顧客データを使って更なる事業成長を目指す! EC業界の雄Hameeの次なる戦略【BAK NEWNORMAL PROJECT 2022】
コロナ禍で市場が大きく拡大しているEC業界。リアルでの売上を期待できないことで、販路をオンラインに切り替えた企業も少なくない。同時に「いかにECで売上を伸ばすか」「バックオフィスの業務をいかに効率化するか」と課題を抱える企業も増えている。
そのようなEC事業者が持つ課題を解決するのが、EC事業に強みを持つHamee株式会社。小田原を拠点に「iFace」をはじめとするスマートフォングッズの商品開発、及び通販サイトを運営しており、自社のECノウハウを活かしたクラウド(SaaS)型 EC Attractions「ネクストエンジン」の提供も行っている。
今年で創業25年を迎える同社は、神奈川県主催の「ビジネスアクセラレーターかながわ(通称:BAK(バク))」にパートナー企業として参画。既存事業のさらなる成長はもちろん、オープンイノベーションによる企業風土の醸成のためにも、ビジネスパートナーを募集している。
今回は同社がおかれている現状と、プログラムに参画した背景を新事業創造部の下薗徹氏/中島理恵氏とDX推進部の秋山舜氏に伺った。
【上画像/左】Hamee株式会社 新事業創造部 サブマネージャー 下薗徹氏
【上画像/中央】Hamee株式会社 新事業創造部 中島 理恵 氏
【上画像/右】Hamee株式会社 DX推進部 マネージャー 秋山舜氏
オープンイノベーションによる事業成長のためにBAKに参画
ーーまずはHameeの事業概要について聞かせてください。
下薗氏:私たちHameeは、ガラケー時代の携帯ストラップをECで販売する会社として小田原で創業し、そこからスマートフォングッズ販売などの事業を展開してきました。その中で代表的な商品になったのがスマートフォンケース「iFace」です。このヒット商品が生まれたことでHameeの事業全体も大きく成長しました。
また、もう一つの事業の柱がEC事業者様向けクラウド(SaaS)型 システム「ネクストエンジン」です。システマチックに見えるEC事業も、実は裏側はアナログな業務がたくさん存在しており、それらの業務を自動化・効率化する機能が多数盛り込まれています。
リリース当初から多くのEC事業者様にご支持を頂き、今では国内の流通額が1兆円を超える日本のEC市場を支えるサービスに成長しております。
ーー今回、BAKに参画した背景を聞かせてください。
中島氏:物販、システム事業はいずれも成長しているものの、まだまだ多くの課題を残しています。それらの課題は社内のリソースで解決することもできますが、よりスピーディに解決するためにもオープンイノベーションが有効だと思い参画しました。
秋山氏:社内の課題を解決するために組成されたのが、私が所属しているDX推進部です。小売業界の急速なEC化が進む中で、顧客それぞれに合わせたEC体験が求められるようになっています。
今後も安定的に事業を成長させていくためには、顧客データは欠かせない存在です。Hameeでは、自社サイト、ECモール、卸売販売等、販売チャネルをバランスよく展開していますが、自社からアプローチできるお客様をより増やしていくために、顧客データ基盤の構築が重要だと考えています。
ーー共創相手を見つけることによって、どのような事業展開を考えているのでしょうか。
秋山氏:これまでも自社で顧客データの蓄積は行ってきたものの、それらを完全には有効活用できていない状況です。たとえば、HameeではEC多店舗展開を積極的に行っていますが、多数の販売ページと商品SKUの管理に意識が向きがちで、顧客データという観点では情報の整理がなかなかできていませんでした。
今回のプロジェクトが上手くいくことで、Hameeの事業成長はもちろん、ベンチャー企業側のサービス開発にもつながる取り組みを一緒に創っていきたいと思っています。
顧客データと広告の成果を可視化できるパートナーを募集
ーー今回は共創テーマを2つ挙げていますね。それぞれ詳しく聞かせてください。
秋山氏:1つ目のテーマは「顧客行動の可視化」です。これまでも顧客データをもとに適切な商品を適切なユーザーに届けようとしてきましたが、スマートフォンケースという商材の特性上、お客様が実際に購入されるのは平均して約2年に一度程度。実際には購入に至るまでに何回もサイトを訪れる等、購入までの過程が存在しているはずなのですが、顧客データとしては不足しています。
そこで、購買データだけではなく、SNSやオウンドメディアなどとも組み合わせながら、よりパーソナライズされた体験を提供しようと考えています。ECサイトには数年に1度しか訪れないものの、SNSやオウンドメディアには日々ユーザーが訪れていますし、様々な外部サイトと連携することで、より大きなデータを集められると想定しています。
それらのデータを総合的に組み合わせて、よりパーソナライズされた購買体験を提供することが、本プロジェクトの目的のひとつです。
ーーどのような取り組みを想定しているのでしょうか?
