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共創で社会課題を解決――東京青年会議所「Link de change!プロジェクト」で最優秀賞を獲得した“こどもDr.認定コンテスト”とは?

共創で社会課題を解決――東京青年会議所「Link de change!プロジェクト」で最優秀賞を獲得した“こどもDr.認定コンテスト”とは?

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7月28日、東京青年会議所会館にて『Link de change!プロジェクト』の発表会・表彰式が行われた。『Link de change!プロジェクト』は、東京青年会議所経済政策委員会が主催となり、「企業同士がつながる“オープンイノベーション”で、社会課題の解決に取り組み、それをビジネスにつなげよう!」をテーマに、新宿区をはじめとする7地区のチーム(新宿区、渋谷区、品川区、港区、江東区、中野区、板橋区、墨田区)が、各地区の社会課題の解決案を提案するというプロジェクトだ。

――「オープンイノベーションで社会課題を解決する新しいビジネスを提案する」という試みは今年の3月から歩みを進めており、今回、その集大成ともいえるプレゼンテーションの発表会・表彰式を行う運びとなった。

▲発表会の冒頭には、東京青年会議所 第70代理事長 塩澤正徳氏が登壇し、開会の挨拶を行なった。

本イベントにはeiicon company代表の中村亜由子をはじめ、グローバルに活躍できる人材育成を目標とする社会起業大学・学長の田中勇一氏、ベンチャー企業および中堅中小企業への投資で地域経済の発展を支える西武しんきんキャピタルの代表取締役・四谷康治氏の3名が審査員として参加した。

▲3名の審査員が各プレゼンに対してフィードバックを行った。(左から、eiicon・中村、社会起業大学・田中氏、西武しんきんキャピタル・四谷氏)

各地区のチームが発表した『Link de change!プロジェクト』プレゼンテーションの内容や審査員の講評、表彰式の模様を紹介する。

■渋谷区の空き家を活用!シェアエコ社会の実現で課題解決を目指す「share the future!」

プレゼンテーションのトップバッターを務めた渋谷区チームのテーマは「share the future!」。シェアリングエコノミー社会の実現を目標に、渋谷区の現状課題である「空き家などの資産の滞留」と「高齢化、労働人口の減少」を解決するという内容だ。

課題解決の方法として、需要者と供給者を結ぶプラットフォームサービスでCtoC取引の不安や滞留している資産の流動化を目指すという事業モデルを提案した。渋谷区に限らず、空き家率は全国で13.5%。都内の空き家の8割は腐朽や破損はなく、こういった滞留資産をいかに活用するかに焦点が当てられた。

事業モデルのターゲット層となる資産供給者を高齢者と想定し、ステークホルダーには行政機関や地域エコノミー、Web関連事業者などを列挙。アプリ・システム開発やリーガルチェック、広報など、具体的な立ち上げに向けたスケジュールも発表された。

審査員からは「行政だけでできることには限りがあるので、もっと外に出て他の機関を巻き込んでいくべき」という講評があり、eiicon・中村は「アプリやシステム開発は新しく開発をせずとも活用できるサービスがあるのではないか」とコメント。渋谷区チームは「フィードバックを参考に、さらに内容をブラッシュアップしたい」と回答した。

■北区の新たなランドマーク!飛鳥山を顔としたRe活用プロジェクト

北区チームが発表したプレゼンテーションのテーマは、時間と空間の有効活用による多層的な観光推進。プロジェクトの要となるのは、北区の観光名所の一つ、一万円札の新デザインに決まった渋沢栄一ゆかりの地でもある飛鳥山だ。

飛鳥山の現状課題は、駅近でありながら日常的な活用が少ないという点。この課題解決のため、北区の新しいランドマークとしての「新・飛鳥山公園」を提案。公園を起点に、文化的で高級な街としての発展、人の滞留よる産業の活性化を目指す。

