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スポーツ×〇〇が生み出す新たな価値に迫る!北海道、甲信越・北陸、東海の3エリア10チームが挑む共創ピッチ――地域版SOIPデモデイレポート<後編>

スポーツ×〇〇が生み出す新たな価値に迫る!北海道、甲信越・北陸、東海の3エリア10チームが挑む共創ピッチ――地域版SOIPデモデイレポート<後編>

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2023年3月1日、全国各地でスポーツビジネスに挑む多様なプレイヤーが東京に集結し、『INNOVATION LEAGUE SPORTS BUSINESS BUILD 2022』のデモデイ(成果報告会)が開催された。

『INNOVATION LEAGUE SPORTS BUSINESS BUILD』は、スポーツ庁が推進する『地域版SOIP』事業の一環で行われているアクセラレーションプログラム。2022年度は全国3エリア(北海道/甲信越・北陸/東海)のスポーツチーム・団体と他産業が連携し、新たなサービスの創出に取り組んだ。その集大成ともいえるイベントが、今回のデモデイである。

イベント当日は、関係者を含めた約250名もの人たちが一堂に会し、セッションや共創ピッチに耳を傾けた。TOMORUBAでは、当日の様子を前編・後編に分けてレポート。後編となる本記事では、デモデイのハイライトである『Co-CREATION PITCH』(共創ピッチ)の中身を、「審査員特別賞」・「オーディエンス賞」を受賞した共創プロジェクトから順にお届けする。

なお、『Co-CREATION PITCH』は、本プログラムを通じて出会った北海道、甲信越・北陸、東海のスポーツチーム・団体と採択企業が、ともに進めている共創プロジェクトの現時点における成果を披露する場。合計10プロジェクトが登壇し、PoC(実証)の内容などを熱く語った。『Co-CREATION PITCH』には、スポーツ庁長官である室伏広治氏が出席。各賞のプレゼンターも務めた。

【審査員特別賞】 長野県スキー連盟(スキー・スノーボード)×富士通ローンチパッド(動画解析AI)

長野県スキー連盟は富士通ローンチパッドとともに、動画解析AI技術を活用し、スキー人口を増やす挑戦を開始した。富士通ローンチパッドは、2022年7月に富士通が立ち上げた、新規事業の開発・育成を専門とする新会社。同社から若手3人が参加した。

チームがとらえた課題は、ピーク時の15%にまで落ち込んだスキー人口の減少。スキー人口を増やすことを本事業の目的に据えた。そのための施策として注目したのが、リピート率の向上だ。経験者へのアンケート調査より、1回目から2回目につながっていないことが判明。さらにヒアリング調査により、リピートの鍵となる要素が「スキルアップ」と「同じ競技の仲間」の2点にあると仮説を立てた。そこで、簡単にスキルアップでき、仲間と高め合えるコミュニティの構築を目指すことにしたという。

まず、動作解析AI技術を用いて動きを可視化し、簡単にスキルアップできるアプリを開発。さらに、解析した自身の動画をタイムライン上に投稿、「いいね」などの反応を受けとれる機能もつけた。実証の期間は4週間とし、76名のスキーヤーに開発したアプリを使ってもらうことに。しかし、1週間が過ぎた時点で投稿された動画数はわずか2件だけにとどまった。

アプリのユーザーにヒアリングを行ったところ、「自分より上手いスキーヤーが見ていると思うと、恥ずかしくて投稿もコメントもできない」という声があがった。そこで急遽、コミュニティを「初心者」から「指導者」まで、レベルに応じて4つに分けた。すると投稿も増えはじめ、結果として、アプリを使うことでスキルアップを実感できたユーザーは92%、同士との高め合いを実感できたユーザーは89%、よりスキーを楽しめたユーザーも93%に達したという。今後、スキーにとどまらない他スポーツへの展開も視野に、事業を進化させていく考えだ。

▲富士通ローンチパッド・豊田氏は「スポーツをする人に寄り添って、その挑戦を加速させていきたい」と受賞の喜びを伝えた。また、運営パートナーのNICOLLAP・高畠氏は「富士通ローンチパッドの若手3人に大人たちが触発され、活き活きと関わっていく姿が印象的だった。3人を応援したい人たちが増え、今日に至っているのではないか」と伝えた。

なお、審査員特別賞の審査項目は「新規性」「地域性」「社会性」「経済性」の4点。審査員はスポーツビジネスに造詣が深い、次の4名が務めた。

<審査員> ※写真左→右

■ 石塚 大輔 氏(スポーツデータバンク株式会社 代表取締役)

