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新エネルギー等の技術を“事業”にするために──NEDOが開発から事業化までを支援する『新エネシーズ発掘事業』とは?

新エネルギー等の技術を“事業”にするために──NEDOが開発から事業化までを支援する『新エネシーズ発掘事業』とは?

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再生可能エネルギーの導入・普及に向けた取り組みが進む中、その実現を支える技術は、必ずしも大企業だけが持っているわけではない。蓄積してきたノウハウを有する中小企業や、独自の発想で勝負をしているスタートアップの中にも、まだ十分に活用されていない技術は数多く存在しているだろう。そうした眠れる技術にも着目し、研究開発を支援しているのがNEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)だ。

NEDOは、エネルギー・環境問題の解決と産業技術力の強化を目指して活動する政府機関で、日本国内の独立行政法人の中でも最大規模の予算を持つ。同機構が推進する『新エネルギー等のシーズ発掘・事業化に向けた技術研究開発事業』(以下、新エネシーズ発掘事業)では、新エネルギーの導入・普及に資する有望な技術を対象に、資金面での補助に加え、事業化を見据えた支援を行っている。

本事業は、1. 中小・スタートアップ企業を主な対象とする制度(新エネ中小・スタートアップ支援制度)と、2. 中小・スタートアップ企業に加え、大企業も含めた実証を支援する制度(未来型新エネ実証制度)の2つの制度で構成されている。具体的には以下の通りだ。

1.新エネ中小・スタートアップ支援制度

(1)社会課題解決枠(※設定される技術課題は以下の9分野<予定>)

  A.太陽光発電利用促進分野

  B.風力発電利用促進分野

  C.中小水力エネルギー利用促進分野

  D.バイオマス利用促進分野

  E.再生可能エネルギー熱利用促進分野

  F.未利用エネルギー利用促進分野

  G.水素・燃料電池利用促進分野

  H.蓄電池利用促進分野

  I.再生可能エネルギー利用促進分野(A~Hの各分野に属するものを除く)

(2)新市場開拓枠

2.未来型新エネ実証制度

 ※設定される技術課題は以下の5分野<予定>

  A.風力エネルギー

  B.海洋エネルギー

  C.水力エネルギー

  D.地熱エネルギー

  E.バイオマスエネルギー

そこで今回TOMORUBAでは、本事業の事務局を担うNEDO再生可能エネルギー部の小神陽一氏にインタビューを実施。事業を実施する背景や支援スキームの特徴、そして採択で重視するポイントについて話を聞いた。国家的な目標達成に向け、NEDOはどのような制度設計のもと、事業化を後押ししようとしているのか。その全体像に迫る。

再エネの導入・普及に向け、中小・スタートアップが持つ『眠れる技術』にも光を当てる

――2026年3月下旬から新エネシーズ発掘事業の公募が開始される予定です。最初に、この事業を実施する背景についてお聞かせください。

NEDO・小神氏 : 私たちの生活を支える電力は、今後も需要の増加が見込まれています。こうした状況のもと、電力部門の脱炭素化は重要な課題で、それに向けた取り組みとして、再生可能エネルギーの導入・普及を進め、主力電源として定着させていくこと、さらには長期的に安定した電源とすることが急務となっています。これは、国の方針にも盛り込まれています。

NEDOではこうした背景のもと、新エネシーズ発掘事業を推進しています。この事業では、中小・スタートアップ企業が有する技術を中心に、その研究開発を支援することで、再生可能エネルギーの主力電源化を目指していこうとしています。

▲小神陽一氏 <NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)再生可能エネルギー部 シーズ発掘・事業化支援ユニット シーズ発掘・事業化支援チーム チーム長>

――本事業では、特に中小企業やスタートアップの技術に着目されています。NEDOとして、どのような点に期待されているのでしょうか。

NEDO・小神氏 : 大規模発電や主力電源化という観点では、大企業による取り組みが中心となって進んでいく場面が多いと考えています。一方で、再生可能エネルギーの導入・普及は、発電そのものだけでなく、O&M(運用・保守)をはじめとした周辺技術も含めて成り立っています。

そうした領域には、先進的なテーマや、ニッチで十分に開拓しきれていない領域も多く存在しているでしょう。中小企業やスタートアップ企業の中には、まさにそうした分野において「眠れるコア技術」を持つ企業が少なくありません。私たちは、こうした技術を細やかに拾い上げ、事業化に向けた支援を行うことで、再生可能エネルギーの導入・普及に寄与していきたいと考えています。

――企業規模を問わず、技術の可能性を重視して支援する事業ということですね。

NEDO・小神氏 : そのとおりです。本事業では、創業間もないスタートアップから老舗の中小企業まで、幅広く支援対象としています。これまでの採択企業の中には、大学発や国立研究開発法人発のベンチャーで、コア技術を早期に事業化し、収益化を目指して取り組む企業もありました。

