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交通環境情報ポータル”MD communet®”を活用した共創プログラム始動――「テレマティクスデータ(あいおいニッセイ同和損保)×〇〇」「タイヤセンシングデータ(住友ゴム工業)×〇〇」「気象データ(ハレックス)×〇〇」

交通環境情報ポータル”MD communet®”を活用した共創プログラム始動――「テレマティクスデータ(あいおいニッセイ同和損保)×〇〇」「タイヤセンシングデータ(住友ゴム工業)×〇〇」「気象データ(ハレックス)×〇〇」

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NTTデータが運営するMD communet®(エムディコミュネット)は、交通環境に関わる8000件以上のデータを集約したポータルサイトであり、それらの情報・データを保有する会員団体と利用したい企業のマッチングサイトとしても機能するなど、交通環境情報を活用して「あらゆる社会課題を解決したい、次の未来を創りたい」と考える人々が集う”共創の場”として注目を集めている。

そして今回、MD communet®における共創の輪やビジネス創出の可能性をさらに広げることを目的とした『MD communet® OPEN INNOVATION PROGRAM 2023』の開催が発表された。<※応募締切:10/23(月)>なお、プログラム説明会も開催を予定している。

●プログラム説明会(オンライン開催・無料)

2023年10月4日(水)16:00~17:30

プログラム説明会申込ページ: https://techplay.jp/event/917071

TOMORUBAでは同プログラムのエントリー開始に先駆け、NTTデータでMD communet®を担当する鶴家氏にインタビューを実施し、MD communet®の特徴や今回のプログラムの立ち上げ背景、参加企業に提供できるリソースなどについて伺った。

また、MD communet®の会員団体であり、今回のプログラムの中核企業として各社独自の強み・技術を活かした共創テーマを設定した「あいおいニッセイ同和損保」・「住友ゴム工業」・「ハレックス」の担当者からもお話を伺い、プログラムを通じて解決したい社会課題や事業課題、共創パートナーのイメージ、パートナーに提供できるリソースやアセットなどについて詳しくお聞きした。

【NTTデータ】 業界や領域を超えた新しい化学反応が生まれることを期待したい

最初に今回の共創プログラムの軸となるMD communet®を運営するNTTデータの鶴家氏にインタビューを実施。プラットフォームとしてのMD communet®の特徴やこれまでの取り組み事例・支援内容についてお聞きした。さらに、今回のプログラム立ち上げの背景や実現したいゴールなどについても語っていただいた。

――まずは貴社が運営されているMD communet®の概要について教えてください。

鶴家氏 : 交通環境情報ポータルであるMD communet®は、内閣府が提唱するSociety 5.0の実現に向けて、モビリティに関する交通環境情報を活用して社会課題解決に資する新しい価値やサービスを生み出す基盤として誕生しました。

最初は有益なデータを持っている企業・団体を紹介する取り組みからスタートしましたが、2021年4月のサイト公開から2年以上が経った今では8000件以上のカタログデータを掲載しているほか、会員として90以上の企業・団体様に参画いただいています。

加え、各企業や団体が必要とするデータやアセットに基づいたマッチング支援や、新しいサービスを開発する上でのテクニカル支援を行うなど、交通環境情報を起点としたビジネスマッチングを活性化する様々な取り組みを推進しています。

▲MD communet® には、8000件を超える交通環境情報が掲載されている。

▲株式会社NTTデータ 社会基盤ソリューション事業本部 ソーシャルイノベーション事業部 スマートビジネス統括部 営業企画担当 主任 鶴家佳祐 氏

――90以上の団体が会員として参画されているとのことですが、 どのような狙い・課題感を持ってMD communet®に参画する団体が多いのでしょうか?

鶴家氏 : 自分たちが持っているデータを使って新しいことに取り組みたいものの、「データの活用方法がわからない」「自分たちだけでは難しい」といった課題感を持った企業様が多い印象です。

また、サービスを開発する企業様については、MaaSやCASEといったモビリティの変革の中で「どのようにサービスを広げていくべきか」あるいは「自社のデータやアセットだけでは実現できない」といった部分に課題感を持っている方々も少なくありません。総じて言えば既存のコミュニティの中では生み出せない新たなモビリティサービスの創造や課題解決の可能性を求めて参画いただいている企業様・団体様が多いと感じます。

――MD communet®がオープンして2年以上が経過していますが、これまでのマッチングや共創についてご紹介いただける事例はありますか?