秋山氏:これまでは、私たちのサイトに訪れている間の行動は把握できていたものの、サイトを離れてからの行動はわかりませんでした。これから私たちが行いたいことは、「どんなサイトを経由してサイトに訪れたのか」「一度サイトを離れたユーザーが、どのサイトを見てからまた戻ってきたのか」という広い行動情報を獲得することです。始めたばかりのプロジェクトなのでまだ実験段階ですが、将来的にはそれらのデータを売上予測やマーケティング分析にも上手く活用していきたいと思っています。
ーー2つ目のテーマについても聞かせてください。
秋山氏:1つ目のテーマとも繋がりますが「広告戦略に関する成果の可視化」が2つ目のテーマです。広告戦略の成果を可視化できれば、もっというと事業戦略という大きな括りで成果を可視化できれば、そのデータをもとに最適な商品を開発したり、最適な販促が可能になります。
たとえば、予め設定していたペルソナが実際の購入層と合っているのか答え合わせをしたり、もしくは想定していなかった顧客層を見つけるとこができれば、該当するお客様に適切に広告を表示することができたり、より細かな顧客アプローチを前提としたニッチな商品開発も可能になると考えています。
顧客データと広告データを使って、既存のビジネスをグロースしたり、新しいビジネスを生み出せるパートナーが見つかると嬉しいですね。
共創で価値を生み出してきたHamee
ーーHameeさんは過去にもオープンイノベーションの実績がありますよね。どんな企業なら相性がいいと思いますか?
下薗氏:対等な関係で新しい価値を作っていけるパートナーです。受託・下請けの関係ではないので、私たちが求めているものを作ってくれる会社ではなく、一緒にサービスを作っていける会社と組みたいと思います。
特に今は変化の激しい時代なので、1年かけて開発している間に正解が不正解に変わってしまうことも珍しくありません。常に時代の最先端を見据えながら、柔軟に新しい価値を生み出していける企業とはいい共創ができると思います。
ーーこれまで実際に共創した事例についても教えてください。
下薗氏:ネクストエンジンを運営するシステム事業においては、APIを解放することで様々な外部サービスと連携しており、アプリ連携等を始めとした多くのオープンイノベーション事例があります。ただ、物販の事業領域ではオープンイノベーションの事例がまだ少なく、弊社としてもチャレンジが必要な領域だと認識しています。
BAKのような大規模なオープンイノベーションに取り組むことで、これまでの個別ソーシングでは実現できなかった課題解決に挑戦していきたいですね。
ーー実際に共創が実現した際には、Hameeとしてどのようなリソースを提供できますか?
秋山氏:私たちは自社でEC事業を展開しているので、新しい広告手法などを生み出した場合は、自社のサービスを使って実証実験が可能です。結果の良し悪しなど、スピーディなフィードバックも行えると思います。
また、スマートフォンケース以外にもゲーミングアクセサリー事業やコスメティクス事業等の立ち上げ段階のブランドも多数あるので、それらも連携すれば幅広い取り組みが可能になると思います。その他にも、共創に使えるリソースがあれば惜しみなく提供したいですね。
ーー最後に応募を検討する企業の皆様に向けて、メッセージをお願いします。
下薗氏:私たちは創業時から「クリエイティブ魂に火をつける」というミッションを掲げて事業を成長させてきました。日々、世の中をどう変えていくか考えながらサービスを開発しているので、同じようにイノベーションを興そうとするベンチャー企業さんと共創を実現したいと思います。
秋山氏:私たちはこれまでもパートナーとの関係を重視してサービスを作ってきました。過去には、お客様の働く現場を見ながら課題を発見し、新しい機能開発につながった例もあります。パートナーと一緒になれば新しい価値を作れる。その成功体験から、パートナーと共創する重要性を学びました。
中島氏:BAKでも一緒に新しい価値を作っていけるパートナーと出会えることを楽しみにしています。
編集後記
ECを活用している事業者は、てっきりデジタルを使いこなしているのだと思っていた。しかし、Hameeの話を聞くとそういった会社ばかりではなく、多くの事業者はアナログな業務を残しており、業務改善の幅はまだまだたくさんあると言う。
EC化が他国に比べて遅れている日本は、逆に言えば成長の余白がある国。これからも増えていくEC事業者の困りごとをビジネスに変えていくHameeには、それだけビジネスチャンスがあるということ。ベンチャーと組んでさらなる飛躍を目指してほしい。
●「BAK NEW NOMAL PROJECT 2022」の詳細についてはこちら(最終応募締切:7/11まで)
(編集・取材・文:鈴木光平、撮影:加藤武俊)