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約1100人が参加!メタバース・ビジネスの最新動向と可能性に迫る『Metaverse Japan Summit 2022』イベントレポート

約1100人が参加!メタバース・ビジネスの最新動向と可能性に迫る『Metaverse Japan Summit 2022』イベントレポート

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渋谷ストリームホールで7月14日、「メタバース」をテーマとした大規模カンファレンス『Metaverse Japan Summit 2022』が開催された。19ものプログラムが2つの会場で催され、延べ1100人もの人たちが参加。メタバースの最先端動向に耳を傾けた。

本イベントを主催したのは、一般社団法人Metaverse Japan。2022年3月14日に発足した同組織は、メタバース領域で業界や企業の垣根を越えて、最先端の情報や世界観を広く共有し、Web3時代において世界に日本の力を解き放つハブとなることを目的としている。

代表理事には、一般社団法人渋谷未来デザイン理事・事務局長も務める長田 新子氏と共同 代表理事として、PwC Japan合同会社パートナー 執行役員馬渕 邦美氏が立つ。

本記事では『Metaverse Japan Summit 2022』で繰り広げられた19のプログラムのうち、「メタバースが拡張する地方自治体」「メタバースにおけるビジネス創造の可能性」という2つのプログラム(セッション)にフォーカス。自治体がメタバースを活用することでどのような新しい価値が生まれのか。そして、メタバースはビジネスにどのような変化をもたらすのか――。語られた内容の一部を紹介する。

「メタバースが拡張する地方自治体」――仮想空間に生まれた、もうひとつの都市

「メタバースが拡張する地方自治体」と題したプログラムでは、渋谷区 副区長の澤田氏、および、地方自治体とともにメタバース・ビジネスに取り組むKDDI・中馬氏、大阪大学・佐久間氏が登壇。地方自治体を絡めたメタバース・プロジェクトの現状や可能性について語り合った。


<SPEAKER/登壇者> 左→右

■長田 新子氏 ※モデレーター

一般社団法人渋谷未来デザイン理事・事務局長、一般社団法人Metaverse Japan 代表理事

■澤田 伸 氏

渋谷区 副区長CIO

■佐久間 洋司 氏

大阪大学 グローバルイニシアティブ機構 招へい研究員、2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)大阪パビリオン推進委員会 ディレクター、「バーチャル大阪」監修

■中馬 和彦 氏

KDDI株式会社 事業創造本部 副本部長 兼 Web3事業推進室長

メタバースが拡張する地方自治体の事例として最初に紹介されたのが、国内初となる自治体公認の都市連動型メタバース「バーチャル渋谷」だ。緊急事態宣言下において、スタートアップ(クラスター株式会社)とKDDIが共創し、わずか2カ月半もの短期間で、メタバース上に渋谷の街を再現した。KDDI・中馬氏は「バーチャル渋谷」が生まれた経緯について、次のように明かす。



『もともと、「攻殻機動隊」の新作タイトルの発表があり、渋谷区をARでジャックするという企画を用意していました。渋谷区のリアルの空間のなかに「攻殻機動隊」のデジタルコンテンツが大量に発生して街中をジャックするというものです。そこにコロナが来て、街がロックダウン。用意したARを誰も見れないという状況になったのです。「これはもったいない」ということで、だったらVRの空間に渋谷をつくって、そこでARのコンテンツを表現しようと、こうした背景から生まれたのが「バーチャル渋谷」です』(中馬氏)


▲2020年5月、KDDI株式会社、一般社団法人渋谷未来デザイン、一般財団法人渋谷区観光協会を中心とする参画企業50社で組成する「渋谷5Gエンターテイメントプロジェクト」は、「バーチャル渋谷」をオープンした。ここでは、渋谷スクランブル交差点が忠実に再現されている。(プレスリリース) 