鶴家氏 : 会員企業との共創事例としては、株式会社ゼンリン、アルプスアルパイン株式会社、当社NTTデータの3社で取り組んでいる沖縄県での実証実験があります。レンタカー車両に搭載したドライブレコーダーから映像データを収集し、レンタカーを利用する観光客に向けてリアルタイム性の高い情報を提供することで行動変容を促し、快適な移動の提供を実現するプラットフォームです。こちらは4月から実証実験を進めており、9月からはユーザーテストを開始するなど、商品化・実用化に向けた取り組みを進めています。

▲沖縄県にて実施しているドライブレコーダーを活用した実証実験(画像出典:NTTデータ 2023年1月11日報道発表資料

また、もう一つの事例としてご紹介したいのが、兼松株式会社と株式会社データ・テック、そして当社NTTデータによる取り組みです。3社の連携によって、商用車両ドライバーに対して店舗ごとの搬入や駐車ルールを音声で提供する「みせナビ™」というサービスの実証実験を行いました。

MD communet®では、サービス創出の企画支援、テクニカル支援として、車両走行データの加工処理のサポートを実施しました。現在は来年度のサービス化を目指し、取り組みを実施しており、「みせナビ™」を社会実装することで、物流業界における「2024年問題」の解決に貢献していきたいと考えています。

▲みせナビ概要(画像出典:NTTデータ 2023年1月24日報道発表資料)※関連記事 

――続きましてMD communet®をベースとしたプログラムである「MD communet® OPEN INNOVATION PROGRAM 2023」についてお聞きします。今回、このようなプログラムの実施を決断された背景や目的について教えてください。

鶴家氏 : これまで様々な企業様・団体様への課題ヒアリング、マッチング、実証実験などをサポートしてきましたが、まだまだデータの活用方法やサービスのマネタイズに苦慮している企業様・団体様が多いという実情があります。

このような課題を解決するためにも、現在のMD communet®のコミュニティやモビリティ業界内のネットワークを飛び超え、これまではパスがなくてつながりようがなかった幅広い方々とのオープンイノベーションを試してみるべきだと考えました。

今回のプログラムが成功すれば「こんな業界・領域でもモビリティデータが活用できる」という新たな気づきや事例が生まれると思いますし、私たちが目指してきたSociety 5.0の実現や様々な社会課題の解決にもつながっていくと考えています。

また、今回のオープンイノベーションプログラムを皮切りに、さらなるデータ利活用の促進、MD communet®の認知拡大と活性化を図っていきたいと考えています。

――今回のプログラムのサポート体制やパートナー企業に提供できるアセットなどについてお聞かせいただけますか?

鶴家氏 : ビジネス開発やインキュベーションのフェーズでは、必要なデータ、技術、サービスに関するアドバイスやサポートをさせていただくほか、私たちがこれまで培ってきた共創・実証実験などのノウハウを活かした伴走支援をさせていただきます。

また、先ほどもお話しした通りMD communet®には90以上の会員が参画されています。私たちNTTデータがハブとなることで、会員の技術やデータ、アセットなどもお借りしながら共創を進めていきたいと考えています。

――応募企業に期待されていること、一緒にプログラムを通して実現したいことなどをメッセージとしていただければと思います。

鶴家氏 : 今回はMD communet®の会員である中核企業3社に集まっていただき、3社それぞれが挑戦したい社会課題解決をテーマに設定しています。中核企業の皆様が有する技術やデータと、パートナー企業の皆様が有する技術やアイデア、ソリューションなどが組み合わさることで、既存の領域を超えた新しい化学反応が生まれることを期待していますし、その上で私たちと一緒に実際のビジネスやソリューションの創出を目指していただける方々にご応募いただきたいと考えています。

また、モビリティ領域のビジネス化には長い時間が掛かかるので、今回のプログラムだけではなく、次年度以降もパートナーとして一緒にビジネスを検討いただけるような方々と出会いたいですね。

【あいおいニッセイ同和損保(テレマティクスデータ×〇〇)】 より多くのデータ・アセット・知恵を結集して未来志向の街づくりを実現したい

次に中核企業の一社である、あいおいニッセイ同和損害保険株式会社 デジタルビジネスデザイン部 データソリューショングループの小阪氏、加賀谷氏にお話を伺った。同社は今回のプログラムにおいて「テレマティクスデータを活用した地域交通の利便性向上」という募集テーマを設定している。テレマティクスデータとは、「CSV×DX」を掲げる同社の戦略を体現するテレマティクス自動車保険の提供を通じて取得する大量の走行データである。同社がテレマティクスデータの活用を通じて生み出そうとしている価値や共創のイメージについてお聞きした。

――お二人が在籍するデジタルビジネスデザイン部 データソリューショングループについて教えていただけますか?

