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「1兆円企業を生み出す」実力派投資家3名が仕掛けるKUSABIに迫る

「1兆円企業を生み出す」実力派投資家3名が仕掛けるKUSABIに迫る

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ここ数年で急激に増えてきた日本のVC。特定のセクターやビジネスモデルに特化したVCや、コンセプトを持った投資をするユニークなものも増えており、日本のスタートアップエコシステムが活発化しているように感じます。しかしその一方で、未だ世界に知れ渡るようなスタートアップが生まれていないのも現状です。

そのような日本のスタートアップエコシステムに、名前の通り楔を打ち込む存在となるべく創立されたのが「KUSABI」。メジャーVCで輝かしい実績を打ち出してきたベテランキャピタリストの3名が、グローバルで活躍する企業を生み出すために立ち上げました。

今回は創業メンバーであり代表パートナーでもある永井研行氏、吉田淳也氏、渡邉佑規氏の3名にインタビューを実施。実力派VCで研鑽を積みながら、次世代を担う投資家としても名前が挙がり、多くの起業家から「これからの10年を共に歩みたいキャピタリスト」として信頼の厚い3名。ファンドの投資方針や、同社が開催するアクセラレーションプログラム「KUSABI α(アルファ)」の特徴について話を聞きました。

目指すは「産業を産み出し、世界にインパクトを残せるVC」

まずはお三方の経歴について聞かせてください。

永井氏 : 私はカリフォルニア大学を卒業後、大和証券SMBCに入社し、通信・食品セクターの事業性案件を担当していました。その後、事業会社で財務・経営企画業務を経験し、前職のニッセイ・キャピタルでスタートアップ投資を行っていました。


▲永井研行氏(代表パートナー)

事業会社での経験やノウハウを活かし、創業間もないスタートアップの外部CFOとしてサポートするのが私の投資スタイル。IT・クリーンテックセクターを中心に、Sansanやみんなのマーケットなど8社をエグジットした実績があります

吉田氏 : 私は3名の中で唯一、VCだけをやってきた投資家です。新卒でJAFCOに入社してからは13年に渡ってスタートアップ投資を続けてきました。その途中では、福岡のスタートアップエコシステム創設にも携わらせてもらいました。

ギフティやベガコーポレーションをはじめとした投資先のIPOにも恵まれ、2019年に日本版 MIDAS LISTにも載せて頂いています。次の10年は新しいチャレンジを、と思い2020年に退職しました。

渡邉氏 : 私のキャリアのスタートは三井住友銀行です。一般的な法人RMを数年担当した後、志願して当時の大和SMBCキャピタルに出向させてもらい2008年からVCキャリアをスタートしました。

その後、縁あって、前職のグロービスキャピタルに転職し、6年ほどシニアキャピタリストとして活動させてもらいました。SMBCとGCPでは通算して29社に投資をし、その内既に13社がIPO或いは一定のリターンを生むM&A等のExitに恵まれています。

お三方は以前から面識があったのでしょうか?

渡邉氏 : 3人とも年齢が近く、同じ時期にキャピタリストになったこともあり、10年来の付き合いがあります。特に、私たちがこの世界に足を踏み入れたリーマンショック直後は、投資家にとってとても厳しい時代で。毎月のように友人・知人のキャピタリストが辞めていく中で、自然と同世代で情報交換しながら互いを高め合う存在になっていました。

KUSABIのコンセプトについても、実は数年前から「こんなVCを作れたらいいよね」と、酒を酌み交わしながら話し合っていたんです。

お三方ともそれぞれ輝かしい実績がありますが、なぜ自分たちでVCを立ち上げようと思ったのか聞かせてください。

渡邉氏 : たしかに前職での仕事にやりがいは感じていましたし、古巣各社は素晴らしいVCだと思っています。しかし、その一方で自分たちらしいもっとユニークな価値提供ができるはず、自分の殻、業界の一般常識的な殻をぶち破りたい、といった忸怩たる思いが日に日に大きくなり。。


▲渡邉佑規氏(代表パートナー)

日本にも素晴らしいVCは数多くありますが、世界的に評価されているVCは、或いは無いかもしれません。「世界に誇れるVCを作るなら今しかない」と思い、VCの設立に踏み出したのです。

どんなVCであれば「世界に誇れるVC」と言えるのでしょうか?

