SGホールディングスグループ国内事業会社10社が取り組む共創プログラム説明会をレポート!4つのテーマ詳細や提供リソースとは?(7/31締切)
佐川急便を中核とするSGホールディングスグループは、信頼・創造・挑戦を理念とし、デリバリー、ロジスティクス、不動産などでビジネスを展開する総合物流企業グループだ。
同グループでは、オープンイノベーションを通した社会課題の解決に取り組むべく、『SG HOLDINGS HIKYAKU LABO 2022』 を開催し、共創パートナー企業を募っている(最終応募締切:7/31)。これは、佐川急便がこれまで『HIKYAKU LABO』で推進してきたオープンイノベーションの取り組みを、グループ全体に拡大するものだ。
プログラムでは、以下4つのテーマで共創パートナー企業を募集している。
【テーマ①】 先進的な技術・ノウハウを掛け合わせ、社会・サプライチェーン全体に新しい価値を創出
#ドローン #電子決済 #決済サービス #センシング技術 #データ分析
#クラウド情報管理 #プラットフォーム構築 #車両管理 #遠隔管理 #施設管理
【テーマ②】 モノの再利用や再生可能素材・クリーンエネルギーを活用した循環型社会の実現
#廃品再利用 #中古品売買 #レアメタル回収 #再生可能素材 #木質素材
#太陽光発電 #風力発電 #クリーンエネルギー
【テーマ③】 地方創生を主軸に社会課題の解決につながる新規事業の開発
#地域活性化 #体験型サービス #健康増進 #コロナ対策 #木質バイオマス
#大型発電事業 #クリーンエネルギー #イベント支援 #スペースマッチング
【テーマ④】 社会インフラとしての高品質な物流機能の安定供給
#ロボティクス技術 #自動配送ロボ #自動積込ロボ #AI技術
#インプットレス技術 #文書処理AI技術 #人材管理ツール
去る6月30日、オンラインでのプログラム説明会が実施された。本記事では、その模様をレポートする。
顧客ネットワーク、物流拠点、海外ネットワークなどの豊富なリソースを活用し、グループ全体でオープンイノベーションに取り組む
まずは、SGホールディングス株式会社 執行役員 経営企画担当 兼 経営企画部長 兼 IR室長 藤野博 氏が登壇。SGホールディングスグループの概要や、「HIKYAKU LABO」について説明した。
SGホールディングスグループでは、『Grow the new Story. 新しい物流で、新しい社会を、共に育む。』を新長期ビジョンに掲げ、物流の改革の先に未来につながる価値の創出を目指している。藤野氏は、中期経営計画『SGH Story 2024』における重点戦略のうち、『DXへの投資による競争優位の創出』『オープンイノベーションなどによる新たな価値の創造』に触れ、「デジタル技術を用いて、世の中の社会課題に対して物流企業として貢献していきたい」と決意を述べた。
DXについては、積極的に投資していく予定で、3カ年で250億円の予算を設けており、DX銘柄2021・2022にも選定されている。『サービスの強化』『業務の効率化』『デジタル基盤の進化』といった3つの切り口で施策を展開していくという。藤野氏は「これらは当然ながら、我々が自前のリソースだけで実現できるわけではありません。幅広いパートナーと共に育んでいけるオープンイノベーションのプラットフォームを創っていきたい」と語った。
続いて藤野氏は、『HIKYAKU LABO』などでの過去共創事例を紹介。過去の「SAGAWA ACCELERATOR PROGRAM」では、2年間で合計9社を採択。不在再配達削減に向け、実際の荷物を使用した実証実験や、佐川急便の施設でロボットを用いた実証実験等を実施。
資本提携の実績もあり、CBcloud株式会社と佐川急便は、2019年より資本・業務提携をし、軽貨物チャーターマッチングサービスを運用している。
また、株式会社ロジクラと佐川グローバルロジスティクスは、ECフルフィルメントサービス『XTORM』を展開している。
今回からは佐川急便に加え、SGムービング、ワールドサプライ、佐川グローバルロジスティクス、SGHグローバル・ジャパン、SGリアルティ、佐川アドバンス、SGシステム、SGモータース、SGフィルダーの10社が参加する。
