オープンイノベーション拠点が続々!鎌倉が観光から共創の町へアップデート
地方でのオープンイノベーション事例を紹介する連載「CLOSE UP OI」。今回は神奈川県鎌倉市にフォーカスします。
渋谷や新宿からのアクセスも良く、観光スポットや別荘地帯として有名な鎌倉市ですが、近年では企業の進出・誘致も進んでいます。
また、欧州を中心に広がっている「リビングラボ」という地域活動を本格的に取り入れた「鎌倉リビングラボ」を鎌倉市が主導して実践しています。
歴史ある観光の街にどのようなオープンイノベーションの風が吹いているのでしょうか。鎌倉市が選ばれる理由に迫っていきます。
鎌倉にオープンイノベーションの基礎を築くカヤック
サイコロで給与を決める制度など、ユニークな取り組みが度々話題になるWeb制作会社の面白法人カヤックは、鎌倉に拠点に置いている企業として有名です。
Web制作会社としての実績もさることながら、拠点を鎌倉に移した2002年からカヤックは地域に根ざしてオープンイノベーションを推進しています。
ビジネス創出拠点「HATSU鎌倉」
カヤックは、2019年11月26日にオープンする起業支援拠点「HATSU鎌倉(ハツ・かまくら)」に運営者として参画しています。
HATSU鎌倉は「鎌倉発」「神奈川発」を作り出すビジネス創出の拠点として神奈川県が推進する支援プログラムです。
テレワーク機能を持たせることで、海外の有力企業の日本拠点を誘致したり、鎌倉地域をテストフィールドとして地域と連携しながら事業創出するプログラムを用意する予定です。
関連ページ:HATSU鎌倉
「鎌倉資本主義」で地方創生に注力するカヤック
カヤックは鎌倉の地方創生に注力しており、「鎌倉資本主義」を提唱しています。鎌倉資本主義とは、数字だけを追いかける戦略ではなく、目に見えない価値を地域資本と捉えて資本主義のメカニズムに組み込むという考え方です。
取り組みの一環として、カヤックでは鎌倉地域のライフスタイルにかかわる事業を「まちの○○」シリーズとして、多数のサービスを展開しています。
例えば、地域の活性化に貢献したユーザーにポイントを付与する「まちのコイン」や、鎌倉地域の企業や団体が合同で作った食堂「まちの社員食堂」などがあります。
カヤックは本社の所在地を「まち全体が、ぼくらのオフィスです」と表現していますが、その言葉通り、鎌倉地域全体に新しい豊かさの指標を定義しようとしています。
関連記事:【イベントレポート】熱意ある地方創生ベンチャー連合・スタートアップ都市推進協議会主催! 地方創生ベンチャーサミット2018
関連ページ:神奈川県の「SDGsつながりポイント」にカヤックの「まちのコイン」を活用 11月中旬に鎌倉で試行
関連ページ:まちの社員食堂公式ページ
産官学民で運営する「鎌倉リビングラボ」
リビングラボという概念は前述したとおり、欧州を中心に約400箇所で取り入れられている社会活動です。サービスやものづくりを推進する際に、住民が主体となってアイデアを出し合う活動を指します。
鎌倉市では、鎌倉市役所、東京⼤学、地域住民とイトーキなどの企業が協働して「鎌倉リビングラボ」を推進しています。
具体的な活動内容は、今泉台町内会を中心として商品のユーザーインタビューを実施し、フィードバックを得ることで商品作りに活用していきます。
関連ページ:鎌倉リビングラボの取組について
藤沢市と鎌倉市にヘルスケアのオープンイノベーション拠点
神奈川県では、超高齢社会の到来に備えた「ヘルスケア・ニューフロンティア政策」を推進しています。誰もが健康で長生きできる社会を目指す取り組みです。
その政策の目玉として、ヘルスケア領域でのオープンイノベーション最先端拠点を藤沢市と鎌倉市に形成することが神奈川県の黒岩知事から発表されています。
主に「未病の改善」と「最先端医療・最新技術の追求」という2つの課題解決から、健康寿命の延伸を実現し、新たな市場・産業の創出につなげるアプローチです。
神奈川県には川崎市殿町にヘルスケアのオープンイノベーション拠点として再生・細胞医療の研究施設があり、成功事例となっているため、鎌倉市にも「第二の殿町」を形成する狙いがあります。
関連ページ:ヘルスケア・ニューフロンティア政策とは
【編集後記】さらに深い関係人口を
地域に関わる人を表す「関係人口」が地方創生のキーワードとなっています。鎌倉市は言わずもがな、都心からのアクセスも良く海外からの観光客も多いため、関係人口は多い地域だと言えます。
今回紹介した様々な取り組みは、関係人口を“増やす”というよりもさらに“深く”鎌倉市に関わってもらおうとするもののようです。地域資源の豊富な鎌倉市だけに、地方創生の成功事例を量産してくれそうですね。
地方のオープンイノベーションを紹介している「CLOSE UP OI」次回ご紹介するのは、神戸市です。国際的な雰囲気が特徴の神戸市ですが、役場の改革によってオープンイノベーションが加速しているようです。その政策に迫っていきます。
(eiicon編集部 久野太一)