永井氏 : 世界に認知されるような産業を作ることがVCとして評価される必要条件だと思います。いわゆるシリコンバレーのトップティアと呼ばれるようなVCは、先駆けてIT企業に投資し、アメリカのIT産業を構築してきましたよね。

単に「○社をイグジットさせた」というだけでなく、世界にインパクトを残すような会社を支援し、産業を作り出すことが私たちの役割だと思っています。

スタートアップの成長を阻害する「シリーズAの壁」を破壊

世界に誇れるVCになるために、何が必要なのかを聞かせてください。

永井氏 : やるべきことは多々ありますが、まずは起業家の成功率を高めることが重要だと思います。そのために欠かせないのが「シリーズAの壁」を取り除くこと。スタートアップは成長の過程で何度も資金調達を繰り返しますが、シリーズAの資金調達に大きな課題があるように感じています。

シーズ期の資金調達(いわゆる紙芝居ラウンド)というのは、優れた事業アイディアとやる気があれば、資金を集めるのはそれほど難しくありません。しかし、シリーズA以降となると、事業計画の裏付けとなるエビデンスやバリエーションに見合うスケーラビリティの証明などが必要になり、その上で事業の魅力を伝える必要があります。

しかし、多くのスタートアップが紙芝居ラウンドの延長でシリーズAを捉えているケースが多く、シーズに特化した投資家も、(知見がない、又は、担当社数が多すぎて手が回らない、等の理由で)次回ファイナンスに向けた準備を十分に伝えきれていないのではないでしょうか。結果的にシリーズAの資金調達に苦戦し、その間にテクノロジーやビジネスのブームが過ぎ去って旬を逃すケースを何度も見てきました。

創業期から先々を見据えることで無駄な失敗を減らし、結果的にスタートアップの成功率を上げていきたいと思います。

その役割をKUSABIが担うと。

永井氏 : まず、KUSABIは、追加投資も前提にしているファンドであるため、100億円規模ファンドでも担当社数をさほど多く抱える必要がなく、ハンズオンのリソースを十分に確保できます。また、私たち3名はいずれも大手のファンドでシリーズA以降の投資を扱ってきました。会社の成長に伴いどんな準備が必要なのか熟知しているため、先々を見据えた支援が可能だと考えています。

追加投資については、シリーズBぐらいまでを考えています。100億円以上の投資資金を集めたのもそのためで、シーズ~シリーズAの断絶をなくすために、追加投資できるサイズのファンドを組成しました。

15年以上の経験が可能にする王道の投資スタンス

どのようなジャンル、セクターを中心に投資をするのか教えてください。

渡邉氏 : セクターやジャンルを絞るつもりもありませんし、テーマを決めて投資しようとも思っていません。飛躍的に成長する見込みがあるならば、ビジネスモデルやセクターに関係なく投資していくつもりです。

強いてこだわりを挙げるとすれば「リード投資」であること。日本のVC業界においては、まだまだリードを積極的に張る投資家層が少ないと思っており、当面はリード投資にこだわりたいと思っています。

ー今はセクターを絞っているVCも多いと思いますが、なぜあえてセクターを絞らないのでしょうか。

吉田氏 : 時代の流れが速くなってきたのが理由です。昔はひとつのテーマの寿命は5年はありました。それだけの時間があれば、テーマを絞って投資するのも悪くありません。


▲吉田淳也氏(代表パートナー)