小阪氏 : 当社のデータソリューショングループのミッションは、保険事業を通じて取得したデータを活用することで、保険の高度化とともに、保険を中心とした保険外ソリューションも広く社会に供給し、トータルで安全・安心の提供を目指すことです。

当社が2022年からスタートした中経では「CSV×DX」(シーエスブイ バイ ディーエックス)という戦略を掲げており、お客様・地域・社会とともにリスクを削減し、社会・地域課題を解決する保険の提供を目指しています。この「CSV×DX」のコンセプトを体現するのがテレマティクス自動車保険です。テレマティクス自動車保険は通常の自動車保険と同様、事故時に損害を補償するだけでなく、安全運転アドバイスなどを通じてドライバーに安全運転を促す仕組みを取り入れるなど、「事故を起こさない保険」として新たな価値を提供しています。

また、「CSV×DX」戦略のコアは保険商品ですが、私たち保険会社が外部環境の変化に対応し、安全・安心を提供できる会社となっていくためには、これまでの保険商品に加えて周辺サービス領域の拡大・高度化が必要です。それには、デジタルデータの活用は必要不可欠であり、こうした背景から、前身となるデータソリューション室が設立されました 。さらには2020年の保険業法改正による業務範囲拡大も契機となり、組織改編のうえ、デジタルビジネスデザイン部データソリューションGとして、 保険事業の提供を通じて得たデータの活用を進めています。

現状ではテレマティクス自動車保険を通じて取得したテレマティクスデータと呼ばれる大量の走行データを活用して福井県・福井県警察と取り組んだ交通安全対策が、2022年度「冬のDigi田甲子園」で優勝し、内閣総理大臣賞を受賞するなど、様々な分野・領域でのデータ利活用を推進しています。

▲あいおいニッセイ同和損害保険株式会社 デジタルビジネスデザイン部 データソリューショングループ 小阪正太郎氏

――今回のプログラムでは「テレマティクスデータを活用した地域交通の利便性向上」という募集テーマを設定されています。さらには「地域住民のニーズに応じた新たな公共交通手段・ルート創出に向けたアイデア」「地域イベント時の交通渋滞・駐車場問題を解決するアイデア」という2つの募集アイデアイメージも提示されていますが、このような募集テーマ、アイデアイメージを設定された理由について教えていただけますか?

小阪氏 : これまで私たちはテレマティクスデータを「事故のない快適なモビリティ社会」の実現のために活用していましたが、データの利活用範囲をさらに広げることで「レジリエントな街づくり」にも貢献できるのではないかと考え、このようなテーマを設定しました。

1つ目の募集アイデアイメージ「地域住民のニーズに応じた新たな公共交通手段・ルート創出に向けたアイデア」に関しては、地方の公共交通の活性化に資するバス型のモビリティを想定しています。当社が保有するテレマティクスデータには、地方の生活道路となっている細街路までカバーできているほか、自動車保険の契約情報とも結びついているため、生活道路も含めた走行距離・走行時間の可視化ができると思いますし、このような情報を把握することで地域ごとに新たなバス路線やオンデマンドバスの導入・追加に関する需要の有無を把握し、素早く的確な意思決定につなげられるのではないかと考えています。

加賀谷氏 : 2つ目の「地域イベント時の交通渋滞・駐車場問題を解決するアイデア」については、イベントを開催・運営するプロモーターの皆様や地方自治体の皆様へ価値提供をイメージしています。私は青森県の出身ですが、有名な祭りやイベントの際には、遠方から車で来た方と地域の方との間でトラブルが発生する事例を度々耳にしていました。そのような課題の解決にテレマティクスデータを活用できないだろうかと考え、このようなアイデアイメージを設定させていただきました。

