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【共創プログラム説明会レポート】交通環境情報ポータル「MD communet®」を活用した共創プログラム――あいおいニッセイ同和損保・住友ゴム工業・ハレックスのテーマオーナーが語る!提供可能なデータ・アセットと共創で目指すゴールとは?

【共創プログラム説明会レポート】交通環境情報ポータル「MD communet®」を活用した共創プログラム――あいおいニッセイ同和損保・住友ゴム工業・ハレックスのテーマオーナーが語る!提供可能なデータ・アセットと共創で目指すゴールとは?

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NTTデータが運営するMD communet®(エムディーコミュネット)は、モビリティ分野を中心とした8000件以上のカタログデータを集約したポータルサイトだ。ユーザーが抱える課題を解決するための支援も手がけ、データ利活用による社会課題解決や新たなサービス創出を行っているほか、情報・データを保有する会員とそれらを利用したい企業のマッチングサイトとしても機能している。

今回始動した『MD communet® OPEN INNOVATION PROGRAM 2023』は、MD communet®における共創の輪やビジネス創出の可能性をさらに広げることを目的としたプログラム。MD communet®の会員団体であり、今回のプログラムの中核企業である「あいおいニッセイ同和損保」・「住友ゴム工業」・「ハレックス」の3社が、独自の強み・技術を活かした以下のテーマを設定し、共創パートナーを募集中だ。

<あいおいニッセイ同和損保の共創テーマ及びアイデアイメージ>

「テレマティクスデータを活用した地域交通の利便性向上」(テレマティクスデータ×〇〇)

01.地域住民のニーズに応じた新たな公共交通手段・ルート創出に向けたアイデア

02.地域イベント時の交通渋滞・駐車場問題を解決するアイデア

<住友ゴム工業の共創テーマ及びアイデアイメージ>

「センシングコアを活用した安心・安全なモビリティサービスの実現」(タイヤセンシングデータ×〇〇)

01.安全なモビリティを実現するためのアイデア

02.センシングコア×〇〇で新たなデータを生み出すための技術

03.交通インフラのスマートメンテナンスを実現するアイデア

<ハレックスの共創テーマ及びアイデアイメージ>

「気象情報を活用して安全な交通環境を実現する」(気象データ×〇〇)

01.悪天候時の安全な運転をサポートするためのアイデア

02.物流や交通に係る業界の気象条件に伴うリスク回避を実現できるアイデア

03.気象情報をもとにした事故発生予防や保険最適化のアイデア

エントリーは既にスタートしており、応募締切の10月23日までに多くの企業の参加が予想される。今回は10月4日に開催されたオンライン説明会の模様をレポートする。

プログラム実施の背景や狙い、ポータルサイトとしてのMD communet®の機能やサービス概要、中核企業3社が設定したテーマの背景や共創パートナーのイメージに関する説明とともに、各社担当者の意気込みが語られた。

※関連記事:交通環境情報ポータル”MD communet®”を活用した共創プログラム始動――「テレマティクスデータ(あいおいニッセイ同和損保)×〇〇」「タイヤセンシングデータ(住友ゴム工業)×〇〇」「気象データ(ハレックス)×〇〇」

【NTTデータ】 新たな企業との出会いや伴走支援を通じて社会課題の解決を加速していく

まずMD communet®を運営するNTTデータの礒氏からが説明会開始の挨拶を行い、その後、同社の鶴家氏がMD communet®および今回のプログラムの概要、開催背景などについて説明した。

MD communet®は、内閣府が推進する戦略的イノベーション創造プログラムにおいて構築され、NTTデータが運営するポータルサイトであり、Society 5.0の実現に向け、交通環境情報の活用を通して社会課題解決に資する新しい価値やサービスを生み出す基盤として誕生した。具体的には以下のような3つのサービスを提供している。

●MD communet®が提供するサービス

■官民の交通環境情報を掘り起こし情報を提供

→8000件を超えるデータから「気づかなかったデータとの出会い」を実現

■データ提供者/利用者のマッチングを促進、サービス創出を支援

→今まで知らなかった企業・出会えなかった企業との出会いをサポートし、サービス創出を支援

■データ加工などテクニカル支援でサービス化を後押し

→技術面でのハードルを超えるための支援を実施(企業紹介も含む)

鶴家氏はMD communet®を通じてこのようなサービスを提供している中で、「新規事業の進め方がわからない」「時間が掛かってしまう」「継続性がない」といった企業の声が増えていたことが、『MD communet® OPEN INNOVATION PROGRAM 2023』の直接的な開催背景になったと説明。オープンイノベーションプログラムを開催することでこのようなハードルを乗り越え、新たな企業との出会いや伴走支援を通じたパートナーとの共創による、様々なサービス・ビジネスの創出を通じて社会課題の解決を加速していくと語った。

