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1人ひとりが、駅から始められる “SDGs” ―JR東日本「STARTUP STATION in 品川駅」

1人ひとりが、駅から始められる “SDGs” ―JR東日本「STARTUP STATION in 品川駅」

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2月17日(月)~23日(日)までの7日間、JR品川駅構内で、「STARTUP STATION in 品川駅」と題したイベントが開催された。本イベントは、JR東日本スタートアップ株式会社がスタートアップとの共創で新たなビジネスの創出に挑む「JR東日本スタートアッププログラム」の一環。昨年12月にはJR大宮駅でも「STARTUP STATION」が開催され、スタートアップによる「無人ロボットカフェ」や「瞬間凍結技術」などが披露された。

今回の「STARTUP STATION」は、JR品川駅で実施され、【SDGs(持続可能な開発目標)】に焦点を当てたイベントとなった。「不要な古着を、新しいTシャツへ」「いらないおもちゃを、ピカピカのおもちゃへ」――来場者が楽しくリサイクルを体験できる場として設計されたイベントには、小さな子どもたちも目を光らせて集まり、駅でのリサイクルを体験する様子が見られた。

あらゆる企業が「持続可能性」や「環境」への配慮を求められる時代。JR東日本グループは、スタートアップと共にこの問題にどう取り組んでいくのか?持続可能な社会の実現に向けて、駅はどう機能しうるのか?本記事では、イベントの様子をレポートするとともに、スタートアップ各社、およびJR東日本グループの本事業にかける想いについても紹介する。

※関連記事:スタートアップとの共創で生まれた“未来の駅”がJR大宮駅に出現!―JR東日本「STARTUP STATION」

「SDGs」と深く関わる、2つの展示

今回、品川駅構内に設けられたイベントスペース「STARTUP_STATION in 品川駅」に出展したのは、「JR東日本スタートアッププログラム2019」で採択された21社のうちの2社、「日本環境設計株式会社」「株式会社ヘラルボニー」だ。いずれも「SDGs」と深い関わりを持つ事業を展開している。展示の内容は以下の通り。

【1】 日本環境設計株式会社×株式会社ヘラルボニー (ケミカルリサイクルによってつくられた福祉アート「SDGs Tシャツ」限定オリジナルプリント販売)

【2】 日本環境設計株式会社 (サステナブルnanoblock(R)を使った「高輪ゲートウェイ駅のジオラマ」の展示)

※協力会社:日本マクドナルド株式会社、株式会社カワダ

両方の展示に関わる日本環境設計は、「あらゆるものを循環させる」というビジョンを掲げ、ケミカルリサイクリングのサプライチェーン構築に取り組んでいる。同社は、一般消費者から回収した石油由来製品(おもちゃや衣類など)を、自社のリサイクル工場でBHETという材料へと再生。再生されたBHETをメーカーへと供給し、再びおもちゃや衣類、ペットボトルなど、さまざまなプロダクトに再生させている。独自の技術により、石油とほぼ変わらないレベルの材料を、不用品からつくることができるという。

この日本環境設計のサプライチェーンをベースとした2つの展示について、その中身を見てみよう。

環境と社会に優しい、「SDGs Tシャツ」

一つ目の展示は、日本環境設計のケミカルリサイクリング技術によって再生されたTシャツ、その名も「SDGs Tシャツ」だ。これをもとに、来場者はオリジナルデザインのTシャツが制作できる。つくり方は簡単だ。イベント会場に設けられたタッチパネルを操作して、デザインのパーツを選ぶ。選んだパーツを画面上で自由に配置し、自分だけのデザインTシャツをつくる。

デザインのパーツは大きく分けて2ジャンル用意された。ひとつはヘラルボニーの保有する知的障がいを持つアーティストによるデザイン。もうひとつは、新駅「高輪ゲートウェイ駅」に関連するデザインだ。オリジナルTシャツは1枚2500円で購入ができ、古着を持参すれば1枚2000円に割り引かれる。ヘラルボニーの提供するデザインを使用した場合は、売上の一部が障がいを持つアーティストに還元されるという。

ヘラルボニーの泉雄太氏に話を聞いた。福祉に取り組むヘラルボニーがアートにフォーカスする理由は、アートであれば作品を見て直感的に「カッコいい」と感じることができるからだという。そういった障がい者との出会いの場を、アートであればつくりやすいとの考えから、従来のような福祉的なアプローチではなく、アートを切り口とした福祉に取り組んでいるという。泉氏は、「駅はたくさんの人が往来をする場なので、人目につく回数も多い。アートを通じて、出会いの場を創出したい」と話す。

同社は、本イベントとは別で、昨年12月27日(金)から約2カ月間、JR吉祥寺駅において「ステーションミュージアム吉祥寺」を開催した。駅の一区画を、障がいのある人の描いたアート作品でラッピングする取り組みだ。地域の新聞などに取り上げられ、知名度を高めることができたという。吉祥寺駅での取り組みでは、武蔵野市にある福祉施設の協力のもと、ワークショップを開催した。そのワークショップで生まれたデザインを、今回のTシャツデザインにも活用しているという。カラフルで躍動感のある動物の絵がそれだ。

