日本テレビ開局70年を機に発足した「日テレ共創ラボ」――4つのテーマのもとで動き出したプロジェクトと今後の共創イメージとは?
2023年8月28日に開局70年を迎える日本テレビ放送網株式会社(以下、日本テレビ)は、今年2月、様々な社会課題に応えるとともに次世代の体験価値を生み出し、「みんながワクワクする未来」を創造するための共創の仕組み「日テレ共創ラボ」のスタートを発表した。
現在、日テレ共創ラボでは、生活者の近未来の「街ナカ」「家ナカ」でのエンタメ体験、さらには「未来世代」「未来社会」への貢献という以下4分野の共創テーマとラボを設け、パートナー企業の募集を行っている。
■<街ナカ>次世代体験デザイン/Experience Design lab
■<家ナカ>リビングライフ/CREATIVE LIVING lab
■<未来世代> 子ども・未来/KODOMO MIRAI lab
■<未来社会>ソーシャルインパクト/SOCIAL IMPACT lab
今回、TOMORUBAでは、日テレ共創ラボの企画・運営・推進を担当する4名(吉原学氏・加藤友規氏・片田やよい氏・福井崇博氏)へのインタビューを実施し、日テレ共創ラボが立ち上げられた背景、4つの共創テーマの概要や実現したい世界観、すでに動き出している共創プロジェクト事例の内容、今後の展望などについて詳しくお聞きした。
テレビ業界のボーダーを超え、様々な企業・団体との共創を実現するために
――まずは、日テレ共創ラボを立ち上げられた背景についてお聞かせください。
吉原氏 : 日テレ共創ラボを立ち上げた目的は大きく分けて2つあります。一つは”フォーソサエティ”(社会のために)、もう一つは”フォーカンパニー”(会社のために)です。
まず、”フォーソサエティ”としては、日本テレビも社会を構成する一企業として社会や世の中の期待に応え、課題を解決していく使命があります。私たちは長年エンターテインメントを創ってきたこともあり、今後も社会に対してワクワクするもの、これまでにない新しい体験価値を提供していきたいと考えていますが、それについても日本テレビ単独では実現できないことがたくさんあります。
一方の”フォーカンパニー”ですが、日本テレビグループの中期経営計画2022-2024において、「テレビを超えろ、ボーダーを超えろ。」というスローガンを掲げている通り、今や「テレビ局だから」「テレビ業界だから」という理由で地上波放送や番組制作を行っているだけでは、社会の多様性に対応することが難しい時代になりました。今後はテレビ業界のボーダーを超え、様々な企業・省庁・自治体の方々との連携や共創が必要不可欠になっていくと考えています。”フォーカンパニー”と”フォーソサエティ”、これら二つの理由があり、開局70年を機に「共創」をテーマにしたチームを作ることになりました。
▲日本テレビ放送網株式会社 社長室R&Dラボ 部長 兼 サステナビリティ推進事務局長 吉原学氏
日本テレビ開局70年プロジェクトTEAM3リーダー。日テレ共創ラボ全体の責任者を務める
――日テレ共創ラボの社外へのリリースは今年の2月ですが、それ以前は社内でどのような動きがあったのでしょうか?
加藤氏 : 社内で開局70年プロジェクトが動き出したのは2021年の9月頃で、共創に関しても同時期からチームを作って動き出していました。まずはチーム内で「日テレらしい共創」について話し合うことから始めました。
吉原氏 : 最初は個別のプロジェクトからスタートしましたが、プロジェクトを進めていくうちに「継続的に共創を行っていくためには、共創を行うための組織・器があった方がいいよね」という話になり、日テレ共創ラボが生まれたという流れですね。
――共創ラボのメンバーは皆さん4名だけなのですか?