また、本プログラムにおけるMD communet®のインキュベーション中の支援内容として以下の3点が紹介された。

●MD communet®のインキュベーション期間中の支援内容

■データカタログサイトの利用

→8000件を超える交通環境情報から、インキュベーションの実施に必要なデータの検索が可能

■マッチング支援の活用

→インキュベーション実施に必要となるデータ・サービスの紹介や90社/団体を超える会員から共創パートナーのマッチングをサポート

■テクニカル支援の活用

→PoCの計画・実行等におけるデータの活用方法やアイデアの実現方法など、技術支援にも柔軟に対応

最後に鶴家氏は、今回のプログラムでは「共創」がテーマとなっており、今まで1社では成し得なかった既存領域を超えた新しい化学反応を生み出すことを目指したいと話した。さらに、今回のプログラムだけで終わるのではなく、プログラム終了後も継続してビジネス・サービスの創出を目指していけるパートナーに募集していただきたいと意気込みを語り、プログラムへの参加を呼びかけた。

【あいおいニッセイ同和損保】 テレマティクスデータの活用を通じて安心・安全な街づくり、魅力的な街づくりの実現を目指す

続いて中核企業3社からの募集テーマおよび募集アイデアイメージに関するプレゼンテーションが行われた。1社目は「テレマティクスデータを活用した地域交通の利便性向上」を募集テーマに掲げたあいおいニッセイ同和損保だ。同社の小阪氏、加賀谷氏がテレマティクスデータの概要や特徴、募集テーマ、各募集アイデアイメージに込めた想いや共創企業に求めるアセットなどについて語った。

●募集テーマについて

あいおいニッセイ同和損保は、その名称の通り損害保険事業をコア事業としているが、保険商品やデータを通じて、お客さまとともに様々な社会・地域課題の解決を目指しており、「健康・ヘルスケア」「環境」「移動」「物流」「防災・減災」など、幅広い分野で新たな価値創造に取り組み、安心・安全な街づくり、魅力的な街づくりの実現を目指しているという。

今回のプログラムでは、これらの分野の中でも「移動」にフォーカスし、同社が保有するテレマティクスデータを活用することで新たなソリューションの創出を目指すと説明した。

●テレマティクスデータについて

同社の主力商品である「テレマティクス自動車保険」は、保険契約車両に通信機能付きの車載器を取り付けることで、走行距離や急発進、急ブレーキ、急ハンドルといったデータを取得する。これにより事故時に損害を補償するだけでなく、安全運転アドバイスなどを通じてドライバーに安全運転を促す仕組みを取り入れるなど、「事故を起こさない保険」として新たな価値を提供している。

この「テレマティクス自動車保険」によって得られる各種走行データが「テレマティクスデータ」だ。テレマティクスデータには以下のような3つの特徴がある。

(1)あいおいニッセイ同和損保はテレマティクスデータのパイオニアであり、国内180万台超の契約データを活用した圧倒的なデータ量を誇る。また、幅員5.5m以下の生活道路までをカバーする一般車走行データでもある。

(2)精緻かつ粒度の細かいデータであり、車両の詳細な挙動も把握できる(位置データ、速度データ、加速度データを1秒間に1回間隔で取得)。

(3)24時間、365日データの収集が可能。また、過去分のデータも蓄積しているので、施策前後の比較が可能なほか、過去の施策の効果検証も可能。

●募集テーマ01「地域住民のニーズに応じた新たな公共交通手段・ルート創出に向けたアイデア」について

小阪氏は人口減少が進む地方の公共交通の現状について問題点を指摘した。地方の暮らしにおいて車は欠かせないものだが、運転免許証返納後の高齢者にとっては暮らしにくい地域になってしまう。

一方、車の代替となるべきバスなどの地域公共交通は利用者の需要やニーズを捉えきれずに廃線になってしまうケースも少なくない。小阪氏は「車は便利。だが、車以外の交通手段もあった方が、もっと便利」という思いを今回の企画に込めたと語った。

このような課題を解決するためには、新たなバス路線やオンデマンドバスの導入・追加を行う際に需要・運行の予測に基づいた意思決定が重要になるという。小阪氏は「ここにテレマティクスデータを活用することができれば、定量的・客観的な意思決定が可能になり、地域住民のニーズに応じた新しい公共交通手段やルートの創出につなげられる」と意気込みを語った。

●募集テーマ02「地域イベント時の交通渋滞・駐車場問題を解決するアイデア」について

コロナ禍も落ち着き、国内旅行需要の回復・増加により、車による遠出が増えることも予想される中、地方のイベントエリア周辺では交通渋滞や駐車場不足、違法駐車といったトラブルの発生が懸念されている。

