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2022年もBAKが応募を開始。ベンチャーがよりプロジェクトに参画しやすいよう新たな取り組みを加えアップグレード【BAK NEW NORMAL PROJECT 2022】

2022年もBAKが応募を開始。ベンチャーがよりプロジェクトに参画しやすいよう新たな取り組みを加えアップグレード【BAK NEW NORMAL PROJECT 2022】

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様々な分野の大企業、そして多くの大学と研究所を擁する神奈川県。――2019年11月、神奈川県産業労働局産業振興課がスタートさせたのが、オープンイノベーション支援事業「ビジネスアクセラレーターかながわ“BAK”」だ。

2021年には8社もの大企業がテーマを掲げて共創相手を募集し、マッチングの結果、8組のプロジェクト組成に繋がった。2022年も昨年同様プログラムを開始するが、昨年感じた課題をもとに今年は様々な改善がなされていると言う。

今回は県のベンチャー支援拠点「SHINみなとみらい」(WeWorkオーシャンゲートみなととみらい内)にて、神奈川県産業振興課の新産業振興グループでBAKの運営を担っている上野哲也氏と阿部素直氏に、今年の新たな取り組みについて話を聞いた。

【上画像/左】神奈川県 産業労働局 産業部 産業振興課 新産業振興グループ 副主幹 上野哲也氏

【上画像/右】神奈川県 産業労働局 産業部 産業振興課 新産業振興グループ 主事 阿部素直氏

157件の応募から、8つの共創が生まれた昨年のプロジェクト

ーーまずはBAKがどのようなプロジェクトなのか、改めて教えてください。

上野氏:神奈川県では様々なベンチャー支援の取り組みをしており、BAKもその取り組みの一つです。BAKでは、ある程度軌道に乗り始めたベンチャー企業に対して、大企業と連携する機会を作り、より成長を促すのが目的。大企業との出会いの場を作るのが大きな特徴となっています。


2019年から始めたこの取り組みは、2022年で4年目。特に昨年から力を入れているのが、コロナ禍で顕在化した様々な課題を解決するための「ニューノーマルプロジェクト」です。様々な業界で顕在化している課題に対して、それらを解決するテーマのもと、プロジェクトを創出し、その事業化を支援しています。

ーー2021年の成果はいかがでしたか?

上野氏:昨年は8社の大企業がテーマを掲げてベンチャーに共創を呼びかけ、実に157件もの応募がありました。各企業が1社ずつ採択したことにより、8つのプロジェクトがスタートしています。

プロジェクトによってスピードの差はあるものの、それぞれ一定の成果を挙げており、実証実験も始め事業化への第一歩を踏み出しました。課題と感じたこともありましたが、共創を生み出すプロジェクトとしては成功したと思います。

ベンチャー企業からもテーマを発信できる「自由提案型」を新設

ーー昨年のプロジェクトを支援して、感じた課題について教えてください。

上野氏:課題として感じたのは2つ。一つはテーマが限られていることにより、応募できないベンチャーがいたこと。BAKでは大企業がテーマを掲げ、その課題を解決しうるアイディア・技術を持つ企業が応募するのですが、そこにはメリット・デメリットがあります。

メリットは、テーマが明確なためマッチングさえすれば、スピーディにプロジェクトを進められること。一方で、テーマに沿った企業以外は応募するチャンスもないのがデメリットです。実際に応募できなかった企業から「提案できるテーマがない」という声を何件かいただきました。

せっかく私たちの取り組みに関心を持っていただいても、テーマがないことでプロジェクトに参加できない企業がいるのはもったいない。そのような背景から、新たに「ベンチャー発自由提案型」という方式を始めました。

ーーどのような方式なのでしょうか?