加藤氏 : 私たち4人だけではなく、社内の各部署から多くのメンバーが参加しています。皆、人事異動で集まったわけではなく、基本的には自ら手を挙げて集まってきた有志メンバーで構成されています。スポーツ、編成、報道、さらには経理部門や技術部門など、ほぼすべての部署から人が集まっていますね。
▲日本テレビ放送網株式会社 社長室R&Dラボ 担当副部長 兼 サステナビリティ推進事業局 加藤友規氏
日本テレビ開局70年プロジェクトTEAM3幹事。日テレ共創ラボではEXPERIENCE DESIGN lab(街ナカ)とCREATIVE LIVING lab(家ナカ)の共創テーマでをリードする。
アクセラレータープログラムとは異なる日テレらしい共創の形とは?
――有志メンバーが集まって活動されているとのことですが、加藤さんはどのような思いでチームに参加されたのでしょうか?
加藤氏 : テレビ局の周年企画は大規模なテレビ番組やイベントをやって終わり、となることが多いのですが、先ほどの吉原の話にもあったように「これからの時代に必要な何かをスタートさせる年にしてもいいのではないか」と考えたのです。そこで、70周年企画を考えるチームとは別立てで「共創の土台となるようなチームを作ってメンバーを募集しましょう」ということを企画しました。
――参加する、というよりも加藤さんが起案者だったということですね。
加藤氏 : そうですね。以前から思っていたことですが、「日本テレビには共創が足りていない」という課題意識がチーム立ち上げの動機となりました。その後、考えに賛同してくれた方々が15人くらい集まって、先ほどの「日テレらしい共創」について話し合い、協議していく中で現在の4つのテーマに落ち着きました。
▲日テレ共創ラボは、生活者の近未来の「街ナカ」「家ナカ」でのエンタメ体験、そして「未来社会」「未来世代」への貢献の4つの共創テーマで活動し、パートナー企業を募集する。
――福井さん、片田さんはどのような思いでチームに参加されましたか?
福井氏 : 私は昨年5月に日本テレビに入りましたが、前職時代から加藤さんたちとのつながりがあり、入社前から共創ラボの前進となるチームのミーティングにも何度か参加させていただいたことがあります。
その当時から、日本テレビのような発信力・影響力のある会社が共創を行うことは「日本のオープンイノベーションのさらなる活性化につながるだろう」と考えていたんです。入社してからチームに参加したというよりも、このチームで日テレならではの共創の形を創るということも、日本テレビに入社した理由の1つですね(笑)。
▲日本テレビ放送網株式会社 社長室経営企画部 兼 サステナビリティ推進事業局 福井崇博氏
日本郵便や東急でオープンイノベーション推進に携わった後、2022年に日本テレビへ入社。日本テレビ開局70年プロジェクトTEAM3幹事。日テレ共創ラボではSOCIAL IMPACT lab(未来社会)の共創テーマをリードする。
片田氏 : 私は1999年の入社以来、ずっと日本テレビで働いており、開局70年のタイミングで「会社や社会のために新しい形で貢献できることはないか」と考え、手を挙げてメンバーに入りました。
吉原の話にもつながりますが、多くの現場社員が既存事業に対して、ある意味危機意識も持っていたので、「そんな状況を打破する一助になるかもしれない」と考えたことも参加動機の一つになりました。
――現場社員の方々は既存の放送事業に危機意識を抱えているのですね。
片田氏 : そうですね。もちろん危機意識だけではなく、引き続きポテンシャルも同時に感じているのが現場社員の感覚だと思います。とはいえ、私自身も既存の放送事業に胡座をかかずに、地上波という伝送路だけにこだわらない発信の仕方、放送やコンテンツだけにこだわらない別の形での価値提供の方法も模索していく必要はあると思っています。
▲日本テレビ放送網株式会社 報道局社会部 担当副部長/デスク 片田やよい氏
編成部所属時代に日テレ共創ラボに参加。KODOMO MIRAI lab(未来世代)の共創テーマをリードする。
――日テレ共創ラボは、アクセラレータープログラムなど、他の大手企業が取り入れている共創・オープンイノベーションのための仕組みを採用していませんが、その理由について教えていただけますか?
