業会社が入居しており、県として支援に尽力していること、また、日頃の取り組みや本日のようなイベントを通じて、愛知から次のユニコーンを生みだしていきたいことなどを述べ、本プログラムへの期待を表明した。

▲犬塚晴久氏(愛知県 経済産業局長)

次に、プログラムの概要が説明された後、今回のピッチを審査する審査員が紹介された。審査員は以下の5名。審査は、ターゲット・課題、ソリューション、ビジネスモデル、市場性、地域親和性、実現可能性の6点に基づいておこなわれた。

<審査員>

・伊藤 仁成 氏(株式会社MTG Ventures 代表パートナー)

・鬼頭 武嗣 氏(GFTN Japan株式会社 共同創業者 名古屋市客員起業家)

・堂田 丈明 氏(Googleベンチャーキャピタル開発統括)

・中島 順也 氏(STATION Ai株式会社 投資企画室 担当部長)

・中村 亜由子 氏(株式会社eiicon 代表取締役社長)

▲手前の机に座っているのが5名の審査員。左から順に、中村氏、中島氏、堂田氏、鬼頭氏、伊藤氏。

――ここからは、優勝スタートアップの発表から順にピッチ内容を紹介していく。

優勝は、化学品Eコマースを事業化したSotas株式会社

【優勝/賞金1,000万円】 Sotas株式会社

『化学産業をネクスト自動車へ 日本発の化学品Eコマースを創出』

優勝は「化学産業をネクスト自動車へ 日本発の化学品Eコマースを創出」と題してピッチをおこなったSotas株式会社だった。

現在、化学品業界は脱炭素の動きを背景とした事業環境変化により、国内系化学メーカーの汎用品から撤退過程にあり、化学品材料購買企業では、従来の購買フローが限界を迎えているという。他方、FAや間接材の業界では、モノタロウ、ミスミといったプレイヤーがサプライチェーン変革を実現している。海外では、アリババはじめ化学産業におけるECサプライチェーンプレイヤーも存在するが、日本には存在していなかった。

しかし、単にECサイトがあればいいというものでもない。化学品は多種多様な種類がある上に、様々な法規制が存在する。さらに現在はトレーサビリティや廃棄プラ利用なども求められるなど管理すべき情報が多い。

そこで同社では、材料情報を検索できる「Sotasデータベース」、国内外の規制物質を調べられる「Sotas化学調査」、さらに、プラスチック成形加工の生産・在庫管理・受発注を一括して管理できる「Sotas工程管理」の3つのソリューションで、化学業界特化型のEコマースシステムを構築した。

同社のシステムは、すでに100社を超える企業に導入されており、現在はグローバルトップ5に入る樹脂メーカーとも提携。Sotas代表の吉元氏は、「私たちはデカコーンになれるポテンシャルを秘めている」と、自信をのぞかせて、ピッチを終えた。

世界を相手にビジネスで勝負する――ファイナリスト9社のピッチを紹介

以下では、「グローバルトレンド」というテーマに基づき、独自のビジネスモデルを披露したファイナリスト9社のピッチを登壇順に紹介していく。

●株式会社パワーウェーブ

『走行中のワイヤレス給電が可能な技術で新しいインフラを構築』

大学研究室より長年の時間をかけてきた高周波回路理論とパワーエレクトロニクスの研究開発を強みに、停車中はもちろん、走行中でも給電できるワイヤレス給電システムを開発・製造。

これまでのワイヤレス給電と異なり、コイルを用いない点が同社の給電システムの技術的な特徴。その製品シリーズの一部はすでに公道での実証実験を経て、製品化を目指している。

道路での走行中も、自宅などでの駐車中も自動での給電が可能となり、わざわざ「充電する」という行為が不要になる。「電気を充電するという概念そのものをなくしていくことを目指しています」と、同社の種田氏はまとめた。

●株式会社Helical Fusion

『日本生まれの「ヘリカル方式」で世界初の定常核融合炉を実現』

Helical Fusionは、核融合エネルギーの社会実装を目指すベンチャーだ。核融合炉は安全性が高く、高レベルの放射性廃棄物もCO2も排出しない。また、燃料物質が海水中に無尽蔵に存在するなど、多くのメリットを持つ。世界各国で開発競争が進められているが、同社は主流となっているトカマク方式と異なるヘリカル方式の炉を用い、前者に比べて50倍以上の長時間の安定運転に成功したという。

しかし核融合炉だけでは発電プラントは作れない。そこで、愛知・東海エリアのものづくりの力を借りながら2034年の発電実現を目指す。同社の田口氏は「日本を世界トップのエネルギー大国にしたい」と締めくくった。

●株式会社fcuro

『救命特化型画像診断AI ERATS』

登壇したfcuro代表取締役CEOの岡田氏は、高度救命救急センターに務める現役の救急医でもある。自らの臨床経験も踏まえて、交通事故などで搬送されてきた救急患者の診断に際し、医師は短時間で多くのCT画像を読み解かなければならないことから、見落としや治療の遅れが生じる問題を感じていた。