SGホールディングスグループでは、国内事業所1,457拠点、保有車両台数約27,800台、96,536人の従業員、世界30の国と地域に広がるグローバルネットワークといったリソースを持つ。(※いずれも、2022年3月31日現在)今回のプログラムでは、これらのリソースを活用して実証実験などを行うことができる。
4つの募集テーマについて詳細説明
【募集テーマ①】 先進的な技術・ノウハウを掛け合わせ、社会・サプライチェーン全体に新しい価値を創出
テーマ①について説明をしたのは、SGホールディングス株式会社 経営企画部 経営企画ユニット 課長 関口恵美 氏だ。
世の中をより便利に、かつ効率化するには、サプライチェーン全体の最適化が必要だ。しかしながらサプライチェーンには気候変動や感染症の影響、慢性的な労働人口の不足など、リスクも多数存在する。また、廃棄ロスのない製造や、在庫の最適化などムダを省くことも重要だ。
●購入者にとって利便性の高い商品の買い方・受け取り方
配送のみならず、ECや小売業とも連携して顧客の販売戦略にも貢献できるよう、新しい受け取り方や新しい販路の構築をしていきたいと述べる関口氏。不在配達の減少はもちろんだが、それ以上に消費者がより利便性を追求できるものを提供したいという。
●物流・サプライチェーンの情報を可視化・分析・活用
業界を超えた情報の連携・可視化・分析、そしてそれらを活用していくことで、社会課題を解決し、安定的なサプライチェーンの構築を目指している。
●物流を支えるインフラの維持に新技術を活用
トラックなどの車両整備をするために、より効率的かつ利便性の高い技術を模索している。また、物流施設をより長く安全に使い続けるためにも、メンテナンスに新しい技術を活用していくことが重要だ。
「物流インフラを提供する企業に課されたミッションは、社会課題の解決を通じて安定的なサプライチェーンを構築することです」と関口氏は語った。
【募集テーマ②】 モノの再利用や再生可能素材・クリーンエネルギーを活用した循環型社会の実現
テーマ②は、SGホールディングス株式会社 経営企画部 経営企画ユニット 担当部長 伊藤勇輝 氏が説明した。
テーマ設定の背景について、「物流事業者である我々は、社会活動やお客様のビジネスの一部を担っていることから、SDGsやカーボンニュートラルの観点から社会課題の解決に貢献したい」と伊藤氏は話す。
環境対応車両の導入やモーダルシフトの推進など、これまでもさまざまな取り組みを行っているが、より一層力を入れていきたい領域だ。
●法人や個人から回収した廃品・資源の活用
地球温暖化や廃棄問題などの解決のためには、リサイクル・リユース・再資源化など、限られた資源を循環させる社会の仕組みづくりが重要だ。物流事業者としても、モノを届けて終わりではなく、その後の回収にまで携わることが求められる。
この分野でSGホールディングスグループの持つリソースは、全国各地の不用品・再資源化できるものを回収する自社・協力会社のネットワークだ。「静脈物流市場は今後拡大が見込まれることから、この分野で輸送のみに留まらない循環型サービスの提供を目指します。また、リサイクル・再資源化においては斬新な技術やテクノロジーにより、国や自治体を巻き込んで市場を創出したいと考えています」と、伊藤氏は述べた。
●循環型社会に貢献できるトラックボディの製造
「低燃費・高積載を求めて薄く軽いボディにすると安全性や強度が担保できない。これらの要素は相反することから、新たな技術による課題解決をしていく必要があります」と、伊藤氏は話す。グループ会社には、トラックボディの製造を行うSGモータースがある。同社のノウハウに加え、安全性や軽量化、再生可能な素材など、新たな技術を求めていくという。
●グループのリソース、ビジネスで循環型社会に貢献
3つめのアイデアは、新しい技術やテクノロジーによるエネルギー創出・蓄積だ。SGホールディングスグループでは、全国で日々2万~3万台のトラックが走行している。そのトラックボディの側面や天面、物流施設などを活用した、これまでの常識にとらわれないエネルギーの創出についてのアイデアも募集している。
【募集テーマ③】 地方創生を主軸に社会課題の解決につながる新規事業の開発
テーマ③は、SGリアルティ株式会社 代表取締役社長 吉田貴行 氏が説明した。