■ 平地 大樹 氏(プラスクラス・スポーツ・インキュベーション 株式会社 代表取締役インキュベーター)

■ 菅原 政規 氏(PwCコンサルティング合同会社 ディレクター)

■ 常盤木 龍治 氏(パラレルキャリアエバンジェリスト 株式会社EBILAB 取締役ファウンダー CTO CSO)

【オーディエンス賞】 ヴォレアス北海道(バレーボール)×playground(推し活)

ヴォレアス北海道は、スポーツ業界のDXとWeb3化を牽引するplaygroundとともに、推し活と絡めたファンダム(ファンのコミュニティ)の確立を目指す。

掲げたビジョンは「旭川に、未だ見ぬ熱狂と誇りの共創を生み出す」。このビジョン実現に向けて、新たに企画したサービスが、ファンダム証明書コレクション『DIG! VOREAS』だ。来場やグッズ購入など様々な行動により、ファンダム証明書(NFT)を獲得、コレクションできる。2月に開催された2日間のホームゲームでは、入場者限定で来場証明書を無料配布。この来場証明書があれば後日、試合当日の選手の写真を厳選したDX版のファンダム証明書を購入できる。売上の一部は選手に還元されるため、推しの選手に直接貢献できるというファン体験となる。ちなみに購入者には抽選で、推しの選手が名前を呼びかけるお礼動画も届くかも・・・というお楽しみ付き。

ファン心理をくすぐる仕掛けは、それだけではない。DX版のファンダム証明書(NFT)で使用する写真は、ファンが準公式カメラマンとして撮影許可エリアから撮影したもの。撮影権付のチケットを買うと、プロのカメラマンたちと肩を並べて撮影ができるという。準公式カメラマンとして参加した女性からは「最高、続けてほしい」と非常に満足度の高いコメントをもらえた。また、推し選手以外を撮影する様子も見られ、チームを一緒につくっているという共創意識も芽生えていたそうだ。

さらに試合当日は、コレクション企画を盛り上げようと、予定になかった「スタッフ遭遇証明」「スポンサーブース来訪証明」など多彩な証明書を12種類(合計18種類)も追加して発行した。これがファンたちのコレクション欲に火をつけ、コアファンはなんと平均11.1枚の証明書を取得するなど、一度、使い始めると夢中になって集めてくれることを確認できた。スタッフやスポンサーの反応もよく、来期の継続もすでに決定しているという。今後の展開としては、旭川市内の店舗で証明書を発行するなど、市内全域へと取り組みを拡大していく計画だ。

▲ヴォレアス北海道・木下氏は「熱を込めた企画・プレゼンだったので受賞できて嬉しい」と喜びを伝えた。playground・伊藤氏は「日本発のスポーツのビジネスモデルを発展させ、グローバルで勝ちたい」と熱意を込めた。

「ファンコミュニティ」「AI食」「ロゲイニング」etc. スポーツの現場で実践されたPoCの中身と得られた成果

――ここからは、受賞した2チーム以外の8チームによるピッチの模様を紹介。各チームによるユニークな共創プランをコンパクトにお届けしていく。

■エスポラーダ北海道(フットサル)×ユーロフィンQKEN(食育)

エスポラーダ北海道は、食品分析を手がけるユーロフィンQKENと、小学生の親子向け「フットサル食育イベント」に挑戦。北海道が抱える子どもの運動不足とフードロス問題を同時に解決することを目指す。

実証となる初回イベントは2月に開催。札幌市近郊に住む小学生低学年の親子を招待し、フットサルスクールと食育をセットにしたイベントを実施した。今回は「牛乳」について学んだという。イベントには合計34名が参加。フットサル未経験者も多かったという。総合満足度はフットサルスクール・食育ともに10点満点中、平均で9.7点。両イベントに満足した人の割合は96%、本イベントを周囲に紹介したい人の割合は89%と高い評価を獲得した。今後、スポーツと食を通じて、子どもたちの健康と笑顔を支えていくことをビジョンに、本活動を推進していく考えだという。

■北海道コンサドーレ札幌(サッカー)×コミューン(コミュニティ)

北海道コンサドーレ札幌は、コミュニティプラットフォームを提供するコミューンと、クラブ・自治体・市民・企業が融け合う地域コミュニティの形成にチャレンジ。

1月に「北海道コンサドーレ札幌ファンコミュニティ(仮)」をオープン。サポーター100名弱をコミュニティに招待し、「札幌ドームを中心に街の賑わいを作る」「コンサドーレのファンを増やす」「ファンの力でもっと選手を応援する」の3テーマでアイデアを募った。その結果、合計66件もの多様なアイデアが集まったという。実際に、提案された案のひとつであるコアファンと初心者をまじえた観戦ツアーを、3月の横浜F・マリノス戦で実現する。今後は、コミュニティの範囲を現在のサポーターからスポンサー企業、自治体・地域住民へも広げ、共創パワーを拡張していきたいと語った。

