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スタートアップとの共創で生まれた“未来の駅”がJR大宮駅に出現!―JR東日本「STARTUP STATION」

スタートアップとの共創で生まれた“未来の駅”がJR大宮駅に出現!―JR東日本「STARTUP STATION」

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駅での体験が、テクノロジーの力で変わろうとしている――。

その先駆者として業界をリードするのが「JR東日本スタートアップ株式会社」だ。ロボットやIoT、AIなど最先端のテクノロジーを矢継ぎ早に取り込み、“駅から、街から、暮らしへと広がる”体験のアップデートに力を注ぐ。

そんな同社の中核をなす取り組みが、スタートアップとの共創で新たなビジネスの創出に挑む「JR東日本スタートアッププログラム」。3回目となる今年度も、262件の提案の中から21件を採択。去る11月28日にはデモデイを開催し、JR東日本グループとベンチャー各社による共創プランを発表した。

デモデイに続いて、12月4日から期間限定で実施されたのがJR大宮駅での公開イベント「STARTUP_STATION(スタートアップ・ステーション)」だ。デモデイはあくまでプレゼンの場だったが、それをリアルな駅構内で実現し、“未来の駅”を社会に提示したのが今回のイベント。本記事では、大宮駅でお披露目された新たなビジネスプランを、イベントレポートとしてお届けする。

▲「STARTUP_STATION」は2019年12月4日〜9日、大宮駅西口で開催された。

大宮駅で、“未来の駅”を体験する

大宮駅に設けられたイベントスペース「STARTUP_STATION」には、採択21社のうちの4社が出展。イベント会場では各企業が、JR東日本グループとともに共創する新たなビジネスプランを来場者に披露した。具体的な展示内容は以下だ。

【1】株式会社QBIT Robotics (無人ロボットカフェでショートパスタを販売)

【2】株式会社ブイシンク (ウルトラ自販機でスイーツ・駅弁を販売) 

【3】ブランテックインターナショナル株式会社 (瞬間凍結実演とともに、各地の魚介類を販売)

【4】MIRAI SAKE COMPANY株式会社 (AI味覚判定、日本酒の飲み比べサービスを提供)

それでは早速、未来の駅を体験してみよう。

【1】愛くるしいロボットが接客・調理する「ロボットパスタカフェ」

最初に紹介するのは、すでに無人カフェロボットをローンチし、運営実績も持つ「株式会社QBIT Robotics」のブースだ。今回は、JR東日本グループとの共創で、無人ロボットパスタカフェを実現した。パスタへの挑戦は同社初であり、おそらく世界でも初めてとなるという。

詳しく見ていこう。まず、利用者はタッチパネルで注文し、指定の位置にカップを置く。すると、ロボットが今回新たに導入したという触覚ハンドでカップを優しく掴みあげ、ショートパスタの注ぎ口へと運ぶ。カップにパスタを入れた後は、湯口へと運びお湯を注ぐ。その後、レンジであたため、最後にパスタソースを注ぎ入れる。「熱いので気をつけて召し上がってくださいね」と声をかけながら、出来上がりを提供するという流れだ。この一連の流れを、人の手を一切介さずロボットのみで行う。

▲ディスプレイにはロボットの表情が表示され、ロボットがまるで感情を持っているかのように、ほほ笑み、話しかけてくれる。

コミュニケーションも巧みだ。上部に設置したカメラで周囲の様子を観察し、読み取った情報に合わせてロボットの会話を変えているという。また、パスタ提供後の利用者の表情を読み取り、AIで学習する仕組みも搭載している。担当者の話によると、ロボットの制御はそう大変ではなかったという。むしろ、ロボットを使っていかに美味しいパスタを仕上げるかは試行錯誤の連続で、「半徹を繰り返し、これでもかというほどパスタを食べましたよ」と笑顔で話してくれた。

【2】駅弁やスイーツが買える「ウルトラ自販機」

次に紹介するのは、IoT自販機を開発する「株式会社ブイシンク」のウルトラ自販機だ。今回、JR東日本グループとの共創で、従来の自販機では取り扱ってこなかった駅弁とスイーツの販売に挑む。