阿部氏:神奈川県内のベンチャーであれば、募集テーマ以外でも、自分たちからコロナ禍で顕在化した課題を解決するテーマを設定して共創先を探せる仕組みです。昨年、採択に至ったベンチャーのうち、県内の企業は8社中2社だったため、できるだけ県内企業を応援したいという気持ちから、こちらの方式に応募できるのは県内に本店があるベンチャー企業に絞らせていただきました。


マッチングのパターンを2つ考えていて、一つは「取り組みたいテーマはあるけど、共創相手が見つからない」というパターン。共創相手のイメージさえわかっていれば、神奈川県としても、BAKに参加している企業などから、共創相手を見つけるバックアップをします。

もう一つは「既に大企業と話合いが進んでいるが、本格的にプロジェクトを進めるにあたり、実証に踏み出せないなど、足踏みしている」というパターン。ベンチャー発自由提案型で採択されたプロジェクトに関しては、最大で600万円の支援金を提供するので、ぜひそれをPoC(概念実証)の費用に充ててほしいと思っています。

ーー採択予定の企業数は何社を想定しているか教えてください。

阿部氏:ベンチャー発自由提案型は6社程度です。既に大企業とのマッチングができているプロジェクトの方が実現可能性が高いため、採択される可能性も高いですが、パートナーがいなくても提案内容によってはその限りではありません。

パートナーを見つけるのもプロジェクトの大きな意義だと思っているので、まだ共創パートナーとのマッチングに至っていない企業も積極的に応募してもらいたいと思います。

ーー採択されやすいプロジェクトの傾向などはありますか?

上野氏:これまでの傾向を見ると、大企業とベンチャーが対等な関係を築き、適切な役割分担をしているプロジェクトが採択されているように感じます。よく見られるのが、共創とは名ばかりの単なる下請けだったり、ベンチャーのサービスを大企業が導入しただけのケース。

そうではなく、それぞれの企業がなぜ組んでいるのか、理由が明確で、それぞれの強みを活かし合っているプロジェクトは採択されやすいと思います。

ーーどんな企業に応募してもらいたいか聞かせてください。

阿部氏:一つは、プロジェクトに採択されたことで、成長に繋がると思われる企業。今回のプロジェクトが一過性のものとして終わるのではなく、継続的な売上増加や雇用の増大に繋がるような企業に応募してほしいです。

もう一つは、神奈川県民もしくは神奈川県内の企業にメリットのあるプロジェクトを提案できる企業。本プロジェクトは行政が関わっているので、課題解決に繋がり、県民の生活や企業の業績がよくなることにつながる提案だと嬉しいと思います。

期間の制限なしに共創に打ち込める「パートナーズコネクト」

ーー昨年からは、新たに「パートナーズコネクト」という制度も始めていますよね。詳しく聞かせてください。

上野氏:「パートナーズコネクト」も「ニューノーマルプロジェクト」と同様、大企業がテーマを掲げ共創相手を募集するプロジェクトです。「ニューノーマルプロジェクト」と違うのは、支援金がないこと、そして実証などの期間の縛りがないことです。

ニューノーマルプロジェクトは、支援金を提供する一方で、それを効果的に活用していくため、応募期間から採択する時期、成果を発表する機会などタイムスケジュールが決まっています。そのため、共創に慣れていない企業の場合は、タイムリミットをプレッシャーに感じてしまうかもしれません。


その点、パートナーズコネクトでは期限が定まっていないため、自分たちが始めたい時に共創相手を募集でき、時間をかけてじっくり共創相手を選べます。プロジェクトが始まってからも期間の制約がないので、自分たちのペースでプロジェクトを進められるのです。

こうしたことからあえてパートナーズコネクトを利用する会社もいました。この仕組みであっても、ニューノーマルプロジェクトと同じ8社もの企業が共創に至ったため、手応えを感じています。

ーーどのような会社にパートナーズコネクトを勧めたいですか?