それに対して、同社の「救命特化型画像診断AI ERATS」は、CT画像から10 秒で異常箇所を検出することで迅速な診断を可能とし、救急患者の死亡率を最大25%削減できるという。最後に、交通外傷に特に精通している愛知県で実証を重ね、エビデンスを構築し、世界へ展開するビジョンが示された。

●株式会社Samaria

『世界初の独自LLMを開発 漫画AIツールで誰もが漫画家になれる世界を作る「JAPANMEDIA」』

日本は漫画大国だが、海外展開は遅れている。一方、韓国のWebtoonは、日本の漫画アプリ全体の10倍もの収益を上げている。Samariaは、Webtoonをベンチマークとしながら「JAPANMEDIA」という漫画プラットフォームを運営している。

「JAPANMEDIA」は33万タイトルの既存の漫画コンテンツを獲得、翻訳して海外展開している。それに加えて、漫画ファンの誰もが自分の作品を作りセルフバブリッシュできるよう、AIツールによる、漫画作成補助や3Dキャラクター創造などサポート機能を持つ。同社の山﨑氏は締めくくりとして「世界一の漫画プラットフォームを目指す」と力強く宣言した。

●Alchemist Material株式会社

『廃棄物を収益源に変える未来:ローカル水素製造装置』

シリコンバレーでの起業経験がある同社CEOの鈴木氏は、インドネシアの経営者から「ゴミで苦しんでいる」と聞き、日本のものづくり技術で解決することを志して2度目の起業をした。Alchemist Materialが目指すのは「廃棄物を収益物に変える新しい産業の創出」だ。

その方法は、既存の大型プラントではなく、小型分散型装置により水素とゴミを「地産地消」すること。それにより、物流コストが省かれ水素の流通価格を5分の1まで下げられる。さらには、IoTを通じて処理データを収集し、GHGクレジットやゴミクレジットを創出する。2025年からフィールドテストを進め、2030年のIPOを目指しているという。

●株式会社SAZO

『世界から買い物を! AI×越境 EC SAZO』

既存の越境ECサイトでは、フォームへの入力が複雑だったり、送料や関税が後払いになったりするなど面倒ごとが多かった。それに対し、国内ECモールでの購入と同じように手軽な購入体験を越境ECでも実現するのが、AIを活用した越境ECプラットフォーム「SAZO」だ。

SAZOでは、日本語で商品名を入力すれば、複数のECサイトの情報が翻訳され、送料や関税も自動で計算される。複数の海外ECサイトで買い物をしても一括で送料や価格、関税が計算されて決済され、個別に購入するより安くなるなどの機能も持つ。同社のギル氏は「グローバルでのM&Aにより成長を実現し、世界で越境ECシェアを取っていきたい」と展望を語った。

●リッパー株式会社

『タイヤを黒から白へ ナノテク自然素材で脱炭素と豊かな海へ』

ピッチ冒頭、「黒いタイヤを白くする」ことが同社のミッションだと紹介された。自動車タイヤが黒いのは、ゴムの強化剤として混入されるカーボンブラックのため。石油から作られるカーボンブラックは製造過程で大量のCO2を排出し、マイクロプラスチック化して海洋汚染源になるなど、環境負荷は大きい。

そこで同社は、代替材として木材由来のナノセルロースを強化剤として用いたクリーンタイヤ素材の実現を目指している。2024年からは実用化フェーズに入り、タイヤメーカーとの共同検証が進行中だ。現在は価格面での問題が残るが、5年後をめどに従来品と同程度の価格の実現が見込まれている。

●株式会社IDEABLE WORKS

『デジタル額縁であらゆる場所を、今すぐ簡単に、ギャラリーに変える「HACKK TAG(ハックタグ)」』

アート作品をギャラリーなどに展示するには、費用面などで相当の負担がある。そこで同社が開発したのは、特殊なサイネージのデジタル額縁に作品をデジタル展示できる、ギャラリープラットフォームの「HACKK TAG」だ。アーティストは安価な展示料で多くの人の目に触れる場所への作品展示が可能となる。また、サイネージを設置する施設などは、空間の価値を高めることができる。

リリース半年ですでに12箇所に設置され、約650点の作品が継続配信されている。「Spotifyが音楽の世界を、YouTubeが動画の世界を変えたように、「HACKK TAG」でアートの世界を変革していきたい」と、同社の寺本氏は熱を込めた。

●株式会社Spacewasp

『世界中どこでも使える建築内装のインフラの構築』

人材不足や資材不足により、国内の内装、家具、建材などの産業が危機に瀕している。それを踏まえて、Spacewaspは、植物性廃棄物由来の樹脂を用いたサステナブルな内装空間作りを事業化した。同社ではまず植物性廃棄物を粉砕・加工して樹脂化する。3Dスキャンデータからユーザーが希望する内装空間の3Dモデルを設計し、必要となる内装、家具などを3Dプリンタで自動成形する。

このシステムにより既存工法と比べて工期が9割、コストが3割削減可能だという。同社の伊勢崎氏は「今後、世界中の建設基準法、環境基準に対応するシステムを組んでいき、最終的には宇宙にまで事業を広げたい」と意気込みを語った。

トークセッション――「あいちデジタルアイランド」・「TECH MEETS」で進行中のオープンイノベーションプロジェクトとは?

