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1年で40〜50団体との接点を創出し、海外政府機関とも交流――味の素 Z世代事業創造部から紐解く、次世代の共創施設『SHIBUYA QWS』

1年で40〜50団体との接点を創出し、海外政府機関とも交流――味の素 Z世代事業創造部から紐解く、次世代の共創施設『SHIBUYA QWS』

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2019年11月に渋谷スクランブルスクエアに新たな共創拠点『SHIBUYA QWS(渋谷キューズ)』が誕生した。コンセプトに「渋谷から世界へ問いかける、可能性の交差点」を掲げ、まだ世に表れていない「問い」をベースにこれまでにない価値を創出し、世界に届けることを大きな目的の一つとしている。現在までに大企業やスタートアップ、自治体、大学など多様なバックボーンを持つメンバーが会員に加わり、14歳から91歳まで多様な個性や領域を越えた深い知性が交差・交流し、可能性の種を生み出し続けている共創施設となっている。

そこで今回TOMORUBAでは、【共創施設特集】として2年間で150を超えるプロジェクトを支援してきたSHIBUYA QWSの各種取り組みにフォーカス。「コミュニティ運営の仕組み」「独自のプログラム」「約800ものイベント」など、次の可能性を創造する多種多様な仕掛けの魅力に迫り、取材形式でお届けする。

第二弾記事で取り上げるのは、大手食品メーカー・味の素の新規事業セクション「Z世代事業創造部」におけるSHIBUYA QWS活用事例だ。QWSコーポレートメンバーとして入居している「Z世代事業創造部」は、1年足らずの間に40~50の団体との出会いが創出され、製品開発の足掛かりをつかむと共に、海外組織とのつながりも深まったという。

そこで、同部部長の神谷歩氏とグループ長の山田裕介氏に加え、SHIBUYA QWSのエグゼクティブディレクター・野村幸雄氏にも同席いただき、入居の理由や具体的な活用方法、現在までの成果をお聞きした。


<写真左→右>

■味の素株式会社 執行理事 食品事業本部 Z世代事業創造部長 神谷歩氏

■味の素株式会社 食品事業本部 Z世代事業創造部 事業創造グループ長 山田裕介氏

■渋谷スクランブルスクエア株式会社 渋谷キューズ エグゼクティブディレクター 野村幸雄氏

0→1のフェーズで幅広い着想を求めていた。Z世代と交流し、新製品開発につなげることを目的に入居

――味の素さんは「Z世代事業創造部」の立ち上げに伴い、SHIBUYA QWSに入居されました。まずはZ世代事業創造部を立ち上げた背景をお聞かせいただければと思います。

味の素・神谷氏 : 当社の事業のメインは調味料です。調味料は調理で使うものですので、調理体験がないとあまり馴染みが感じられません。従って、調理体験の少ない若い世代は当社との接点が限定され、エンゲージメントが希薄という課題認識がありました。

他方、世界に目を向けると、人口に占める割合はいわゆるZ世代など若い人が多くなっています。食の世界でもZ世代が今後をリードする存在であることは間違いないでしょう。当社としても早急に若い人たちにリーチし、ファンを作らねばなりません。このため、Z世代事業創造部を立ち上げるに至ったのです。

味の素・山田氏 : 設立されたのが、2021年4月です。専任スタッフを公募したところ、平均年齢27歳のフレッシュなメンバーが集まりました。これだけ若いチームは社内でも稀有な存在です。注目度は高く、若い人たちの熱意に引っ張れる形で事業は進められています。

――そうした新組織の活動拠点としてSHIBUYA QWSを選びました。さまざまな共創施設がある中で、SHIBUYA QWSに入居を決めた理由を教えてください。

味の素・神谷氏 : Z世代事業創造部という当社でもこれまでにない取り組みをするに当たり、自社に閉じこもらずせっかくだから外に目を向けるのが良いのではないかという意見が出たのです。確かにその通りだと思い、複数の施設を視察しました。

