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柏市の理路整然とした戦略ビジョンに基づくオープンイノベーション活用とは

柏市の理路整然とした戦略ビジョンに基づくオープンイノベーション活用とは

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自治体がオープンイノベーションを推進する上で気をつけたいことの代表として「目的と手段」の話があります。オープンイノベーションは手段のひとつにすぎませんが、時折「オープンイノベーションを推進すれば地域の産業が盛り上がるはず!」といったように目的と手段の取り違えが起きてしまうケースが散見されます。

千葉県の柏市では、2019年度より「柏市産業振興戦略ビジョン」としてオープンイノベーション戦略が展開されていますがその内容は理路整然としており、まさに目的を達成するための手段としてオープンイノベーションを的確に取り入れている好例と言えます。

今回の「CLOSEUP OI」では、そんな柏市が実践するオープンイノベーションについて紹介します。

柏市は現役世代が多く、バランスの良い産業分布

柏市を客観的なデータで見てみると、様々な特徴が見えてきます。まず、年齢階級別人口を見ると、40代の比率が突出し、それに付随して30代・50代も多くなっています。つまり、全国の年齢別人口と比べて、働き盛りの世代が集中していることがわかります。柏市は人口が40万人を超える規模で市内の産業も活発ですし、加えて都心へのアクセスも良いためベッドタウンとしても人気のエリアです。 

出典:柏市産業振興戦略ビジョン

就業者ベースの産業の分布を見てみると、二次産業が18%、三次産業が75%となっています。一次産業は1%ほどで少ないですが、都市型農業として成功しておりかぶの生産量は日本一です。全体的に都市型の産業分布としてはバランスよく盛り上がっていると言えます。

出典:柏市産業振興戦略ビジョン

課題を明確にして策定された「柏市産業振興戦略ビジョン」

出典:柏市産業振興戦略ビジョン

柏市の産業振興関連の政策として基礎となっているのが、2015年度に策定された「柏市第五次総合計画」「柏市地方創生総合戦略」のふたつです。この計画を達成するために2019年度に打ち立てられたのが、「柏市産業振興戦略ビジョン」となります。

柏市産業振興戦略ビジョンには、柏市産業の課題として、商業、製造業、農業、観光の課題をそれぞれ洗い出されていて、それらを解決するための基本理念として【中小部材メーカーの集積】【多様な観光資源】【商業施設の集積と都市型農業地】の3要素をかけ合わせを標榜しています。

その結果導き出された戦略ビジョンの目標は以下の3つです。

●先端産業の集積が促進されており、イノベーションによる新たな価値の創造がなされている

●既存の産業や地域資源を活用し、産業力が強化されている

●地域の産業を支える基盤づくりが推進されている

さらに「柏市産業振興戦略ビジョン」の素晴らしい点として、戦略ビジョンに対する目標と、それを達成するための戦略、施策、事業が具体的に落とし込まれています。課題を明示し、実際の実施事業までをしっかりと提示されている、ここまで理路整然とした自治体の戦略資料はあまり見かけません。

戦略のキモとなる「イノベーションフィールド柏の葉」

柏市が柏市産業振興戦略ビジョンの実現に向けてキモの施策に据えているのが「イノベーションフィールド柏の葉」の運営です。

運営母体は柏市と三井不動産となっており、施設名のとおりイノベーションのための実証フィールドとして柏市を最大限活用するための施設となっています。柏市が実証フィールドとして持つ特徴は様々あります。

●街のあらゆる機能がコンパクトにまとまっている

●実績のある「公・民・学」の連携体制

●新産業創造の拠点「柏の葉オープンイノベーションラボKOIL」

●AI/IoT活用のための通信環境が構築済み

ここで共創の拠点として挙げられている「柏の葉オープンイノベーションラボKOIL」とはどんな施設なのでしょうか。詳しく見ていきます。

関連ページ:Innovation Field KASHIWA-NO-HA | 「イノベーションフィールド柏の葉」

日本最大級のコワーキングスペース「柏の葉オープンイノベーションラボKOIL」

三井不動産グループの運営するベンチャー共創事業である「31VENTURES」のひとつとして、柏市に拠点を構えるのが「柏の葉オープンイノベーションラボKOIL」です。

100名規模の個室オフィスを備えた日本最大級のコワーキングスペースとして様々な起業家やクリエイター、学生などが集まっています。

コワーキングスペースとして打ち出されていますが、実際には「コミュニティ」「支援」「資金」をコアに、入居者を総合的に支えるインキュベーション施設に近いかもしれません。

入居者や入居企業はKOILのコミュニティマネージャー経由で課題やニーズを相談すると、支援パートナーを紹介してもらえます。マッチングが成立したら共創の支援を継続的にしてもらえる支援フローが整備されています。

31VENTURESのプレスリリースを見ると一目瞭然ですが、月に数件のペースで入居企業への出資を実施しています。出資が続々と決まっている実績から、インキュベーション施設としてしっかりと機能していることが伺えます。

関連ページ:Innovation Field KASHIWA-NO-HA | 「イノベーションフィールド柏の葉」

関連ページ:31VENTURES – 三井不動産

【編集後記】郊外型と都市型の戦略ビジョンの違い

自治体のオープンイノベーションは郊外型では地域が持つ強みに特化するケースが多いですが、柏市は都市型ならではの戦略として、産業のカテゴリを絞らずに間口を広く構えています。同じ都市型の自治体でオープンイノベーションを推進している横浜市も、オールジャンルのベンチャー企業成長支援事業の拠点「YOXO BOX(よくぞ ボックス)」を展開しています。

前述したとおり、柏市は産業振興の戦略ビジョンを理路整然と資料に落とし込んでいます。このような納得感のある資料を公開することで、優秀な事業者が集まってくる効果が期待できそうです。

関連記事:地方都市におけるオープンイノベーションの雛形、横浜市の多様なビジネス支援の切り口|eiiconlab 事業を活性化するメディア

(eiicon編集部 久野太一)

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全国の自治体が官民で取り組んでいるオープンイノベーションに迫るシリーズ企画。