大企業による「オープンイノベーション拠点」が続々誕生ーー12の事例を紹介
米国発のシェアオフィス・WeWorkが日本国内にも複数拠点を構え、大企業やスタートアップなども多く入居している。シェアオフィスが企業同士の「出会い場」としても機能しており、そこからオープンイノベーションや新規事業の芽が生まれてくることも少なくない。
――このようにシェアオフィスの利用が活気を見せている一方で、大企業が自社内にオープンイノベーション拠点を新設するケースも増えてきた。例えば、研究所内にオープンスペースを設け、パートナー企業や生活者との交流を図るという拠点もある。
そこには、オープンイノベーション拠点を軸にしてスタートアップエコシステムを作ろうという狙いや、一般消費者が感じる課題を直接ヒアリングできる場としても機能させたいという狙いもうかがえる。
では実際に、どのような企業がオープンイノベーション拠点を新設しているのか?12の事例を紹介していく。
アクセンチュア「アクセンチュア・イノベーション・ハブ東京」
2018年1月、アクセンチュアは「アクセンチュア・イノベーション・ハブ東京」を開設した。同社が展開する機能のうち「イノベーション・センター」、「ベンチャー」、「ラボ」、「スタジオ」の4つを結集させた同施設。各分野の専門家と設備が集結し、お客さまが必要とするソリューションに最適な機能とそのタレントを即座に組み合わせ、構想から実現までをお客さまと一緒に進めるための拠点となっている。
デザインシンキングからプロトタイプ化、テスト、本番化までのステップが全てこの拠点で完結することにより、圧倒的なスピードで戦略やサービスの市場投入が可能となるという。
※関連記事:【イベントレポート】アクセンチュアがイノベーション創出を加速する「アクセンチュア・イノベーション・ハブ東京」を開設
資生堂「資生堂グローバルイノベーションセンター」
2018年10月31日に横浜・みなとみらい21地区に竣工し、同年12月中旬から順次研究活動を始めた「資生堂グローバルイノベーションセンター(以下GIC)」。2019年4月には、お客さまが利用できる美の複合体験施設を1階と2階にオープンし、本格稼働した。
GICは、お客さま、国内外の最先端研究機関、異業種など多様な知と人の融合によって、これまでにない価値を生み出すための拠点。「都市型オープンラボ」として国内外の最先端研究機関や異業種などから集約した多様な知見、情報、技術を融合させて最適な価値をつくることで、国や業界を超えたイノベーションを実現していくという。
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日立製作所「協創の森」
日立製作所は、SDGsやSociety5.0 の実現に向け、オープンな協創による新たなイノベーション創生を加速するための研究開発拠点として、東京都国分寺市にある中央研究所内に「協創の森」を開設した。
「協創の森」では、世界中からお客さまやパートナーを招き、社会課題の解決に向けたビジョンを共有するとともに、アイデアソンやハッカソンなどを開催して新たな事業機会を探索する。また、日立が長年にわたり蓄積してきたIT、OT(Operational Technology)、プロダクトの知見やコア技術、顧客協創方法論「NEXPERIENCE」、Lumada IoT プラットフォームを活用しながら、アイデア創出、ラピッドプロトタイピング、実証のサイクルをスピーディに繰り返すことで、事業シナリオを構築し、グローバルにイノベーション創生を加速していくという。
※関連記事:日立、オープンな協創によりイノベーションを生み出す研究開発拠点「協創の森」を開設
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京セラ「京セラ(中国)イノベーションセンター」
京セラは、中国の主要販売会社である「京セラ(中国)商貿有限公司」が中国広東省深セン市竜崗(りゅうこう)地区に、「京セラ(中国)イノベーションセンター」を開設し、2019年4月17日より運営を開始した。 なお、中国において、オープンイノベーションの拠点を開設するのは、京セラ(中国)商貿有限公司として初めてとなる。
現在、同社グループは、上海、天津、東莞、珠海などに生産拠点を有し、主にセラミック部品、電子部品、半導体部品、自動車部品、機械工具など、中国において幅広いビジネスを展開している。
政府、グローバル企業、教育機関、投資機関が集結する深セン市竜崗地区に京セラ(中国)イノベーションセンターを開設することで、同地区の利点を最大限活用していく。京セラ(中国)イノベーションセンター内には、最新の製品・技術を紹介する展示室のほか、オープン・クローズドに対応した技術交流スペースを設置し、情報発信の強化とオープンイノベーションの推進を図る。
※関連記事:京セラ、深センにオープンイノベーション拠点を設置
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シスコシステムズ「シスコイノベーションハブ」
シスコシステムズは、2019年4月18日、宇宙ベンチャーや異業種企業との交流でオープンイノベーションを加速し、製品、ソリューション、サービス開発を早いサイクルで実現させることを目的としたシスコイノベーションハブを開設した。
同施設は国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)やSpace BD株式会社など宇宙ベンチャー企業のオフィスも入居する宇宙ビジネス拠点X-NIHONBASHI(クロスニホンバシ)内に開設し、異業種企業との協業を積極化し、新たな発想、知識、技術とのコラボレーションの可能性を探る。
※関連記事:シスコ、宇宙ベンチャー企業などとオープンイノベーションを目指す拠点を日本橋に開設
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IHI「IHIグループ横浜ラボ」
IHIは、2019年5月14日、同社の主要生産拠点ならびに技術開発拠点である横浜事業所(神奈川県横浜市磯子区)において「IHIグループ横浜ラボ」を開所した。
同社グループの技術開発の中核組織である技術開発本部は、社会や利用者のニーズに即した問題解決力のさらなる向上のため、研究者同士あるいは利用者との相互のつながりや、それぞれの自由な創造力を発揮する環境を整備することで技術開発力を強化し、利用者の課題解決や新たな事業の創出を迅速かつ効率的に行う横浜ラボを建設した。
