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「AICHI MATCHING BATCH2」マッチングDaysレポート――愛知県企業14社と全国のスタートアップから社会実装に至る共創は生まれるか?

「AICHI MATCHING BATCH2」マッチングDaysレポート――愛知県企業14社と全国のスタートアップから社会実装に至る共創は生まれるか?

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スタートアップを起爆剤に、新たなイノベーション創出を目指す愛知県――。2018年10月に策定した「Aichi-Startup戦略」をベースに、日本最大級となるインキュベーション施設「STATION Ai」の整備、各種インキュベーションプログラムの実施、県外VCの呼び込みや、グローバルネットワークの拡充など、多方面で環境整備を推し進めている。

中でも、愛知県がひときわ力を込めるのが、オープンイノベーションだ。愛知県内の企業とスタートアップの融合を図り、イノベーションを誘発しようとしている。その取り組みの一環として、2019年度から前期・後期に分けて開催しているプログラムが、『愛知県企業×全国のスタートアップ』の新規事業創出を目指した「AICHI MATCHING(あいちマッチング)」である。

去る2月15日と16日に、「AICHI MATCHING BATCH2」のマッチングイベントが、バーチャルオフィス「oVice」上で催された。BATCH2では、愛知県から14社のホスト企業が参加。事前に取り組みたいテーマを提示した。それらのテーマに対し、全国からスタートアップが応募。その中からマッチングDAYSに進んだ企業が、事業共創に向けた約1時間のディスカッションに参加した。


本記事では、ホスト企業5社へのインタビュー、および愛知県庁にて本取り組みをリードする榊原氏へのインタビューを通じ、「AICHI MATCHING」の今とこれからを探る。

ホスト企業5社が「AICHI MATCHING」から得たモノ

■株式会社東海モデル

<募集テーマ>愛知のものづくり力を活かしたプロダクト開発

東海モデルは、試作品やモックアップ、検査治具などを製造するメーカーだ。モーターショー用のコンセプトカーの試作なども手がけている。2021年には、中小企業やスタートアップ、個人を対象とした製品開発支援サービス『ハツメイト』をローンチ。反響も徐々に高まってきたことから、今期は一気に攻めに行くという方針をとっている。こうした背景から、ネットワークを拡大するために、あいちマッチングへの参加を決めたそうだ。


▲株式会社東海モデル 代表取締役社長 尾崎剛史 氏

あいちマッチングには、同社代表の尾崎氏が参加。6社とのディスカッションを終えた後の率直な感想を聞いた。尾崎氏は、立て続けに6社との議論であったことから「疲労感は大きい」と笑って振り返りながらも、「効率という意味ではよかった」と話す。

手応えとしては、「来週にでも再度打合せをしましょう」で終わった企業、会話の中から熱量を感じ「こういった人たちと、ぜひモノづくりがしたい」と感化された企業など様々だったが、いずれも有意義だったという。今年の夏に予定しているプロジェクトで「ぜひ一緒にやりたい」と、具体的な話に発展した企業もあったそうだ。

展示会や交流会など、他にもビジネスマッチングの機会はあるが、出会った企業と次のステップが見えずに終わってしまうことも多い。しかし、今回のあいちマッチングでは、「次回以降、どういった議論をするのかがイメージできた」と尾崎氏は話す。次も同様の機会があれば「参加したい」と前向きな返答を得ることができた。

■名鉄協商株式会社

<募集テーマ>地域住民の毎日の暮らし、魅力的な地域づくりへの貢献

愛知県を代表する大手私鉄、名古屋鉄道株式会社のグループ企業で、「名鉄グループの総合商社」として自由な発想で事業の幅を広げてきた名鉄協商。同社は現在、パーキング事業をはじめ、カーリース・カーシェアリング・バイクシェア・各種物販・不動産など多方面に事業を展開している。