加藤氏 : 共創の仕組みを考えていく段階では、当然アクセラレーターの話も出ましたが、「そのやり方が日本テレビにマッチしているのか?」という議論が持ち上がり、最終的には、所謂プログラム的な取り組みではなく、ビジョンやテーマに基づく実践の中で共創を行っていった方が日本テレビらしい活動になるだろう、という着地点に落ち着きました。
――日本テレビの文化的に「とりあえずやりたいものを考えて、どんどん始めてしまおう」といった進め方が相応しかったのですね。
加藤氏 : 参加メンバーのほとんどがそのような意見でした。私としてはアクセラレーターをやってもいいかなと考えていたのですが、まったく賛同が得られませんでした(笑)。アクセラレータープログラム自体は素晴らしい仕組みだと思いますが、日本テレビ向きではないんでしょうね。
片田氏 : プログラム的な仕組みを構築・運営したり、そこで審査を行ったりするよりは、プレイヤーとして一緒に動くやり方が得意なんでしょうね。何かを一緒に始めるなら自分たちも動く、何なら「自分たちがバッターボックスに入り、打って走る」みたいなやり方が合っているんだと思います(笑)。
「街ナカ」「家ナカ」の目的と動き出したプロジェクトについて
――4つのテーマそれぞれの狙いや目的についてお聞きできればと思います。まずは「<街ナカ>次世代体験デザイン/Experience Design lab」について教えてください。
加藤氏 : これまで日本テレビは、家の中のテレビの画面やスマホの画面で映像を楽しんでもらう事業を展開してきましたが、「街や地域に根ざした体験づくりでも貢献できるのでは?」というアイデアがたくさん出てきたため、それらを一つひとつ実現していくために「街ナカ」のラボを作りました。
今までにない新しいテクノロジーを取り入れていくことにより、街の中での新しい価値作りを目指すテーマとなるため、様々なテクノロジーを持った企業さんと一緒になってクリエイティブを考えていくつもりです。
すでに先行して動いているプロジェクトとしては、昨年8月に発表した「クリエイティブエコシステム構築に向けた共同プロジェクト」が挙げられます。森ビルさんなど11社が連携して進めているプロジェクトであり、虎ノ門ヒルズエリアを舞台に、街とデジタル空間を融合した新しい体験づくりを推進していく予定です。
――「クリエイティブエコシステム構築に向けた共同プロジェクト」に関しては、2023年秋に開業予定の「TOKYO NODE」がプロジェクトの活動拠点になるそうですね。XRライブの配信なども行うということですが、どのような人や企業と共創するのでしょうか?
加藤氏 : TOKYO NODE内に設置されるラボでは、例えば参加企業の方々やクリエイターさんたちと共に日本テレビの持つボリュメトリックキャプチャ技術(※)の応用方法を考えていく予定です。現在、日本テレビではボリュメトリックキャプチャ技術を野球中継で活用していますが、社外の方々と共創することにより、スポーツ分野以外でも活用方法を見出していきたいですね。
また、デジタルツインやMR領域に関連する街の中での新しい体験づくり、さらにはアメリカのイベント「サウス・バイ・サウスウエスト」(SXSW)のエッセンスを取り入れた街全体を使ったテクノロジーとクリエイティブの体験フェスティバルなど是非実現したいアイデアで、このエリアの地域活性化につなげていきたいと考えています。
※人物や空間を数多くのカメラでほぼ全方位から撮影し、3Dのデジタルデータとしてキャプチャする技術
――続きまして「<家ナカ>リビングライフ/CREATIVE LIVING lab」について教えてください。
加藤氏 : 「家ナカ」と言ってもテレビの映像体験の話ではありません。近年ではIoT機器などを通して、家の中でも様々な新しいコミュニケーションが生まれるようになりましたが、このようなテクノロジーを活用して、「もっと面白いリビング体験」を生み出していくことを目指しています。
「家ナカ」の活動のきっかけは、約2年前、パナソニックさんと一緒に「ミロモ」というスマートミラーのプロトタイプを作ったことが大きいですね。パナソニックさんが持っていた人の表情からストレスを読み取るセンシング技術に、「ストレスをモンスターとして表現し、様々なエクセサイズで倒していく」という日本テレビの発想・アイデアを掛け合わせた企画だったのですが、お互いの強みを持ち寄ったことで想像を超えるようなプロダクトが生まれました。
両社内での評判も非常に高かったため、こうした取り組みをもっと広げていこうという機運が高まり、今回の「家ナカ」へとつながっています。
――パナソニックさんとは「SXSW 2023」で体験展示を行われていますよね?