5階建てとなる横浜ラボの2階には、利用者が抱える課題解決のためのフロアとして、課題やソリューションについて議論する「共創エリア」、着想をその場で設計・試作し、検証する「ガレージ」、さらに事業部門や利用者と共同で執務し、事業化の検証や開発を行う「プロジェクトブース」などを設置する。
さまざまなノウハウを持つ利用者が自由に交流を深めて新しい発想を生み出し、アイデアを具現化することで、オープンイノベーションを推進するという。
※関連記事:IHI、オープンイノベーション推進と実験機能の一体化した「IHIグループ横浜ラボ」を開所
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ロート製薬「BÉLAIR LAB(ベレアラボ)」
ロート製薬は、東京都港区に「嗅覚コミュニケーション」をテーマとしたオープンイノベーションラボ「BÉLAIR LAB(ベレアラボ)」を開設した。
同施設は、これまで単なる感覚として語られてきた「香り」を、人間の感性という視点から科学的に検証し、香りの体験を創るメカニズムを製品開発や生産性向上に活かしていくオープンイノベーションラボだ。企業の目的に合わせた香りの開発、香りによるソリューションの提案、香りの感性評価や香りの体験を可視化する科学的検証、香りを用いたサービスや商品をワンストップで提供していく。
※関連記事:ロート製薬、感性デザインから生まれた「嗅覚コミュニケーションラボ」を開設、第一弾はドラッグストア トモズとの共創プロジェクト
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JAグループ「AgVenture Lab(アグベンチャーラボ)」
JAグループは、新たな事業を創造するオープンイノベーションを実現する拠点として、イノベーションラボ「AgVenture Lab」(アグベンチャーラボ)を開設した。
同ラボは、「次世代に残る農業を育て、地域のくらしに寄り添い、場所や人をつなぐ」をコンセプトにしている。スタートアップ企業やパートナー企業、大学、行政等と協創し、様々な知見やテクノロジーを活用しながら、新たな事業創出、サービス開発、社会課題の解消を目指す。
JAグループでは、ラボでの活動を通じて外部企業との連携を強化し、第一次産業や地方が抱える社会的課題の解決につながるような、新たな価値を創出すべく積極的に挑戦していくという。
※関連記事:JAグループが大手町に「アグリベンチャーラボ」を開設、オープンイノベーションを実現する拠点として活用
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富士通ゼネラル「イノベーション&コミュニケーションセンター」
富士通ゼネラルは、社内の部門間シナジーと社外とのオープンイノベーションを推進し、革新的なモノづくりを通じて新たな価値を創出する開発拠点「イノベーション&コミュニケーションセンター(Innovation & Communication Center :ICC)」を川崎本社敷地内に建設した。2019年6月12日に竣工し、7月より業務を開始している。
同社グループの技術開発において、新たなコア拠点となる「ICC」は、部門間のシナジーを促進するため、異なる部署の従業員同士のコミュニケーションを誘発させる「センターコート」や、発想力を高める「ワイガヤキャンパス」を設けている。
また、自社開発のエアコンを軸として、チラーやエアハンドリングユニットなど、同社にない製品群との組み合わせによる業務用空調システムの研究・検討のための専用スペースや、外部と共同してアイデア検討や試作を行える実験場「アライアンスラボ」を設け、社内外の技術や知識を融合させるオープンイノベーションを推進する。
※関連記事:富士通ゼネラル | オープンイノベーションを推進する開発拠点「ICC」を川崎本社に新設
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東京建物「TOKYO FOOD LAB」
東京建物は、世界最先端の植物工場で国内外から注目を集めるスタートアップ・プランテックスおよび料理人支援やレストランプロデュースをはじめとした食文化産業の領域においてユニークな取組みを行うケイオスと連携し、「食」に関わる社会課題解決のための実証実験・社会実装の場として、「TOKYO FOOD LAB(トーキョーフードラボ)」を東京・京橋に開設した。
※関連記事:東京建物が各社と連携し、食の社会課題解決に挑む「TOKYO FOOD LAB」を開設
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カインズ「CAINZ INNOVATION HUB」
カインズは、2020年1月、IT小売企業への変革を加速させる新たなビジネスを開発する拠点として、東京・表参道に「CAINZ INNOVATION HUB(カインズ イノベーションハブ)」を開設した。
「CAINZ INNOVATION HUB」は、エンジニアやデザイナーが自由でオープンな環境の中で、デジタル変革を促し、多種多様な人や情報が集まるハブとしての役割を担うデジタル拠点となる。また、デジタルツールの開発という役割にとどまらず、「IT小売企業」としての情報発信を行う場に進化させていく予定だという。
※関連記事:ホームセンターのカインズ | 新たなデジタル拠点「CAINZ INNOVATION HUB」を、東京・表参道に開設
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JSR
JSRは、川崎市殿町の国際戦略拠点であるキング スカイフロントに2021年の開所を目指し、新たに研究所を着工したことを発表した。
新研究所は、未来に向けた価値の創出に取り組み、JSRグループのライフサイエンス技術の集約に加え、オープンイノベーション促進を目的に設置。また、今後本格化するデジタル変革に向け、新研究所をインフォマティクスの拠点として強化していく計画。加えて、首都圏に位置し、羽田空港に対面するキング スカイフロントは世界へ向けての発信基地として最適な立地という。
※関連記事:JSR | オープンイノベーション促進を目的とした新研究所を着工、2021年川崎市殿町に開所
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(eiicon編集部)