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JR九州管内の駅が対象!『九州DREAM STATION』が目指す、駅をハブとした街づくりとは

JR九州管内の駅が対象!『九州DREAM STATION』が目指す、駅をハブとした街づくりとは

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九州旅客鉄道株式会社(以下、JR九州)は、「地域・企業との連携」「社会へのグッドニュースの発信」「鉄道遊休地を活用した新たな事業モデルの構築」などを通じ、地域、企業、JR九州の三者で「win-win-win」の関係を目指す共創プログラム『九州DREAM STATION』に取り組んでいる。

同プログラムは2021年9月に発足し、共にプログラムを推進する「にぎわいパートナー」を募集。2022年11月に4事業者を「にぎわいパートナー」に認定し、すでに事業化に向けて共創プロジェクトが進捗している。プログラムは第2期となる2023年度も継続され、新たに「にぎわいパートナー」が募集される運びとなった。

これを受け今回、TOMORUBAでは、第2期プログラムを担当する金澤氏と第1期プログラムを担当した亀形氏にインタビューを実施。同社の持つ課題感や『九州DREAM STATION』を通じて実現したいビジョン、提供できるアセット・リソースや第1期の共創事例などを詳しく伺った。

【左】 九州旅客鉄道株式会社 営業部企画課企画 亀形房之助氏

【右】 九州旅客鉄道株式会社 営業部企画課設備 金澤暖氏

駅は街のシンボル。にぎわいを創出することで地域が発展し、安心も醸成される

――まず『九州DREAM STATION』に取り組む目的と背景を教えてください。解決したい課題などあれば、あわせてご提示いただければと思います。

金澤氏 : 日本は人口減に陥っているので、利用者はどうしても減少傾向にあります。さらに2020年から始まった新型コロナウイルスの影響で、人流が大きく減り、お客さまが駅に滞在する時間も短くなりました。

――コロナ禍の影響を肌で感じることはあったでしょうか。

金澤氏 : はい。駅の利用者や収入といった数値を見ても明らかですし、実際に駅に足を運ぶと随分と人が少なくなったと実感しました。特に2020年のゴールデンウイークはステイホームが推奨されたこともあり、人が一切いないと言っても過言ではないほどでした。人の流れが活発化する大型連休にも関わらず、駅に誰もいないという事態を目の当たりにして、愕然としたのを覚えています。現在では通勤・通学での利用を中心に人出は戻ってきていますが、観光やレジャーなどでの利用は、まだまだ十分とは言えません。

――そうした課題があって、『九州DREAM STATION』が作られたのですね。

金澤氏 : お察しの通りです。駅は街の玄関口でありシンボルということには変わりありません。駅がにぎわうことで、地域が活性化されるのはもちろん、安心感を醸成でき、当社としても事業継続につながります。そうした特性を持つ「駅」を拠点に何かできないかと考えたのが、『九州DREAM STATION』でした。

駅徒歩0分の立地で事業を行えることが魅力!九州全域での街づくりを目指す

――『九州DREAM STATION』を通じて実現を目指しているビジョンを教えていただければと思います。貴社は2030年の長期ビジョンに「安全・安心なモビリティサービスを軸に地域の特性を活かしたまちづくりを通じて九州の持続的な発展に貢献する」を掲げています。まちづくりを推進する方針でしょうか。

金澤氏 : まちづくりは非常に重要なキーワードです。JR九州の基幹事業は鉄道ですが、経営を多角化し、不動産、流通、飲食事業などを幅広く手がけています。

駅ビルやまちづくりなどの事業を行っていることから、JR九州はまちづくりを行っている会社だと多くの方に知っていただけています。他方、まちづくりを行う企業は多くある中で、当社は駅から徒歩0分の立地で事業が行えます。当社だけが持てる特性であり、駅舎などを活用することで、独自性の高いまちづくりが可能です。

――貴社は2022年に西九州新幹線の運行を開始しました。新幹線沿線の地域は、まちづくりを行う上で、重要なエリアとなるでしょうか。

亀形氏 : 西九州新幹線は西九州地区の振興と発展を目指しており、佐賀県、長崎県の魅力ある観光ルートの構築に力を入れています。

一方で、『九州DREAM STATION』について言えば、佐賀・長崎エリアに限らず、九州全域でのまちづくりを視野に入れています。中でも私たちが思考しているのは、地方部、ローカル線の活用です。人流が減少して著しい地域に、駅を活用することでにぎわいを創出する。地域を盛り上げ元気にして、地域貢献を果たしていきたいという思いを強く持っています。