加藤氏 : そうですね。「SXSW 2023」ではパナソニックさんと共同で掃除体験をエンターテインメント化した「HOUSE KEEPING CLUB」(ハウスキーピングクラブ)のプロトタイプの体験展示を行ったほか、慶應義塾大学さんと進めている「五感を伝送する体験型メディア技術の研究開発」の研究成果の一つとして「Floating Pixels」と「Pokosheet」いうデバイスを出展しました。
――今後、「家ナカ」領域では、どのようなパートナーと共創していきたいですか?
加藤氏 : 私たちは「何かを極限まで便利にしていく」という方向性の企画開発に関しては不得手かもしれません。24時間365日「人を飽きさせないためにはどうすればいいのか」ということを真剣に考え続けている人種ですからね(笑)。しかし、人を楽しませるという部分には強みがあると考えています。
そのような意味では、製品やサービスの中にちょっとした楽しみやエンターテインメント性を取り入れたいと考えている企業さんと組むことで、より良いシナジーが生み出せるのではないかと考えています。
▲「SXSW 2023」に出展したブースの様子。(画像出典:プレスリリース)
未来を作る子どもたちにリアルな体験価値を提供する「汐留サマースクール」
――片田さんが担当されている「<未来世代> 子ども・未来/KODOMO MIRAI lab」について教えてください。
片田氏 : 共創テーマを検討するメンバー間の話し合いの中で、「未来を作る世代に対して素晴らしい体験価値を提供することこそ、日本テレビが社会のためにできることではないか」という意見が多く挙がったことが、「未来世代」というテーマを設定することになった背景です。
子どもの頃に好きなものと出会う体験はとても貴重ですが、ここ数年はコロナ禍の影響もあり、実際に見たり触ったりという体験がしにくい状況が続いていました。そんな今だからこそ「未来を支える世代に向けて、新しい体験価値をリアルな形で提供しよう」という議論が進み、今年の夏に「汐留サマースクール」というリアルイベントを開催することが決まりました。
過去には、日本テレビ単独でお子さん向けのイベントを開催したこともありましたが、今回は「共創」というテーマのもとで進めているプロジェクトなので、お子さんに向けて価値を提供したいと考えている多くの企業・団体の皆さんにお集まりいただきたいと考えており、現在も様々な企業・団体の皆さんにお声がけをしている最中です。
私たち日本テレビが様々な企業・団体の皆さんを結びつけるハブのような役割を担うことで、日本テレビ一社で行うイベントよりも、遥かに大きな価値を提供できるイベントになると考えています。
――「汐留サマースクール」の名称の通り、汐留エリアを活用したイベントになるのでしょうか?