具体的にはパークアンドライド方式のような道中での自動車から公共交通機関への切り替え提案、走行データを活用した最適な駐車場設置場所の探索、さらには自家用車・駐車場に限らない交通ルートの整理、自動車での来訪の抑制につながる交通施策の提案など、様々な形でイベント開催時の交通整理施策に関するコンサルティングを提供したいと考えています。

▲あいおいニッセイ同和損害保険株式会社 デジタルビジネスデザイン部 データソリューショングループ 加賀谷侑吾 氏

――今お話いただいた2つのアイデアイメージについて、それぞれどのような共創パートナーを想定されていますか?

小阪氏 : 「地域住民のニーズに応じた新たな公共交通手段・ルート創出に向けたアイデア」に関して、私たちはデータの収集・分析についてはノウハウを持っていますが、マーケティングに向けてのデータ解釈については経験がないので、そのような領域で経験をお持ちの皆様とお話をさせていただきたいです。また、バス型モビリティを想定していますので、バスやバス乗務員などのリアルアセット、運行ノウハウといったドメイン知識を持っている皆様とも組みたいと考えています。

さらに、地域の公共施設や商業施設との連携ノウハウ、プロモーション領域で連携するようなノウハウをお持ちの企業・団体様とも組みたいと考えています。

加賀谷氏 : 「地域イベント時の交通渋滞・駐車場問題を解決するアイデア」については、当社の自動車走行データ以外にも様々なデータが必要になります。たとえば人流データ、駐車場の分布データ、自転車・タクシー・バスなどのモビリティデータをお持ちの方々と共創することで、交通施策の提案や効果検証をより高度化できると考えています。

また、小阪からもあったようにプロモーションのノウハウを有する広告事業者様と連携することで施策効果の拡大につなげていければと思っています。

――共創パートナーに提供できるリソースとしてはテレマティクスデータということになりますよね?

小阪氏 : そうですね。180万を超える保険契約者様の自動車走行データを活用いただけるほか、時系列分析・ユーザー属性分析も可能です。また、400を超える地方公共団体との連携協定、保険会社としてのリスクマネジメントノウハウなども活用いただけると思います。

▲テレマティクスデータは、量・質ともに損保会社として随一の規模を誇っている。

――それでは最後に応募企業へのメッセージをお願いします。

加賀谷氏 : 様々な事業者様と互いのアイデアやアセットを持ち寄り、知恵を出し合うことで素晴らしい提案やビジネスを構築していきたいと考えています。地域観光について課題感を持っている皆様と一緒になって課題解決を実現したいと考えていますので、ぜひ積極的にご応募いただければと思います。

小阪氏 : 損害保険会社は世の中や社会の発展を後押しする事業を展開していますが、私たちが理想とする未来志向の街づくりは当社一社だけで実現できるものではありません。そのような理想を実現するためには、より多くのデータ、より多くのアセット、より多くの知恵が必要になります。

今回のプログラムやオープンイノベーションを通じて短期的・スポット的な成果も狙っていきたいと考えていますが、その後、さらに大きな座組みを作っていくためにも、私たちの理想に共感・共鳴いただける様々な方々と出会いたいですね。

【住友ゴム工業(タイヤセンシングデータ×〇〇)】 センシングコアの価値を高める思いも寄らないアイデアや技術と出会いたい

次に、住友ゴム工業株式会社の首藤氏に話を伺った。同社は「センシングコアを活用した安心・安全なモビリティサービスの実現」を募集テーマに掲げている。センシングコアは、同社が開発した自動車の車輪の回転速度信号から空気圧・摩耗状態・グリップ状態・荷重状況などを推定するソフトウェアである。自動車に流れている信号を活用するため、追加センサーやメンテナンスがいらず、維持・管理コスト削減にもつながるという。

――貴社の事業や首藤さんの担当業務について教えてください。

首藤氏 : 私は住友ゴム工業のオートモーティブシステム事業部に所属しています。当社はDUNLOP(ダンロップ)というタイヤブランドやスポーツ用品で知られており、タイヤ事業、スポーツ事業、産業品事業の3本柱がビジネスの中核です。そのような事業環境の中、オートモーティブシステム事業部は当社の4本目の柱を作ることを目指し、センシングコアをはじめとするタイヤ周りの様々なソリューションビジネスを推進しています。

▲住友ゴム工業株式会社 オートモーティブシステム事業部 AS第三技術部 課長 首藤圭亮 氏

――今回のプログラムでは「センシングコアを活用した安心・安全なモビリティサービスの実現」を募集テーマに掲げられていますが、このテーマを設定した背景・理由についてお聞かせいただけますか?