一方で、老舗の中小企業が、長年にわたって積み重ねてきた知見や技術を再生可能エネルギー分野に応用し、新たな事業の柱として展開を目指すケースも見られます。日本全国の多様な企業にご参加いただける事業となっています。

フィージビリティスタディから実証まで──自社の開発フェーズに合わせて選べる柔軟な支援スキーム

――具体的にどのような仕組みで企業を支援されるのでしょうか。事業の特徴をお伺いしたいです。

NEDO・小神氏 : 本事業は、大きく「新エネ中小・スタートアップ支援制度」と「未来型新エネ実証制度」の2つに分かれています。前者の「新エネ中小・スタートアップ支援制度」では、研究開発の進捗状況が事業者ごとに異なる点を踏まえ、さまざまな開発段階に対応できるよう、幅広い間口を設けています。

具体的には、フィージビリティスタディの段階から、研究開発が進捗して、事業化を見据えた実証を行う段階まで、以下の図のとおり、5つのフェーズ(社会課題解決枠フェーズA、社会課題解決枠フェーズB、新市場開拓枠フェーズα、新市場開拓枠フェーズβ、フェーズC)に分けて支援を行っています。

事業者の皆さんには、いずれの開発フェーズからでもご応募いただくことができます。例えば、フェーズCの実用化研究開発フェーズからのスタートも可能です。さらに、下図のようにフェーズごとにステージゲート審査を経て、段階的にステップアップしながら事業を進めることもでき、基礎研究から実用化までをシームレスに支援していることが本事業の特徴です。

▲新エネシーズ発掘事業のスキーム図。「新エネ中小・スタートアップ支援制度」(上段)と「未来型新エネ実証制度」(下段)の2つに分けられている。後者は再生可能エネルギーの主力電源化の達成に資する技術に早期実用化に向けた実証事業に対して補助する制度。対象事業者は、中小・スタートアップ企業及び大企業だ。(画像出典:NEDO WEBサイト)

――「新エネ中小・スタートアップ支援制度」は、社会課題解決枠(学術連携)と新市場開拓枠(VC連携)に分かれていますが、その違いと、分けて設計された意図を教えていただけますか。

NEDO・小神氏 : まず社会課題解決枠(学術連携)は、大学や研究機関との産学連携による応募を想定した枠として、以前から本事業で設けてきたものです。これに加える形で、新たにVC連携枠を設けました。社会課題解決枠では、NEDOが9つの技術課題を提示し、その重点課題に合致する内容でご応募いただく建付けとなっています。

一方、新市場開拓枠(VC連携)では、そうした技術課題をあえて設けていません。再生可能エネルギーの導入に大きく貢献すると考えられる技術や、事業化した際に大きな成長が見込まれるテーマについて、事業者の自由な発想でご応募いただけます。このVC連携枠を新設したことで、より柔軟で幅広いテーマの提案を受けられるようになりました。

――なるほど。フェーズが切り替わるタイミングで、ステージゲート審査が設けられていますが、ここではどのような点が問われるのでしょうか。

NEDO・小神氏 : まず、前フェーズで設定した開発目標に対して、どの程度達成ができたのかを確認します。その結果を踏まえ、次フェーズに向けた実施計画をご提出いただきますが、前フェーズの開発成果が活かされているか、一段階ステップアップした取り組みになっているか、目標設定が妥当なものか。こうした観点から総合的に審査を行っています。

――この事業に採択されると、どのような支援を受けられるのですか。支援メニューについてもお聞きしたいです。

NEDO・小神氏 : 例えば、外部有識者による助言・アドバイスの機会が設けられています。本事業への参加期間中はもちろん、事業終了後にも進捗を報告する委員会が開催され、その場で外部有識者から「今後の事業化に向けて、こうした取り組みが有効ではないか」といった具体的なフィードバックを受けることができます。この評価には、技術面と事業面、それぞれの専門家が参画しており、各分野に精通した有識者が務めています。

――上記に加えて、成果報告会の開催や展示会への出展などを通じ、事業の成果を発信する機会を提供しているとお聞きしました。

NEDO・小神氏 : そうですね。例えば、「nano tech」(国際ナノテクノロジー総合展・技術会議)など、毎年開催される大規模な展示会があり、その種類も豊富です。分野や技術内容に応じて、個別に適した展示会をご案内しています。このように、研究開発そのものの支援と成果発信、さらに展示会出展のサポートも含め、事業者の皆さまの取り組みを多角的に支えています。

