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【BUSINESS BUILD DAYSレポート】東北電力グループ×スタートアップ6社が2日間で、事業アイデアをブラッシュアップ—東北発の「スマート社会」実現に向けた事業創出に挑む

【BUSINESS BUILD DAYSレポート】東北電力グループ×スタートアップ6社が2日間で、事業アイデアをブラッシュアップ—東北発の「スマート社会」実現に向けた事業創出に挑む

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東北電力グループは、「スマート社会の実現」に向け、オープンイノベーションプログラム「TOHOKU EPCO BUSINESS BUILD」を実施している。

2021年7月16日(金)・7月17日(土)の2日間、「BUSINESS BUILD DAYS」を開催し、本格的にインキュベーションへ進む企業として3社を採択した。

「BUSINESS BUILD DAYS」は、参加企業と東北電力グループのキーパーソンなどがチームを組み、2日間にわたってディスカッション・事業アイデアのブラッシュアップを行い、2日目の最終プレゼンで本格的にインキュベーションに進む採択企業を選出するプログラム。アクセラレータープログラムのインキュベーションの要素を切り出し、短期間での事業アイデア創出を目指す「密度の濃さ」が特徴だ。

応募総数約100件のなかから選考を通過した6社のスタートアップ企業が、「BUSINESS BUILD DAYS」に参加。2日間のプログラムを走り切り、磨き上げた事業アイデアで最終プレゼンにのぞんだ。今回のプログラムは、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けて、バーチャルオフィスプラットフォーム「oVice(オヴィス)」上で実際されたが、オンライン開催とは思えない熱気あふれる発表の連続となった。

TOMORUBAでは「TOHOKU EPCO BUSINESS BUILD」の立ち上げ期から東北電力グループを取材し、その熱意ある取り組みを追ってきた。本記事では、コロナ禍という逆風の最中にあっても、果敢にオープンイノベーションに挑戦し、「BUSINESS BUILD DAYS」を成功に導いた東北電力グループの軌跡をお届けする。

“ビジネスモデルの転換”を目指し、「TOHOKU EPCO BUSINESS BUILD」を始動

オープンイノベーションプログラム「TOHOKU EPCO BUSINESS BUILD」は、2021年に東北電力グループが70周年を迎えたことをきっかけに立ち上げられた。その設立の背景には、近年の東北電力グループの事業環境の変化があった。東北電力の取締役副社長であり、今年4月に設立された新会社「東北電力フロンティア株式会社」で取締役社長を務める岡信愼一氏は、TOMORUBAの取材に以下のように答えている。

「東北電力グループは、今まさに重要な転換点を迎えています。近年、電力業界は、電力小売全面自由化や再生可能エネルギーの導入拡大などの影響を受けて、構造変革を迫られています。

また、東北電力グループの事業基盤である東北・新潟地域も、人口減少や少子高齢化が急速に進み、数々の社会課題を抱えています。この諸課題に東北電力グループは強い危機感を抱いており、従来のビジネスモデルからの転換が急務だと考えています。『TOHOKU EPCO BUSINESS BUILD』の立ち上げは、ビジネスモデル転換に向けた重要な取り組みと言えます」


▲東北電力株式会社 取締役副社長 副社長執行役員/東北電力フロンティア株式会社 取締役社長 岡信愼一氏

東北電力グループは2020年2月に「東北電力グループ中長期ビジョン”よりそうnext”」を策定し、そのなかで2030年代に向けて「東北発の新たな時代のスマート社会の実現に貢献し、社会の持続的発展とともに成長する企業グループ」を目指すと宣言した。この「スマート社会」とは、日本政府が提唱する「Society 5.0」に沿って、東北電力グループが定めた、目指すべき未来社会像のこと。

現在、東北電力グループは「スマート社会実現事業」と称する、デジタル技術などを駆使して社会課題解決と地域経済発展を達成するビジネスモデルへの転換を図っている。「TOHOKU EPCO BUSINESS BUILD」は、東北電力グループがスタートアップ企業との共創により新たな価値を生み出し、スマート社会実現事業を加速させるための取り組みである。


▲スマート社会実現事業のイメージ

「TOHOKU EPCO BUSINESS BUILD」の開催にあたり、東北電力グループは、「社会課題の解決」と「お客さまの豊かさの最大化」を目的とした3つの募集テーマを設定した。