首藤氏 : センシングコアは、オートモーティブシステム事業部が展開するタイヤ周りのソリューションを提供するための技術でありソフトウェアです。具体的にはタイヤの空気圧や接地路面の状況を測定する技術ですが、当社のセンシングコアはセンサーを取り付けて計測するのではなく、車輪の回転速度信号などから計測できることが最大のセールスポイントです。

センシングコアにはタイヤの空気圧・摩耗・荷重の計測、さらには車輪の脱落予兆といった素晴らしい機能があります。しかし、それらの機能を「どのようにビジネス化・マネタイズ化するか」という部分に課題感を感じていることも事実です。

これまでにない提供方法や組み込み方法、あるいは別の技術とのコラボレーションなど、私たちが思いも寄らないような観点やアイデアと組み合わせることで、より多くのお客様にセンシングコアの価値を届けたいと考えたことがプログラムへの参加理由であり、このようなテーマを設定した背景となります。

▲タイヤの空気圧、摩耗状態、荷重や滑りやすさをはじめとする路面状態を検知するセンシングコア(画像出典:住友ゴム工業ホームページ

――先ほどのテーマに紐づく形で「安全なモビリティを実現するためのアイデア」「センシングコア×○○で新たなデータを生み出すための技術」「交通インフラのスマートメンテナンスを実現するアイデア」という3つの募集アイデアイメージを提示されていますが、それぞれのカテゴリーでどんな企業と共創したいと考えていますか?

首藤氏 : まず1つ目の「安全なモビリティを実現するためのアイデア」に関しては完成車メーカーや自動車部品メーカー、車載機器メーカーなど、クルマ周りの事業・サービスを展開されている企業様を想定しています。

2つ目の「センシングコア×○○で新たなデータを生み出すための技術」については、タイヤ周りの状況を計測できるセンシングコアを起点にして、タイヤ以外の様々なことまで予測したい、あるいはさらなる技術へと発展させていきたいと考えているような研究機関などを想定しています。たとえば私たちのセンシングコアでは振動解析やノイズキャンセルのような技術も取り入れているので、それらに関連する技術を持った企業様、あるいは画像解析や音声解析など、まったく別領域の技術を持った企業様も候補になると考えています。

3つ目の「交通インフラのスマートメンテナンスを実現するアイデア」では、タイヤ・クルマ側からではなく、道路・インフラ側からのアプローチということになるので、交通インフラに関連する事業者様や地方公共団体・官公庁様が対象になると考えています。

ただし、これらはあくまでも共創イメージの基本軸に過ぎません。業界・業種を問わず、私たちが思いも寄らないような技術やアイデアを持った方々と出会えることを期待しています。

――センシングコアに関する技術以外の部分で共創パートナーに提供できるリソース・アセットなどがあれば教えてください。

首藤氏 : オートモーティブシステム事業部は、社内でも非常に期待度が高い事業を推進しているため、価値のあるアイデアであると判断されれば、ヒト・モノ・カネに関する投資を得られやすい環境にあると考えています。また、私個人としてはビジネス観点だけではなく、社会貢献という観点で価値があると感じられる共創になりそうであれば、社内に対して積極的にアピールしていくつもりです。

テーマ次第ではありますが、当社の研究・開発設備や実験設備なども必要であればご提供できますし、共創やビジネスの内容・進捗によっては国内外の販売網・供給網の活用についてもご協力できると思います。

――それでは最後に応募企業へのメッセージをお願いします。

首藤氏 : 手前味噌になりますが、当社のセンシングコアは非常に画期的な技術であり、タイヤ周りのトラブルを削減する有力な手法の一つであると考えています。しかしながら、先ほどもお話ししたように技術の提供方法やビジネス化については大きな課題感を持っていることも事実です。「タイヤを作ってタイヤを売る」という事業を中心に営んできた私たちの視野の狭さを崩し、新しい価値提供の方法を一緒に考え、議論してくださる皆様と出会えることを期待しています。