私たちが外に出る目的は事業部の名に冠する通りZ世代の人たちと交流をすること、価値観を肌で感じ取り新製品の開発につなげることです。どの共創施設も設備や仕組みは素晴らしかったのですが、中でもSHIBUYA QWSは渋谷という立地も含めてもっともZ世代とのつながりに期待が持て、入居を決定しました。


味の素・山田氏 : 私の見た限られた範囲内ですが、SHIBUYA QWS以上にZ世代との交流の場として期待を持てるところは他にありませんでした。入居者の個々のバックグラウンドも高校生、大学生、シード・アーリーステージのスタートアップ、大企業の新規事業担当など、本当に多種多様です。また、企業はもちろんのこと、大学や地方自治体もメンバーになっており、他の施設と比べてもより多種多様な方との交流が持てる点もとても魅力的でした。

――野村さんにお聞きします。SHIBUYA QWSへの入居の理由として、若い世代との接点が挙げられることは多いでしょうか。

SHIBUYA QWS・野村氏 : そうですね、若い人をはじめ社内で会えない人たちとの出会いが入居の理由としても、入居して良かった点としても挙げられるケースが多くなっています。多様な方たちと接点を持つことで、物の見方を変え新しい価値観を創出する。そうしたことに多くの方々が期待を寄せているようです。

毎月独自のワークショップを開催。有識者が集うコミュニティも積極活用することで視野が広がる。

――実際に入居されてからの話をお伺いします。SHIBUYA QWSでは、さまざまなプログラムやイベントが開催されています。どのように活用していますか。

味の素・山田氏 : 月に1回、当社のような法人会員(QWSコーポレートメンバー)は「Question Storming」と呼ばれるワークショップを実施することができます。参加者を会員から10人、非会員から10人募り、世代もバックグラウンドもさまざまな20人が一つのテーマを議論します。

当社は「Z世代の食と健康」をテーマにしました。若い世代の生の声が聞けたことに加え、普段は接点のない企業の方の声も聞くことができ、とても有意義な時間を過ごせました。また、堀江貴文さんが主宰する「ゼロ高等学院」が会員になっているので、高校生とワークショップができたことも、SHIBUYA QWSならではだったと感じています。

――活発に施設を利用している様子が伺えます。

味の素・山田氏 : はい。SHIBUYA QWSには経営者や研究者、投資家などさまざまな分野の有識者が「QWSコモンズ」として登録されておりコミュニティを形成しています。月1回、そうした有識者の集う「スクランブるなソサエティ」というイベントが開催されており、参加すると誰もが知るような方々と意見交換ができます。視野が広がりますので、積極的に活用しています。

また、正式会員とは別に、3カ月に1度プロジェクトを公募してメンバーを入れ替える仕組みがあります。常に新しい視点と出会える点も、他にはない魅力です。

SHIBUYA QWS・野村氏 : 少し補足すると、ルナー・ソサエティは、1760年代にイギリスでチャールズ・ダーウィンの祖父で医師であり自然哲学者のエラズマス・ダーウィンが作ったと言われるコミュニティで、満月の夜に科学者、発明家、実業家、政治家など越境した人材が集まって、フラットに意見を交換していました。

SHIBUYA QWSでも現代版のルナー・ソサエティを作ろうとしており、多様な意見がぶつかり合う場の形成を目指しています。メンバーの入れ替えについては、「QWSチャレンジ」というプログラムで3カ月に1度、公募でプロジェクトを募集しています。どなたでも応募ができ採用されればSHIBUYA QWSを3カ月間、無料で使用できます。3カ月後にはQWSステージという成果発表会があり、採択されれば賞金やもう3か月継続利用が可能です。3か月毎に約10組40~50名が入れ変わる仕組みで、施設内で常に新陳代謝が行われるのです。