実際に購入してみた。まず大画面のタッチパネルを操作し、買いたい商品を選ぶ。食べ物の“シズル感”も表現できる高画質が特徴のひとつだという。また多言語対応となっているため、英語・中国語・韓国語への表示切り替えも容易だ。商品を選んだ後は、Suicaを使ってワンタッチで決済する。その後、取り出し口に商品が移動するという流れだ。

▲商品のサイズに応じて棚の幅や高さを変えられる設計。ベルトコンベアとエレベーターで商品を移動させる。

担当者の話によると、一般的な自販機の場合、商品を陳列棚から落下させるが、このウルトラ自販機は水平なエレベーターに載せて運ぶ。そのため、ケーキやプリン、あるいは弁当のように、丁寧に扱う必要がある商品も型崩れすることがないという。

さらに、自販機の正面にカメラが内蔵されており、カメラから得た情報をもとに、マーケティングを行う機能も搭載されている。自販機の前を通る人たちに対して、音・光・動きを使った演出を仕掛けるというものだ。将来的には、スマホオーダーや冷凍、免税機能なども加え、その名の通り「ウルトラ」自販機を目指していくという。

――JR東日本グループは、深刻な人材不足の影響により、駅ビルや駅構内で働く接客・販売スタッフの確保に苦労している。中にはスタッフが確保できず、閉店せざるを得ない店舗も生まれている。無人ロボットパスタカフェやウルトラ自販機を導入することで、人材不足への対策、さらには営業時間の拡張や省スペース化、空きスペースの活用につなげていく考えだという。

【3】日本各地の鮮魚を“美味しいまま”で流通させる「瞬間凍結技術」

次のブースに移ろう。一見、普通の魚売場のようにも見えるが、実はこの「ブランテックインターナショナル株式会社」、魚をわずか数秒で凍らせるという驚くべき技術を保有している。同社が開発した、マイナス21.3度の高濃度塩水でできたHybridICE(ハイブリッドアイス)が、瞬間凍結を可能にするのだ。

▲凍結にかかる時間はわずか数秒。そのため、水産加工現場の職人不足対策にもなる。

「STARTUP_STATION」では、瞬間凍結のデモンストレーションが行われた。来場者が見守る中、担当者が生簀から生きた魚を取りだし、HybridICEの中に潜らせる。すると、数秒後には棒のように凍りついた。鮮魚は冷凍すると味が落ちるイメージを持つが、急速に冷凍することで細胞の一つ一つが原型に近い形を保つ。そのため、解凍すればもとの鮮度のままの味を楽しめるという。

瞬間凍結後に解凍した広島産の牡蠣を試食した。しっかりとうまみが残り、広島で食べたものと何ら変わらないように感じられた。売り場には、牡蠣のほか石川県産の甘エビ、宮城県気仙沼産のメカジキ、セイコガニなどが並べられた。これらは、JR東日本グループのスーパー「紀ノ国屋」で販売することが決まっているという。

――JR東日本スタートアップは、2019年6月、2017年度のプログラムで採択した「株式会社フーディソン」とともに、新幹線物流を活用した鮮魚輸送の実証実験を行った。新潟で当日の朝に水揚げされた甘エビや生ウニを上越新幹線で輸送し、品川駅構内とオンラインショップで販売するチャレンジだ。オンラインショップでは即完売が出るほどの反響があったという。

鮮度を保持したままでの輸送が難しいために、地元周辺でしか食べられてこなかった魚介類を、今回のような「瞬間凍結技術」や「新幹線輸送」という新たな方法を活用し都市へと流通させる。これにより、地方は販路を広げられる。一方、都市はこれまで入手が難しかった多品種な魚介類を季節問わず食べることができる。旅先でしか食べられなかった魚介類が、仕事帰りの駅で手に入り、食卓に並ぶ――そんな未来が当たり前になりそうだ。