しかし、地域自治体やイベントプロモーターが、特定時期のイベントのためだけに大規模な駐車場を整備することは不可能に近い。一方、スムーズに駐車できない状況を知った参加者側はイベントに対するエンゲージメントが低下する。

本企画では、テレマティクスデータの分析と効果検証により、定量的・客観的な課題解決を行い、イベント時のトラブル回避を目指すという。「有名な祭りで主催者・地域住民・参加者間のトラブルが発生した事例を実際に地元で耳にしたことがある」と語る青森県出身の加賀谷氏は、このような課題を解決したいという思いで今回のテーマを企画したという。

●あいおいニッセイ同和損保が求めているアセット/共創企業イメージ

小阪氏はソリューション創出において自社に不足しているアセットに関して説明し、以下のようなアセットを有する企業への協力を呼びかけた。

■ドメイン知識/関連データ

・マーケティングに向けたデータ解釈

・交通機関の運行ノウハウ

・人流データ

・駐車場の分布データ

・自転車・タクシー・バス等のモビリティデータ

■リアルアセット

・バス(オンデマンドバス)

・バス乗務員

・その他モビリティサービス

■地域と連携したプロモーションのノウハウ

最後に小阪氏は、今回のプログラムやオープンイノベーションで目指すゴールについて、「今年度中にソリューション開発の実現可能性の検証を目指し、さらに将来的には社会実装に向けて、より大きな座組みを作るためのパートナーシップ構築を進めていきたい。魅力的な街づくりや地域観光に課題感を持っている皆様、ぜひ一緒に取り組みましょう」とメッセージを送った。

【住友ゴム工業】 センシングコアに新たな技術・サービスを掛け合わせて社会貢献につなげていく

2社目は「センシングコアを活用した安心・安全なモビリティサービスの実現」を募集テーマに掲げた住友ゴム工業。同社の首藤氏がセンシングコアの特徴や提供価値、3つの募集アイデアイメージ、今回の取り組みのマイルストーンなどについて語った。

●住友ゴム工業/オートモーティブシステム事業部について

住友ゴム工業は「DUNLOP(ダンロップ)」のブランドで知られるタイヤやスポーツ用品、医療用のゴム製品、人工芝といった様々なゴムに関わる製品を展開する企業だ。首藤氏が所属するオートモーティブシステム事業部もタイヤ事業の一部を手がけており、タイヤリペアキットやタイヤ空気圧のモニタリングシステム、タイヤに関する困りごとを解決するタイヤソリューション、さらには今回の共創のテーマとなる「センシングコア」と呼ばれるタイヤセンシング技術を扱っている。

●センシングコアについて

首藤氏はセンシングコアに関する解説動画を披露した。センシングコアは住友ゴム工業が30年にわたって磨き続けてきた最先端技術。タイヤの回転情報を解析することでモビリティの性能と安全性を最大化するだけでなく、日々のタイヤにかかる費用の抑制にも貢献でき、タイヤで走るあらゆるモビリティにソフトウェアとしてインストールできるように設計されている。

首藤氏は「常に車両に流れている信号情報を扱うため、新たにセンサーを追加することなくタイヤ周りの状態を推定できることがセンシングコアの大きな強みである」と強調した。また、センシングコアは空気圧、荷重、路面状況、摩耗などを検知することにより様々な価値の提供を可能にする。首藤氏はセンシングコアの提供価値について以下の3つの領域に大別できると説明した。

■ドライバーや車両への情報提供(タイヤ空気圧低下、スリップ注意、ハイドロプレーニング、過積載/偏荷重、タイヤ摩耗)

■センサー技術との融合による車両制御(車間距離、速度、ブレーキ、トラクション)

■クラウドによるシェアリング(滑りやすさマップ、タイヤ管理、道路保守管理)

●3つの募集アイデアイメージについて

続いて首藤氏は、今回テーマアップした3つの募集アイデアイメージについて説明した。

「01.安全なモビリティを実現するためのアイデア」に関しては、ドライバーにリアルタイムで危機を知らせるサービスやタイヤのメンテナンスタイミングをユーザーに届けるようなサービスのためのアイデアを募る。

次に、「02.センシングコア×〇〇で新たなデータを生み出すための技術」に関しては、センサーやAIでの解析技術を加えることでメンテナンスや自動制御、予測といった新たな価値を生み出すためのアイデア、さらにはノイズ除去によってデータの精度向上につながるアイデアなどを募集する。

そして、「03.交通インフラのスマートメンテナンスを実現するアイデア」に関しては、路面データを取得し、交通インフラ事業者に情報提供を行うサービスや、道路情報を可視化・定量化するための技術について取り組みたいと説明した。