あいちマッチングへの参加を決めた担当の丹羽氏は、本イベントに参加した理由として、「コロナの影響で移動の総需要が減り、鉄道に付随する名鉄グループの既存事業は大きな影響を受けたことから、今後成長が見込まれる新規事業を開拓しなければならないという考えがあった」と話す。今回が「あいちマッチング」初参加となるが、チャレンジの意味合いも大きかったという。


▲名鉄協商株式会社 企画室 係長 丹羽辰嗣 氏

実際に参加してみての率直な感想を聞いたところ、丹羽氏は「今すぐ協業実現とまではいかないが、普段、関わりを持てない企業と出会えたことは非常によかった」と振り返る。加えて「世の中のニーズをとらえたビジネスを行っている企業と議論ができ、アイデアが広がりやすい場だと感じた」とコメント。そういったアイデアを、名鉄協商に限らず名鉄グループ全体に還元し、新たな事業を生み出したいと話す。

今回のあいちマッチングでは3社とディスカッション。特に印象に残っているのは、名鉄沿線地域の発展につながるアイデアだったという。自身も「地域貢献に関わる仕事をしたい」との想いから名鉄に転職をしたという丹羽氏。社内外に仲間を増やしながら形にしていきたいと意気込みを語ってくれた。

■トヨタ自動車株式会社

<募集テーマ>“地球環境に配慮したプロダクト” × “カーボンニュートラル” の実現

「可動性(モビリティ)を社会の可能性に変える」というビジョンを掲げるトヨタ自動車。自動車の設計開発・製造・販売・アフターサービスだけではなく、SDGs・カーボンニュートラルといった社会的課題解決に向けた技術革新・新規事業創出も加速させている。

あいちマッチングには、新事業企画部の鬼頭氏が参加。鬼頭氏は、BATCH1ではサーキュラーエコノミー全般という抽象的なテーマを提示したが、今回のBATCH2では、BATCH1での議論をもとにテーマを絞ったと話す。これは、当初から狙っていたことだという。


▲トヨタ自動車株式会社 新事業企画部 グループ長 鬼頭司 氏

その絞ったテーマというのが「廃車・端材を利用したアップサイクル」だ。廃棄物や不用品に新しい価値を与えるアップサイクルの考え方に照らして、生産工程の中で生じる端材や使い終わった廃車を何か別のプロダクトに変換できるのではとの想いから、本テーマを提示した。テーマを絞ったことで、マッチング精度の高い企業と出会うことができたそうだ。

鬼頭氏は、「自分たちのやりたいことが明確になったがゆえに、応募企業からの提案も具体的だった」と振り返る。BATCH2では8社と面談を行ったが、次に進みたいと感じる企業も多かったそうだ。

今後の展望として鬼頭氏は、自動車メーカーとしての“つくる責任”に触れながら、「世の中から廃棄物を減らしていく活動を進めていきたい」と話す。そうした考えに基づいたプロダクトをユーザーに使ってもらい、カーボンニュートラル実現に向けた第一歩にしていきたい考えだ。

■ブラザー工業株式会社

<募集テーマ>カーボンニュートラルとバリューチェーン全体のCO2排出最小化

ブラザー工業は、主力である通信・プリンティング機器を中心に、電子文具、家庭用・工業用ミシン、産業機器、工業用部品、通信カラオケ機器など、幅広い分野で製品・サービスを提供する企業だ。2021年10月には、環境目標である「ブラザーグループ 環境ビジョン 2050」を改定。バリューチェーン全体でCO2排出の最小化を目指している。

メーカーとして長い歴史を持つ同社だが、環境問題への対策に関しては自社内に知見が少なく、パートナー企業を探す目的で、あいちマッチングへの参加を決めたという。


▲ブラザー工業株式会社 新規事業推進部 主任 安井良 氏

あいちマッチングには、新規事業推進部に所属する安井氏のほか関連部署のメンバーらが参加し、3社と面談を実施した。ロボットベンチャーとの面談では、同じメーカー同士で話が盛り上がり「非常におもしろかった」と話す。残りの2社は、社内に知見の少ない化学関連の企業だったことから、「とても勉強になった」と振り返る。面談には、提案内容に興味がありそうな部署の社員にも声をかけたそうだが、同席した社員も前向きな反応で、一緒に何かやりたいという機運になっているそうだ。