■信州ブレイブウォリアーズ(バスケットボール)×ウェルナス(AI食)

信州ブレイブウォリアーズは、個別栄養最適食「AI食」を展開する信州大学発のスタートアップ・ウェルナスとともに、スポーツの力で地域住民・企業を“健幸”にする取り組みを開始。

実証では、ウェルナスが開発した日々の食事や身体記録から栄養を最適化した食事がわかるアプリ「NEWTRISH」を、9名のブースター(コアファン)と1名の選手(栗原ルイス氏)に使ってもらい反応を見た。さらにブースターらを集めた交流イベントも開催して意見を聞いた。その結果、わずか3週間の「NEWTRISH」利用で、体重減少や血圧低下などの効果があらわれた人もいたそうだ。「睡眠が改善した」「選手と同じアプリを使えて楽しい」などの声も寄せられたという。次のステップでは、アプリ内にバスケットボール関連コンテンツを掲載するなどして、バスケットと食事双方の興味喚起を進めていく方針だ。

■松本山雅FC(サッカー)×DATAFLUCT(データ活用)

松本山雅FCは、CO2排出量可視化・オフセットサービス「becoz」などを展開するDATAFLUCTとともに、クラブやスポンサー企業の環境貢献の度合を可視化する“ゼロカーボンチャレンジ”に挑戦する。

具体的には、サポーター・地域住民がエコな活動(資源リサイクルなど)を実施。その活動実績を、DATAFLUCTが開発中の「becoz challenge」というアプリに登録・投稿してもらう。投稿することで、ポイントや限定グッズなどの特典を得られる。また、スポンサー企業は、サポーター・地域住民らのエコな活動を応援することができる。インキュベーション期間中は、サポーターやスポンサーへのヒアリングを行い、好感触を得られたそうだ。3月のホームゲームではブースを出展し、本格的に参加者やスポンサーを募る予定だという。地元企業や行政などの後援も決定。今後も活動を継続していく考えだ。

■名古屋グランパス(サッカー)×Spornia.(マッチング)

名古屋グランパスは、街クラブや部活動などにスポンサー企業をマッチングするSpornia.と、「あいちローカルパートナーズ」という活動を始動する。

具体的には、グランパスとSpornia.が一体となって、地元企業に対して営業提案・協賛依頼を行い、地元企業と街クラブをマッチングする。その後、参画してくれた地元企業・街クラブをグランパスの試合に招待するなど、アクティベーション施策を実行。施策のPRも行う。インキュベーション期間中は、地元企業への提案・ヒアリングに注力。約1カ月で、24社から初回アポ獲得、11社へ本提案、1社の契約(口頭合意)に至ったそうだ。グランパスと共同提案することで、Spornia.単独提案よりも提案率が4.2倍に向上。地元企業からは「グランパスと一緒に地域共創に取り組みたい」といった声が寄せられているそうだ。

■名古屋ダイヤモンドドルフィンズ(バスケットボール)×TR2(ロゲイニング)

名古屋ダイヤモンドドルフィンズは、ロゲイニングを企画・運営するTR2とともに、名古屋を舞台にした謎解きロゲイニングイベントを初開催した。ロゲイニングとは、決められたスポットをまわる屋外アクティビティだ。

1月、ドルフィンズが栄に設けている地域共創拠点『DOLPHINS PORT』にて、ロゲイニング制作ワークショップを開催。参加者18名に、250カ所以上のおすすめスポット候補を挙げてもらった。そこから35カ所に厳選して、実際のロゲイニングに使用。2月に有料でロゲイニング大会を開催した。当日は44チーム・109名が参加。参加者へのアンケートでは、名古屋のまちを好きになった人が100%、ドルフィンズを好きになった人が96%、ドルフィンズ試合観戦意向も88%と高い数値を記録し、チームの認知度向上にも貢献できる結果となった。今後は、大会参加者に企画側にまわってもらうなどして、『DOLPHINS PORT』発の新たな地域共創コミュニティを構築していく考えだ。

■ウルフドッグス名古屋・豊田合成記念体育館エントリオ(バレーボール)×ダイスコネクティング(ゲーム)