また、首藤氏は今回の取り組みのゴールイメージについて、「2024年3月末時点で、お客様に提供できる価値が具体化されている状態、さらにはその実現のためのフィジビリティ・スタディ(の一部)が完了している状態を目指したい。さらにはフィジビリティ・スタディの結果に応じて具体的な実証実験フェーズに移行し、効果の検証について一緒に計画していきたい」と力強く語った。

最後に首藤氏は「センシングコアと皆様がお持ちの技術・サービスを掛け合わせることで、より良い社会貢献につなげていきたい。今回テーマアップした3つの募集アイデアイメージに限らず、世界をあっと驚かせるサービスやソリューションの提供に向けて、多くの企業様とのコラボレーションを検討していきたい」と熱意を伝えた。

【ハレックス】 気象データと交通環境情報を組み合わせることで交通にまつわる諸問題を解決・緩和していきたい

最後に登場した中核企業は「気象情報を活用して安全な交通環境を実現する」という募集テーマを設定した株式会社ハレックスだ。同社のビジネスソリューション事業部 事業部長 馬目氏が、ハレックスの事業内容や会社としての強み、提供できるデータやリソースなどについて語った。

●ハレックスの特徴・強みついて

今年で創立30周年を迎えたハレックスは、NTTデータグループの唯一の民間総合気象会社だ。気象庁からの認可を受けた上で気象・地象・海象に関わる様々な情報提供を行っており、「気象データの提供」「ASPツールの提供」「専用システムの開発・運用」「気象予報士によるサポート」といった気象に関わる4つの事業を展開している。

また、今回のプログラムの参加理由について馬目氏は「自社の強みである気象データを生かして新たな市場に挑戦したいという思いで3つの募集アイデアイメージを設定した」と説明した。

●提供できるデータ・リソースについて

馬目氏は気象データの価値について解説した。「気温5℃」というデータだけでは何も価値を生まないが、「気温5℃」というデータに基づいて「寒いからコートを着て行こう」という判断が為された時点で初めてデータに価値が生まれる。農業では気温データを参照することで、害虫の発生時期がわかり、農薬を散布しなければならない時期や農薬を購入すべき時期を判断することもできる。

今回のプログラムで扱うことになる交通環境に関しては、個人の生活や農業以上に様々な気象・気温の影響を受けることになる。同社では交通と気象に関する相関や因果関係を分析・検証するためのデータとして、2012年以降の1Kmメッシュ・1時間間隔の気象データを整備しているほか、リアルタイムで更新する予測データ、GIS(地理情報システム)と非常に親和性の高いAPI、気象予報士が有するノウハウなど、豊富なリソースを提供できる体制が整っていることを強調した。

また、馬目氏は東京都内の京葉道路と環状6号線における2022年の降水量データを活用し、降水帯の移動を予測した上での交通シミュレーションをホワイトボード上で説明するなど、同社の持つ気象データが様々な形で安全な交通環境の実現に資する可能性があることをアピールした。

●交通環境の諸問題を気象情報で解決・緩和できる可能性

続いて馬目氏は、今回設けた「01.悪天候時の安全な運転をサポートするためのアイデア」「02.物流や交通に係る業界の気象条件に伴うリスク回避を実現できるアイデア」「03.気象情報をもとにした事故発生予防や保険最適化のアイデア」という3つの募集アイデアイメージについて言及するとともに、電気自動車や自動運転、信号機の進化、カーナビの進化など、近年急速な変貌を遂げている交通環境だからこそ目に見えない課題や問題、改善点が広がっている可能性があると指摘。これらの諸問題の幾つかは気象情報で解決・緩和できるのではないかと呼び掛けた。

最後に馬目氏は「交通環境と気象情報の因果関係に興味を持っている皆様や、これらの領域で新しいビジネスを生み出したい皆様は、ぜひ積極的にエントリーいただきたい」と期待を込めて語り、プレゼンテーションを締め括った。

取材後記

MD communet®を運営するNTTデータ、さらには中核企業3社の熱い思いが伝わる説明会となった。中核企業各社が掲げる募集テーマ/募集アイデアイメージは、いずれも社会や世の中に大きなインパクトを与える可能性を秘めており、8000件を超える交通環境情報が集まるMD communet®を基点に、各社の貴重な技術やデータ、アセットを活かした共創にチャレンジできる今回のプログラムは、多くのスタートアップ、ベンチャー企業にとって飛躍のチャンスとなることは間違いないだろう。

『MD communet® OPEN INNOVATION PROGRAM 2023』の応募締切は2023年10月23日(月)。今回のプログラムや各社の共創テーマに興味を持っている企業には、ぜひ早めのエントリーをお勧めしたい。

※本説明会の模様はアーカイブされています。コチラからご視聴ください。

(編集:眞田幸剛、取材・文:佐藤直己)

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