同社は、障がい者によるアートをデータ化し、それをデザイン化したハンカチやネクタイを販売してきた。今回はTシャツ、次はバッグへと商品のラインナップを増やしていく考えだという。売上の一部をアーティストに還元することで、障がい者の社会進出を支援する。寄付やボランティアを募るのではなく、障がい者の強みを活かし、事業として成立させることを目指している。

おもちゃからおもちゃへ、リサイクルを「楽しく」

2つ目の展示は、日本環境設計、日本マクドナルド、カワダの3社による「高輪ゲートウェイ駅のジオラマ」だ。注目すべきは、「おもちゃ」から「おもちゃ」を再生産する仕組み。3社が共創することによって、リサイクルで終わることなく、ビジネス化まで見据えているのだ。

というのも、「高輪ゲートウェイ駅のジオラマ」のパーツとなっているカワダ製のnanoblock(R)は、マクドナルドで回収されたハッピーセットのおもちゃをもとにつくられており、2020年の夏頃に記念グッズとして販売される予定。収益性のある事業としても確立させていきたい考えだ。

▲nanoblock(R)で作られたジオラマ。中央の白い建物が2020年3月に開業する「高輪ゲートウェイ駅」。

イベント会場には、不要なおもちゃの回収箱が用意され、来場者がリサイクルを実践・体験できる仕掛けになっている。日本環境設計の取締役会長 岩元 美智彦氏によると、大事にしているキーワードが、『正しいを楽しいに』だという。「正しいことばかりを言っても、世の中は循環型社会へと変わっていかない。なぜなら、95%以上の人たちは環境にそれほど興味がないからだ。95%以上の人たちに参加してもらうには、リサイクルを楽しんでもらう必要がある」と話す。

岩元氏曰く、ただ単に「服やおもちゃを持ってきて」と呼びかけても、そう簡単には持ってきてもらえないという。しかし、「おもちゃから、おもちゃをつくろう」と呼びかけると持ってきてもらえる。「子どもたちと一緒に、いかに楽しくリサイクルを体験するかが大事だ。楽しいリサイクル体験を、循環型社会を考えるきっかけにしたい」と岩元氏は、本企画にかける想いについて語った。

マクドナルドの店頭で「おもちゃ回収BOX」を見たことのある人も多いのではないだろうか。実は、「おもちゃ回収BOX」の中身は日本環境設計へと運ばれ、マクドナルド店内で使われる緑のトレイに活用されているという。今回はトレイではなく、「おもちゃ」から「おもちゃ」を再生した。トレイよりも難易度は高く、同社としても初めての取り組みだったという。技術が進んできたので、「よっしゃ、やったろう!」との意気込みでチャレンジしたのだという。

日本環境設計と今回初めてコラボレーションをしたカワダの担当者によると、「おもちゃも材料が問われる時代になっている」とのこと。同社としても、nanoblock(R)などに使われているプラスチックを、別の素材へと変える検討をしている段階で、環境対策は玩具業界においても重要なテーマのひとつになっているという。

▲玩具メーカー・カワダの担当者

▲今夏発売を予定している「高輪ゲートウェイ駅」のnanoblock(R)。

サステナブルな社会の実現に向けて、「駅」ができること

最後に、本イベントを主催するJR東日本スタートアップ 代表の柴田裕氏に話を聞いた。今回、「SDGs」にフォーカスした理由について、柴田氏は次のように話す。「JR東日本グループは、お客様・企業・社会の『三方よし』を目指しています。私たちにとって、社会貢献や環境対策は、非常に重要なミッションです。その中で、JR東日本スタートアップは、ベンチャーとともに目指す姿を実現していきたいと考えています」。

また、「リサイクル」に焦点を当てたことに関して、リサイクルは不要なものを回収するリサイクルスポットが必要で、人の集まる駅はリサイクルステーションになれる可能性があると説明。リサイクルと駅の相性のよさが決め手になったという。また、ヘラルボニーとのコラボレーションについて、駅は情報拠点でもあるので、情報発信の場として機能できる可能性を考えて、今回の企画に至ったという。

JR東日本スタートアップはこれまでも、株式会社TBMとの共創で、石灰石からできる再生可能な新素材「LIMEX(ライメックス)」を用いた傘のシェアリングサービスを展開したり、株式会社ファーメンステーションとともに、青森県産のリンゴの搾りかすから抽出したエタノールを商品化したりと、さまざまなチャレンジを行ってきた。本年度は株式会社コークッキングとともに、東京駅でフードロス削減に向けた取り組みにもチャレンジしている。これらも、持続可能な循環型社会を目指す取り組みの一例だ。JR東日本グループは、今後も引き続き、こうしたパートナーを増やしていく考えだという。

取材後記

社会にとって必要なことだと分かっていても、自分事化することが難しい「SDGs」。本イベントは、持続可能な社会の実現に向けて、「私たち個人にできること」を提示してくれる場だと感じた。古着を持っていき、新しいTシャツを買う。古いおもちゃを持っていき、新しいおもちゃを買う。身近にある駅が「SDGs」を実践できる場へと変わり、大多数の人たちを巻き込んでいく――。改めて、駅の持つポテンシャルの大きさに気づかされた。

(編集:眞田幸剛、取材・文:林和歌子、撮影:古林洋平)

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