
IoTビルオートメーション・システム「BA CLOUD」を開発・運営するcynaps、総額3億円のシリーズB資金調達を実施
IoTプラットフォームの研究開発を行うcynaps株式会社は、シリーズBラウンドとして、株式会社環境エネルギー投資ならびに鈴与商事株式会社を引受先とした第三者割当増資により総額3億円の資金調達を完了した。これにより累計資金調達額は約5.9億円となる。今回の資金調達は、引き合いが好調であるIoTビルオートメーション・システム「BA CLOUD(ビーエークラウド)」(特許出願中)の事業を加速させ、今後予測されるエネルギーの課題に取り組むためのものとなる。
資金調達の背景
国際エネルギー機関(IEA)によると、世界のエアコンの台数は2050年までに3倍になる試算となっており、世界の建物で使われるエネルギーの増加分のうち4割がエアコンによるものになると予測されている。電力消費量のさらなる増加が懸念される中、cynapsはいままで見過ごされてきた「換気の無駄」に着目し、環境負荷も工事負荷も圧倒的に少ない、まったく新しい省エネを普及させようとしている。
商業施設やホテルなど規模の大きい建物ほど、省エネ対応はなかなか進んでいない。一つには複雑に絡み合う関係者全員の合意形成の難易度や、「IoT」と「パワーエレクトロニクス」、「建築」のすべての領域の知見が求められる技術的な難易度がある。もう一つは営業停止を伴う工事によるコストの高さだ。
cynapsは、このような既存の建物に立ちはだかる省エネの壁を打破するサービスとして、「BA CLOUD」を開発。営業時間中の建物にも簡単に後付けできる、ワイヤレス&サーバーレスのコンパクトなIoTパワーユニットにより換気を適切にコントロールすることで、快適な温度や湿度、CO2濃度を保ちながら、エアコンのエネルギー使用量を最大で50%削減する。
例えば1kWhの電力を太陽光発電で賄おうとした場合、150㎡(25mプール5個分)のパネル設置スペースが必要となるが、cynapsの「BA CLOUD」では30cm四方の箱一つでその分の電力消費削減を実現可能。そのような実装効率の高さや環境負荷の低さも「BA CLOUD」の大きな特長となる。
これまでの実績
「BA CLOUD」は2022年4月にβ版をローンチ後、「東京都スタートアップ社会実装促進事業(PoC Ground Tokyo)」(2022年度)、「キングサーモンプロジェクト」(2023年度)、「Be Smart Tokyo」(2023年度)に採択され、ホテルや商業施設、自治体管理施設等で多数の実証実験を行い、エアコン電気使用量ならびに電気代の削減における成果を上げてきた。
アパホテル〈札幌大通駅前南〉では電気使用量2割強の削減効果を確認し、導入先を拡大しているほか、大田区との協働プロジェクトでは換気装置の電気使用量で8割~9割、空調機の電気使用量で1割~2割の削減を達成し、その後も同施設での継続導入が決定。また、大田区とのプロジェクト成果が認められ、2028年3月末まで、都政現場の公共調達における随意契約可能なスタートアップに認定された。
今後の展望
cynapsでは、今回の資金調達をもとに「BA CLOUD」導入の要となる施工やパワーエレクトロニクスに精通したエンジニア人材の採用を強化し、受注キャパシティの拡大を図る。高まるニーズへの対応を加速し、2029年までに現在の約20倍(約300万㎡)のスペースを対象とした電力消費削減(年間約9,700万kWh相当)を目指す。
私たちは、発電所を新設することなく、中規模太陽光発電所(10MWを想定)約10基分の年間電力消費を“なかったこと”にできる未来を創ろうとしている。今後も建物単体のエネルギー効率改善を軸に、都市・地域全体をカバーするスマートエネルギーインフラへの進化に取り組んでいく。
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(TOMORUBA編集部)