文化的な雰囲気を好む人や東京23区内に通勤する人をターゲットとし、公園内にキッチンカーによるオープンカフェレストランの新設を予定。区有施設利用のしやすさや補助金の受給など、観光協会ならではの資源や能力を活用できることもPRした。

審査員の四谷氏からは、「区内の資産活用による活性化は成功例が少なく、且つ継続へのハードルも高い。継続に必要な資金調達について、さらに掘り下げて検討していくべき」とのアドバイスがあった。

■ものづくりの町、墨田区。産業活性化のための課題解決

続いての発表は、ものづくりの街として古くから親しまれている墨田区チーム。墨田区では、1970年代には約9,700社あった製造業の会社が2,000社以下に、区内で仕事をしていた区民の割合は8割から3割に減少するという「産業集積」が課題となっている。この産業集積の課題を解決するため、墨田区から発表した解決策は二つ。区内産業の支援と新たな企業の誘致である。

区内産業の支援は「事業継承融資」という形で、すでに40件ほど融資の実績をあげており、昔ながらの産業の継続に力を入れている。そして今後の産業活性化の要となる新規産業の誘致には、工学系のベンチャー企業や外国人起業家、クリエイターなどを予定している。

実際に墨田区に拠点を置いている企業や関係者への聞き取りをしたところ、「空港や都心へのアクセスが良く、職人や金属加工などの工場も多いので産業との相性が良い」という声が上がり、そういったメリットの周知に力を入れていく必要性があるとコメント。外国人起業家が相談できる体制や、交流の場、各種手続きの外国語対応などの支援を検討しているという。

参加者からの「現存する2,000社もの会社を、行政側はきちんと把握しているのか?」という質問に対し、隅田区チームは「1社1社の細かい部分までは完璧に把握できていないが、高確率で事業内容や状況などは把握できている」と回答。eiicon・中村は、「いろんなスタートアップが生まれている時代。墨田区はすでに地方の中小企業やスタートアップ企業から注目されている地域なので、誘致よりも現存している企業のPRを行政が援助するべき」とコメントした。

■こどもDr.認定コンテストで受け継ぐ、板橋区のものづくりの魂

板橋区チームは「光輝く板橋ブランドの確立」「持続可能な産業文化都市の実現」「産業人がいきいきと活動できる環境づくり」という三つの将来ビジョンを発表。ものづくりの文化や歴史が地域に知られていないこと、工業と地域の交流が少ないことが課題にあげられ、この課題解決のために、産業活性化の好循環を生み出す仕組み作りの必要性があると提唱した。

その仕組みとして、区内の小・中学生を対象とした「ものづくりのアイディアコンテスト」を企画。優勝者を「いたばしこどもDr.」に認定し、地元企業をタイアップしてアイディアの具現化を目指すといった内容だ。研究費用はクラウドファンディングなどの利用を検討しており、地域住民とものづくりの産業人が関わり合いを持つ事業に成長させていく。

ものづくりのアイディアコンテストの狙いは以下の通りだ。

①区内の小・中学生に産業の重要性を知ってもらい、ものづくりの楽しさに触れてもらう。

②区内の企業や産業人が子どものアイディアに携わることで、技術への誇りや勤労意欲を向上させる。

③アイディアコンテストに参加した子どもの親など、地域住民が産業人との関わり合いを持つことで相互理解を深める。

アイディアコンテストを実施することで、地域住民や企業、行政など様々な機関を巻き込み、人材育成やSDGsを実現。板橋区の未来をしっかり見据えたプレゼンテーションとなった。

社会企業大学の田中氏からの「子どもの教育に多くの機関を巻き込む発想がとても良い。実現に向けて早く行動を起こしたほうがいい」とコメントに対し、板橋区チームは「開始する時期は予算問題などで3月を予定している」と回答。eiicon・中村も「行政主導だと時間がかかるので、民間や青年会議所主導で早期の実現を目指して欲しい。課題、ソリューション、ベネフィット、実現可能な可能性が高い内容。」とコメントした。

