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“眠れる労働力”を呼び起こす。人材派遣業界の先駆者・パーソルテンプスタッフが共創を通じて実現したい世界とは

“眠れる労働力”を呼び起こす。人材派遣業界の先駆者・パーソルテンプスタッフが共創を通じて実現したい世界とは

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人材派遣の先駆者、パーソルテンプスタッフ株式会社は、業界のリーディングカンパニーとして活動を広げ、特に事務系派遣で多くの実績を重ねてきた。ビジネス環境が激変して多様な働き方が求められるようになり、派遣を選択する人も増えている。日本の労働力不足を解決する手段の一つとして寄せられる期待も大きい。

一方で、派遣で働いていたことがある方を対象とした派遣社員WEBアンケート調査(2022年1月14日 一般社団法人 日本人材派遣協会)では、派遣で働くことの推奨度について9~10点(すすめる)の回答は約1割となっている。こうした状況を受け、パーソルテンプスタッフは業界をアップデートすべく、共創プログラム「パーソルテンプスタッフ OPEN INNOVATION PROJECT」をスタートさせた。プログラムのコンセプトは、“はたらく人を豊かにする”。「派遣」という働き方をもっとポジティブな選択肢にするため、個人のはたらくにかかわる“ちょっと便利”を実現するパートナー企業を広く募集している。

今回、トップの立場でプログラムを担う取締役執行役員 石井義庸氏に取材した。黎明期から業界をけん引する同社は、近年の労働市場や人材派遣業界の動向をどのように捉え、将来に向けどのようなビジョンを描いているのか。その中で、本プログラムはどんな意義や目的を持つのか。業界やプログラムにかける思いが熱く語られたインタビューの模様をお届けする。

人材派遣は、日本の労働者不足解決の一助となる

――はじめに、ここ数年の労働市場についてお聞かせください。市場の動向をはじめ、働く環境はどのように変化しているのでしょうか。

石井氏 : 大きな特徴として挙げられるのは、コロナ以前から続く労働者不足です。2020年にコロナ禍に陥り、「労働市場は落ち着いてこれから縮小するのではないか」という見方が大半を占めました。しかし、思ったほどに市場は落ち込まず、俯瞰するとむしろアップトレンドが続いています。現状は完全に売り手市場で、人手不足という社会課題は解決されないまま残っています。この状態が続けば、日本の国際競争力の低下は免れません。企業側は在宅勤務、リモートワークなどフレキシブルに働ける環境を用意し、多様な人材を広く受け入れる必要があるでしょう。

――働き手側に求められるものも変わってきているのですか?

石井氏 : そうですね。岸田首相が、臨時国会の所信表明演説で「リスキリングを国策にする」と述べていたように、時代に合ったスキルが求められるようになりました。職務内容に基づいて必要な人材を採用する「ジョブ型雇用」が普及しているとも言われており、企業側も個人の持つスキルをより重視するようになったと感じています。


▲パーソルテンプスタッフ株式会社 取締役執行役員 石井義庸 氏

――人材派遣業界にはどのような動きや変化が見られますか。

石井氏 : 人材派遣は従来からジョブ型の働き方が中心でした。加えて、先ほど少し触れましたが、労働者はより柔軟性のある働き方を求めるようになり、人材派遣の注目度は高まっています。私たちが「眠れる労働力」と呼んでいる子育てママ世代など働きたくても働けない主婦の方や、アルバイトしか就業経験のないプレワーカー、出産を控えている方、介護を行っている方、定年退職した方たちに活躍してもらうことが、これからの日本には欠かせないと考えています。事実、総務省統計局の労働力調査でも、事務系領域において派遣スタッフとして就業する方が増え、一方で正社員が減っているというデータもあります。

とはいえ、人材派遣に対するネガティブな印象はまだまだ残っているのが現状です。確かに直接雇用されていないことから、正社員と比べると、安定性や福利厚生などで不利な面はあります。しかし、同一労働同一賃金などの法改正で、これまであった差はかなり埋まってきました。残されている課題は、働くことそのものよりも、その周辺にあるのではないか。こうしたことから、当社では今回の共創プログラムにつながる「Flexible(フレキシブル)コネクテッド構想」と銘打った取り組みを始めました。