10社によるピッチの終了後、愛知県 産業部 産業振興課 次世代産業室 デジタル戦略調整グループ 室長補佐の上原悦子氏と常滑市民病院システム管理室兼経営企画 室長の中村統勇氏、eiiconの上原和也氏(モデレーター)によるトークセッションがおこなわれた。

最初に上原氏から「あいちデジタルアイランド」と「TECH MEETS(テックミーツ)」について概要が説明された。これは、中部国際空港島とその周辺エリアを、2030年に普及が見込まれる近未来事業やサービスの実証実験などを進めるオープンイノベーションフィールドにしようというプロジェクトだ。

そのエリアで、先端デジタル技術を持つシーズ企業と地元企業とのマッチングやオープンイノベーションによるデジタル活用を進めるのが「TECH MEETS」で、現在、10プロジェクトの実証実験が進行している。

▲上原悦子氏(愛知県 産業部 産業振興課 次世代産業室 デジタル戦略調整グループ 室長補佐)

そのうちのひとつが、中村氏の所属する常滑市民病院(4月から地方独立行政法人「知多半島りんくう病院」に改称)での業務改革だ。中村氏からは、「医師の診療時の会話の記録と要約」「医師の診断情報の抽出」「看護師の勤務交代時の患者情報の連携」などの課題や具体的な内容が提示され、それらをオープンイノベーションで解決を図ることが目指されていると説明された。

▲中村統勇氏(常滑市民病院 システム管理室兼経営企画室 室長)

愛知県では、「TECH MEETS」の枠組みで今後もプロジェクトを募り、幅広いスタートアップとの共創を進めていくとされ、会場のオーディエンスにも向けて、積極的な参加が呼びかけられた。

審査委員講評&閉会挨拶――「本取り組みをこれからも継続していきたい」(大村秀章愛知県知事)

優勝者の発表後、審査員の各氏から講評が述べられた。伊藤氏は、優勝を勝ち取ったSotasに対して、「愛知県が誇るものづくりを支える化学の領域で、ぜひ課題解決を進めていただき、グローバルで飛躍していただきたい」と、期待を寄せた。

▲写真左/伊藤仁成氏(株式会社MTG Ventures 代表パートナー)

長い一日のプログラムの最後に登壇したのは、大村秀章愛知県知事。大村知事は、ファイナリスト10社のプレゼンがいずれも甲乙つけがたい、白熱した素晴らしいものであった絶賛した上で、プログラム参加への感謝の意を表した。

そして、「STATION Aiを日本のみならず、アジアのスタートアップ、イノベーションのハブにしていきたい」と述べ、そのために、世界中のスタートアッププレイヤーやファンド、投資家たちと繋がるイベントとして、来年以降もTechGALA Japan、AICHI NEXT UNICORN LEAGUEを毎年継続していきたいと話し、プログラムを締めくくった。

▲大村秀章氏(愛知県知事)

取材後記

今回のテーマは、「グローバルトレンド」ということで、10社の事業はいずれもスケールが大きく、私たち未来の生活を確実に変えてくれそうな内容にあふれていた。

優勝したSotas株式会社は、1,000万円という破格の優勝賞金もさることながら、国内トップの製造業集積地であり、ものづくりの人材、技術やノウハウが豊富な愛知県において、その存在と事業を広く知らしめたという点で、金銭には換算できない大きな果実を得られたはずだ。そして、それは他の9社についても同様で、今日のイベントをきっかけとして、共創のネットワークが確実に強化されるであろう。

自治体が主催するビジネスプランコンテストの中でも大規模な 『AICHI NEXT UNICORN LEAGUE』だが、来年以降も継続されるとの大村知事の言葉もあり、本日、また今後の参加企業から、未来の日本を代表するグローバル企業の誕生が予感された。

※参考記事:

・シーズン1レポート/愛知県からユニコーンを創出!賞金総額1,000万円のビジコン『AICHI NEXT UNICORN LEAGUE』開幕――シーズン1のテーマは「産業イノベーション」。受賞したスタートアップ3社とは?

・シーズン2レポート/【賞金総額1,000万円】愛知県主催のビジコン『AICHI NEXT UNICORN LEAGUE』S2最終審査会をレポート――大村知事も称賛!「ソーシャルイノベーション」をテーマに受賞したスタートアップ3社とは?

(編集:眞田幸剛、文:椎原よしき、撮影:齊木恵太)

新規事業創出・オープンイノベーションを実践するならAUBA(アウバ)

AUBA

eiicon companyの保有する日本最大級のオープンイノベーションプラットフォーム「AUBA(アウバ)」では、オープンイノベーション支援のプロフェッショナルが最適なプランをご提案します。

チェックする場合はログインしてください

コメント2件

  • 中務稔也

    中務稔也

    • 株式会社ユニテックス
    0いいね
    チェックしました
  • 眞田 幸剛

    眞田 幸剛

    • eiicon company
    0いいね
    チェックしました