■中野区から世界初の試み!浸水システムの構築でイノベーションの創造

中野区チームは、国家戦略特別区域法を活用した「イノベーションの創造」をテーマにプレゼンテーションを発表。千葉市ではすでに国家戦略特別区域法を活用したドローンによる宅配サービスの社会実験が行われており、中野区においても「ワクワクする区政の創造」のために国家戦略特区申請を目標に社会実験を進めていく。

具体的には、近年多発している水災害を受け、浸水による混乱を回避するための「浸水予測システムの構築」を紹介。早稲田大学や国土技術政策総合研究所などを巻き込み、すでに浸水予測システムの開発を進めている。

浸水予測システムの具体的な社会実装アイディアは、掲示板と各種保険の二つ。掲示板による情報訴求、動線企画を実現し、ロイヤリティ収入や施工収入などの収益モデルを検討している。また、防災や減災はビジネス化が難しいという点を踏まえ、保険会社との共創も提案。情報をオープンソースとして使用し、保険料支払額の低減などで利益をあげるなどの具体策を発表した。

社会起業大学・田中氏は「気象情報の扱いを中野区から変えるという切り口が素晴らしい」と絶賛。西武しんきんキャピタル・四谷氏、eiicon・中村からは「気象情報は気象庁のものしか使用しておらず、国だけでその情報を持つのは勿体無い。情報をオープンソースにすることは中野区だけでなく国全体の課題解決にも繋がる」とのコメントが寄せられた。

■新宿区と民間企業との共創で、防災・減災を減災社会の実現へ

旅行者や乗降客数、外国人人口など、全国で人の流入が最も多い新宿区。特に昼間人口は77万5549人というデータがある。現状、観光客や新宿で働く非居住者といった区民以外への行政サービスは難しく、そういった行政の手が届きにくい層へ向けた防災・減災への取り組みが新宿区の課題となっている。その課題解決策として、民間企業との共創で減災社会の実現を目指すサービスを提案した。

具体的な課題解決に向けての提供サービスは下記二点。

①災害情報などのタイムリーな発信。

②非居住者の帰宅困難者に対する避難場所や食料の提供・確保

災害情報などの発信は、LINE株式会社や株式会社テレコムスクエアといった民間IT企業との協力を予定。新宿区内に入ると、自動的に災害情報が受信できるなどのプッシュ型情報発信を検討している。また、地域BWA(Broadband Wireless Access、広帯域移動無線アクセス)の提供事業者とも協定し、外国人観光客向けに災害情報へのアクセス方法などを案内する仕組み作りも進める。

帰宅困難者への対策は、認定事業者制度の確立を提案。食糧備蓄や帰宅困難者の受け入れ協力企業を認定事業者とし、認定事業者には行政ツール等で無料の広告掲載ができるなどのメリットを提供する。

eiicon・中村は「事業創出は“課題ファースト”にシフトしてきている。減災社会の実現は必ず必要になる事業なので、ぜひ進めていって欲しい。課題解決の事業にはお金も生まれるので、連携関係はもっとフラットなものでもいいのでは」とコメント。他の地区の参加者からも「ぜひ他の区にも広げられる形で進めて欲しい、一般社団法人の設立なども視野に入れては?」という声が上がった。

■東京都受動喫煙防止条約に向けて、江東区からタバコ問題を解決!