【ハレックス(気象データ×〇〇)】 異業種の皆様と共に気象データの新たな活用方法を考え、課題解決につながるビジネスを創出したい

最後に紹介する中核企業は株式会社ハレックス。民間気象情報会社である同社は、様々な気象情報を有効に活用するためのソリューションや気象予報士によるコンサルテーションサービスなどを提供している。今回のプログラムでは「気象情報を活用して安全な交通環境を実現する」というテーマを掲げて共創パートナーを募集する。同社の馬目氏、髙橋氏、山田氏に話を伺った。

――貴社の事業内容について教えてください。

馬目氏 : 当社は気象情報を提供する会社です。一般の方々が日々を快適に過ごすという観点で言えば、気象庁が発信する気象情報や天気予報だけでも十分な情報が得られます。一方で気象や天候は多くの企業のビジネスに様々な影響を与えるケースもあります。私たちは膨大な気象情報の中からビジネスや社会課題の解決に資するような価値ある情報を検出・抽出し、多くのお客様のお役に立つことを目指しています。

具体的にはお客様のシステムに取り込みやすい気象情報のデータ提供、Webサイト等のASPサービスによる気象ツールの提供、気象システムの開発及び運用、気象予報士による支援・アドバイス等のコンサルテーションサービス、以上4つの事業を柱としたサービスを展開しています。

▲株式会社ハレックス ビジネスソリューション事業部 事業部長 馬目常善氏

――今回のプログラムでは「気象情報を活用して安全な交通環境を実現する」という募集テーマを掲げられていますが、このようなテーマを設定した背景・理由についてお聞かせいただけますか?

馬目氏 : 昨今、気候変動という言葉が頻繁に取り沙汰されているように、日本国内でも局所的な大雨が増えています。交通環境という観点で考えても非常に危険な状況が増えているため、より的確かつリアルタイムな気象情報の提供が求められていることは間違いありません。気象情報を提供する当社としては、このような社会課題の解決のために、MD communet®を通じて交通やモビリティに関わる方々と新しい取り組みを進めるべきだと考え、このようなテーマを設定しました。

山田氏 : 当社では鉄道会社に対してソリューションを導入した事例はあるものの、自動車も含めた交通領域となると提供できるメリットやリスクも大きく変わってくるはずです。そのような意味でも今回のプログラムのテーマは、当社にとっての新しいチャレンジになると考えています。

▲株式会社ハレックス 商品企画部 シニアスペシャリスト 兼 企画部総務課 課長 山田剛 氏

――先ほどのテーマに紐づく形で「悪天候時の安全な運転をサポートするためのアイデア」「物流や交通に係る業界の気象条件に伴うリスク回避を実現できるアイデア」「気象情報をもとにした事故発生予防や保険最適化のアイデア」という3つの募集アイデアイメージを提示されていますが、それぞれのカテゴリーでどのような企業との共創を想定されていますか?

馬目氏 : 「悪天候時の安全な運転をサポートするためのアイデア」に関しては、高速道路や幹線道路のような豊富な交通情報がない地域・道路を走行する際にも、より高精度な情報を取得して提供したいと考えているので、センサーやカメラなどを扱っている企業様を想定しています。

山田氏 : 「物流や交通に係る業界の気象条件に伴うリスク回避を実現できるアイデア」については、陸上の運輸業界やトラック等による輸送業務への価値提供を想定しています。昨今では冬の大雪やスリップで大渋滞が起こるような交通災害が多発していますが、そのようなリスクを回避・低減して事業継続に貢献するようなソリューションを作りたいと考えています。

具体的には気象情報と車載システムを連携してドライバーに直接情報を届けるようなサービスを考えているため、車載システムやクラウド、データ収集・分析などに関連する技術・サービスを持った企業様との共創をイメージしています。

髙橋氏 : 「気象情報をもとにした事故発生予防や保険最適化のアイデア」についてですが、事故発生予防という観点ではカーシェア会社やレンタカー会社など、クルマに関連する資産や設備を保有している企業様との連携を想定しています。たとえば雨による浸水被害予測などに基づき、事前にカーステーションからクルマを退避させるといった活用方法などが考えられます。