阿部氏:初めてベンチャー企業との共創を行っていくなど、まだ社内で共創する環境が十分に整っていない会社です。共創環境が十分に整っていないのに、期限に追われて共創を進めるのはハードルが高いですよね。パートナーズコネクトなら縛りが少ないので、共創を進めながら社内の環境を整えていくことも可能です。

また、支援金はなくとも神奈川県のサポートを受けながら共創を始められるので、自分たちだけで共創を進めるよりもスムーズに進められるはずです。自社だけでは繋がれない企業とも繋がれたり、様々なパートナー企業ともディスカッションできるので、多くのメリットがあると思います。

プロセスを見直し、より共創が生まれるプロジェクトへ

ーーニューノーマルプロジェクトにおいても、昨年から改善した点があれば教えてください。

上野氏:昨年と比べて、採択までのプロセスを見直しました。例えば応募フォーム。昨年も多くの企業から応募を頂きましたが、より多くの企業に応募してもらいたいと思い応募フォームを簡素化しました。記述する箇所が減ったため、昨年よりも気軽にエントリーできるようになったはずです。

また、応募から採択までの期間が短かったので、募集の開始時期を早めて、大企業がじっくりとパートナーとなるベンチャーを選べるようにしました。昨年よりも時間が十分にあるので、応募企業とやりたいことをすり合わせてから共創パートナーを選べるはずです。

ーー逆に昨年好評だった支援はありましたか?

上野氏:実証実験の場所の提供は多くの企業に喜ばれましたね。大学で実証実験したプロジェクトもあり、行政ならではのサポートだったと思います。

また、知事会見の場でプロジェクトを紹介できるのもBAKならでは。昨年も2つのプロジェクトを会見の場で紹介し、通常とは異なるPRサポートができたと思います。

ーー昨年のプロジェクトを見ていて、採択される企業の傾向があれば教えてください。

上野氏:パートナーとなる大企業がやりたいこと、目指していることを、深く理解している企業が採択されている印象でした。単に自分たちのやりたいことをぶつけるだけでなく、相手が欲しているものに合わせて、同じ目線で一緒に取り組める企業が今年も選ばれるのではないでしょうか。

自分たちのサービスをアピールするのも大事ですが、相手が何をしたいのかよく理解して応募してもらえるといいと思います。

ーー最後にプロジェクトに対しての意気込みを聞かせてください。

阿部氏:今回のプロジェクトでは「空間を作り出す」テーマが多いように感じます。神奈川県民にとって、よりよい空間を提供できるよう微力ながらサポートしていきたいと思います。

上野氏:まずは多くの企業に気軽にエントリーしてほしいと思っています。それと同時に、BAKは行政が主催しているのが大きな特徴なので、その点も踏まえて提案していただけるとなお嬉しいです。

行政だからこそ提供できるリソースも多数あり、例えば昨年は廃校となった元県立高校の校舎を実証場所として提供し、実証実験も実施しました。また、県庁の他の部署と調整したり、市町村とも連携しながら、できる限り共創のサポートをしていくので、多くの企業に活用してもらいたいと思います。


編集後記

今年で4期目となるBAK。これまでも大企業とベンチャーの共創実績を積み重ねてきたが、改善を繰り返し、年々共創を促進するプロジェクトになってきた。特に今年から始まった「ベンチャー発自由提案型」はベンチャーから共創を呼びかけることが可能だ。

大企業発信のプロジェクトはもちろんのこと、ベンチャーならではの視点で、これまでにないようなテーマが生まれることを期待したい。

「ビジネスアクセラレーターかながわ(BAKバク)」の詳細についてはこちら

(編集・取材・文:鈴木光平、撮影:加藤武俊)

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シリーズ

BAK_NEWNORMAL_PROJECT2022

ビジネスアクセラレーターかながわ、通称BAK(バク)。新型コロナウイルスの感染拡大により、顕在化した様々な課題を神奈川県の企業とベンチャー企業との共創で解決を目指すためのプロジェクトです。今年もパートナー企業大手6社が出揃い、オープンイノベーションに取り組む背景や課題、募集テーマや共創パートナーに伝えたい熱いメッセージをお聞きしました。