▲2022年9月に西九州新幹線が開通。JR九州では、同沿線をはじめとした地域でまちづくりを進めている。

――『九州DREAM STATION』では、広くパートナー企業を募集しています。なぜ外部のパートナー企業と力を合わせることにしたのでしょうか。

亀形氏 : まちづくりや地域活性化の取り組みを進める上で、非常に重要なのは継続性だと捉えています。新たな事業を始めたはいいが、半年で撤退してしまう事態となっては、その事業者や当社はもちろん、地元にマイナスイメージがつきかねません。

私たちは、継続性を担保する上で、鍵となるのが地元のキーパーソンだと考えています。この場合のキーパーソンとは、「地元を良くしたいと本気で思っている人たち」です。鉄道事業は公共性が高く、自治体との連携も欠かせません。その意味でも、地元のキーパーソンとタッグを組むのは重要といえます。地に対して知見があり、駅を拠点に文化や歴史・産業を発信していくのが一つの理想。そうしたことのできるパートナー企業と出会うために広く募集を呼びかけています。

――九州に限らず、全国エリアでエントリーを募るのは、どのような理由からでしょうか。

金澤氏 : キーパーソンが必ずしも九州にいるとは限らないからです。例えば、九州出身だが東京で起業した、本社は大阪にあるが事業所は九州にもあるなどのケースが考えられます。また、他の地域に住むことで、地元に対して別の視点を持つことも可能になるでしょう。幅広く声や意見を頂くために、全国の募集としました。

JR九州管内の駅が対象。鉄道会社ならではのアセットを提供

――続いて、提供可能なアセットについてご説明ください。

金澤氏 : 当社は九州エリア内に571の駅があり、現在遊休スペースとなっている駅のスペースをご提供することになります。ただ、場所によっては使用に制限が発生することもあります。まずは打ち合わせをして、要望や実現したいことをお聞かせいただきながら、どのように使用するか決めていきたいと思います。

――例えば、駅を改装するとなった場合、スペース以外で提供可能なものはあるでしょうか。

亀形氏 : 第1期の事例で言えば、鹿児島県の建築会社「株式会社IFOO」さまが「霧島神宮駅」の改修に乗り出しました。工事費用はIFOOさまにご負担いただきますが、霧島神宮駅が新しく生まれ変わることを多くの方に知っていただくために、タイアップイベントなどを行い、PRに努めています。当社には鉄道事業を行うならではのアセットがありますので適宜、活用していただければと思います。

【共創事例①】 霧島神宮駅を“不便駅”から“思い出の残る駅”に(IFOO×霧島神宮駅)

――IFOOさまは第1期で「にぎわいパートナー」に認定された企業ですね。昨年の『九州DREAM STATION』の実績をご紹介いただければと思います。

亀形氏 : 第1期では4社を「にぎわいパートナー」として認定しました。IFOOさまはその中の1社です。駅舎の内装工事などの実績があり、代表の八幡秀樹さまは鹿児島県の霧島のご出身で、地元霧島への貢献を果たしたいと強い思いを持っていました。

日豊本線の霧島神宮駅は観光地ではあるものの、電車の本数が少なく、1時間に1本程度しか停車しません。また、「霧島神宮」と駅の名前に冠していますが、徒歩で1時間20~30分かかります。言ってしまえば「不便駅」で、駅の滞在時間も長くなりがちです。

そこに目を付けたのがIFOOさまで、「駅を思い出に残る空間にする」をコンセプトに改修工事に乗り出しました。老朽化した駅のリニューアルはプログラムの狙いの一つです。九州内には老朽化した駅が多くあります。特に地方に行けば顕著で、前身の国鉄時代の名残がある駅舎も少なくありません。外観はとても立派なのですが、老朽化により維持が困難なケースも多く、対処に苦慮していました。IFOOさまのアプローチは課題解決の一つの切り口になると考えられます。

▲現在の霧島神宮駅

――プロジェクトはどのように進められているのでしょうか。

亀形氏 : 金融機関、大学、広告代理店、自治体とチームを組んで進めています。理想的な共創の事例だと捉えています。

――駅舎のリニューアルのポイントを教えてください。

亀形氏 : 木をふんだんに使うことが挙げられます。霧島は山深く、木々に囲まれた場所です。駅舎のリニューアルを通じて、霧島の歴史や文化を感じてもらう。建築物から歴史や文化を伝えるのは、IFOOさまの得意とするところです。リニューアルオープンは2024年度を目途にしていますが、その後も新たな企画などを打ち立てていく方針です。

