HINEMOS運営の日本酒D2C・RiceWineが総額3億円の資金調達を実施
株式会社RiceWineは、2022年9月8日、DIMENSION株式会社をリードインベスターとして、株式会社ロッテベンチャーズ・ジャパン、横浜キャピタル株式会社、三菱UFJキャピタル株式会社からシリーズA総額3億円の第三者割当増資を実施した。
2019年に時間に寄り添う日本酒ブランド「HINEMOS」を発表以来、酒類業界にとって逆風となるコロナ禍でも急成長を遂げ、累計販売本数は150,000本を突破。現在は中国・台湾にも販売を進めている。今回調達した資金は、製造・販売体制の強化やブランドの世界展開を担う人材採用に活用する予定だという。
コロナ禍で苦戦する日本酒産業
伝統的な日本の食文化を象徴する日本酒だが、昨今は消費者のお酒の好みの多様化による需要減少や、コロナ禍の煽りをうけ、直近では年間100軒のペースで酒蔵が廃業する(※)など苦戦する状況が続いている。その中で、ライスワインは後発でありながら独自のアプローチで成長を続けてきた。
(※)・・・平成15年度に1836軒あった酒蔵は、令和2年度は1252軒、令和3年度は1164軒と直近では年間100軒という急激なペースで減少している。(出典:国税庁 清酒製造業の概況)
日本酒産業におけるライスワインの独自性
ライスワインはIT業界出身という異色の経歴を持つ酒井優太氏が2018年に設立した。2019年に委託醸造という方法で、時間に寄り添う日本酒”HINEMOS”をリリース。クラウドファンディングや自社ECサイト、首都圏でのポップアップなどを通じて直接消費者に商品を届けている。
▲一番人気の飲み比べセット。デザイン・コンセプトが高く評価されている
また2021年には自社で冷蔵倉庫内に酒蔵を建設するという前例のない方法で自社醸造に切り替え、通年で日本酒製造が可能な「四季醸造」を実現するなど、従来の日本酒業界とは異なる手法を次々と採用している。
▲2021年、冷蔵倉庫の中に酒蔵を建設。自社で酒蔵を所有し製造から販売までを一貫して手掛けている
日本酒業界において直接消費者に商品を届けるメリット
ライスワインの特徴の1つは販路にある。一般的に日本酒メーカーは酒問屋をはじめとする卸や酒屋経由に流通経路が限定されている。中間流通を多く挟むため、酒蔵の利益向上を図る施策は限定的で、十分な利益を確保することは難しいと言われている(※)
(※)・・・製造業全体との比較により、収益性及び生産性は低く、企業活動としての効率は悪い、と業界分析資料より判断されている。(出典:株式会社日本政策投資銀行 清酒業界の現状と成長戦略(P51))
▲LUMINEやソラマチなど主要商業施設でのポップアップを次々に実現
しかし、ライスワインは売上のうち9割以上が自社ECや商業施設でのポップアップを通じた消費者への直接販売(D2C)となっている。そのため、顧客と直接つながることで細かな要望を汲み取り、自社経営の酒蔵でのお酒づくりに活かしているほか、積極的に消費者が好むデザインやプロダクト開発への投資が可能になっているという。
冷蔵倉庫に酒蔵を建設し、生産性向上&柔軟な商品開発を実現
冷蔵倉庫の中で24時間365日酒造りに適した環境を維持し、従来の冬場だけの酒造り(いわゆる「寒仕込み」)ではなく、1年通じて酒づくりに取り組める、いわゆる「四季醸造」を実現した。
▲上写真:神奈川県小田原市にある酒蔵外観
結果として設備及び従業員の通年稼働により製造ペースを3-4倍に向上。また、年中お酒づくりが可能になったことで、消費者の声を反映させたクイックな商品づくりを実現。自社酒蔵建設以降は、クリスマスやバレンタイン、父の日など季節イベントに合わせた商品を次々にリリースし、売上拡大に貢献している。
▲バレンタインやホワイトデーなど従来の日本酒ブランドではアプローチしづらい季節イベントに商品を投入、好評を博している
今後の事業展開
「オンラインで購入される日本酒No.1」を目指して、ECサイトの拡充を実現する。また、リアルではポップアップストアの多店舗展開や直営店の出店を通じて「今までにない、日本酒との出会い」を生み出していく。
また、創業時からの想いである海外展開を本格的にスタートする。現時点では数%である海外売上比率を2025年度には50%近くを目指しており、その本格展開として同社スタッフの海外派遣や海外パートナーの開拓、海外直営店の立ち上げなどを目指すという。
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