――味の素さんは商品開発の時にインタビューをするなどして、ユーザーの声を集めていると思います。商品開発の過程で集められる声と、SHIBUYA QWSで耳にする声とは、質の面で違いがあるでしょうか。

味の素・山田氏 : 鮮度や本音、生の声という点で違いがあると捉えています。商品開発の際は調査会社を経由するので、生の声とはどうしても異なります。しかし、SHIBUYA QWSでは直接意見を聞くことができます。時に厳しい意見もあるとは思いますが、直接Z世代をはじめとする人たちの声を聞けるのは、当社にとって非常に価値の高いことです。


SHIBUYA QWSという”出島”で、自前主義からも脱却し、新たな働き方も実現

――野村さんからも見ても、味の素さんはSHIBUYA QWSを使いこなしていらっしゃるでしょうか。

SHIBUYA QWS・野村氏 : そう感じます。特に印象に残るが、山田さんもおっしゃられていた「Question Storming」です。私もイベントの様子を見ていたのですが、参加者からは「健康を直接的にうたうよりも、罪悪感を覚えない商品を手にしたい」との声が挙がっていました。私としては、なるほどZ世代はそのように考えているのだなと新しい発見がありました。味の素さんとしても、新しい発見という手応えはあったのでしょうか。

味の素・山田氏 : 食品業界では「ギルトフリー」がキーワードの一つとして挙がっていました。しかし、あくまで仮説です。それが、「Question Storming」を通じ、生の声として聞けたので非常に大きな手応えが得られました。

SHIBUYA QWS・野村氏 : 味の素さんといえば、タイからの逆輸入商品本格トムヤンクンヌードル「Yum Yum®」を共有スペースに置いて、誰もが自由に持っていけるようにした活動も印象に残ります。その対価として感想を書いてもらう。現地の味が日本でどう捉えられるかを知るマーケティング活動ですね。このように、味の素さんはSHIBUYA QWSをフル活用いただいており、理想的な入居の仕方といえます。


味の素・山田氏 : SHIBUYA QWSに入居することで、新しい視点に出会えると共に、新しい働き方が実現できたのも大きかったと感じています。これまではどちらか言えば自前主義で、出島のような場所を持っていませんでした。しかし、今回SHIBUYA QWSに入居して、多くの新しい出会いが生まれました。社内の別の部署との打ち合わせでも、時々使わせていただいています。

日々のコミュニケーターの支援により、1年で40〜50団体とつながり、スウェーデンの政府機関とも交流

――SHIBUYA QWS入居後の成果を教えてください。

味の素・神谷氏 : 1年足らずの間に40~50もの団体とつながりができたのが大きな成果です。高校生のチームや大学のOI推進者、スタートアップ、コーポレートメンバー同士と、実に多様な人たちとつながりが持てました。正直、ここまでのものとは想像も期待していなかったので、良い意味で驚きを与えてくれました。

――なぜ多くのつながりを持てたとお考えですか。

味の素・神谷氏 : SHIBUYA QWSに常駐しているコミュニケーターの方の存在が大きいと思います。しっかりと私たちのことを見ていて、少しでもつながりが持てそうであれば、すぐにつないでもらえるのです。もちろん、すべてがビジネスにつながるわけではありませんが、ヒントになる話を聞けることは少なくありません。何より、つながりを持てること自体が私たちにとって大きな価値です。

味の素・山田氏 : 実はSHIBUYA QWSに入居した最大のきっかけはコミュニケーターの方でした。私が休日にふらりと渋谷スクランブルスクエアを訪れた時に、コミュニケーターの方がSHIBUYA QWSを案内してくれたんですね。当時はSHIBUYA QWSのことを知らなくて、こんなところにも共創施設があったんだ、と思っていたところ、コミュニケーターの方の目に留まりました。当然、アポイントも何もなかったのですが、とても丁寧に施設を説明いただきました。