①20~30代向けの暮らし便利サービス

就職や結婚などのライフイベントの多い20~30代に向けて、生活の豊かさを実感できるサービスを創出し、人口減少・少子高齢化が進む東北・新潟地域への定着を促す。

②行動変容による予防医療・健康促進

行動変容による予防医療や健康維持に関するサービスを創出し、東北・新潟地域における平均寿命の延伸や地域医療の課題解決を図る。

③持続可能な農業

農業従事者の高齢化や労働力不足、後継者不足などの課題解決を目的に、デジタル技術などを活用した省力化や効率化など、持続可能な農業を実現するサービスを創出する。

これらの募集テーマのもと、2021年5月6日よりプログラムへのエントリーが開始され、6月14日に応募が締め切られた。書類選考を通過した6社が、「BUSINESS BUILD DAYS」への切符を手にすることとなった。

「BUSINESS BUILD DAYS」:6チームが2日間で事業アイデアをブラッシュアップ

7月16日(金)・7月17日(土)、「BUSINESS BUILD DAYS」のプログラムが開催された。6社の応募企業は、2日目の最終プレゼンに向けて、各チームでのアイデアブラッシュアップやメンターからのフィードバック、プレゼン資料の作成などにのぞんだ。

「BUSINESS BUILD DAYS」では、応募企業のチームに各募集テーマを担当する東北電力グループの社員が参加し、同じチームメンバーとして事業アイデアをブラッシュアップしていくスタイルを採用した。両社の知見を生かして事業アイデアを検討し、真の共創を実現したいというのが狙いだ。

さらに、各チームへのフィードバックを行うメンターには、東北電力グループのキーパーソンのほか、事業開発に知見を有する外部の専門家が参加。複数回のメンタリングを通じて、事業アイデアの実現可能性をさらに高めていった。

【外部メンター】

■グローバル・ブレイン株式会社 General Partner 熊倉 次郎氏

■グローバル・ブレイン株式会社 Director 岩田 紘宜氏

■eiicon company 代表/founder 中村 亜由子氏

また、「BUSINESS BUILD DAYS」は、バーチャルオフィスプラットフォーム「oVice(オヴィス)」上に構築された会場でオンライン開催された(以下画像参照)。新型コロナウイルスの感染拡大を受けての対応だが、プログラムはオフラインと引けを取らない熱量と緊張感のもと進行され、各応募企業の事業アイデアが形作られていった。


応募企業は、東北電力グループ社員とのディスカッションやメンターからのフィードバックを受け、プレゼン準備を完了。全てのチームが2日間のプログラムを完走し、いよいよ最終プレゼンに挑むこととなった。最終プレゼンにおける各応募企業の事業アイデアは以下の通りだ。

【募集テーマ①:20~30代向けの暮らし便利サービス】

■A社:新しい雇用の仕組みを活用した、東北エリアの産業成長サービス

A社の事業アイデアは、東北・新潟地域における働き手不足などの社会課題を解決する、新たな「働く・雇う」の仕組みを提案するもの。独自のプラットフォームサービスを通じて、働き手には再び社会で活躍する機会の提供やキャリア形成、雇用主にはフレキシブルな雇用による働き手不足の解消などの価値提供を行う。

■B社:子育ても!暮らしも、仕事も!シェア(共助)するスマート社会へ

B社の事業アイデアは、20~30代の子育て世代が暮らしやすい地域を共創するためのICTプラットフォームの実装。東北・新潟地域における東北電力グループの顧客基盤や認知度を生かし、子育て世代がゆるやかにつながり、交流する「共助コミュニティプラットフォーム」を創出して、ユーザーのQOL向上などの価値提供を図る。

■C社:若者の“ちょっといい暮らし”をサポートする 住まいとクルマの新しいサブスク型サービスの創出

C社は、東北・新潟地域の暮らしに欠かせない「住まい」と「クルマ」について、初期費用を抑えてトータルコストを平準化したサブスク型サービスを提案する。デジタルマーケティングの活用や不動産会社との連携を通じて、20~30代にアプローチし、サービス提供を行う。

【募集テーマ②:行動変容による予防医療・健康促進】

■D社:薬剤師によるオンラインカウンセリングを活用した適切なセルフメディケーションの推進

D社は、女性向けの予防医療・健康維持サービスを提案。オンライン上で体質診断、個別レポートの作成、体質に合わせたサプリや食養生の提案、薬剤師によるオンラインカウンセリングなどを実施できるアプリを展開し、女性特有の健康不安の解消を目指す。