片田氏 : そうですね。日本テレビの敷地内や新橋から汐留までの通路などにブースやコーナーを作る予定です。私たちがこだわっているのは、座って話を聞く座学だけではなく、お子さんたちが実際に見たり触ったり動いたりすることで体験を持ち帰ってもらえるようなコンテンツです。そうしたものをたくさん提供できるといいなと考えています。
――未来世代という共創テーマで実現したいゴールなどがあれば教えてください。
片田氏 : まずは今回の「汐留サマースクール」で多くの子どもたちに素敵な体験をしてもらい、イベントを今回だけの単発では終わらせず、持続可能な仕組みにしていくことが直近の目標です。長期的なゴールについては「決まっていない」というのが正直なところです。最初から想像できるようなゴールを設定するよりも「走りながら生み出す価値」「計算できない価値」というものがあってもいいのかなと考えています。普段、テレビ局の人間の多くが分単位・秒単位のゴール設定での仕事をしている反動かもしれませんが(笑)。
ソーシャルスタートアップとの共創を通じて社会的インパクトの拡大を目指す
――最後の共創テーマになりますが、福井さんが担当される「<未来社会>ソーシャルインパクト/SOCIAL IMPACT lab」についてはいかがでしょうか?
福井氏 : ここ数年の間に、日本にもようやくSDGsやESG投資の考え方が広まり、社会課題や環境問題に対して積極的に取り組む企業が増えてきました。非常に素晴らしい流れではありますが、その一方で最近では「インパクトウォッシュ」や「SDGsウォッシュ」と呼ばれるような見せかけの社会的活動が問題視されつつあることも事実です。もちろん意図して見せかけを行っている企業だけではなく、自社の活動や考え方を社外に対して上手く伝えられていない企業も散見されます。
せっかく社会が良い方向に進み始めているのだから、この流れを止める訳にはいきません。今後は日本テレビを含めた各社の社会的活動を可視化し、しっかりとマネジメントした上で進めていく必要があると考え、このようなテーマを設定しました。
また、日本テレビは2021年にサステナビリティポリシーを策定しており、例えば「地球環境への貢献」を重点項目の一つに設定していますが、日本テレビ一社で環境問題の解決に取り組んだとしても、社会に与えるインパクトはそれほど大きくありません。
それでも当社のような発信力を強みとする会社が、「共創」により社会問題に取り組んでいく姿勢を見せられれば、その後に続く大きな社会的インパクトを生み出すきっかけ作りにはなると考えています。このような背景もあり、SOCIAL IMPACT labという名称のラボを作りました。
――プロジェクトの第1弾として、「インパクト測定プロジェクト」を打ち出されていますが、どのような共創を目指したプロジェクトになるのでしょうか?
福井氏 : 一般的にはインパクト測定マネジメント(IMM)と呼ばれています。現在、世界では経済的リターンと同時に社会・環境へのインパクトを生み出すことを目的とした「インパクト投資」が注目を集めていますが、日本の伝統的な大手事業会社で大々的に銘打ってスタートしている会社はまだありません。
そこで私たち日本テレビが最初にそこに飛び込んで研究を行い、ソーシャルスタートアップとの共創や投資も見据えた活動を展開していくことによって、日本社会に新たな「モノサシ」を提起するとともに、社会的インパクトの拡大を図っていこうと考えています。
――SOCIAL IMPACT labが募る企業は、やはりソーシャルスタートアップということになるのでしょうか?
福井氏 : まずはソーシャルスタートアップを念頭に置いていますが、ゆくゆくはスタートアップだけでなく、大手企業ともソーシャルインパクトを増大・拡大していくような共創ができればいいなと考えています。
――日本テレビは絵本情報サイト「絵本ナビ」へのサステナブル投資を行っていますが、そのような活動ともつながっていくのでしょうか?
福井氏 : そうですね。日本テレビは中期経営計画2022-2024の中で、4つの戦略的投資領域を定めており、そのうちの一つがサステナブル投資となっています。インパクト投資はサステナブル投資をさらに一歩先に進めるための手段として高いポテンシャルを秘めていますし、サステナブル投資の選択肢の一つとしてインパクト投資を持っておくことは、今後の日本テレビにとっての強みにもなると考えています。
人々を楽しませ、喜ばせ、笑わせ続けてきた日テレらしい共創を
――最後になりますが、日テレ共創ラボを通じた貴社との共創に興味を持っている企業の皆さんへのメッセージをお願いします。
片田氏 : 日本テレビとしての新しい取り組みなので、実態としてはかなり試行錯誤な部分はあるのですが、様々な企業・団体の皆さんとの共創を通じて「新しいシナジーが生み出せるのではないか」という期待と意気込みは持っています!