しかし、今は2年ほどでテーマが変わる時代です。そのような時代にテーマを絞って投資をしていては世の中の変化を捉えられません。

永井氏 : ブームになったセクターでは、起業家よりも投資したい企業やVCの割合が多くなった結果、いたずらにバリエーションが上がってしまうという副作用が存在します。その結果、ブームが去ってしまった後は、株価調整が一巡するまでの資金調達難に陥るとともに、潤沢な資金を背景に肥大化した組織が残り、バーンレートのリスクも高くなってしまいます。

私たちでもブームをコントロールすることはできないので、ブームに踊らされずに投資していきたいと思っています。

セクターを絞るリスクも大きいですね。

渡邉氏 : そもそもテーマやセクターを絞るのは、投資家が案件のソーシングしやすくしたり、目利きの質を上げるためです。一方、私たちはこの道15年内外の経験値及び培ってきたネットワークがあるため、ソーシング力も目利きも備えている自負があるため、あえてセクターを絞る必要性はあまりないと判断しています。

最も有効なソーシングの方法は、私たちがスタートアップのよきディスカッションパートナーになること。「あの人に相談したら的確なアドバイスをもらえる」と起業家たちに思ってもらうことが、一番有効なソーシングTipsだと思っています。

そのためには、下手に人脈を広げるよりも、自分たちを研鑽して起業家達に頼られる存在になるのが近道です。

事業計画がなくても採択される、好条件すぎるアクセラの魅力

成功する起業家の共通点について聞かせてください。

永井氏 : 一つは柔軟な思考ができること。凝り固まった考えしかできない起業家は、市場環境の変化、競合との競争に対応できません。特に最近は社会の変化が年々速くなっているため、柔軟に考え、アイディアを生み出す力はより重要になっていくと思います。


もう一つは組織をスケールできる力です。ビジネスのスケールには組織のスケールが欠かせません。それも単に組織を大きくするだけでなく、優秀な人材をいかに集められるかが肝となります。そのためには、自分よりも優秀な人を幹部候補として巻き込み、自分を高められる力が求められるのです。

創業期から2つの力を兼ね備えた起業家はそういるものなのでしょうか?

永井氏 : 最初から完璧である必要はありません。その素養のある人達をアクセラレーションプログラム「KUSABI α」 で見つけ出し、その後最長18ヶ月のバリューアップで身につけられれば十分だと思っています。

もちろん、筋のいい起業家なら18ヶ月も必要ありません。すぐに組織をスケールし、私たちのシェアオフィスでは収まらなくなるケースもありますし、次の資金調達を果たすケースもあります。


▲​​シードステージのスタートアップを育成する約18か月間のプログラム「KUSABI α」

アクセラレータープログラムの話が出たので、その特徴についても聞かせてください。

渡邉氏 : 最も大きな特徴は事業計画がなくても採択すること。会社設立前でも応募できますし、プログラムを通してチャレンジするテーマを決めたい、或いはピボットを検討したい企業も対象です。

そして、応募のハードルが低いからといって、支援内容が乏しいわけではありません。採択されれば最低2,000万円の投資を漏れなく行いますし、日本証券取引所のお膝元、金融市場の中心地である日本橋兜町・茅場町にあるアクセラレーターオフィスも安価で利用することが可能です。

先日、内閣から「スタートアップ5カ年計画」が発表されましたが、その内容にも重なる点が多いプログラムになっていると自負しています。

スタートアップ5カ年計画も意識してプログラムを考えたのでしょうか?

渡邉氏 : 特に意識したわけではありませんが、5カ年計画は日本のスタートアップエコシステムを盛り上げるために必要なことが書かれているので、必然的に重なることも多くなりました。


ただし、あの5カ年計画は、的を射た内容である一方で、実現が難しいのも事実です。それでも国がやるべきことを明確に示したのは大きな意義があると思うので、私たちはやるべきことを粛々とやり続けるだけだと思っています。

どんな点が5カ年計画とリンクしているのか聞かせてください。

永井氏 : 一つはメンタリングを重視したこと。私たち3人がシリーズA以降の成長を見越して支援することで、転ばぬ先の杖のような存在になれればと思っています。

もう一つは起業家コミュニティを促進すること。なぜ私たちがアクセラオフィスを提供するかというと、採択企業同士の集合知を活かすためです。たとえばA企業のCTOがB企業のテクノロジー課題を解決したり、逆にB企業のCFOがA企業のファイナンス課題を解決したり。