▲展示会での出展の様子。

「事業趣旨との適合性」「技術課題と解決策」「事業化に向けたマイルストーン」――NEDOが重視する3つのポイント

――続いて、本事業に採択されるためのポイントについて伺います。審査にあたって、特に重視されている点は何でしょうか。

NEDO・小神氏 : 重視するポイントは3つあります。1つ目は、本事業の趣旨でもある、再生可能エネルギーの導入・普及に資するものであることです。この事業は、技術開発を行って終わりではなく、開発した技術を事業化し、社会実装に結びつけていただくことが前提となっています。そのため、提案書では技術的な内容に加え、どのように再生可能エネルギーの導入・普及につなげていくストーリーを描いているのかが、重要な判断材料となります。

2つ目は、解決すべき技術課題と解決の手段が明確になっていることです。NEDOは研究開発を支援する組織ですから、技術開発の内容について具体的に示されている必要があります。「解決すべき技術課題が何なのか」「その課題をどのような手段で解決しようとしているのか」を記載していただくことが重要です。加えて、できれば定量的な目標も設定していただき、後々、目標達成度を判断できるようにまとめていただくことがポイントとなります。

3つ目は、事業化に向けたマイルストーンを具体的に描けていることです。最終的に「何を売って、どのように収益化するのか」、その内容と根拠が具体的に示されていることを重視しています。市場のニーズを把握し、想定顧客へのヒアリングなどに基づく具体的な根拠を踏まえて、事業化計画が描かれていることが望ましいです。あわせて、参入を目指す市場における自社技術の強みや優位性についても明確にし、事業として成立すると判断できるだけの内容が示されているかどうかもポイントとなります。

――応募前に「事前相談」にも応じてもらえると伺いました。

NEDO・小神氏 : はい。事前相談では、提案内容が本事業の趣旨に合致するのかを確認します。例えば、本事業は再生可能エネルギーの導入・普及に資する開発が対象ですが、事前相談を進める中で、「これは省エネに関する開発で、再エネとは少し外れているかもしれない」といったケースも出てきます。

また、先ほどご紹介したように、本事業では複数の支援フェーズを設けており、各フェーズで求められる基準が異なります。事前相談では、企業の現状をお伺いしたうえで、適切な支援フェーズをご案内することも可能です。

事前相談をご希望の場合は、本事業に関するNEDO WEBサイトに記載した事務局のメールアドレス宛に、事業概要とあわせて相談事項をお送りください。新たに資料を作成いただく必要はなく、既存資料で構いませんので、ぜひご活用いただければと思います。

「個社単体での収益化」や「コンソーシアム参加での事業化」など、過去採択企業の成長の軌跡

――新エネシーズ発掘事業に参加した企業は、どのような成長を遂げているのでしょうか。

NEDO・小神氏 : 本事業では、事業終了後も向こう5年間、事業化状況報告書を提出いただき、事業化の成果や進捗をご報告いただいています。その報告書の中で、「無事に売上があがった」と報告してくださる企業も少なくありません。

また、NEDOの開発成果に関わる売上が一定の水準を超えた場合には、収益納付という形で一部を納付いただく仕組みとなっていますが、実際に収益納付にまで至った企業も複数社あります。NEDOとしてもこうした成果を確認できることは大きな喜びです。

――どのような形で収益化を実現されることが多いのですか。

NEDO・小神氏 : これまでの実績を踏まえると、本事業で開発したコア技術を生かしていく出口としては、大きく2つあると考えています。ひとつは、事業化の収益を個社単体で上げていく形です。もうひとつが、風力発電や太陽光発電などの国家プロジェクトに関わるコンソーシアムに参加し、自社のコア技術を使って貢献していく形です。

――なるほど、収益化を目指し、コンソーシアムに参加されている事例もあるのですね。最後に、応募を検討している企業に向けてメッセージをお願いします。

NEDO・小神氏 : 私たちは、新エネルギー等の普及拡大や、低炭素・脱炭素化技術の開発促進に貢献し、再生可能エネルギーの主力電源化の達成に資する取り組みを積極的に後押ししていきたいと考えています。皆さまの挑戦が、将来の国民生活や経済活動の基盤を変えていくかもしれません。NEDOとしても、全力で支援していく考えなので、ぜひ、多くの事業者の皆さまからのご応募をお待ちしています。

取材後記

取材を通じて印象的だったのは、本事業が単なる技術開発支援にとどまらず、その先の事業化や社会実装までを一貫して見据えて設計されている点である。小神氏の言葉の端々からは、技術の新規性に加え、その技術がどのように社会の中で価値へと転換されていくのかを重視している姿勢が読み取れた。再生可能エネルギーの主力電源化というエネルギー政策の中核をなす目標に向けて、中小企業やスタートアップ企業の持つコア技術にも丁寧に光を当て、次の一歩を後押ししようとする本事業は、多くの事業者にとって新たな挑戦のきっかけとなり得るだろう。

※本事業の紹介ページはこちら

(編集:眞田幸剛、文:林和歌子、撮影:齊木恵太)

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