【4】駅に送客機能を加える「AI味覚判定、日本酒飲み比べBAR」

最後に紹介するのは、日本各地の蔵元とつながりを持ち、日本酒の魅力を国内外に発信している「MIRAI SAKE COMPANY株式会社」のブースだ。ここでは、10種類の日本酒を飲み比べ、AIで自身の味覚を判定する体験ができる。

まず、QRコードを読み取り、スマートフォンで専用アプリを立ちあげる。その後、並べられた10種類の日本酒をブラインドテイスティングする。スマートフォンの画面上で、それぞれの味を5段階で評価。すると、AIが自身の味覚タイプを判定してくれるのだ。もちろん判定して終わりではない。判定結果をもとに、お勧めの日本酒銘柄や銘柄を堪能できるお店を紹介してくれるという仕組みだ。

▲味覚タイプは、「アワアワ」「キュンキュン」「クルンクルン」など12種類のオノマトペで表現。まるで占いをしているような感覚で、自分の日本酒の好みを知ることができる。

同社はJR東日本グループとの共創で、2020年の2月中旬から約1カ月間、新潟駅にある観光案内所を活用し、試飲から味覚判定までを行えるマイクロバーを開設する。「リーフレットなどの視覚情報で、味を伝えるのは難しい」と同社の担当者は話す。味覚による判定結果をもとに、新潟駅周辺の蔵元や居酒屋へと送客を図る。自分の味覚に合った場所を発見できるため、満足度やリピート率の向上にもつなげられるという。

――これは「観光の起点」という駅の立地を活かし、新たな体験を付加していく取り組みだ。今年度のプログラムでは、MIRAI SAKE COMPANYのほかにも、相乗りマッチングサービスを展開する株式会社NearMeが採択され、同じく新潟駅で実証実験を行う。観光タクシーを「相乗り」により手頃な価格で提供し、観光客の回遊性を高めるという。未来の駅が、その地域のゲートウェイとしてどのような役割を果たせるのか、まだまだ可能性はありそうだ。

「STARTUP_STATION」から生まれた、新たなビジネス

「STARTUP_STATION」の開催と時を同じくして、無人AI決済店舗「TOUCH TO GO(タッチトゥゴー)」が、2020年の春、新駅「高輪ゲートウェイ駅」構内にオープンすることが発表された。「TOUCH TO GO」は、まさにこのプログラムから生まれ、2年前に大宮駅で実証実験を行った。JR東日本グループとサインポスト株式会社の共創により完成させたプロダクトで、現在は合弁会社を設立し、開業に向けた準備を進めている。

JR東日本スタートアップ株式会社の代表を務める柴田氏(上写真)はイベント冒頭の挨拶で、本プログラムについて次のように語った。「実証実験のフィールドを提供するだけで終わるつもりはない。シナジーが期待できるものに対しては、事業化に向けて積極的に経営にも関与し、さらなる展開につなげていきたい」(柴田氏)

「STARTUP_STATION」から、次はどのような新たなビジネスが生まれ、私たちの体験を変えていくのか。JR東日本グループとベンチャーが織りなす未来の駅に期待を寄せたい。

▲イベント会場の中央に設けられたロゴ。背景には苔シートが貼られている。今年度のプログラムで採択されたうちの1社、グリーンズグリーンが栽培する環境に優しい苔だ。高架下を活用し、苔の栽培を行う実証実験も予定されている。

取材後記

「STARTUP_STATION」には初日から大勢の来場客が集まり、賑わいをみせた。ブースには列ができ、来場者がブース担当者の話に熱心に耳を傾ける様子からも、その関心の高さが窺えた。「STARTUP_STATION」に出展したのは4社だが、「JR東日本スタートアッププログラム2019」では21社が採択され、テストマーケティングに着手している。21社の具体的な共創プランについては、こちらの記事で紹介しているので、ぜひご覧いただきたい。

(編集:眞田幸剛、取材・文:林和歌子、撮影:古林洋平)

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