▲霧島神宮駅のリニューアル後のイメージ

【事例②】 福祉×交通で、長与駅の駅業務やカフェ運営を就労支援の場に(ながよ光彩会×長与駅)

――その他の事例もぜひご紹介ください。

亀形氏 : 「社会福祉法人ながよ光彩会」さまの事例を取り上げます。「ながよ」と法人名にある通り、長崎県長与町を拠点に活動を展開しており、今回は「長与駅」を活用することになりました。長与町は長崎市のベッドタウンです。長与駅は駅舎の一部を自治体が管理しており、駅員は午前中のみの配置となっています。

ながよ光彩会さまは障害のある方の就労支援を行っており、そうした経験と知見を活かし、駅業務やカフェの運営に携わっていただくことになっています。車椅子をご利用のお客さまの乗降のお手伝いを行っていただく予定です。地元の方と一緒に、より良い地域・社会を創り上げる好事例だと捉えていますね。

福祉と公共交通のかけあわせは、これまであるようでなかった事例です。駅を単なる通過地点ではなく、心地よく過ごす場所にする。そうしたこともできるのではないかと考えています。

▲JR九州、ながよ光彩会に加え、自治体(長与町)も連携し、プロジェクトを進めている。

――第1期の手応えはいかがでしたか。社内外からはどのような反応があったでしょうか。

亀形氏 : 非常に多くの方に好意的に受け止めていただきました。経営陣からの期待も大きく、プログラムの継続的な実施が予定されています。

金澤氏 : プログラムを通じ、駅や地域に対し貢献したいという方が多くいることもわかりました。そのことが実感できたのも、私たちにとってとても大きなことです。

長期視点の地域活性実現に向けて、一緒に汗をかけるパートナーを募集

――第2期はパートナーとして何社を認定する予定でしょうか。また、特に応募を希望する業種・業界・ビジネスモデルモデルなどがあれば、お聞かせいただければと思います。

亀形氏 : 何社を認定するなど定まったものはありませんが、より多くの皆さまとこの取り組みを行っていければと考えております。

――認定後はどのようなスケジュールとなっているでしょうか。

亀形氏 : 長期的なスパンで捉えています。取り組む事業によっては、多くの人を巻き込み、資金を調達する必要も出てくるでしょう。長期的な視野が必要になることは理解していますので、成果を焦るつもりはありません。しっかりと組織体制を固め、継続性を持って事業を推進していければと考えています。

――最後に、応募企業に向けてのメッセージをお願いします。

金澤氏 : 地域の賑わい創出のために一緒に汗をかいていただける方からのエントリーをお待ちしています。共に同じ方向を向いて進んでいければとても嬉しく思います。ぜひ気軽にエントリーしてください。

亀形氏 : エントリーはライトな感覚で構いません。エントリーフォームも簡易なものになっています。どういう駅でどういうことをやってみたいかを書いていただければ、まずは十分です。資料の添付は任意です。可能性を感じたら、こちらからもメールなどでアプローチさせていただきます。少しでも興味を持ったら、気軽に問い合わせ・エントリーしていただければ幸いです。

金澤氏 : フローとしては選考があるので敷居が高く感じられるかもしれませんが、私たちとしては一緒に事業を作り上げていければと考えています。Webあるいは私たちのほうで事務所などに訪問させていただいて、打ち合わせをしながら事業概要を詰めていく方針です。繰り返しになりますが、ぜひ気軽にエントリーしてください。一緒に夢を語りましょう。

編集後記

2020年に始まった「コロナ禍」は3年の時を経て落ち着きを見せ始めている。これに伴い、鉄道事業も盛り上がってきている状況だ。とはいえ、完全に元に戻ったとは言い難い。また、コロナ禍以前から、鉄道会社には地方やローカル線の衰退などの問題があった。そこに一石を投じ、熱い思いと志を持つパートナーと共に解決を目指すのが、『九州DREAM STATION』だ。九州に住む方はもちろん、地元を離れていても地元を良くしたいという思いを持つ方は少なからずいるだろう。

JR九州では、気軽な問い合わせ・エントリーを呼びかけている。ぜひ『九州DREAM STATION』を一つのチャンスと捉え、積極的にエントリーしてほしい。事業を通して地域に貢献したり、活躍の場を広げたりする絶好の機会になるはずだ。

(編集・取材:眞田幸剛、文:中谷藤士)