また、同社は愛知に拠点を置く企業だが、面談した3社はそれぞれ東京・北海道・福岡と遠方に拠点を置く。こうした遠方の企業と手軽に出会えるのは、オンラインイベントだからこそだという。一方で、実物に触れることのできないデメリットも感じたと話す。今後も同様のオンラインイベントがあれば参加を希望するかとの質問に対して、「積極的に参加していきたい」と、前向きなコメントをもらうことができた。

■株式会社アルタ

<募集テーマ>DXで中小企業を徹底支援

株式会社アルタは、ICT-WEBの総合商社だ。中小企業のDX支援商材・サービスなどを展開している。海外展開にも積極的で、フィリピン支社を皮切りにグローバル展開を目指しているという。

あいちマッチングには、海外事業・代理店営業部の近藤氏が参加。BATCH1に続く2回目の参加だという。近藤氏はITやDXを通じた中小企業支援を担当しているが、「この事業とスタートアップの持つサービスの相性がよいのではないか」と考え、参加を決めたそうだ。


▲株式会社アルタ 海外事業・代理店営業部 主任 近藤史都 氏

3社との面談を終えての感触を聞くと、近藤氏は「今、私たちが手がけている事業と近い部分で協業ができそうだという手応えを感じた」と振り返る。応募時にもらった提案内容以外の部分でも協業の可能性を感じたため、3社いずれとも議論を継続していく予定だという。1時間のディスカッションの中で、具体的な座組みの話にまで議論を深められた企業もあったそうだ。

オンラインという開催方法について聞いたところ、近藤氏は「コロナ禍前は、遠方というだけで取引をするかどうか迷うこともあった」としながら、「今は会いに行くコストを考えなくてよくなった」とオンラインのメリットを語る。一方で、「議論が進んでくると、(対面で)会ってみたいと感じることもある」と加えた。また、あいちマッチングの仕組みに関して、スタートアップ周辺の情報は把握しづらいことから、ホスト企業としては、スタートアップの方から応募してもらえるこの仕組みは「ありがたい」と語ってくれた。

愛知県庁が「AICHI MATCHING」によせる期待

続いて、愛知県庁職員で「AICHI MATCHING」を担当する榊原氏より、BATCH1の振り返りや、本取り組みから生まれている成果、BATCH2の感触や今後の展望について聞いた。


――今回は、昨年10月のBATCH1に続くBATCH2となります。前回との違いや進化したポイントなどがあれば、お聞きしたいです。

愛知県庁・榊原氏: まず、BATCH1とBATCH2では、前提条件が少し異なります。BATCH1は年度の前半なので、時間と資金を潤沢に使えます。一方、BATCH2は年度の後半なので限られた予算と期間の中、短期間で成果を出さなければなりません。このように前提条件が違う中で、BATCH1ではお試し的にお使いいただく企業も含めて広く公募しました。対して、BATCH2では間口を広げるというより、課題の解像度を高めて少し絞った形でエントリーを募ったという違いがあります。


▲愛知県 スタートアップ推進課 榊原氏

――前回のBATCH1からは、どのような成果が生まれていますか。

愛知県庁・榊原氏: NDA締結、あるいは実証実験に進んだプロジェクトは6件です。これは、高い成功率だと感じています。愛知県の大企業と東京のスタートアップの共創も生まれていて、この取り組みの手応えを実感しているところです。

――BATCH1を振り返って、うまくいったポイントがあれば教えてください。

愛知県庁・榊原氏: 一番よかったと感じる点は、愛知県企業とスタートアップが議論するルームに、運営支援を手がけるeiiconの担当者がディレクションをする役割で入ってくれたこと。第三者が加わり、スタートラインでしっかり目線合わせをすると、ボタンのかけ違いが起こる確率を低くできると感じました。また、オープンイノベーションを成功させるコツやナレッジの提供などを、間に入ってアドバイスしてもらえたことも、成功率を高めるために寄与したのではないかと考えています。