SGリアルティは宅配便の仕分けを行う物流センター、集荷・配達の拠点となる営業所、荷物を保管する倉庫等物流不動産の賃貸・管理を行っている。
不動産の開発・賃貸・管理を一貫して行っていることから、オールマイティな知見とノウハウを有する物流不動産のプロが集まっている。さらにクリーンエネルギー事業も手掛けており、施設の屋上を利用した太陽光発電の実績がある。こういったリソースを提供可能だ。
テーマ③のアイデア例は次のとおり。
●物流施設を活用した新しいサービスの開発
物流施設管理には、まだ人の手によるアナログな部分が残っており、効率化・自動化のサービスが求められている。また物流施設には未利用の時間帯やスペースもある。吉田氏は「情報を集約して、最適な利用方法を導き出すようなアイデアが面白いと考えています」と述べた。さらには、まったく新しい施設利用の方法を導き出す技術やサービスも歓迎するという。
●保有・管理する資産を活用し、地方をさらに盛り上げるアイデア
SGリアルティは物流施設以外にも、全国に施設や未利用地を保有・管理している。そうした不動産のポテンシャルを活かして、周辺の地域を巻き込んだ新しい利用方法を検討したいという。
「たとえば、リモートワークの普及を背景に、都市部の企業に所属しながら地方に移住する方々の活用を想定した施設開発は面白いかもしれません。また、地方のイベントや催事との連携、コロナで減少した企業研修や社内行事の場として人を呼び来むなど、地方活性化につながるアイデアを求めています」と吉田氏は語り、プログラムへの応募を呼び掛けた
●企業と地方の連携推進
企業の行事を開催したいニーズと、地方の施設・場を提供したいニーズをマッチングするアイデアや、多くの地方自治体と連携し、災害支援物資の供給や高齢者の見守りサービスなどグループ全体のインフラを活用し、地方創生に貢献するアイデア等を募集している。
【募集テーマ④】 社会インフラとしての高品質な物流機能の安定供給
最後にテーマ④の説明は、株式会社ワールドサプライ 代表取締役社長 坂上公彦 氏が担当した。
ワールドサプライは、百貨店や大型商業施設、ファッション関係、コスメ製品などの納品を得意とする総合物流企業だ。小売店向け調達物流サービスなどの納品サービス事業、倉庫運営・在庫管理・EC対応などのロジスティクス事業、そして大型ショッピングモール等の館内配送や清掃といったFLS(Facility Logistics Support)事業を展開している。
大型ショッピングモール等の商業施設では、各テナント店舗に様々な運送会社から五月雨式に荷物が到着するため、テナントのスタッフはその都度対応に追われることとなる。そこで、ワールドサプライでは一括で各運送会社から荷物を受け取り、それを館内に配達するビジネスを展開している。
運転手不足に悩む運送会社と、施設運営をする施設オーナーの課題、双方を解決していく同サービスへのニーズは、さらに高まっているのだ。現在、全国で113施設、約1,200名のスタッフで対応を行っている。
しかし、労働人口の減少や、消費ニーズの多様化、働きやすい環境づくりなど、社会課題にも直面している。「こうした課題を解決しなければ、これまでの高品質な物流機能の提供が困難になってきます」と、坂上氏は言う。こうした課題に対応すべく、同社は様々な工夫を行ってきた。たとえば、非接触型の受領システム、AI自動清掃ロボット、納品事業者の車両管理や駐車場管理といったサービスも展開している。
これまで培ったノウハウを、今後はタワーマンションでの宅配便集約など、生活周りのサービスにも活かすことで、運送会社が抱える労働者不足への対応をしていくという。「他にも、機械化による省人化、DX戦略による効率化、施設オーナー・テナント向けの新たな付加価値サービスにおいて、ビジネスアイデア、技術を提供いただけるパートナーさんを求めています」と、坂上氏は述べた。
●荷役作業の自動化
宅配におけるラストワンマイルのみならず倉庫内での作業、物流センターで発生する荷扱い、館内配送、大型荷物や家電の設置・輸送など、様々な場面において、人への負担を軽減できる自動化のアイデアを求めている。
●国際物流
