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【連載/4コマ漫画コラム(65)】 歴史に学ぶイノベーション成功法

【連載/4コマ漫画コラム(65)】 歴史に学ぶイノベーション成功法

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イノベーターと言えば

いつもお世話になっている編集のSさんからいただいた今回のお題は、

「ダ・ヴィンチ、ライト兄弟、エジソン、盛田昭夫、松下幸之助、本田宗一郎、ジョブズなどなど…、歴史に残る数々のイノベーターや実業家がいますが、その中でも瀬川さんが思い入れのあるイノベーターやその逸話から新規事業やイノベーションを成功させるポイントを解説いただきたいと思います。」

……ということだったので、考えてみました。

挙げていただいた人々もすごいイノベーターたちですが、3分ほど悩んで(早?)、「そうだ、やっぱり坂本龍馬だな」と思ったので、今回のお話しは「イノベーター・坂本龍馬」です。

「イノベーションの定義」は色々言われていて多岐に渡り、「イノベーター」もそれによって変わってきますが、単に技術的な革新ではなく、「新たな『当たり前』(が普及した世界)を創りだすこと」だとすると、坂本龍馬をイノベーターと呼んでいいと思います。

例えば現在では当たり前の「中国で生産する」ということは、1980年代では考えにくいことでした。品質課題だけでなく、「そんな遠い国で製造したら輸送費の元が取れないだろ」と思われているものでした。一点突破の技術革新ではなく、こういうのもイノベーションの一例だと思います。

坂本龍馬はイノベーターに必須ないくつものことを実践してきました。以下、坂本龍馬のイノベーターとしてのエッセンスを挙げてみましょう。

1.自分一代では成し遂げられないものが「志」

イノベーターに必要なものは「志」です。

昔、田坂広志氏から聞いてとても気に入っている言葉に「志と野心は違う。志は自分一代では決して成し遂げられないもの。野心は自分のためだけに達成しようとするもの」というのがありました。

志はよく「北極星」に喩えられます。方向は動かないけれど、決して到達できないもの。坂本龍馬は志をしっかり持って、それに向かって生き、道半ばでこの世を去りました。

2.人から素直に吸収し、自分の考えを構築する

しかし、坂本龍馬でも最初から確固たる「志」があった訳ではありません。また、志にどう向かっていけばいいのかの「方法や戦略」を最初から明確に持っていた訳でもありません。

とにかく人の話を聞く。「この人はスゴイ」と思った人に取り憑くように付きまとって話を聞き、理解しようとする。でも、感化されても染まらない。色々な人の話や考えを自分で咀嚼して再構築して自分の考えに昇華していく。

船中八策も元は色々な人のアイデアが集約されたものですが、坂本龍馬がスッキリとまとめたすごいモノです。

3.すぐに会いに行く、諦めずにつなぐ

話をしにあちこち遠いところにもすぐに行く。その多くは交渉。どう考えても無理に見える事も「とにかく話して何とかする」。話をする前にグタグタ考えすぎたり、「どうせ話してもダメだ」なんて考えない。超仲が悪い人たちもつないでしまう。

説得・交渉力はイノベーターの必須要件の一つでしょう。

4.当たり前のやり方を越える

何度も行き詰るけれど、その都度、周りの人間が思いもしなかった「方法」で乗り越える。脱藩もそうだし、船の沈没事故の交渉で持ち出した「万国公法」も「当たり前」を越えている。

5.ファンと敵

新しい仕掛けをするイノベーターには、熱烈なファンと共に(旧体制を守ろうとする)敵も多い。ファンはもちろん「素晴らしい考えや活動」でも生まれるけれど、一番は人柄だろう。一方、敵となる旧体制の人達には決して取り込まれない。そこは超頑固。

6.今は多分必要がないけど

敵が多いこともあり、自分の命や仲間を守るためにイノベーターは武術に長けている方がいい。坂本龍馬は北辰一刀流の免許皆伝。まあ、現代においては精神や体を鍛えることでイノベーターとしての強さを増す、ということで武術は多少役に立つくらいかもしれないけれど(私は皆無……)

7.人の命を大事にする

イノベーターに必要な項目というよりは人間の魅力につながることかもしれないけれど、剣術の達人であるにも関わらず、殆ど人を切らないで難局も乗り越えてきた。

龍馬の親戚の沢辺琢磨が窃盗の責任で切腹を迫られた時も「そんなことで死ぬな」と逃がす。「龍馬は戦争が嫌い。薩長同盟、大政奉還、船中八策も目指したのは平和」とも言われている。「そんなの無理じゃない?」と思われてもなんとかしようというのは、現在のSDG’sにも通じる。

もちろん、時代が時代だけに実際には寺田屋事件で鉄砲で捕り方を射殺しているし、武器も運んでいるし、長州征伐にも参戦しているので、単純に平和主義とは言えないけれど。

8.権力の座より金儲け

明治維新の体制案「新政府綱領八策」に龍馬自身の名前がなく、問われた龍馬が「わしは世界の海援隊でもやりますか」と言って笑っていたという逸話が有名ですが、「海援隊≒ビジネス」と捉えると、「イノベーションとインベンション(発明)の違い」でも紹介したように、「イノベーションはアイデアをお金に変えること」なので、納得がいきます。

「権力志向」ではなく「金儲け志向」はイノベーターの根本だとも言えます。

9.必要なのかなあ……必要なのだろうなあ

龍馬はとにかく女性にモテる。これはもしかしたらイノベーターの真髄なのかもしれない(理由は明確に言えないけれど直感的に)。私には決してマネできないけれど。

坂本龍馬については、「でっち上げの逸話が多い」「陰謀論」など色々なことを言われていますが、それは本稿ではあまり関係はなく、私たちが知っている坂本龍馬はとてもイノベーターだった、ということです(ので細かいことは気にせずに。それもイノベーターのポイント)



■漫画・コラム/瀬川 秀樹

32年半リコーで勤めた後、新規事業のコンサルティングや若手育成などを行うCreable(クリエイブル)を設立。新エネルギーや技術開発を推進する国立研究開発法人「NEDO」などでメンターやゲストスピーカーを務めるなど、オープンイノベーションの先駆的存在として知られる。

▼これまでの4コマ漫画コラムがアーカイブされている特設ページも公開中!過去のコラムはこちらをご覧ください。

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