攻殻機動隊のプロモーション目的で構築した「バーチャル渋谷」は、テンポラリーで役割を終えるはずだったが、反響があまりに大きかったことから、閉じずに開けておいたという。その結果、2020年5月のリリースから3年間で100万人以上が訪れる空間となり、渋谷区の一大イベントであるハロウィンすらも、「バーチャル渋谷」上で実施するほどインパクトをもたらすものへと成長したそうだ。

「バーチャル渋谷」に続く形でつくられた都市連動型メタバースが、2021年12月にリリースされた「バーチャル大阪」である。KDDI・中馬氏は「バーチャル大阪」が誕生した経緯について、大阪・関西万博開催に向けて『これから新しい街の可能性をつくるぞ、というエネルギーを表現する場として、バーチャルを使いたいという話があった』と振り返る。



また、「バーチャル渋谷」と「バーチャル大阪」の相違点として、渋谷はリアルな街を忠実に再現している一方で、大阪はデフォルメして表現されているそうだ。中馬氏は『この両方が存在し、それぞれ評価をしてもらえている点が、おもしろいと感じている』と語り、「バーチャル大阪」の監修を担う佐久間氏にバトンをつないだ。


▲2021年12月にリリースされた「バーチャル大阪」。同月にはオープニングイベントとして「M-1グランプリ2021」との連携イベントも開催され、約10万人が参加した。2022年2月より本格展開を開始。ここでは、道頓堀・大阪城などのモチーフがランダムに配置されている。(プレスリリース) 

バトンを受け継いだ佐久間氏は、大阪・関西万博におけるバーチャルコンテンツの必要性を、大阪府知事(吉村知事)・大阪市長(松井市長)に提案した立役者だ。「バーチャル渋谷」やメタバースが注目されるより前に企画した背景は、身近にいる友人がVTuberとしてインターネットの世界で活躍する様子に可能性を感じたからだと話す。そこで、万博のコンテンツにバーチャルを加えたいと、知事・市長に提案したそうだ。

『「バーチャルコンテンツを、大阪パビリオンに追加するべきではないか」とご提案したところ、知事・市長が非常に先進的な意見を持っていたので、「やろう」ということになりました。また、「大人に任せるんじゃなくて、佐久間くんが決めていい。成功しても失敗しても、それでいこう。とんがってこそ初めてうまくいくかもしれない」と。こうして企画がはじまりました』(佐久間氏)

また、「バーチャル大阪パビリオン」の企画開始は約2年半前。バーチャルの「空間」ではなく、バーチャル上の「人間」に焦点をあてたプロジェクトとして立ち上がり、現在も進行中だという。「空間」としての「バーチャル大阪」は相乗効果を狙う取り組みとして進めているが、バーチャルで作っていくものが、リアルの大阪に跳ね返ってくるようなものに期待しているという。

大阪のデフォルメされた表現について佐久間氏は、『大阪府は渋谷区よりも面積が広い。道頓堀だけをつくれば、河内は?北摂は?となってくるわけで、疎外されてしまう人も出てくる。コストを抑えつつ何をしなければならないかというと、「私のバーチャル大阪もそこにある気がする」と錯覚されるような、各地域の特徴を再構成した抽象化が必要になる』と説明した。

「バーチャル渋谷」「バーチャル大阪」の話題が一息ついたところで、自治体側の立場にある渋谷区・副区長の澤田氏に、問いが投げかけられた。モデレーターの長田氏から、『「バーチャル渋谷」の公認を依頼されたとき、どう感じたか』と尋ねられた副区長は、次のように回答する。

『渋谷という都市に様々な価値を提供することが私たちの主な業務ですが、もうひとつ業務があると思っています。それは、常にファーストペンギンとして新しい成果をつくっていくこと。これが私たちの社会的ミッションですし、そうすることが渋谷区民のシティ・プライドにつながっていると考えています。もちろんリスクや失敗があるかもしれませんが、そこから学び直していくことが重要です。