また、採用面でもコミュニティの力が活きてきます。A企業に応募した人材が不採用になっても、隣のB企業にマッチすることもあるでしょう。コミュニティの力を強化することで、よりスタートアップの成長を促す環境を作りたいと思っています。

起業家の視座を上げるために、最初に出会う投資家になりたい

1兆円企業を作るために、起業家はどのような意識を持たなければいけないのでしょうか。

吉田氏 : 難しいですね。ひとつ言えるのは、スタートアップ経営の常識は、一般的な企業経営の非常識であると知るということです。一般的な中小企業がリスクコントロールをして段階的に成長するのに比べ、スタートアップは教科書的なリスクコントロールを逸脱して、アクセルを踏み続けることで勝機を得ます。つまりハイリスクを取って急成長するのがスタートアップのやり方です。


たとえば3ヶ月後に資金がショートすると分かっていたら、一般的な経営者であれば出費を抑えて倒産を免れようとしますよね。しかし、出費を極端に抑えて一旦成長軌道から外れれば、再び軌道に乗せられるのはしばらく後になるでしょう。

資金がショートする状態でも勝負をかけ続けられるか。そのリスクをとれる起業家はそう多くありませんし、それで失敗してしまうケースもあります。会社が成長するにつれて安定志向になるケースもあります。それらを乗り越えて、いかに最後までリスクをとって成長できるか、そんな姿勢が必要だと思います。

渡邉氏 : 最初に出会う投資家の責任も大きいですね。最初に出会った投資家の視座を低いと、それに引きずられ起業家の視座も低くなりがちです。小型上場やM&Aが決して悪いわけではありませんが、1兆円企業を作るなら最初からそのレベルの視座を起業家と投資家が共に磨いていく必要があると考えいてます。

私たちがシード投資にこだわっているのも、できるだけ早いタイミングで起業家に会うことで、共に視座を上げ、初期段階から大きなグロースストーリーを描きたいと思っているからです。

最後にプログラムへの応募を考えている起業家へメッセージをお願いします。

永井氏 : せっかく起業を考えているなら、ヒットではなくホームランを狙って欲しいです。リスクは大きいですが、失敗したら会社を畳めばいいだけです。私たちも出資したからといって、「絶対に資金を回収しなければいけない」という固執からリビングデットになることは望んでいません。

18ヶ月間、死ぬ気で頑張ってダメなら、また次の挑戦をすればいいだけ。それくらいの気持ちで応募してもらえればと思います。

吉田氏 : 今は久しぶりにテクノロジーの大きな波が来ているタイミングです。これから10年は起業家にとって面白い時代になるでしょう。

一方で金融環境は崩れてきていて、しばらくは厳しい状況が続きます。しかし、過去を見てみるとAirbnbもUberも、金融環境が厳しい時期に創業されました。意外に世界を変えるスタートアップは金融環境が厳しい時期に生まれるものです。世界を変えるような企業を作りたい方の応募をお待ちしています。

渡邉氏 : 今回のプログラムは意図して起業家フレンドリーな条件を提示しています。賢い起業家なら、これがどんなにいい条件かがわかりますよね。ぜひチャンスを逃さないでください。

冗談はさておき、スタートアップ起業家というのはトップアスリートのようなものです。トップアスリートがオリンピックを目指して、4年間集中してストイックな生活をするように、5~10年魂を燃やして頑張りたい人はぜひ応募してください。

一度起業したからといって、必ずしも20年も30年もやり続ける必要はありません。10年で世界を変えることだってできる時代です。起業を過度に特別視せず、世界を変えたい、我こそはという健全な野心を持っている方を応援したいと思います。


(編集:眞田幸剛、取材・文:鈴木光平、撮影:加藤武俊)

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