外部サービスとゆるやかに連携する、Flexibleコネクテッドの構築を目指す

――Flexibleコネクテッド構想について詳しくご説明ください。

石井氏 : 人手不足の解消やフレキシブルな働き方の実現を目指し、2019年にDX推進本部を立ち上げました。派遣事業は非常にアナログな業務の連続で、基本的にface to faceで行います。これをデジタル化するために、登録スタッフ、クライアント企業、当社社員、それぞれに専用のデジタルタッチポイントを開発し、その1つとして公式スマホアプリ『テンプアプリ』をリリースしました。当社ではAA(オールオートメーション)構想と呼び、まずはDXの基盤を整えたのです。

DXの目的は「人の介在価値を最大化する」ことです。眠れる労働力となっている方たちの就業支援をして、社会課題の解決の一助となるためには、人材派遣がジョブ型や多様な働き方に対応した、価値ある就業形態だと知ってもらう必要があります。一方アプリは、主に派遣でお仕事を探されている、あるいは就業中の方々が使うものなので、人材派遣の価値を対外的に広めることは難しいです。また、アプリだけでは当社の抱える課題を解決できたとしても、社会課題を解決する打ち手としてはまだまだ弱い。そこで、Flexibleコネクテッド構想を打ち立てました。

外部サービスを含めて連携することで、登録スタッフ、クライアント企業、当社、さらにはサービス提供者同士がつながり、相乗効果で価値を積み上げる。そうした”ゆるやかな連携体”(=Flexibleコネクテッド)を形成し、付加価値を提供することが狙いです。今回の共創プログラムは、このFlexibleコネクテッド構想を土台にしています。

――Flexibleコネクテッド構想では、既にいくつかの提携が実現したと聞いています。

石井氏 : 株式会社みんなの銀行(株式会社ふくおかフィナンシャルグループの100%子会社)と提携し、人材業界で初となる専用支店「テンプスタッフ支店」を新設しました。はたらいて得たお金を楽しく貯蓄し、お金の使い道を分かりやすく一元管理でき、お金に関するちょっとした不安や負担を減らすことができたらといった想いから、提携が実現しました。

みんなの銀行では、10~15分で自身の口座が作れます。カードレスで入出金ができ、最大5万円まで立替えが可能です。


▲「みんなの銀行」のテンプスタッフ支店では、『Wallet』(普通預金)・『Box』(貯蓄預金)・『Record』(お金の管理)など、 登録スタッフの人生が豊かになるサービスの数々を取りそろえている。(画像出典:ニュースリリース

――みんなの銀行の他に、提携した事例はありますでしょうか。

石井氏 : 「ファストドクター」と提携し、登録スタッフ自身はもちろん、そのご家族の方の健康をサポートしています。ファストドクターはオンライン診療と夜間休日往診のサービスを提供しており、内科・小児科・整形外科の医師が自宅で往診して、薬の処方にも対応します。仮に夕方ごろお子さんが熱を出した場合、通常ですと緊急病院に連れて行き、深夜までの対応となるでしょう。体力的に厳しく、お子さんの心配も重なり、次の日仕事に行くことはなかなかできません。しかし、ファストドクターを利用することで、早く診療が受けられ、安心も得られます。

こうした働く周辺のサービスを提供しており、今回の共創プログラムでも同様に、「はたらく」と「くらし」にかかわる「ちょっと便利」を実現したいと考えています。

多様な企業との連携で派遣のペインを取り除き、「はたらく」と「くらし」のニーズを満たしたい

――共創プログラムにかける思いをお聞かせください。

石井氏 : 派遣スタッフとして働く人をポジティブにすることで、日本の労働環境を変えることができると、私たちは確信しています。自前でやれることは真摯に行いますが、自分たちの力だけでは限界があるのも事実です。派遣スタッフとして働くのは価値がある、素敵だ、と感じてもらうためには、個々の持つニーズを実現しなければなりませんが、そのニーズは細かくたくさんあるので、多くの企業と共創しながら、「ちょっと便利」を実現することを目指します。最終的には、多様なニーズを満たすソリューションが、横に繋がり合っていくことを理想としています。

――パートナーとしては、どういう分野でどのようなサービスを提供する企業を想定していますか。

石井氏 : 登録スタッフのニーズは多種多様ですので、さまざまな方と協業の可能性があると思います。特に、眠れる労働力として注目される女性のニーズを把握し、最適なサービスを企画・提供できる企業だととてもありがたく思います。何より、はたらく人を豊かにしたいという思いに共感していただくことが、理想であり前提です。