また、渋谷はスタートアップが2000社を超えています。IPOも120社を超えて、ユニコーンも誕生しているという街なので、色んな発想やエネルギーが集まります。それをどう支えていくのかを考えることが、渋谷区の役割。なので、「バーチャル渋谷」の公認も、何も反対することはなく、大阪風に言うと「おもろいやん、やってみなはれ(笑)」の発想だったのです』(澤田氏)



また澤田氏は、自治体におけるメタバース活用の可能性と有効性について、次のように語った。

『今、(渋谷区役所の)サービスにアバターを取り入れ、職員もアバターに転換して住民からの相談に対応することを検討しています。実はこうすることに、大きな意味があるのです。たとえば、「生活が苦しい」「DVに悩んでいる」といった相談は、役所に行くこと自体にすごく勇気がいります。でもバーチャル空間上で、お互いにアバターになってライトな相談から入れば、早い段階で手を打つことができる。そういう意味において地方自治体は、早急にメタバース空間やバーチャル空間上に、サービスをリフトアップするべきだと思います』(澤田氏)

「メタバースにおけるビジネス創造の可能性」――購買行動・人材育成etc. にもたらす変化

続いて紹介するのは、「メタバースにおけるビジネス創造の可能性」というテーマのプログラム。ここでは、どのようなメタバース・ビジネスが成立しうるのか、勝ち筋はどこにあるのかを、次の4名が語り合った。


<SPEAKER/登壇者> 左→右

■馬渕 邦美氏 ※モデレーター

PwCコンサルティング合同会社 Partner 執行役員、一般社団法人Metaverse Japan 共同代表理事(元Facebook Japan株式会社 執行役員)

■加納 裕三 氏

株式会社bitFlyer Blockchain 代表取締役

■楢崎 浩一 氏

SOMPOホールディングス株式会社 デジタル事業オーナー 執行役専務

■山口 有希子 氏

パナソニック コネクト株式会社 執行役員 常務/CMO/デザインセンター担当役員/DEI担当役員/カルチャー&マインド推進室 室長

モデレーターの馬渕氏より、『金融業界から見たメタバースの可能性は?』と尋ねられた加納氏は、一例として銀行窓口業務のメタバース化を挙げる。

『たとえば、高齢者に対してデジタル・ディバイド(情報格差)が生じるから、インターネットを使えませんと。だから物理的な窓口も残すという例があります。ただ、金融機関から見るとすごいコストなんです。支店をいくつもつくって社員を雇い運営するのはすごく大変。金融機関は窓口を減らしたいはずです。そうなると間をとって、バーチャル空間に支店をつくると。人間的なインターフェースでないと分からないという人がいるのであれば、バーチャル空間で対応しますよと。こういう可能性はあると思います』(加納氏)


これに対して、SOMPOホールディングス・楢崎氏も『銀行の可能性の話は、保険にもそのまま使える』と同調する。保険も「ほけんの窓口」のような代理店で契約する場合が多いとし、代理店の業務効率向上にもメタバースは効果的だとつけ加えた。



一方、金融とは異なる視点を持つパナソニック コネクト・山口氏は、現段階においてメタバースでビジネスを展開しているわけではないとしながらも、関連しうる取り組みとして、同社によるBlue Yonder(ブルーヨンダー)買収に言及。モノを作る・運ぶ・売るというサプライチェーンの現場から様々なデータを吸い上げ、データをまとめAIで分析し、もっとも最適なプロセスを実行するというビジネスに挑戦しているという。

このサプライチェーンが、メタバースやWeb3の世界になったときに、次の3つの可能性が考えられると話す。

1つ目が、モノづくりのプロセスで「Autonomous Factory(自律化した工場)」を構築しようとしている同社だが、人材不足が深刻化するなか、メンテナンスやオペレーションプロセスの最適化・効率化にVR・XRを活用しはじめているという。この分野においては、進化の伸びしろは大きいと話す。また、データの蓄積にも面白さを感じているそうだ。