今夏開催予定の「汐留サマースクール」の担当としては、一社でも多くの企業・団体の皆さんとご一緒したいと考えていますし、”フォーソサエティ”(社会のために)という観点で、子どもたちがワクワクする体験や、子どもたちが「好き」を見つけられる場を提供することができたらいいなと思っています。
福井氏 : 私が担当するSOCIAL IMPACT labに関しては、まずは環境とDE&I(ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン)、働き方(クリエイター支援」、というテーマで共創パートナーを探しているので、そのような分野に関する技術やノウハウ、プロダクトを持っている皆さんにご参加いただけるとありがたいです。
また、テレビ局としての価値の1つは「難しいこともわかりやすく、楽しく伝える」という点にあると考えていますので、ソーシャルインパクトやインパクト投資、さらにはソーシャルスタートアップ各社との取り組みに関しても、世の中に対して、わかりやすく、興味を持ってもらえるような発信をしていくつもりです。ぜひ私たちと一緒に活動し、生活者の行動変容や価値観の変化を促していきましょう。
加藤氏 : 「街ナカ」「家ナカ」どちらもアイデアレベルでOKです。まずは一緒にディスカッションさせていただき、良いアイデアが出れば素早くプロトタイプを作って世に出していきたいですね。とはいえ、私たち日本テレビもスピード感を意識してはいますが、内容によっては調整に時間がかかるタイプの会社なので(笑)、「そんな日本テレビを突き動かしてやろう」という意気込みを持った方々と一緒に仕事ができると嬉しいです。
吉原氏 : 私たちが行う共創に関しては「日テレらしさ」をどこまでも貫き通していくつもりです。「日テレらしさ」とは、私たちが番組制作を通じて長年追求し続けてきた「人々を楽しませる」「ワクワクさせる」ことに尽きると思っていますし、企業・団体の皆さんが私たちに期待するものも、そのようなエンターテインメント性にあると考えています。人々を楽しませ、喜ばせ、笑わせることを続けてきた日本テレビだからこそ可能な共創を実現する。そんな日テレ共創ラボであり続けたいですね。
また、「物事をわかりやすく伝える」というのは、実はかなり難しいことだと考えています。これから共創させていただく企業・団体の皆さんも様々なプロジェクトやプロダクト、テクノロジーを持っていらっしゃると思いますが、それらについてシンプルに、わかりやすく伝えていくことに関して課題感を持っている方々も多いのではないでしょうか。
日本テレビとしては、価値があるにも関わらず「難しくて伝わりづらいもの」を、シンプル且つわかりやすく伝えるためのお手伝いをしていきたいと考えていますので、ぜひご期待いただければと思っています。
取材後記
現在では数多くの大手企業が共創によるオープンイノベーションに取り組んでいるが、パートナーに対して「エンターテインメント性」や「シンプルにわかりやすく伝える力」といった、メディア企業ならではの共創メリットを提示できている大企業は非常に少ない印象だ。ヒト・モノ・カネ・情報のいずれにも当てはまらない、日本テレビが長い年月を掛けて培ってきたマスメディアとしてのコミュニケーションノウハウは、共創を検討する多くの企業にとって魅力的なアセットの一つとなるだろう。
「街ナカ」「家ナカ」「未来世代」「未来社会」という4つのテーマをメインに展開される共創から、どのような「みんながワクワクする未来」が登場するのだろうか。今後の日テレ共創ラボの活動に注目していきたい。
※日テレ共創ラボWEBサイト https://lab.ntv.co.jp/
(編集:眞田幸剛、取材・文:佐藤直己、撮影:古林洋平)