国際物流(フォワーディング)では、国内の物流とは貨物の取り扱いも、バックオフィス業務でも内容が異なる。さまざまな情報を一元管理し、可視化できるようにして効率化を目指したいという。
●物流人材プラットフォームの構築
物流機能の効率化のみならず、物流人材にとっても働きやすい環境づくりをSGホールディングスグループでは目指している。SGフィルダーでは、2万人規模のスタッフを200以上の拠点で派遣・業務請負をしている。物流ノウハウを有する人材が安心・安全に働き続けられるような人材プラットフォームの構築も目指している。
【Q&A】説明会参加者との質疑応答
<プログラム全体について>
Q.複数アイデアを応募することは可能か。
A.何件でも可能です。1件ずつエントリーをお願いします。
Q.複数社による共同提案は可能か。
A.可能です。代表者が応募フォームに入力し、共同提案する企業名などを記載してください。
Q.アイデア例と異なる提案も応募可能か。
A.可能です。我々が気付いていないアイデアがあればぜひご応募いただきたいと考えています。応募フォームではテーマ・アイデア例を選択する箇所があるため、近いものをお選びいただくか、不安な場合は運営事務局を通じて確認いただけると幸いです。
Q.それぞれのテーマで何社採択する予定か。
A.上限は設けていません。今回は国内事業会社10社が参画しているため、各社1社以上はインキュベーションまで進めることができたらと考えております。
Q.過去のプログラムでは、採択企業に対して具体的にどういったリソースの提供を行ったのか。
A.たとえば、まだプロダクトが完成していなかった自動搬送機については、物流センターの一角など場所を貸し出して検証を行っていただきました。また、必要に応じて、一部費用も負担しました。
提案内容によって活用できるリソースは異なるため、応募の際に「このリソースを活用することで、こういうことができるのではないか」と、仮説をご記載いただけると、具体的な検討が進めやすいです。
<各テーマについて>
Q.(テーマ1)既にe-コレクト®などの決済サービスや、受け取り手法についても様々な取り組みをしている印象だが、特に課題として考えていることは何か。
A.SGシステムでe-コレクト®のサービスを提供していますが、年々ニーズが減少しております。そのような背景もあり、新たな決済サービスの構築を推進していきたいと考えています。そのようなアイデアがあれば、ぜひエントリーいただきたいです。
Q.(テーマ2)リユースについては、SGホールディングスグループのリソースを活用することが可能か。
A. SGムービングでは、特殊輸送など静脈物流の回収スキームにおける拠点や車両を保有しております。また、佐川アドバンスでは、グループ内販売のノウハウもあり、これらのリソースを活用することが可能です。
Q.(テーマ3)イベントに関しては既に様々なコンテンツがあると思うが、不足していると感じるコンテンツやリソースはあるか。
A.お客様の要望に合わせて様々なイベントを企画運営しているが、不足しているのは不特定多数向けに情報発信をしていけるような広告コンテンツや、リアルイベント会場における来場者管理システム、また、リアルとバーチャルやメタバースを掛け合わせるようなコンテンツのアイデアも求めています。
Q.(テーマ4)ロボットの活用について、PoCの段階では相応の金額が発生すると想定されますが、費用の上限や制限はあるか。
A.上限はありません。SGホールディングスグループとして取り組むべきかどうか総合的に検討した上で判断します。
取材後記
『HIKYAKU LABO』の立役者である藤野氏をはじめ、参画するグループ事業会社の代表、プログラム専任担当である経営企画部のメンバーが登壇することで、SGホールディングスグループが今回のプログラムにかける意気込みが伝わってきた。佐川急便を含むグループ事業会社10社が参画し、活用可能なリソースも顧客基盤、車両、物流拠点、不動産、海外ネットワーク、そして豊富な物流ノウハウと幅広いプログラムだ。物流業界のみならず、社会が抱える課題の解決に興味を持つ方は、ぜひ応募を検討して欲しい。『SG HOLDINGS HIKYAKU LABO 2022』の最終応募締め切りは、7月31日に迫っている。
◆プログラム説明会アーカイブ動画はコチラ
(編集:眞田幸剛、取材・文:佐藤瑞恵)