NTTグループと岩見沢市等、スマート農業およびスマートアグリシティの実現に向けた産官学連携協定を締結
国立大学法人北海道大学、岩見沢市、日本電信電話株式会社(以下、NTT)、東日本電信電話株式会社(以下、NTT東日本)、株式会社NTTドコモは、最先端の農業機械の自動運転技術に高精度な位置情報(注1)、第5世代移動通信方式(5G)、AI等のデータ分析技術等を活用した世界トップレベルのスマート農業の実現と社会実装およびスマート農業を軸としたサステイナブルな地方創生・スマートシティのモデルづくり等に取り組んでいくこと、また将来の革新的ネットワーク技術(注2)のスマート農業への適用に向けて共に検討を開始することに合意し、6月28日、産官学連携協定を締結した。
■背景
日本の農業は長期にわたる就農人口の減少と高齢化、後継者不足による「労働力の不足」に直面しており、産業として維持・拡大するためには、この社会課題を早期に克服する必要がある。そのため、これらの課題解決に向けた取り組みが進められている。
北大は、岩見沢市等をフィールドとした近未来スマート農業技術の実証に取り組み、自動運転農機等のロボット化やベテラン農家の匠の技をデータ化・活用するデータドリブンな農業の実現によるイノベーション創出に取り組んでいる。
自動運転農機については現在、世界に先駆けた複数台の協調作業システムや遠隔監視による無人状態での完全自動走行(レベル3)(注3)の実証フェーズにあり、その実現に向けては、正確な測位情報が必要なことに加え、農機に搭載されたカメラからの映像情報等を、低遅延かつ信頼性を担保しながら監視拠点まで伝送することも必要。
また将来は農機も動くIoT機器として位置づけられ、複数台のカメラやセンサーを搭載された農機から、作物の生育や土壌、病害虫の発生、農作業等の状況、農機シェアリングを行うための農機の空き状況等、さまざまなデータを収集し、農機以外からの情報も組合せ、AIにより処理・分析することにより、農作業者が取るべき行動を適切かつタイムリーに促す仕組みが期待されている。
岩見沢市は「農業を軸とした地方創生」を掲げ、ICTによる「市民生活(暮らし)の質の向上」と「地域経済の活性化」に取り組み、北大等と連携しながら全国に先駆けたスマート農業実現に向けた環境整備や住民の健康づくりに向けた健康コミュニティづくりの実証等を進めてきた。
また、内閣府の「近未来技術等社会実装事業」において「世界トップレベルの「スマート一次産業」の実現に向けた実証フィールド形成による地域創生」が認定される等、日本におけるスマート農業のフロントランナーとして取り組んでいる。
NTTグループは、“Your Value Partner”として、事業活動を通じて、研究開発やICT基盤、人材等様々な経営資源や能力を活用しながら、パートナーとコラボレーション(協業)しながら、デジタルトランスフォーメーションの推進により、社会的課題の解決をめざしているという。
■取り組み概要
このような背景のもと、北大、岩見沢市、NTT、NTT東日本、NTTドコモは産官学連携協定を締結し、以下の3つのテーマを設定して取り組むことに合意した。
A.高精度測位・位置情報配信基盤
農機が自動運転を行うためには、正確な測位・位置情報が必要となる。そのため、精度、経済性等で最適な測位・位置情報配信方式の検討を行う。準天頂衛星みちびきを含むGNSS(注4)、国土地理院の提供する電子基準点に加え、独自固定局を設置・運用し高精度の位置測位を実現するNTTドコモが提供予定の「GNSS位置補正情報配信基盤」や統計処理を用いた独自の衛星信号選択アルゴリズムにより、精度の高い測位情報を提供するNTTの最新技術等、新たな方式を含めて検討、検証を行う。
B.次世代地域ネットワーク
自動運転農機に求められる最適なネットワークの検討、検証を行う。第5世代移動通信方式(5G)、岩見沢市が現在整備中のBWA(注5)等の最新技術を組み合わせ、遠隔監視による無人状態での完全自動走行(レベル3)に求められる、高速・低遅延で信頼性の高いネットワークの実現をめざす。
あわせて、自治体に整備されている各種通信(有線・無線)を統合し、住民の暮らしやすさ、産業振興および防災・防犯等に貢献するスマートシティの通信基盤構築にも取り組む。
また中期テーマとして、NTTが提唱する光ベースの革新的なネットワークの構想IOWN(アイオン)に基づき、より大容量、低遅延で柔軟性に富み、消費電力に優れたオールフォトニクスネットワーク、特に用途ごとに波長を割りあてる機能別専用ネットワークの適用可能性の検討も進める。
これらの技術を活用し、ロボット農機システムを含む農業分野をユースケースの1つとして位置づけ、新たな価値創出をめざす。
C.高度情報処理技術およびAI基盤
自動運転農機等からの映像・画像を含むさまざまなデータを効率的に伝送・圧縮するための高度情報処理技術の検討を行う。
また、自動運転農機等から収集されたデータを分析し農作業の最適化を図るための地域AIプラットフォームの検討を行う。NTT東日本の通信ビルをエッジ拠点とし、閉域ネットワークによる低遅延かつセキュアな通信や、GPUサーバによる膨大なデータの高速処理が可能なラボ環境を活用することで、車体情報・カメラ映像や作業ログ、圃場のIoT機器から収集されたデータ(生育・収量・品質・流通・消費者等)、外部データ(気象等)を高速に分析し、農業者や自動運転農機へタイムリーにフィードバックする仕組みを目めざす。
農作業の記録を簡易的に行うため、作業者の発話を音声で認識し、文字データに変換する音声認識技術にも取り組む予定という。
■今後の展開
今後は、北大、岩見沢市、NTTグループが連携し、農業のデジタルトランスフォーメーションによるスマート農業の実現と社会実装およびスマート農業を軸としたサスティナブルな地方創生・スマートシティのモデルづくりによる社会課題解決に共に取り組む。
また、同モデルを確立し、将来のグローバル展開も視野に入れて取り組み、世界の食料不足の改善にも取り組むという。
(注1)NTTドコモが提供予定の「GNSS位置補正情報配信基盤」。誤差数センチメートルの高精度測位を提供可能
(注2)NTTが現在検討している光ベースの革新的なネットワークの構想IOWN(アイオン)
「Innovative Optical & Wireless Network」
http://www.ntt.co.jp/news2019/1905/190509b.html
(注3)無人状態での完全自動走行。使用者はモニター等により、ロボット農機の遠隔監視を行う
(注4)Global Navigation Satellite System(全球測位衛星システム)。衛星測位システムの総称
(注5)広帯域移動無線アクセスシステム(Broadband Wireless Access)
(注6)地域ニーズや産業分野のニーズに応じて構築を行う第5世代移動通信方式等
(注7)NTT東日本が提供するAI・IoT技術の実証環境。産官学連携による新たな社会課題解決・事業共創をめざす場
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(eiicon編集部)