▲株式会社ハレックス 商品企画部 シニアスペシャリスト 兼 システム部 課長 髙橋夏樹 氏

馬目氏 : 保険最適化については損害保険会社様との共創をイメージしています。昨今では急発進や急ブレーキの回数などを評価して保険料を算出する損害保険が増えていますが、これらに加えて雨の日の運転状況や雪の日の運転状況など、気象条件ごとの運転評価を組み入れることで新しい保険サービスを開発できるのではないかと考えています。

また、これは3つのカテゴリーすべてに共通する話になりますが、当社はGIS(地理情報システム)に気象データを取り込みやすくするAPIの提供にも力を入れているので、何らかの形で地図に関連する事業をされている企業様も歓迎したいですね。

――共創パートナーに提供できるリソースとして「気象データ」を挙げていただいていますが、実際にはどのように活用できるのでしょうか?

馬目氏 : 気象データであれば、先ほどお話ししたAPIやピンポイントのデータも含めてご提供できますし、GISに取り込みやすい形でのご提供も可能です。また、私たちは日本全国を1kmメッシュかつ1時間ごとの気象情報も保持しているため、面的な分析や過去に遡った分析に活用いただけると思います。

さらに当社には約20名の気象予報士が在籍しており、気象情報やデータの活用方法について豊富なノウハウに基づいた支援・アドバイスをご提供できると考えています。

▲ハレックスが所有する気象データは、「1kmメッシュで隙間なし」という特徴がある。(画像出典:ハレックスホームページ

――それでは最後に応募企業へのメッセージをお願いします。

馬目氏 : 今回は3つのアイデアイメージを設定させていただきましたが、私たちとしては、募集テーマにもなっている「気象情報を活用して安全な交通環境を実現する」という広い括りの中で柔軟に考えていくつもりです。皆様からの「こんな課題も解決できるのでは?」といった逆提案も歓迎していますし、ぜひともストレートなご意見をいただきたいと思っています。

髙橋氏 : 当社は今年で30周年を迎えますが、専門領域内で考え方が凝り固まっている部分もあると思います。今回のプログラムを通して異業種の皆様とご一緒することで、気象データの新たな活用方法や課題解決につながる共創ビジネスを作り上げるなど、当社にとっての新領域でのチャレンジを進めていくつもりです。ぜひ、皆様の率直なご意見・アイデアをお聞かせください。

山田氏 : 現在、気象・気候に関して様々な変化が起こりつつあることは、多くの方が感覚値として持っているはずです。その一方で気象会社と組んで何らかの協業をされたことがある企業様・団体様は、まだまだ少ないのではないかと思います。

今回のプログラムや当社との共創は、気象に絡んだビジネスや課題解決方法を生み出せる最良の機会になると思いますので「何か新しいものができるかも」という観点でワクワクしながらご応募いただけると、私たちとしても嬉しいですね。

取材後記

あいおいニッセイ同和損保の「テレマティクスデータ」、住友ゴム工業の「センシングコア」、ハレックスの「気象データ」など、中核企業3社が有する独自の技術・データと、自社の技術・アイデア・ソリューションを組み合わせた共創に挑戦できる今回のプログラムは、交通領域での新規ビジネス創出を目指す応募企業・団体にとって大きなチャンスとなりそうだ。

また、中核企業からのリソース・ノウハウ提供が期待できるだけでなく、MD communet®を運営するNTTデータからの支援も受けられるほか、共創内容によってはMD communet®会員団体のアセットを活用できるケースもありそうだ。1対1だけではなく、N対Nによる共創の可能性を感じさせる同プログラムの進展に注目していきたい。

●プログラム説明会(オンライン開催・無料)

2023年10月4日(水)16:00~17:30

本プログラムの内容詳細についての説明のほか、質疑応答も広く受け付けます。

少しでもプログラム参加にご関心のある方は、お気軽に下記よりお申込みください。

プログラム説明会申込ページ: https://techplay.jp/event/917071

※説明会後、申込いただいた方を対象にアーカイブ(録画)動画を配信します。当該時間にご参加できない方も是非お申込みください。

※『MD communet®OPEN INNOVATION PROGRAM 2023』の詳細は以下URLよりご確認ください。<応募締切:10/23(月)>

https://eiicon.net/about/mdcommunet2023/

(編集・取材:眞田幸剛、文:佐藤直己)

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