ウルフドッグス名古屋は、ミニゲームを企画・開発するダイスコネクティングと、『ウルドわいわいPARKオンライン』という企画に着手。

すでにウルフドッグスは、地域に根づいたリアルイベントを多数展開しているが、それをオンラインでも仕掛けていくことが狙いだ。「誰でも簡単に遊べる」「憧れの選手を身近に感じられる」「エントリオの6面ビジョンを活用する」の3点に留意して企画。クイズを地域の子どもたちに考えてもらい、2月のホームゲームで来場者全員を対象に、オンラインクイズを実施した。ランキングを6面ビジョンにリアルタイムで掲示、上位者にはプレゼントも配付するなど工夫を凝らした。結果として、来場者1235人のうち228人がクイズに参加し、アンケートでは約72%が「今後もやりたい」と回答。大きな手応えを得られたそうだ。

■名古屋ウィメンズマラソン(マラソン)×New Ordinary(AIレコメンド)

中日新聞社主催の名古屋ウィメンズマラソンは、観光MaaSやデジタルマップを開発するNew Ordinaryとともに、観光を軸に新しいランナーとの接点をつくるサービス開発に挑む。

ターゲットは走る習慣のない20・30代の女性やマラソン観戦者。この層に対して『ごほうびスポット』をレコメンドし、本マラソンへの興味喚起を狙うという。新たに開発した『ウィメンズNOSPOT』は、「どれくらい走れそうか」「走った後、どんなごほうびがほしいか」を選ぶことによって、おすすめのランニングコースを提案してくれる仕様とした。実際、約10人に使ってもらいアンケートも取得。走ることへの意欲が向上したという結果を得られた。今後、アンケート結果などを踏まえて、来年度の大会に向け「走るきっかけづくり」を再開発していきたいと語った。

【クロージング】 「成果発表はひとつの通過点、事業・アイデアをさらに発展させてほしい」

クロージングでは、審査員4名(石塚氏・平地氏・菅原氏・常盤木氏)が登壇。共創のメンタリングも務めていた彼らから、各チームへの総評が伝えられた。

そして最後に、スポーツ庁 長官 室伏 広治 氏が壇上で次のように総括し、デモデイを締めくくった。

「『地域版SOIP』は今年で2年目となる取り組みです。今年度は全国で10のプロジェクトが開始され、ひとつの脱落もなく取り組みが進んだことは素晴らしいことでした。ようやくコロナ禍という長いトンネルの出口も近づいています。今年のスポーツ界では世界的な大会も開催される予定で、こうしたイベントを通じてスポーツの価値が創出されると期待しています。

また昨今、スポーツ界で活発な動きを見せているSDGsの関心拡大やDXの進展は、一層進んでいくのではないでしょうか。これらの変化を迅速に捉え、スポンサー・ファンなどに対する自らの価値を向上するために、他産業の力を活用して経営やサービスのイノベーションに取り組むこと、また応援してくれる地域のために社運をかけて共創に必死に取り組む皆さんの挑戦は、極めて重要だと思います。スポーツ庁は、その挑戦を今後も応援します。

プロジェクト実施団体の皆さんにとって、本日の成果発表はひとつの通過点にすぎません。それぞれの事業・アイデアをさらに発展させるとともに、具体的な事業拡大に結びつけていくことを期待しています。また3地域の事務局においては、深く地域でイノベーションを生み出すプラットフォームとして、今後ともスポーツを核とした地域活性化に貢献していただくことを期待しています」。

――デモデイ終了後は、別会場でネットワーキングが実施された。スポーツチームやスタートアップ、官公庁・自治体など多くの関係者が、ピッチの熱気そのままに交流した。

※デモデイの模様はアーカイブされています。以下よりご覧ください。

取材後記

10件の共創ピッチからは、強い情熱と活力を感じとることができた。また、わずか3カ月程度という短いインキュベーション期間にもかかわらず、ほぼすべてのチームが初回の実証を終え、素晴らしい結果を発表した。そのスピード感と実装力には、驚かされるばかりだった。なお、『地域版SOIP』は2023年度も継続することが決定している。スポーツビジネスに興味・関心をお持ちなら、次のステージで参戦してみてはどうだろう。

(編集:眞田幸剛、取材・文:林和歌子、撮影:齊木恵太)

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【地域版SOIP】スポーツの成長産業化への軌跡

見る者もする者も支える者も、携わるだけで一丸となることができる、究極のエンターテインメント。地域発の「スポーツ×〇〇」のビジネスで、スポーツを成長産業へ。スポーツ庁が推進する『地域版SOIP』と全国各地域でのオープンイノベーションの軌跡に迫ります。