教育分野(エドテック)で未来を切り拓くOIプロジェクト5選
テクノロジーの進化によって、これまでの教育や勉強方法がディスラプトされつつあります。このような、教育分野の課題を技術で解決しようとする試みは「EdTech(エドテック)」とも呼ばれ、大企業、ベンチャー問わずに取り組みが活発化しています。
特に、教育は既存の販路や商流といったネットワークの強さが物を言う分野でもあるため、イノベーションを起こすためには大企業の積極的な参入が不可欠です。
また、経済産業省は有識者会議として「未来の教室」と「EdTech研究会」を2018年1月に立ち上げ、エドテックをどう取り入れるかを1年半にわたって議論しました。
その結果、「未来の教室」のビジョンとして3つの柱「学びのSTEAM化」「学びの自立化・個別最適化」「新しい学習基盤の整備」を提言しました。
産官ともに注目を集めるエドテックにおいて、先進的なソリューションを持つベンチャーと、強力なネットワークを持つ大企業が実践するオープンイノベーションの取り組みを5つご紹介します。
関連ページ:令和の教育改革に向けた、「未来の教室ビジョン」をとりまとめました
【NTT東日本×ライフイズテック】「テクノロジア魔法学校」を全国大手家電量販店で販売
2017年にNTT東日本が初めてアクセラレータプログラムを開始した際に手掛けた共創事業が、ライフイズテックとの取り組みです。教育サービス事業を手掛けるライフイズテックは2018年4月に、アクセラプログラムでの採用をきっかけにプログラミング学習パッケージ「テクノロジア魔法学校」をローンチしています。
ライフイズテックは「テクノロジア魔法学校」を拡販するための、商流が確保できていないことが課題でしたが、NTT東日本が持つ全国の大手家電量販店での販路を利用してパッケージを販売しました。
NTT東日本は「テクノロジア魔法学校」と一緒に光回線の販売をすることで収益拡大を見込める、というビジネスモデルです。ライフイズテックとしては、NTT東日本の持つ全国家電量販店とのネットワークや、100名規模の光回線販売スタッフといったアセットを活用できるメリットを享受でき、双方にインパクトのある取り組みとなっています。
関連記事:NTT東日本流の共創|商流もゼロから創る。全国規模でビジネスを加速させた共創事業とは。
【ODK×エーテンラボ】「UCARO®」と「みんチャレ」連携で受験生コミュニティの形成支援
「受験ポータルサイト『UCARO®』」を提供する株式会社ODKソリューションズと、「三日坊主防止アプリ『みんチャレ』」を運営するエーテンラボは2019年5月より連携を開始し、学校法人向けサービス展開を推進することを発表しています。
協業の主な内容は以下の4点となっています。
『みんチャレ』と『UCARO®』双方に、相手方サービスのアカウント登録を促す導線を開設する。
受験勉強をサポートする公式チャレンジ「大学受験(UCARO®️)」を『みんチャレ』内に開設する。
共同販促を実施する。
データ連携による新規サービスを検討する。
これらの連携を通じて、年々変化する大学入学試験の形式に対応すべく学生コミュニティの形成支援はもとより、将来的なデータ拡充を目指していく狙いがあります。
参考記事:「みんチャレ」と「受験ポータルサイト『UCARO®』」が連携、学校法人向けサービスを展開
【Z会×atama plus】生徒個別レッスンを作る「atama+」をZ会グループで大規模展開
増進会ホールディングス (Z会グループ)は2019年11月、傘下で運営する国内最大級の学習塾「栄光の個別ビザビ」にて、atama plus(アタマプラス)が開発・提供するAI先生「atama+」を大規模導入することを決定しました。
「atama+」は、生徒一人ひとりの得意、苦手、伸び、つまずき、集中状態などのデータを「アタマ先生」と名づけられたAIが分析して、一人ひとりに合った「自分専用レッスン」をつくることで学習を効率化するプロダクトです。
この取り組みでは新たに「atama+」を指導の中心においた教室を開校するとともに、133教室で「atama+」を導入、その後さらに他教室にも拡大していくことが主な提携の内容となっています。
Z会グループは、atama plus創業当初より、「atama+」をグループ傘下のZ会エデュースが運営する「Z会東大個別指導教室プレアデス」にていち早く実証・導入し、個別指導・集団指導の各ブランドで導入を進めて、効果を検証していました。
関連記事:Z会×EduLab|AI活用の自動採点に関する共同研究を開始
【Z会×EduLab】解答データとAIによる英語テストの評価AIで自動採点システムを共同研究
同じくZ会グループは2019年9月より、教育関連のAI事業を展開する「EduLab(エデュラボ)」と共同研究を開始しています。
次期学習指導要領や2020年度の大学入試改革を契機に、英語については4技能(「話す」「書く」「読む」「聞く」)の教育および能力測定が重要視される一方で、特に「話す」能力の測定・評価についてはコストがかかり、また評価者により結果にバラつきが生まれやすい点が懸念されていることが課題となっています。
両社は、Z会グループが実施する英語4技能テスト『英語CAN-DOテスト』での数万規模の解答音声データ、観点別の評価データを活用し、EduLabが持つテスト技術およびAIを活用した自動採点技術を用いることにより、スピーキング自動採点の研究開発に着手します。
この共同研究だけにとどまらず、両社は教育現場や学習者の様々なニーズを発掘し、両者の持つ資産を組み合わせることで、より良い学習機会の提供に向け貢献を目指すと言います。
関連記事:Z会×EduLab|AI活用の自動採点に関する共同研究を開始
【東工大×高専キャリア教育研究所】高専生のキャリアをサポートするブランド「Curious」
東京工業大学関連ベンチャーキャピタルファンドを運営するみらい創造機構と、全国の高等専門学校の在学生、卒業生向けにキャリア教育及び起業家育成事業を展開する高専キャリア教育研究所は2019年9月より、起業によるイノベーション創出やキャリアデザイン支援を目的とした資本業務提携を行うことを発表しました。
みらい創造機構は2016年に総額33.4億円の東工大関連VCファンドを組成しており、東工大生・卒業生が起業したベンチャーを中心に約20社への投資実績があり、イノベーション創出を加速させる活動をしてきた背景があります。
また、高専キャリアは学生の市場価値向上とキャリア支援を通じて、新たな産業の発展やイノベーションに貢献してきた経緯があり、エンジニア人材不足に課題を抱える企業経営者や投資家から支援の相談を受ける機会が増えてきたといいます。
こうした背景から、みらい創造機構は高専キャリアと連携して活動を共に推進することで、エンジニア起点のイノベーション創出を加速すると共に高専生/高専卒業生とのマッチングによる投資先企業の更なるバリューアップを目指すことになりました。
具体的には、高専生を対象にした包括的なキャリア教育ブランド「Curious」を立ち上げ、キャリア教育事業・事業開発/起業家育成事業・ファンド事業の3つを柱として高専生をサポートする枠組みを創出します。
参考記事:「みらい創造機構」と高専生特化型キャリア教育を行う「高専キャリア」が資本業務提携
【編集後記】進む効率化とパーソナライズ
どの分野でも言えることですが、教育分野ではオープンイノベーションによって業務の効率化と、パーソナライズが進んでいます。
「教える側」の業務の煩雑さを回避しながら、「教わる側」は自分だけのカリキュラムを受けられるように進化していくのがエドテックの潮流です。
これまでの学校のように、1人の先生が大人数の生徒をまとめて授業するような学びのスタイルは今後減っていきそうです。
(eiicon編集部)