――非常に良い縁の結び方だと感じます。他にも何か印象に残るつながりはありましたか。

味の素・山田氏 : スウェーデンの政府機関とつながりを持てました。QWSコモンズにドイツの方がいらっしゃって、その方からの紹介があったのです。当社では先進的な事例が多い北欧のZ世代に大変興味を持っており、特に日本のZ世代との環境意識の違いなどを知りたいと思っていました。とはいえ、北欧の方と出会いがあるとは予想もしていなかったので、とてもインパクトがある出来事でした。

――製品開発について具体的な成果はあったでしょうか。

味の素・神谷氏 : 具体的にこれというのは、現段階でははっきりとはお伝えできないところもあるのですが、これからの可能性や価値創造につながるアイデアやヒントは多くありました。Z世代事業創造部もまだ始まったばかりで試行錯誤の段階です。これから新規事業につなげていきたいと考えています。


多種多様な利用者、若さ、立地、リーズナブルな価格設定。多くの着想を得たい大企業新規事業推進者に、ぜひおススメしたい。

――ここまでお話をお聞きし、味の素さんが非常に良い形でSHIBUYA QWSを活用している様子が伺えました。もし他の企業様に入居のメリットを伝えるとしたらどのような点を強調したいと思いますか。

味の素・神谷氏 : やはり多くの方との出会いではないでしょうか。SHIBUYA QWSには年齢も専門領域もさまざまな方たちが集まっています。当社も多様な世代との出会いを求め、実際につながることができました。外部の方たちと接点を持つことで、これまでにないアイデアが生まれ、事業創造が実現されつつあります。出島的な環境を探している大企業にとっては、特に有効です。

味の素・山田氏 : 共創施設に興味を持っている知り合いの企業の方数名に、SHIBUYA QWSを案内したことがあります。多種多様な利用者、若さ、立地、リーズナブルな価格設定に驚かれます。施設のことを知ったら、利用したいと考える方が増えるのではないでしょうか。

――最後に、今後の活用方法をお聞かせください。

味の素・神谷氏 : 当社も入居してまだ1年目です。SHIBUYA QWSの機能を最大限に活用して、新しいつながりを生みながら、具体的に事業創造に結び付ける方針です。

味の素・山田氏 : 今はコロナ禍で渡航などに制限がありますが、当社はグローバルに目を向け、海外での活動を活発化させたいという思いがあります。SHIBUYA QWSでは、スウェーデンの政府機関ともつながりが持てました。さらにグローバルの方とのつながりを広めていければ、とても嬉しく思います。



※SHIBUYA QWSで価値創造に取り組むプレイヤーたちが「問い」から生まれた「可能性の種」を発表する『QWSステージ#10』の開催が決定した。日時は、4/28(木)18時から。当日はプロジェクトメンバーの3分ピッチに加え、ゲストによるキーノートトーク等を実施。問いの感性を刺激する時間を過ごせるはずだ。詳細・申込はこちら。 


取材後記

SHIBUYA QWSのコーポレートメンバー、味の素株式会社の事例をお送りした。同社はZ世代との接点を求め、高校生や大学生など若い世代が多く集うSHIBUYA QWSに入居。実際にZ世代との接点を獲得すると共に、さまざまな世代、多種多様な専門性やバックグラウンドを持つ人たちと縁を結び、新事業創出に大きな前進を果たした。同社は「Question Storming」や「スクランブるなソサエティ」を積極的に活用し、野村氏が「理想的な入居の仕方」と称賛するほどだ。同社は既に40~50の団体とつながり、さらには海外とも接点を持った。この背景にはSHIBUYA QWS独特の「コミュニケーター」の存在も大きい。同社はさらにSHIBUYA QWSの機能を使い、具体的な新規事業の創出を目指すという。これからどんな価値が想像されるのか。注目したい。

(編集:眞田幸剛、取材・文:中谷藤士、撮影:齊木恵太)

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