2つ目が、ラストマイルの購買時点におけるメタバースの活用である。現状ではリアル店舗とECへの誘導が主流だが、当然、メタバースが加わることになる。ECとメタバースでは、購買行動に違いが生じるはずなので、そこの可能性に興味があるとした。3つ目として、商取引におけるブロックチェーン活用の可能性にも触れた。



山口氏の指摘した「ECとメタバースにおける購買行動の違い」に関連して加納氏は、ECからメタバースに購買活動が転換する際、『逆パラダイムシフトが起こる』との見解を示す。つまり、リアル店舗からECへと変化するなかで失われた、衝動買いが復活するというのだ。

『Amazonのような検索型のECは、必ず目的を持って買い物に行っています。たまに、お勧めが表示されることもありますが、欲しいものがどんどん濃縮されている状況です。一方で、スーパーや本屋でぶらぶら歩いていると、何となく視界に入って、こんなものもあったんだと気づき、商品を手に取りますよね。メタバースでは、こういった目的もなくショッピングをするというユーザー体験を再実現できる可能性があります』(加納氏)

加えて、toCビジネスだけではなく、toBビジネスにも変化を起こせる可能性はあるという。

『たとえば、企業の発注担当者が素材を発注したりしますよね。でも、大抵のサプライチェーンの画面って、そっけないんです。専門用語や番号が書かれているだけです。それが、(メタバース上に)グラフィカルな形で置かれていれば、誤発注もなくなるし、実物で見えたほうが分かりやすい。サプライチェーンの世界観に可能性があるのは、やはり目で見て分かるものにすることだと思います』(加納氏)

一方で楢崎氏は、山口氏の提示した可能性に絡めて、自社の例も挙げながら、次のような考えを示す。



『SOMPOホールディングスでは、日本最大級の介護事業を展開していますが、ベテランの介護士と駆け出しの介護士では、やはりサービスレベルが違うわけです。でも、これって教えられないんですよね。介護は人間相手なので、暗黙知というものがすごく大きい。我々、「たくみをしくみ化しよう」と言っているのですが、まさにデジタルの仕組みを取り入れています。このようにサービスの提供者が、自身のトレーニングや実際のプラクティスにメタバースを活用することで、より補強されるのではないかと思っています』(楢崎氏)

最後に、メタバース・ビジネスをはじめるにあたって『どこから手をつけたらいいのか』という問いに対する加納氏の返答・期待を、4つのカテゴリーに分けて紹介する。

第1に「IPを保有する大企業」は、メタバース上でIPを国際的に売り出す。

第2に「ハードウェア系大企業」は、高解像度で酔わない、安価なVRグラスを完成させる。

第3に「ベンチャー」は、Web2でやってきたことをWeb3に置き換える。(例:Twitterをブロックチェーン上に置き換えるなど)

第4に、これも「ベンチャー」向けだが、メタバース上のアセット生成を効率化する技術を開発する。(例:リアルな風景や人間を、簡単に3Dオブジェクト化する技術など)


取材後記

続々とメタバース関連サービスが紹介されている昨今。直近でも、順天堂大学(医療)やみずほフィナンシャルグループ(金融)が、メタバースの活用に乗り出すと発表。さらに、東京大学(教育)も2022年秋、「メタバース工学部」を新設することを明らかにした。あらゆる業界・サービスがメタバース化するなかで、ビジネスチャンスや勝ち筋はどこにあるのか。『Metaverse Japan Summit 2022』は、そのヒントを得られる貴重な場となった。メタバース・ビジネスの最新動向をキャッチアップしておきたい場合は、本イベント主催者である一般社団法人Metaverse Japanのサイトをチェックしてみてはどうだろうか。

(編集:眞田幸剛、取材・文:林和歌子、撮影:古林洋平)

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