また、スキル習得やリスキリングは既に当社でも行っているので、プログラムではもっと働くに近いライフにフォーカスし、ペインを取り除いていく方針です。先ほども触れたように、まだ就業していない方たちにも、派遣スタッフとして働く良さを知ってもらうことを大きな狙いにしています。このため、 “働くにかかわる前後の部分”に着目し、相互連携しながら、トライアンドエラーを繰り返して、より良いサービスを共に作っていければと考えています。


――本プログラムの窓口になる部隊と、活用可能なアセットを教えてください。

石井氏 : 事務局はDX推進本部 DX横断企画室が担っており、窓口として対応します。パートナーのご提案に応じて、社内の適切な部門とおつなぎします。アセットは、先ほどご紹介した累計10万ダウンロードを突破した公式アプリ、当社が業界で培ってきた実績などが挙げられます。中でももっとも大きいのは、約111万人の登録スタッフが、サービス提供の対象者となることでしょう。アクティブな方もそうでない方も含めて、適切な頻度で情報提供などを行いたいと思っています。

――111万人もの方にリーチできるのは、とても有効性の高いことだと思います。

石井氏 : 既にサービス提供をしているみんなの銀行さんやファストドクターさんの例を見ると、毎月継続して一定数の登録が見られることが特徴の一つとなっています。加えて、一時的に登録者数が増えるのではなく、一度登録した後は長期的にサービスを利用していただけるケースが多いです。

先ほどお伝えしたみんなの銀行さんの事例のように、長期的に利用いただけることによって、次なるサービスを共創する際のヒントになっています。また、たとえ今は働いていなくても、いよいよ就業するとなった時に、これらのサービス利用を通じてテンプスタッフが想起される。そうしたサービスを提供することも一つの理想です。これらの観点からも、長期の連携を視野に入れていただければありがたいです。


派遣スタッフという働き方のイメージを刷新し、日本の労働力の再評価に繋げる

――先ほどからお話していることと重複する部分もあると思いますが、プログラムのゴールとして、どのようなことを思い描いていらっしゃいますか。短期的なゴールと長期的なゴールをご提示いただければと思います。

石井氏 : 目の前のゴールとしては、まずは当社の派遣スタッフとして活躍している方、将来的に当社に派遣スタッフとして登録いただける方が、豊かに安定的に生活し、安心して就業できる環境を創出することです。その上で、この取り組みを人材派遣業界全体に広げ、派遣スタッフとして働くことがポジティブに捉えられる世界観を目指します。

さらには、少々大きな話になりますが、最近の日本は、国際的に見て「働く環境が良くない」「賃金が安い」「生産性が低い」など、マイナス面を強調されることが多いです。しかし、かつての日本は勤労精神が高く評価されていました。今回の取り組みを通じて、本来のポテンシャルを発揮させることで、日本の「はたらく」の再評価につなげられればと思っています。

――最後に、パートナー企業へのメッセージをお願いします。

石井氏 : 当社はこれまで登録スタッフに寄り添うことで、高い評価と満足度を獲得してきました。DXが促進されても、そうした点は大事にしたいです。ですので、過度にビジネスライクなものは、当社の風土には合わないと考えられます。何より、はたらく人を豊かにする、という点に共感してくださる方にご応募いただければと思います。

その上で、当社が気づけていないことは多々あるはずですので、登録スタッフのペインを解消し、様々なニーズを満たす提案で、当社に気づきを与えてください。業界や業種は問いません。ぜひ末永く協業しましょう。


取材後記

業界で多くの実績を重ねてきたパーソルテンプスタッフが共創プログラムを本格始動させた。さまざまな年代、スキルを有したおよそ111万人が派遣スタッフとして登録している同社には、さまざまなペインやニーズがあるだろう。その分、求められるソリューションやサービスも多様で、多様な連携ができるのではないか。長期的な連携を前提にしており、トライアンドエラーを繰り返すことも魅力の一つと言える。同社は広く門戸を開いている。少しでも興味を持ったら、まずはコンタクトを取ってみてはどうか。連携を通じ、はたらく人が豊かになると共に、日本が抱える労働の問題を解決できたら、これ以上のことはないだろう。

※『パーソルテンプスタッフ OPEN INNOVATION PROJECT』の詳細はこちらをご覧ください。


(編集・取材:眞田幸剛、文:中谷藤士、撮影:古林洋平)

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