――BATCH2の感触はいかがですか。

愛知県庁・榊原氏: 先ほどの話と重複しますが、課題の解像度が高まったことで、より短期間で成果が出てきそうだという期待感を持っていますね。

――愛知県として、さらにオープンイノベーションを盛り立てていくために、何が必要だとお感じですか。

愛知県庁・榊原氏: 何らかの形になって、社会に実装されなければ意味はありません。ですから、愛知県の企業とスタートアップで有用なプロダクトやサービスをつくり、それを社会に実装する。それらを、皆さんに使っていただき、その価値を感じていただく。皆さんが「企業とスタートアップが一緒にモノづくりをすると、こんな有用なものが生まれる」と感じるようになることが、何よりも重要だと思います。

それに向けて、あいちマッチングも変更すべき点は変更しますし、PRE-STATION Ai(※)も拡充して機能を強化していきます。今後は、PRE-STATION Aiとも連動させながら、愛知県はもとより日本全体を盛り上げていきたいと考えています。

※PRE-STATION Ai:愛知県が運営するスタートアップ支援拠点

――オープンイノベーションを活性化するにあたり、現状、足りていないと感じる要素は?

愛知県庁・榊原氏: 全国的にさまざまなアクセラレーションプログラムが走っていますが、愛知県を含めプログラムが終わった後のサポートが充分ではないのではないかと感じています。実証したら終わりというものが大半で、社会に利益が還元されるところまでサポートできているものが少ない。「世の中が変わった」というところまでご支援できれば、よりよい取り組みになるのではないでしょうか。オープンイノベーションは社会改良運動の一端だと思っています。社会をよりよくする取り組みを、私たち愛知県としても後押ししていきたいです。

――「AICHI MATCHING」は今年度で3年目となります。続けることの意義についてもお聞きしたいです。

愛知県庁・榊原氏: 単年度で1回だけ実施しただけだと地域にナレッジが蓄積されませんし、最初から完璧な成果が生まれることはありません。トライアル&エラーを重ねることで、私たち行政にもノウハウが蓄積されますし、参加企業にもノウハウが貯まります。地域としても総合力が高まっていくでしょう。進歩し続けることが重要で、逆に進歩できなければ国際競争には絶対に勝てません。ですから、継続して前に進み続けることこそが必要不可欠だと考えています。

――今後、どのような企業に「AICHI MATCHING」を活用してほしいですか。

愛知県庁・榊原氏: 愛知県の企業側については、本気でオープンイノベーションに取り組みたいものの、やり方が分からないという企業に、ぜひご活用いただきたいです。一方、スタートアップについては、有望なソリューションをお持ちで、なおかつ柔軟性のある企業にご参加いただきたいです。やはり、既存企業とスタートアップではスピード感や使っている業務ツール、企業文化などに違いがあります。そういった違いを理解し、相手企業に歩み寄れる企業の方が円滑に進むと思います。

また、対等性を意識することも重要です。いずれかの企業が「自分たちのほうが偉い」というスタンスになってしまうと、オープンイノベーションは成功しません。参加企業に意識してほしいのは、フェアネスと透明性と、相手に歩み寄る姿勢。この3つを意識していただいたうえで、「AICHI MATCHING」にご参加いただけるとうれしいですね。

取材後記

今回もフルオンラインで開催された「AICHI MATCHING」。ホスト企業へのインタビューからは、距離が離れている企業同士が効率よく出会い、深い議論を交わしている様子がうかがえた。また、榊原氏の話にあった通り、回を重ねるごとに行政・民間双方にノウハウが蓄積されている。さらなる展開も予定されているそうだ。県内の有力な大企業も加わり、オープンイノベーションが活気づく愛知県。「AICHI MATCHING」をきっかけに生まれたプロダクト・サービスが、私たちの生活をアップデートする未来は、そう遠くないのではないだろうか。

(編集:眞田幸剛、取材・文:林和歌子)

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  • 田上 知美

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