『Link de change!プロジェクト』最後のプレゼンテーション発表は江東区チーム。2020年4月に施行される東京都受動喫煙防止条例を受け、江東区でのタバコ対策に焦点を当てた内容の発表を行った。

現状、法律の施行日時は決まっているにも関わらず、どこの議会や行政も取り組みができてないという状態。この状態を江東区が率先して改善することで、社会課題解決にも繋げていく狙いだ。飲食店や商店街、企業や行政を巻き込み、東京都受動喫煙防止条例への対応をしていく。

具体的なケイパビリティとして、以下の三点があげられた。

①移動式喫煙所の設置

②飲食店の喫煙目的施設への移行支援

③商店街の空きテナントを喫煙所へ移行する物件開拓

移動式喫煙所利用の際の課金や、喫煙所内の広告収入、飲食FCとの喫煙所提供の契約フィーなど、それぞれの収益モデルも検討している。

参加者からの「行政が対応するのではなくJTなどに対応を任せることはできないのか」という質問に、「駅の喫煙所などはJTの支援を受けているが、近隣住民の反対や道路管理者問題などで協力体制が難しいという課題がある」と回答。また、「たばこ税は行政を支える大きな税収なので、その部分を強調し対応に当たるといい」というアドバイスの声もあがった。

審査員の社会起業大学・田中氏からも「対策の進め方は民間、行政や財団などどのように考えているのか」という質問があがり、「民間の力を借りつつ、行政主体ではなく団体を立ち上げるなどして進めていきたい」と回答した。eiicon中村は「全面禁煙に向けて世界が動いているので、移動式喫煙所などのソリューションよりは健康増進の方がビジネスチャンスあるのでは?」とコメントをした。

■全7地区のプレゼンテーションが終了!最優秀賞チームはどの区に?

全7地区によるプレゼンテーションが終了し、約4ヶ月にわたる『Link de change!プロジェクト』の結果発表が行われた。最優秀賞の他に、東京JC賞が用意された表彰式。東京JC賞を受賞したのは江東区チームと中野区チームの二チーム。

▲江東区チーム

▲中野区チーム

たばこ問題に取り組む江東区チームは、受賞の言葉として「この受賞を大きなプレッシャーとしてしっかり背負っていきたい」とコメント。浸水システムの構築で新たなイノベーションの創造に取り組む中野区チームは、「規制緩和をキーワードに、しっかりとしたビジネスモデルを作りたい」とコメントした。

そして最優秀賞を受賞したのは、こどもDr.認定コンテストを企画した板橋区。最優秀賞受賞の証として、東京青年会議所経済政策委員会から盾が送られた。

▲板橋区チーム

審査員を務めた社会起業大学・田中氏は、「やらない理由を考えたり、うまくこなすだけの発想になってしまっている人が増えている中で、自分がしっかり取り組むんだ、という姿勢を一番感じたのが板橋区。”既存の枠にとらわれず、自分がイノベーションを起こすんだ”という姿勢が素晴らしかった」と評価。「まさか最優秀賞をとることができるとは思っていなかった。実現に向けてしっかり邁進していきたい」と、板橋区チームは喜びの受賞コメントを発表した。

最後に審査員から、「それぞれ限られた時間の中でここまでの準備をしっかりできていたことを評価したい。地域の中の小さい課題は、大きく発展して社会課題の解決に繋がる事例も多数ある。問題意識をしっかり持ってプロジェクトに取り組む姿勢を持って欲しい」という労いと激励の言葉が述べられた。

『Link de change!プロジェクト』を主催した経済政策委員会実行委員長の渡辺氏は、「企業と行政のオープンイノベーションで社会課題を持続可能な形で解決し、いい東京を作っていきたい」とコメント。このプロジェクトでできた繋がりを継続し、今後も活動に力を入れていきたいと話した。

■取材後記

それぞれの地域が持つ特徴や抱える課題ひとつひとつが、すべて社会全体の課題に繋がる内容であったことが印象的だった。行政だからこそできる取り組みに民間を巻き込むことで、より良い課題解決に向けた動きができる。課題ファーストの事業は必ず需要があり、需要があれば景気回復を期待できる経済の動きも付随する。2020年を目前に、実際の事業化や社会実装の可能性に大きく期待したい発表会となった。

(編集:眞田 幸剛、取材・文:阿部仁美、撮影:加藤武俊)

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