■E社:人々の「歩く」が社会を変える / 健康増進・環境対策・経済振興

E社の事業アイデアは、独自のヘルスケアアプリを活用した健康増進・医療費削減の取り組み。ゲーム感覚で運動ができるヘルスケアアプリの提供・拡販を通じて、東北・新潟地域の住民に行動変容を促し、地域全体での健康増進・医療費削減を図る。

【募集テーマ③:持続可能な農業】

■F社:農産物のAI品質評価「おいしさの見える化」を活用した農業DX

F社は、独自のAI技術を活用した「野菜の品質評価アプリ」を提案する。「おいしい野菜を選んで購入したい」といったニーズを持つユーザーに対してサービスを提供し、野菜の消費拡大を促す。さらには、本サービスの普及により、農家の方の農作物の価値向上にも貢献し、農業の持続可能性を高めていく。

熱気に満ちた最終プレゼンが終了。12月の最終審査会に向け、採択企業3社との共創はさらに加速

【審査員】

■東北電力株式会社 取締役副社長 副社長執行役員/東北電力フロンティア株式会社 取締役社長 岡信 愼一氏

■東北電力株式会社 上席執行役員/東北電力フロンティア株式会社 取締役副社長 新田 盛久氏

■東北電力株式会社 執行役員 事業創出部門長 小山 光雄氏

■グローバル・ブレイン株式会社 General Partner 熊倉 次郎氏

■グローバル・ブレイン株式会社 Director 岩田 紘宜氏

■eiicon company 代表/founder 中村 亜由子氏


6社による熱気あふれる最終プレゼンを終え、審査を担当したグローバル・ブレインの熊倉氏は「点数をつけるのが心苦しい」とコメント。さらに、2日間のプログラムで、応募企業や東北電力グループの共創にかける熱い姿勢や想いに感銘を受けたとの総評を述べた。

「多くの大企業がオープンイノベーションにのぞむ昨今ですが、これだけ正直な言葉や同じ目線で、大企業とスタートアップ企業が語り合うプログラムは珍しいのではないでしょうか。率直に素晴らしいプログラムだと感じました」(グローバル・ブレイン 熊倉氏)


また、eiicon・中村も同様に、応募企業や東北電力グループの熱量を評価。「この2日間のプログラムがオープンイノベーションの真髄であると思ってほしい」と語り、応募企業に次のようなメッセージを送った。

「双方が真摯に向き合ったうえで、どんな課題を解決するのかといったゴールを共に見据える。それがオープンイノベーションのあるべき姿であり、そうした取り組みこそが真のイノベーションを起こしていくのだと思います」(eiicon 中村氏)


最後に、東北電力・岡信氏が最終プレゼンを締めくくる挨拶を行った。岡信氏は、「イノベーションを目指す、熱い姿勢を皆様から教えていただいたと思います」と応募企業に感謝の念を述べ、今後もオープンイノベーションの推進による価値創出にのぞむと宣言した。

「『BUSINESS BUILD DAYS』の開催を通じて、改めて『イノベーションは東北電力グループだけでは創出できない』と実感しました。今回、参加していただいたスタートアップ企業の皆様とのパートナー関係を強化していくことで、成長性のある新規事業を創出できるのだと思います。皆様には、昨日、今日と貴重な時間を割いてこのイベントに参加していただいたことに、心から感謝を申し上げます」(東北電力 岡信氏)


取材後記

今回の「BUSINESS BUILD DAYS」の最終プレゼンで採択された応募企業3社は、12月の最終審査会に向けたインキュベーション・PoCに進む。

さらに、最終審査会を通過した場合は、事業化に向けた取り組みが進められる方針だ。

特に、本年4月に、スマート社会実現を推進するために設立された「東北電力フロンティア株式会社」では、11月1日からの事業開始に向け、8月20日から、でんきとNetflixを組み合わせた日本で初めてのバンドルサービスの先行エントリー受付を開始するなど、具体的な動きも出てきており、今回のプログラムを通じた成果も、早期に事業化し、サービス提供していきたいとの考えだ。

コロナ禍により、いまだ先行きの見えない情勢が続くなか、東北電力グループのオープンイノベーションは着実に形作られ、確かな成果を産み出そうとしている。「BUSINESS BUILD DAYS」は、そう確信させるには十分なプログラムとなった。TOMORUBAでは、今後も「TOHOKU EPCO BUSINESS BUILD」の行方を見届け、東北発のスマート社会実現の取り組みに注目していく予定だ。

(編集:眞田幸剛、取材・文:島袋龍太)

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  • 田上 知美

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