
つながりAI×姫路市ーー全36中学校で友達AI「ヒメちゃん」実証実験開始 子どもの自殺過去最多の危機に、新たな相談支援の形を模索
つながりAI株式会社は、姫路市教育委員会と連携し、市内全36中学校に通う約1万3000人の生徒を対象とした友達AI「ヒメちゃん」の実証実験を8月29日より開始する。AIとLINEを組み合わせ、子どもたちが気軽に相談できる新たな仕組みを導入することで、いじめや自殺の未然防止を目指す。
深刻化する子どもの自殺問題
厚生労働省の統計によると、10〜19歳の死因第1位は自殺で、特に中学生の自殺者数は増加傾向にある。2024年には小中高校生の自殺者数が過去最多を記録し、教育現場に大きな衝撃を与えた。(*1) 背景には、いじめ、学業不振、家庭環境、友人関係など複合的な要因が存在する。今年6月に成立した改正自殺対策基本法では、「AIを活用した子どもの支援」が明記された。姫路市での取り組みは、この法改正を具現化する先駆的な事例と位置付けられている。

一方で、文部科学省が発表した2024年のいじめ認知件数も過去最多を更新。(*2) 姫路市には「いじめ相談窓口」が設置されているが、電話相談は心理的ハードルが高いとの声もあり、対応の多様化が求められている。

AIが24時間365日寄り添う「友達」
「ヒメちゃん」は中学生が親しみやすいキャラクターとして設計され、24時間365日、LINE上で相談に応じる。勉強や友人関係の悩みから、いじめや希死念慮といった深刻な内容まで幅広く受け止めることが可能だ。
AIが一次対応を担うことで「人には言いにくい」悩みも気軽に吐き出せる環境を整える。緊急性の高いケースでは、つながりAIの専門職が介入し、必要に応じて警察や児童相談所へ連携する体制も整備されている。
海外で示された効果と日本でのチャレンジ
同様の仕組みは海外でも成果を上げている。米国のスタートアップ Sonnar Mental Healthはカリフォルニア州の学校で4,000人の生徒にAI相談を提供し、利用率40%、ウェルビーイング向上率80%、成績向上2.6%、不登校25%減少といった効果を確認した。
つながりAIはこの事例を参考に、日本の教育現場に即した「ヒメちゃん」を設計。夏休み明けから姫路市全域に導入することで、国内における新しい相談支援モデルの構築を目指す。
実証実験の概要
対象:姫路市内全36中学校(義務教育学校後期課程、夜間中学校を含む)の約1万3000人
期間:2025年8月29日~2026年3月末
方法:LINEを通じて「ヒメちゃん」との相談を周知。日常会話から深刻な悩みまで受け付け、必要に応じて専門職が対応する。
評価指標:相談しやすさ(満足度)、利用者数、いじめ・希死念慮の早期発見件数、自己肯定感の向上率
今後の展望
実証実験の成果を踏まえ、つながりAIは全国自治体への展開を視野に入れる。子どものいじめ・自殺予防だけでなく、孤独・孤立、ヤングケアラー支援、虐待対応など多領域での活用を目指し、「孤立なき社会」の実現に貢献する方針だ。
(*1) 図表1-3-11 小中高生の自殺者数の推移 - 厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/wp/hakusyo/kousei/23/backdata/01-01-03-11.html
(*2) いじめ認知件数は過去最多を更新 2024年|一般社団法人 全国PTA連絡協議会
https://zen-p.net/ts/s631.html#gsc.tab=0
関連リンク:プレスリリース
(TOMORUBA編集部)